作品タイトル不明
第479話 魔石粒
空を舞うオスプレイからギレザムたちの居る拠点を見ると、何か物々しい雰囲気だった。
「ラウル?あれ火器類を俺達に向けてないか?」
エミルも気が付いたらしい。拠点に配備した銃火器がオスプレイに向けられているように見える。
《どうしたギレザム。》
すぐに念話を繋いだ。
《ラ、ラウル様。来ることは分かっていたのですが、恐ろしい気がこちらに向かっていたものですから。》
《あ、ああ大丈夫だ。銃を下ろしてくれ。》
《は!》
拠点がなぜそうなっているのかを一瞬で理解した。
アスモデウスだ。
アスモデウスの気を察知して、魔人軍が臨戦態勢に入っていたのだった。
《アスモデウス!》
《いかがいたしました?君主様。》
《ちょっと距離を置いた場所に待機してろ。》
《仰せのままに。》
俺達の周りにいたのかどこにいたのかは分からないが、ついて来ていたアスモデウスを遠くに待機させることにした。
「ラウル。あれ何か対策をうたないとまずくないか?」
エミルが言う。
「ああ、このままだと一緒に作戦行動が出来ないな。」
「だよな。俺達は感じないが、普通の魔人には強烈に影響を与えるみたいだぞ。」
「とは言ったものの、どうしたらいいのか皆目見当がつかん。」
「だよなぁ。」
そんな話をしながらも、エミルはオスプレイを拠点の近くにある草原に上手に着陸させたのだった。
「集中が途切れないんだな。」
「もう、どれだけ飛ばしたか分からんし、俺達の隊長が人使い荒いもんでな。恐らく前世での飛行時間を大幅に超えてるぞ。」
「す、すまん。」
「ま、精霊の力も借りてるけどな。とにかくラウル…いつか全種類の航空機を試させろよ、ジェットなんかも出せるんだろ?」
「もちろんだ。」
「ラウル様、エミル。ハッチを開けるわ。」
俺達が話をしているとケイナが言う。ケイナもすっかり航空機の補助を覚えて操作がスムーズだった。
「頼む。」
エンジンを止め俺達はハッチから外に出ていく。
「ラウルよ!」
「先生!お疲れ様です。」
モーリス先生がいた。
「おお、おお!それよりの!なんとも恐ろしい気がこちらに向かっとると、魔人達が騒いでおったぞ!」
「えっとこれから説明しますので。」
モーリス先生の後ろにはギレザムとラーズとゴーグが来ていた。ゴーグなどは狼形態になってきている。
「みな!おちつけ!大丈夫だ。ゴーグも人間に戻れ!」
俺が言うとゴーグがあっという間にショタにもどった。案の定、はだか鎧状態になっている。
そして戦闘車両が置いてある方を見ると、ミノスが先頭に立って後ろには兵士たちが整列し、戦闘車両が俺達が飛んできた空方向に砲門を向けていた。
「ミノス!戦闘態勢をとけ!大丈夫だ!」
ミノスが俺に敬礼して後ろを振り向き魔人達に指示をだしていた。しばらくすると魔人達が自分がやっていた作業に戻っていくようだった。
「ルピアは?」
「魔人を連れて食料補充のために魔獣狩りに出ております。」
「わかった。」
すると奥の方から、俺達の為に働いてくれている人間の村長が来た。
「えっと。」
確か…
「ンダベガさん。ご苦労様です。」
「いえいえ。皆様のおかげで食事も十分にとれております。そして風呂や寝所まで用意いただいて、村の女たちも腕によりをかけて料理をしておりますよ。」
「それは良かったです。他に不便な事はございませんか?」
「十分にしていただいております。」
「良かったです。他の村人はなにを?」
「こちらの居住区から外れたところに畑を作り始めております。ここの方達はさすが神の信徒というべきか、物凄い力の持ち主ばかりで開墾も順調です。大きな岩を担いだり巨大な木を片手で持ったりと、驚かされる事ばかりですよ。」
ああ、それね。俺も最初驚いたよ。
「では引き続きよろしくお願いします。」
すると今度は、村長の後ろからホウジョウマコから解放した男たちがやって来た。
「あれ?皆さんまだいらっしゃったんですか?」
「はい。助けていただいた恩返しが出来ていませんから、皆様からはそれぞれの村まで送ると言われたのですが、ここで開墾の手伝いをしております。」
「それはそれは。でも村に帰りたくなったらすぐに行ってください。いつでも送るように指示をしておりますので。」
「その時は言葉に甘えさせていただきますよ。」
「そうしてください。」
あれ?東の村に行った男以外の4人は、魂核をいじってないんだけどな。この世界の村人は真面目な人が多い。
《うん。とにかく本題に入れないからそろそろはけてくれないかな。》
俺の願いが通じたのだろうか?挨拶を終えたら皆がそれぞれの作業をするために散っていった。
人間と魔人の共同生活は今のところ、うまくいっているようだ。
「じゃあギレザム。話をできる場所はあるかな?」
「はい、既に建物は完成しております。」
凄い。もう出来てんのか。
「そこに行こう。」
「参加者はいかがなさいましょう?」
「ギレザム、ラーズ、ゴーグ、モーリス先生で良い。俺とエミルとケイナはそのまま参加する。」
「はい。」
このままのメンバーでギレザムについて行く。すると既に司令塔のような建物が建っているのが見えて来た。
‥‥えっとそう何日も空けてないよな?
扉を開けて中に入ると、かなりしっかりした構造になっている。
「こちらです。」
ギレザムについて行った先はブリーフィングルームのような場所だった。
「飲み物を。」
ギレザムが言う。
「いや、いい。急ぎの案件だからな。」
「は!」
テーブルがあり皆が席に着く。
「急で申し訳ないんですが。」
俺が話し出すと皆が静かに耳を傾けた。
「モーリス先生。私達と一緒に聖都へと飛んでください。ゴーグは先生の足となるため、ラーズは護衛の為に護衛師団と一緒についてこい。」
「ふむ。聖都を占領したことはギレザムから聞いとるが、何かあったのかの?」
「はい先生。問題山積みです。」
「なるほどの。」
「そして枢機卿もモーリス先生の知恵を借りたいと。」
「じじいも来とるのか?」
いやいや、先生もジジイですから。…とは言えない。
「はい。」
「ふむ。」
「ギレザム、ゴーグとラーズを連れて行くが問題は?」
「ございません。もとより二人は恩師様と一緒に居る事が多いですから。」
「よし。」
「ここはミノスとルピアだけでもイケるか?」
「問題ないかと。」
「なら、ギレザムは総大将として各拠点の巡回を頼みたい。ドラン隊の視察を行い、その足でガザムの所へと向かってくれるか?」
「かしこまりました。」
「そして移動中、光の柱にはなるべく近づかないようにしてほしいが、目視で何かおかしな事や変化が無いかを確認してほしい。」
「はい。」
「あとは全てギルの判断に任せるよ。視察隊は10名選んでつれていけ、人選は任せる。」
「了解です。」
「各拠点のめどがつき次第、更にグラドラムから魔人をこちらに呼んで拠点の管理をさせ、戦闘に長けた者で国内の残党狩りを行う予定だ。」
「移動中に敵と遭遇した場合は殲滅しても?」
「ああ、日本人魔法使いは魔力が多い事以外に利用価値はなさそうだしな。ただデモンに遭遇した場合は一度撤退したほうがいいだろう。」
「はい。」
「質問はあるか?」
「デモンの対処が可能だと判断した場合は?」
「消せ。」
「かしこまりました。」
そう言えばカララが言っていたな。ギレザムの種族が進化したとかなんとか…もともとオーガだったと思うが、人間みたいになって…さらに進化して一体何になったっていうんだろう。とにかくギレザムからは何か不思議な器の大きさを感じる。
「無理はするな。」
「はい。」
俺はギレザムに指示を出し終え、ゴーグとラーズを見る。
「聖都の調査に行くんだ。それにはどうしてもモーリス先生の知恵がいる。あそこを解明すれば光の柱がなにかも分かるかもしれないんだ。サイナス枢機卿と聖女リシェルも呼んでいる、お前達には先生と枢機卿達を徹底的に護衛してもらう。」
「御意。」
「わかりました!」
先生はゴーグを見て笑っている。本当に可愛がっているらしい。
「先生。聖都には数件調べねばならないものがあります。」
「光の柱と、あとはなんじゃ?」
「地下にある巨大魔石と、隠し部屋についてです。そのまえにこれを見てください。」
俺は手のひらを広げて見せる。
「これはなんじゃ?」
「地下にある巨大魔石から生まれた魔石粒です。」
巨大魔石が生み出した魔石粒を見せる。
「魔石が魔石を生むとな?」
「はい。どうぞ手に取ってみてください。」
「ふむ。」
モーリス先生は魔法使いバックから、ルーペのような物を取り出して魔石粒を見る。
「ふむ、ふむふむ。」
俺達は先生の邪魔をしないように黙って見ていた。窓の光にかざしたり手で転がしたりしている。そしておもむろにテーブルの上に置いた。
「どれ。」
魔法の杖をかざして魔法粒の周りに結界を張った。
「ラウルよ。」
「はい。」
「この粒が壊れたら代えはあるのかの?」
「ございます。」
「ちょっと試していいいかのう?」
「大丈夫です。」
するとモーリス先生は集中して、魔法の杖から魔石粒に向けて魔力を注ぐ。
しかし‥
なんの変化も無かった。
失敗?
「ふむ。そうかそうか。」
モーリス先生は納得したようにうなずいている。するとまたバックから何かを取り出す。
きらりと光った。それはナイフだった。
スッ
先生はおもむろに自分の手を切った。
「先生なにを!」
「黙っておれ。」
つい大声を出した俺に先生が静かに制止する。
ポタポタ
魔石粒に自分の血をかけた。すると…いきなり魔石が輝きだしたのだった。
モーリス先生は今切った自分の手のひらに回復魔法を施して治す。
「先生、これは?」
「血に反応したのよ。」
「血に?」
「そうじゃ。魔力ではなく血に反応した。」
「それは…どういう。」
一体どういう事だろう、魔石なのに魔力に反応せずに血に反応するとは。
「ラウルよ。おぬしの銃弾で人間や動物を撃つとどうなったかの?」
「はい、私の魔力となります。」
「以前わしは、ラウルの魔力が分からんと言ったのを覚えておるか?」
「はい。」
「これは、それと同じじゃ。」
「すみません先生。それはどういう事でしょうか?」
「ラウルよ。こりゃおぬしの世界の人間と深く関係しておるのじゃないか?」
えっ!凄い!俺は先生にこの魔石粒の事を今ここで話したばかりだ。
シャーミリアやカララが、あの地下にある巨大魔石から、俺達前世組や日本人と同じ気配を感じると言っていたが、彼女らは魔人のスキルのような物でそれを見破っていた…モーリス先生は何故分かったんだろう。
「そうです。先生これは恐らく日本人が関係しているようなのです。」
「やはりのう。以前ラウルの魔力に疑問を抱いていたのじゃが、それからずっと考えておったのよ。わしはある仮説を立ててそれを実証してみようと思うてな。」
「仮説ですか?」
「そうじゃ、水、火、土、風、光、闇、神聖、治療属性以外にも何かあるんじゃないかと思うておる。」
「あるんですか?」
「もちろん長い歴史の間に見つけられた属性じゃからの、この属性が全てだと考えるのが普通じゃろうな。じゃがわしはそうは思うとらんよ。新しい属性があってもおかしくはないじゃろ。」
「それでどうなのです?」
「あるか無しで言うたら…おそらくはあると思うとる。」
「そうなんですね?」
「あの日本人とも戦こうてみて、なんとなく確信めいたものがあるのじゃ。」
この人は本当に天才というやつなんだろう。あのわずかな戦闘と俺との比較でこんな答えにいきつくなんて、俺達が謎だ謎だって言ってるのがバカみたいだ。
「先生は本当に凄いです。私は先生には驚かされっぱなしですよ。」
「ふぉっ?おぬしが言うか?ラウルに驚かされっぱなしなのは、わしだけじゃないじゃろうな。この世界がおぬしに驚いておるわ。」
「いやいや。私のはたまたま生まれつきですから、言ってみればまぐれみたいなもんですし。」
「生まれつきも立派な才能じゃぞ。」
「そんなもんでしょうか?」
「そうじゃ。」
先生が力強く首を縦に落として肯定する。でも俺は本当にまぐれだと思っている、前世の趣味がたまたまこちらの世界に来て能力になってしまった的な。
「とにかくこの魔石の実験はここまでじゃ。」
「は、はい。これはどうしたらよいでしょう。」
光る魔石粒を見て言う。
「ふむ。エミル君よ、精霊の加護によってこれを守らせることはできるかの?」
「できると思います。」
「なら、おそらく精霊に守らせるのが一番じゃ。」
「そうなんですか?」
「まあ相対的に考えての事じゃが、とりあえず山にある洞窟に祠をつくって、これを祀り精霊に守護させるのじゃ。」
「わかりました。」
先生が言っている意味はよく分からないが、聞いたところで分かりそうにも無かったのでとりあえず俺達は言う事を聞くことにした。魔石粒はただ静かに青い光を放ち続けるのだった。
そして俺は最後にアスモデウスと言うデモンを配下に加えた事、それに護衛されて飛んできたため魔人達が警戒したであろう事を話す。
「ラウル…。」
「なんでしょう?」
「いやもう何も言わん。」
「はい?」
「とにかく聖都へ行かなくてはいかんのじゃろ?」
「はい。」
俺達はブリーフィングルームを出て、各自の目的のために準備を始めるのだった。
しかし…デモンを使役したと言ったら全員ドン引きしていた。やっぱり配下になりたいと言われたときに断った方が良かったのだろうか?いや…あの場合は断る選択肢は無かった。
とにかくあいつを野放しにするわけにはいかないので、帰りもしっかり連れて帰る事にした。