軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第461話 秘密の出口へ

秘密通路の出口が森の中にないかカララに調べさせたが、いくら探してもそれらしきものはどこにもなかった。

「うーん。ユークリット王都の秘密の書庫は裏庭の森の地面にあったんだけどなぁ。」

簡単には見つからないと思ってはいたが、目論見が外れてしまい俺達は次にやる事を考えていた。そもそも本当にそんな物があるのだろうか?

「ラウル様。そもそもケイシーがこの森の中を踏破できないかもしれません。」

カーライルが言う。

確かに…

それ…早く言ってよ。

あいつが生きて魔獣の居る森を踏破できるわけがない。ファングラビットやスライムにですらやられてしまいそうだ。

「ケイシー神父の出来る範囲で考えるのが重要だった。」

「はい…。」

ケイシー神父が無事に抜けて、なんとかフラスリアに辿り着くには普通に街道を進むしかない。そう考えると西には兵士の拠点やデモンに占領された都市があるため危険だった。

《安全に移動出来たとすれば北か…15キロほど北には村があったはずだ。だが15キロものトンネルを作る技術はこの世界には無いだろう。とすれば出口は聖都の北側の草原地帯か?》

「ちょっと俺とカララが行って探して来よう。俺ならなんとなくケイシー神父の動きがわかりそうだし。」

「わかりました。」

俺があたりをつけて、カララの糸で探ればすぐ見つけられると楽観的に考えてみる。

「んじゃちょっと行ってくる。みんなは休んでいてくれ。」

「ご主人様。私奴もまいります。」

「いや、シャーミリアは稼働しっぱなしだ。少しは休め。」

「いえ、私奴に休みなど不要です。ご主人様のほうが働き詰めです。」

「それがさ…このヴァルキリーを着てると、全くと言っていいほど疲労しないんだ。シャーミリアとマキーナはずっと動いていたし、みんなに俺たちがやった聖都の戦闘の詳細を伝えておいて欲しいんだ。」

俺の補佐を献身的にしてもらうのはありがたいが、他の面子とのコミュニケーションも大事だと考える。それに本当に分体のヴァルキリーを着ていると疲れが出ない、それどころか睡眠も必要としないようだった。

「そうよシャーミリア。ラウル様の偉業を伝えるのも立派なお仕事だわ。」

マリアが言う。

「そうですね。私も帰ったら叔母さまに伝えてあげなきゃならないし。」

マリアとカトリーヌが俺の意図を組んで、シャーミリアに声をかけてくれたようだ。

「カトリーヌ様…。」

「そういう事だミリア。よろしく頼む。」

「そうですね、私奴はラウル様の秘書ですから、当然皆様にお伝えする義務がございます。」

シャーミリアがきりりと胸を張って言う。

「じゃよろ!」

「は!」

そして俺は再びヴァルキリーを着た。

「オージェ!グレースがゴーレムのセットを終えたら無線で教えてくれ。」

「了解だ。」

すぐにヴァルキリーを着た俺は、カララを連れて飛ぶためにガシリとカララを抱きしめた。するとカトリーヌやマリア、シャーミリアが一斉にこっちにふりむいた。その目にはなんらかの感情が込められているようだが俺にはよくわからない。

ああ…俺達が心配なんだな…

「心配するな!俺たちは危険なマネはしない。」

俺が言うとみんなが微妙な表情になる。

なんで?

ああわかった!作戦のほうね!

「ん?えっと、必ず見つけてくるから安心しろ!」

なんか呆れた表情をされる。

なんでよ!今の答えで当たりだろ!出口を見つけられるかどうか心配なんだろ?

あーわかった。

「ああ!」

皆がこっちを向く。

「ケイシー神父とは一緒に旅をしたからな!あいつの出来る範囲はわかってるつもりだ。」

はあ〜

っと、皆がため息をついた。

ちがう?なんなんだ?

「ラウル様。私は糸で鎧に体を固定させていただきます。」

腕の中にいたカララがそう言うと、抱きしめていた俺の腕から抜け、スルスルと糸を出してヴァルキリーに体を固定し始めた。

「ん?なるほど!その方が危なくないよな!」

「ま、まあ…そうですね。」

カララが答えた。

するとカトリーヌとマリアとシャーミリアの視線がいつも通りになった。

なーんだ。みんなカララの身の安全を懸念してたのね。優しい奴らだな。

「じゃあ行ってくる。」

バシュー

あっという間に上空にあがり聖都の北側へと飛んだ。いつの間にか太陽はだいぶ傾いてオレンジ色に輝いていた。

「もうすぐ夜か。」

「はい。」

「だけど敵は人間じゃないから、有利も不利も無いな。」

「そうですね。むしろ敵に有利に働く場合もあります。」

「こっちには人間がいるからな。」

「こちらが戦う場合はラウル様の暗視ゴーグルで対応可能かと思いますが、敵からすれば気温が落ちた時、必然的に体温が高い者の位置が分かりやすくなるかと思います。」

「となると、マリアとカーライルとオンジか。」

「オージェ様とトライトン様も。」

カトリーヌはルフラを纏っているために、外から見ればかなり体温は低いだろう。

「まあ、あらかた敵は殲滅したと思うんだがな。攻撃される事は無いはずだ。」

「はい。」

聖都の北側に着いて上空から大地を見渡す。大地には草原が広がり一面に隠れそうな所も建物も無かった。

しばらく飛び回っているうちにある場所を見つけた。

「川だな。」

「はい。」

俺達が聖都まで行動している時に通って来た河川が見える。俺はふとある事に気が付くのだった。

「橋あったよな。」

「我々は通っておりませんが、確かにございました。」

来た時は街道を逸れて走って来たため、橋の無いところにカララが糸で橋を通してくれたのだった。その時に数百メートル川下に橋が架かっていたのを思い出した。

「ケイシー神父の動向を関係なくしても、橋などの建造物なら逃走する出口を隠しやすいんじゃないか?」

「向かいましょう。」

「だな。」

そして俺達は川に沿って川下に向かって進んでいく。

「橋です。」

「見つけたか?」

遠距離を見渡す場合、双眼鏡が無いと俺はそこまで遠方まで見る事は出来ない。しかしカララやシャーミリアはかなりの距離を見通す事が出来るのだった。

まさに千里眼というやつだ。

カララが指をさすほうに飛ぶと確かに橋が見えて来た。

ドン!

橋の側に着陸すると、カララがするりと糸を解いて俺から離れた。

「あるかな?」

橋は石造りの頑丈で立派な物だった。欄干にはファートリアの紋章のような物が彫り込まれている。カララの糸で橋の表面の石を調べてもらう。

「ラウル様。表面には特に仕掛けはございません。」

「下に降りるか。」

「はい。」

俺達は橋の下にまわってみる。カララが橋の下を念入りに調べていく。

「ここです。」

カララが橋の下で、石の壁になっているところに手を当てて言う。

「当たりだな。」

そしてカララが手を触れている部分を探ってみると、手をひっかけられるような窪みがあった。俺はその石を押してみる。

「くっ。」

びくともしなかった。

今度は逆に引っ張ってみた。

「ぐぐぐぐぐ。」

顔を真っ赤にして引っ張るが、その石はびくともしなかった。

「これ…なんか仕掛けがある?」

「では私が。」

カララが石の窪みに手を入れて、横にずらした。

ガラガラガラ

開いた…

引き戸だった。

往年のお笑い番組のようなボケをかましてしまった。仕掛けなんてあるわけがない…ケイシー神父でも開ける事が出来るなら、簡単に開いて当然だ。

てへぺろ。

岩の引き戸を開けてみると中には地下に続く階段があった。しかし暗くて奥が良く見えない。

「どうなってるんだろうな?」

「調べます。」

カララが肉眼では見えない糸をさらさらと、階段の下へと流し込んでいく。俺は何もすることがないので、とりあえずあたりを警戒しておくことにした。

待つ事、十数分。

「ラウル様…。」

「どうした?」

「私達も地上からは確認できなかったのですが…。」

「なにかあったか?」

「地下はデモンの巣窟です。かなりの数のデモンが潜んでいるようです。」

あらら、1匹見つけたら100匹いると思って間違いないようだな。

「危険だったな。地上からは分からなかったか?」

「恐らくですが、元々聖都の地下には結界のような物が張り巡らされているようで、それを逆手にとって隠れ潜んでいるように思えます。」

「なるほどな。ここを見つけて良かったよ。」

「はい。」

ガラガラガラガラ

俺は一度、岩戸を閉じてすぐにオージェに無線を繋いだ。

「オージェ。」

「どうした?」

「バッドニュースだ。地下はデモンの巣窟だった。恐らく地上の敵を掃討して安心した俺達を引き込む予定だったんだろう。」

「まったく…罠だらけだな。」

「どう仕掛けるか…」

「まて。グレースがコマンドを終えて戻って来た。」

「ラウルさん。」

「グレース!どうだ?」

「ゴーレムのコマンドは設定完了です。」

「そうか。ただしどうすべきか要検討だ。地下にはデモンがうじゃうじゃいるようだ。」

「はあ…まったく、1匹みつけたらなんとやらですね。」

「まったくだ。」

俺はどうすべきかを考える。せっかく見つけた秘密通路の出口をどうにか利用できないか。

そして結論を見つけた。

「みんな聞いているかな?」

「ああ。」

「そこにいる全員は、聖都から距離をとるように北東に進んでくれ。シャーミリアとオージェとファントムがマリアとカーライルとオンジを運んで、マキーナがグレースを、カトリーヌはルフラを着て走るように。トライトンはセイラをサポートしてやってくれ。山岳地帯を登って隠れられる場所に待機してくれ。」

「「了解。」」

「「はい。」」

「「かしこまりました。」」

「足手まといになってすみません。」

「我もすみません。」

「カーライルもオンジさんも足手まといなんかじゃないですよ。おかげでかなり有利に戦いを進める事が出来てます。」

「はい。」

「ありがとうございます。」

二人の身体能力は人間にしてみればバケモノクラスなのだが、本物のバケモノの中ではやはり人間は非力だった。それを気にしているようだが、本当にこの二人のおかげでこの作戦は助かっている。引け目を感じる必要はない。

「ラウル達はどうするんだ。」

「燻り出してやる。」

「何か考えがあるんだな。」

「大丈夫だ危険は冒さない。グレースはそこに出した兵器もゴーレムも全て収納庫にしまって痕跡を残さないでくれ。」

「わかりました。」

「すぐに取り掛かろう。」

「はい。」

指示を出して俺は無線を切る。

「さてと、あいつらは燻り出されたデモンに巻き込まれないように逃がした。」

「なにかお考えがあるのですね。」

「なんとなくそんなこともあろうかと、お前に来てもらったんだよカララ。」

「‥‥なんとなく何をやるのか分かってきました。」

カララがくすりと笑って俺に微笑みかける。この世の者とは思えない美貌が、ヴァイオレットのセミロングヘア―を揺らして笑っている。どうやらこの状況を楽しんでいるようだった。

「ラウル様とお二人。私精一杯頑張りたいと思います。」

「糸は制限あるの?」

「いいえ。この国中に這わせても余るほどでございます。」

「それを聞いて安心した。」

「むしろ、魔力の続く限り出す事が出来ますので、ラウル様の魔力を注いでいただけるのなら大陸中に伸ばせるのではないでしょうか?」

「ははは、そんなにいらないよ。」

「冗談です。」

「よし、やるかぁ!」

「はい!」

ガラガラガラガラ

俺達は再び秘密の出口の扉を開くのだった。

「どうやらここは聖都に張り巡らされた結界の盲点のようだな。」

「そのようですね。」

カララはニッコリと微笑むのだった。

あまりの美しさにクラクラ来る。

カララは俺から指示された事をゆっくりと正確に始めるのだった。