軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第464話 大賢者VS 3人の日本人 ~モーリス視点~

ラウルが到着する少し前のことじゃった。

パタパタと魔人達が眠り始め、かわいいゴーグも疲れたのかスヤスヤと眠っておる。そのわきでは大男のミノスが今にも眠りそうになってうたた寝しておった。

「恩師様…。すみません…睡魔が襲ってきまして…。」

ラーズまでもが言いおった。

どうやらラーズも相当眠そうじゃが、ラーズはユークリット王都からこの方ずっと護衛してきてくれた魔人じゃった。こやつはとても頼もしく、ラウル曰く魔人で一番防御力が高いのじゃとか。こやつがわしよりも先に眠いなどと言うとはよっぽどの事じゃろう。

「ふむ拠点構築で疲れたのであろう。わしなら大丈夫じゃ!眠ればよかろう。」

「…このような睡魔に襲われるのは、ラウル様に何かが起きたのだと思います。」

「なんじゃ?」

「よく分かりません。」

ラウルに何かあったのであれば、こんな場所でのうのうとなどしておれん!

わしがそのように考えていると、向こうからギレザムがアナミスに肩を貸して歩いて来たのじゃった。

「ラーズ!まだ起きていろ!お前には恩師様を守る役目がある。」

「…分かっている…。」

「ふむ。何か異変がおきているらしいのう。」

「とにかくあたりを見てまいります。」

ギレザムがアナミスに肩を貸しながらあたりの様子を見にいくのじゃった。

「ラーズよ。わしなら大丈夫じゃと思うがのう。」

「…そういうわけにはまいりません。」

頑固なやつじゃ。

するとギレザムたちが助けたという、男どもがわしの元へと来おった。

「これはどういうことですかね?」

「わしにもわからん。」

「はあ。そうですか。」

そして男たちはあたりを見にいくと言って、ここを離れて行ったのじゃった。

ひと通り見回ったギレザム達がふらふらと戻ってきて、アナミスもだいぶ限界が来てるようじゃ。

「まだ日本人は寝たままのようですが…。」

「そうかそうか。あ奴らはいろいろと厄介じゃしのう。」

「はい。」

「…ギレザム…すまん。」

ラーズが限界が来たようで座り込んだまま寝てしもた。

「ラーズ!」

ギレザムが叫ぶが、わしがそれを制するのじゃった。

「よい、眠らせてやれ。」

「しかし。」

「わしなら大丈夫じゃ。」

「すみません。」

その時じゃった。

ズゥゥゥゥン

なにか巨大なものが落ちた音がするのじゃった。

「な!なんじゃ?」

「見てきます。恩師様はここに居てください。」

「う、うむ。」

ギレザムはわしにそう言うと、アナミスを連れて音のする方へと歩いて行ったのじゃった。

「これはどういう事じゃ?」

何かが落ちてきたようじゃが、ギレザムもアナミスも慌てておらなんだ。すると向こうの方から話し声が聞こえて来たのじゃった。その声を聞いてすぐにギレザムが誰と話しておるのかわかった。

「お前もくるかの?」

わしが声をかけると、わしの後ろに座っていた髭もじゃの盗賊風の男が立ち上がるのじゃった。この髭もじゃはファントムと同じ種族じゃと聞いておるが、ついこの前までラウルが中に入って動かしていたのじゃった。どうやってそのような事が出来るのかわからんのじゃが、魔人の研究をしていけばいつか解明するかもしれんのう。

わしは髭もじゃを引き連れて、ギレザムが話している方向へと行くのじゃった。ギレザムはラウルが着ていた鎧と話をしていたのじゃが、その相手の声は間違いなく聞き覚えのある声じゃった。

「ラウルかの?」

「はい…鎧を着たままですみません…。」

やはりラウルのようじゃ。

「問題ないのじゃ。それよりも魔人達がみな眠ってしもうたようじゃ。」

「すみません…進化が始まってしまったようでして…。」

「なんと!進化とな!このようなことになってしまうのか!?」

「そうなんです。私もそろそろ限界が…ですが日本人を捕えているので…慌ててここに…」

進化が始まったようじゃが、どうやらそのせいで魔人達が意識を失ったようじゃ。ラーズが言っていた、ラウルに何かあったというのはこのことじゃった。そして気を失いかけながらも、捕えた日本人の事を警戒してここに飛んできたらしい。

「これはいったい…どうしたことです?」

わしらの後ろからギレザムたちが助けたという、村の男たちがやって来たようじゃ。確かニホンジンのホウジョウマコとやらに操られていたという奴らじゃ。

ふむ。ラウルもあまり意識がまわっておらんようじゃのう。

「恐らく戦闘疲れでも出たのじゃろうな。」

「戦闘疲れ?」

怪訝そうな顔をしておる。そうじゃろうのう、不自然に魔人達がすべて寝てしもうた。じゃが万が一にホウジョウマコが目覚めた場合を考えると、本当の事を言う事は得策とは言えんのう。

「そうじゃな。じゃから気にせず皆さんも寝てくださったらええのじゃ。」

はよ、行け。

「だが…。」

まったく!ラウルが意識を繋ぎとめるのが大変じゃろ!おぬしたちは邪魔なのじゃ!

「とにかく大丈夫です。」

ラウルがきっぱりと強い調子で言いおった。こやつらにここにいてほしくないのじゃろう。

「わかった。」

不満なようじゃが、おぬしたちが疑問に思うたところで何もすることができんのじゃから、はよ行け。

「と、いうわけじゃな。ささ、眠りにつかれよ。」

じゃまじゃま!わしらが密談をする時間が無くなるじゃろ!いつまでここにおるのじゃ。

パタリ

ん?

はらぁっ!アナミス嬢ちゃんが倒れおった。

「アナ…」

ラウルが声をかけようとしておる。

パタリ

おほぉ?

ギレザムの奴めも倒れおった。

「おいおい!大丈夫なのか?」

男らが声をかけて来るのじゃった。

まったく面倒じゃの!おぬしらではどうにもならんと言うに!

「‥‥心配には…及びません…。」

ほら!ラウルも意識を繋ぎとめるのに必死じゃわ!はよ行かんかい!

「そんな!こんなところで倒れるなんて、放っておけるわけがないだろう。」

うむ。ダメじゃな。

「おい!おぬし!こやつらを連れて行くのじゃ!」

わしは髭もじゃにギレザムとアナミスを運ぶように命じるのじゃった。こやつはラウルが命じたように、わしの言う事をよく聞くのじゃ。さっさと運んでおくれ!

髭もじゃはギレザムとアナミスを連れてテントに行ったのじゃった。

「これでいいのじゃ。おぬしらも休めばよい。」

なんじゃ!その納得のいかんような顔は!どうせ役にはたたんのじゃ!わしはラウルと話をせねばならんのじゃ!

「ラウルよ。おぬしももう限界なのじゃろ?わしが何とかする、寝るがよい。」

「…先生…。」

ラウルは既に限界が来てるようなので、手短に伝えるとしよう。どうせこやつのことじゃから、わしの身の上を心配して眠りを堪えておるのじゃ。安心させてやることにしよう。

「心配するでない!わしがこの世界に来たばかりの、ひよっこどもに後れを取ると思うのかの?」

「…ですが…。」

まったく、優しい子じゃな。

「任せておれ。」

「…はい。」

それはそうとして、このようなところでラウルに何かあったらイオナに申し訳がたたん。何よりもわしがそれを許さん。

「この鎧は自動なのじゃろ?ならラウルは着たままにしておくがよい。魔人の大将がこんなところで何かあっては、皆にもうしわけがたたんでのう。」

このまま鎧に入っていてもらう事にしよう。いざとなったら鎧がラウルを連れて逃げるやもしれん。しかし…自動で動く鎧というのも不思議な物じゃな。これも研究させてもらいたいのう。

「たすけてー!私を助けたくなるはずよ!はやく助けてちょうだい!」

ホウジョウマコの声じゃった。捕えた日本人たちの居る方から叫び声が聞こえるようじゃ。どうやらニホンジンが起きてしもうたようじゃのう。寝たことでアナミス嬢の神通力が切れたのかもしれんの。

「…先生…男たちに…注意を…。」

ラウルが最後の気力を絞ってわしに伝えてくれた。おぬしがわしに託したのならば精一杯応えねばな。

「既に分かっておるわ。」

わしがそう伝えると、目の前の鎧は動かなくなってしもた。ラウルの意識も途絶えてしまったように感じる。

「ふむ…眠ったか。」

ザッザッザッ

さきほどとは違った足音を立てながら、4人の男たちが暗がりに立っておった。

「ふむ。操られてしもうておるようじゃのう。」

4人の男たちの目に精気のような物が感じられないようじゃ。じゃが動きはそれとは裏腹に、鬼神の如き踏み込みで近づいてくる。

「得物はもっておらんようじゃな。」

わしはすぐさま拳の到達するところに結界をはるのじゃった。

ガチッ

「ふぉっふぉっふぉ。そんな攻撃では破れんよ。」

男が放った拳を結界を張って防ぐのじゃった。魔力を無駄に使うことなく攻撃を受けた部分にだけ結界をはるのじゃが、これはなかなかコツがいる。

「大した事無いようじゃが…」

他の男が、下から足を蹴り上げて来たのじゃがそれも部分結界で防いだのじゃった。

それから急に4人で恐ろしいほどの足並みをそろえた動きを見せ始めたのじゃった。あらゆる角度から4人の攻撃が同時に襲い掛かってくるのじゃが、すべての攻撃をわしが部分結界により防いでいく。

「まあ防いでばかりではじり貧じゃの。」

わしは男どもに怪我をさせぬように、ある仕掛けを発生させることにしたのじゃった。

「怪我はさせんつもりじゃが、恨まんでくれよ。」

パシィッ

パシィッ

パシィッ

攻撃を仕掛けた瞬間3人の男が棒のようになって倒れた。わしは部分結界に一時的に水、風、光の混合魔法で麻痺効果を付与したのじゃった。もちろんわし独自の魔法じゃが、相手には関係のない話じゃろな。

「しばらく眠ってておくれ。」

残った最後の一人が、わしに突っかかろうとしたときじゃった。

「私をここからだしてぇー!」

ホウジョウマコの叫びが聞こえたのじゃった。鉄の塊の車の中に乗っているはずなのに、外に向けて大きな声が伝わってくるのじゃが、おそらくは何らかの魔法の一種なのじゃろう。

目の前の男が脱兎のごとく、車両の方に駆けだしてしもた。

わしが慌てて土魔法でつまづかせようとする。

タッ

タッ

わしがこさえた土の盛り上がりを全て超えてニホンジン達の待つ方へ行ってしもた。

「ふむ。動きは機敏なようじゃな。」

仕方ない追いかけるか、追いつくかのう…

「走るのは遅いのじゃがな。」

わしが言うと、ラウルの着ている鎧が急にわしを持ち上げて走り出したのじゃった。

「うほ!」

速いのじゃ!

凄まじい速さで男を追っていくが、男の方が一歩早く車にたどり着いたようじゃ。

ガパン!

男は車の扉を開けて中に入って行った。それを追うようにして、わしが鎧の腕からおりてその扉の近くに近寄った時じゃった。

中から凄まじい殺気と共に見えない斬撃が飛んできた。

スパッ

「うわぁ。」

わしは声をあげてしもた。もちろんわしが攻撃を受けたためじゃない…

わしの前にはわしを守るために髭もじゃが立っておったのじゃった。とっさに横から出てきて、わしをかばい車の中から出て来た斬撃をあびて腕がとれてしもた。

「どいておれ!」

わしが言うと髭もじゃはどけるのじゃった。余計な真似をせんとも、わしは今の攻撃を読んでおったのじゃ。結界で防げたものを…守ってくれた事は礼を言っておくのじゃ。

再び次の斬撃が飛ぶがわしは結界で防ぐのじゃった。防御のためにかなりの魔力を消費してしまったようじゃ。わしの魔法は相手の攻撃に合わせて魔力を消費し防御を行うのじゃが、ドッと魔力が減ったのが分かる。

「じじい!私のしもべになりなさい!」

じ、ジジイとはなにごとじゃ!まあジジイではあるが初対面のようなオナゴにジジイ呼ばわりされる覚えはないぞ!

「だまらっしゃい!派手な娘よ!」

「はあ?誰が派手よ!」

栗色の髪の毛の女が怒って叫ぶのじゃった。わしはそのまま車の扉を閉めようとしたが、中からまた見えない斬撃が飛んできたので避けざるを得なかった。

ドン

扉を押しのけて日本人の男が出てきおった。

「どうやら俺達は眠らされていたようだな。」

「そのまま眠っておればよいものを。」

「マコ!」

「わかった!おじいさん!私を守ってくれるわよね?」

ホウジョウマコから何らかの魔力を感じるが、児戯にも等しいその力ではわしをどうこうする事はできぬ。

「守ってやるとも、じゃからおとなしく眠っておれ。」

「えっ?」

後から出て来たホウジョウマコがポカンとした顔をするのじゃった。こやつはホウジョウマコじゃったな、そして栗毛がキチョウカナデ、男がナガセハルトじゃったか…

シュッ

わしが見てる前からナガセハルトが消えおった。わしが予測で攻撃をしてくる場所に結界を張ろうとした時じゃった。

バチコーンッ

ゴロゴロゴロゴロ

ナガセハルトが思いっきり転がって行ったのじゃった。

「なんじゃ?」

よく見ればラウルの鎧が神速で近寄って、ナガセハルトにビンタをくらわしたらしい。ピクピク言っておるようじゃが…大丈夫じゃろか?

「ハルト!」

キチョウカナデが叫びおった。

「逃げよう!」

ホウジョウマコが叫んで二人が走り出したのじゃった。

しかし同じ方向には走らなんだ。

「しくじったかのう。」

どちらかを逃がしてしまうかもと思っていた瞬間じゃった。

シュッ

ラウルの鎧が目の前から消えてしもた。どうやら、わしの目では追う事は敵わなんだ。

次の瞬間女二人を小脇にかかえた鎧が、わしの前にやってきて女をさし出して来たのじゃった。わしは土魔法を駆使して二人に手枷足枷をする。

「放せ!」

「ちくしょう、ボケジジイ!」

「お嬢ちゃん。品のある女性はそのような言葉は使わんのじゃよ。」

「うるせえ!」

「ほどけ!」

そして鎧は足と手を結ばれた女たちを車の中に放り込むのじゃった。すると車の中から、ホウジョウマコに操られていた男がひょこっと顔を出した。

パシィ

わしは麻痺魔法ですぐに眠らせるのじゃった。

すると‥

よろよろとナガセハルトが起きだしてこちらに向かって、構えをとっているようじゃ。

「どうやらまたあの見えない刃を放とうとしているようじゃな。」

わしが杖を構えて、ナガセハルトに攻撃を仕掛けようとした時じゃった。

シュッ

ラウルの鎧がナガセハルトの正面に瞬間で現れたのじゃった。

「まったく目で追えんわい。」

パアン

ゴロゴロゴロ

ナガセハルトは変な風に首の骨をまげて転がってしまったのじゃった。どうやら鎧の奴めが思いっきりビンタをはってしまったらしい。

「これこれ!そりゃやりすぎじゃて!」

わしは急いでナガセハルトに近寄り、魔人からもらっておったエリクサーを振りかけた。するとすぐさま首が元通りに戻り息を吹き返したのじゃった。

「殺してはならんぞ!」

わしが鎧を叱ると、鎧はわしにぺこりと頭を下げるのじゃった。

わしは直ぐにナガセハルトに麻痺魔法をかけ、手足に土魔法で枷を施すのだった。

「しかし、おぬしは自動で動く鎧の範疇を越えておるようじゃな。魔人の中でもかなりの強さになってしまうのではなかろか?」

鎧に話しかけてみるが、顔の前で手を振っている。

おそらくまだまだだと言いたいのじゃろう。

「とにかく麻痺魔法をかけた者は、2日はまともに動けんじゃろ。しかしこやつらは恐ろしいほどの魔力量じゃな、防ぐのに魔力の半分も持っていかれたわい。」

ニホンジンの魔力量は、まるでラウルのように底が見えないのじゃった。どうやら向こうの世界から来た者達は、この世界ではこのようになってしまうらしいのう。

「まあ一度受けた斬撃は既に解析させてもろうたのじゃ。次はわしの魔力を半分も持っていけると思うでないわ。」

気を失っているナガセハルトに言う。

いずれにせよ、わしと鎧は、魔人達に一つの傷をつけることもなくニホンジンを制圧する事ができたのじゃった。