軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第453話 最終拠点攻略準備

聖都では相変わらず魔獣を駆る騎士たちが巡回をし、交代で翼竜が飛び回り警戒態勢を解いていなかった。西側では陽動のつもりでかなりドンパチをやったつもりだが、聖都の守りは堅いままのようだ。ここにはなんらかの守らなければならないものがあるらしい。

「魔獣をきちんと休ませるように交代させているんだな。」

「そのようです。」

俺はマキーナと共に木の上から聖都を監視していた。敵には稼働している魔獣と休ませている魔獣がいるようで、ちょうど交代するところを確認する事が出来た。敵の戦力的には人間の兵士と魔獣だけが見えるが、ほかにデモンがいないとも限らない。

「大聖堂で何か演説をするわけでもないですし、特別変わった動きが見られないことが、かえって不気味です。」

ずっと監視しているマキーナが言う。

「だな。なんだろうな、西であれだけ派手に戦闘をしているんだから、何らかの動きがあってもいいと思うんだが。」

「私が見落としているのでしょうか?」

「見落としているわけではないだろうが、もしかしたら着眼点が違う可能性はあるな。だけどマリアも何も見つける事は出来ていないんだよな?」

「はい。」

「それなら見張りを変えてみるか。」

「お役に立てず申し訳ございません。」

「マキーナが謝る事はない、人が変われば何か気づく事もある。」

「は!」

「とりあえず監視を続けてくれ。」

「わかりました。」

俺はマキーナにそう伝えると、木の上の監視場を降りる。

「カティ、オージェとグレースは?」

「お二人でゴーレムの…ぷろぐらむ?ということをやりに行くと言って恐らく麓へ。」

「わかった。」

《カララ、オージェ達はどっちかな?》

《私が銃を上げた方向にお向かい下さい。》

カララは糸で銃を鎌首のように持ち上げて俺を導いてくれた。銃が浮かび上がり隠れ、また銃が浮かび上がり隠れしながら俺を導いてくれる。しばらく行くとゴーレムの脇に立ったオージェとグレース、カーライルとオンジがいた。

「お疲れ。」

「おう、ラウル。」

「ゴーレムで、なにしてんの?」

「グレースが考えたゴーレムのコマンドだがな、これは凄いぞ。」

「どんな感じ?」

「かなりの数のコマンドを覚え込ませたが、かなり自分の判断で動けるようになっていると思う。」

「カーライルとオンジさんはなにを?」

「はい、私たちが剣術をゴーレムに教えておりました。」

「剣術を?」

「はい。」

どうやら4人がかりでゴーレムを指導していたようだ。

「どんな感じなの?」

「まるで綿が水を吸収するかの如く覚えます。」

「そりゃすげえな。」

ゴーレムは何事も無いようにそこに佇んでいる。見た感じ俺達が操っていたゴーレムと何ら違いは無さそうだが。

「ラウルさん。コレ、もしかしたらこの作戦でかなり有効に使えるかもしれません。」

「マジ?」

「ええ、実はラウルさんとシャーミリアさんのやったあの方法を参考に考えてみたんです。」

俺とシャーミリアがやった事って言ったら、盗賊の泥棒髭と河童をハイグールにして操った事。

えっ

ってことは。

「オージェに言った?カーライルにも?」

「ああ、ラウルさん大丈夫ですよ。」

「ラウル、いまさら何があっても驚かねえよ。そしてこれは戦争だ、綺麗ごとなんて今更ないよ。」

「私もです。祖国を取り戻すのに人道的も何もない、手段は選びません。」

「なるほど、少し気にしてたんだ。そう言う事なら隠さず言うよ。」

「そうしてくれ。」

「そうしてください。」

まあ…いまさらか。俺の方が勝手に気を使っていただけだな。

「トライトンは?」

「俺達がゴーレムにいろいろと仕込む間、カララさんと一緒に哨戒行動をしている。」

「なるほど。」

どうやら俺が向こうで戦闘している間、彼らは彼らなりにいろいろと考えてやっていたらしい。

「それでラウルさん。」

「ああ。」

「偵察ドローンのカメラと、ゴーレムにつけるヘッドセットを召喚してほしいんです。」

「わかった。」

俺はグレースに言われるままに、偵察ドローンと操作キットとヘッドセットを召喚した。

「はい。」

それをオージェとグレースがいそいそとゴーレムに取り付け始める。どうやら取り付けやすいように削ったりしていたらしい。

「オッケーです。」

そしておもむろにグレースがマイクに向かって指示を出す。するとゴーレムがその指示に従って動き出した。

「おおおおお!すげえ!」

「超高性能AI搭載の人型ドローンです。」

「これは…使える。」

「ラウルさんに言ってもらえると嬉しいです。」

「かなりの戦術パターンを、俺とカーライルとオンジさんで教え込んだ。かなりの動きが出来るはずだ。」

「わかった。」

そして俺は腕時計をチェックする。

「定刻通りあと4時間後に作戦を開始しよう。」

「それについて俺達に考えがある。」

「どんな?」

「このゴーレムにミニガンを装備させて俺が聖都の中心に投げ込む。」

「投げる?ゴーレムを?」

「ああ。」

「届くのか?」

「余裕だ。」

龍神舐めてた。

こんなバカでっかい何トンあるか分からないゴーレムを、十数キロ先の聖都中心に投げるとか…アホみたい。

「そんなことができるなら…。オージェには俺からも頼みがある。」

「なんだ?」

「M777 155㎜榴弾砲を担いで攻撃してくれるか?」

「ああ。」

「総重量4トンくらいあるけど。」

「まかせろ。」

そして俺はグレースの方を向いて言う。

「そしてグレース、後50体ほどゴーレムを出してくれ。」

「いいですけど、それにコマンドを入れるのは時間がかかりますよ?」

「入れなくていい。先にオージェがプレーンゴーレムをジャンジャン投げてくれ。そしてせっかくコマンドを入れたゴーレムは最後に投げ入れよう。」

「ああそういうわけですね。」

「そういうことだ。」

「わかりました。」

それならかなりの騒ぎを起こせるぞ。敵も何らかの動きを取ってくるはずだ。

「じゃあ作戦1時間前にまた戻る。二人は準備をしていてくれ。」

「「了解」」

「では、カーライルとオンジさんは私について来てください。」

「はい。」

「はい。」

「では。」

俺がカーライルとオンジを連れて監視台のある木の根元に戻ると、ちょうどシャーミリアが意識をこちらに戻したようだった。

「ご主人様。ハイグールの修繕を終えました。」

「悪いね。あの作業だけは俺、無理みたいでさ。」

「いえ!ご主人様の不得意な事は私奴が全てやりますので。」

「頼むぞ。それじゃあ皆にも作戦の詳細を伝える。」

「はい。」

「カティとルフラも聞いてくれ。」

「はい!」

《カララ!セイラ!戻ってくれ!》

《は!》

《はい!》

そして俺は木の根元で寝ているマリアをそっと起こした。

「ラウル様…。」

「寝てるところ悪い。」

「いえ。」

「これから4時間後に作戦を決行する。これから3時間シャーミリアとマキーナが全員の護衛をしてくれ。監視はカララが頼む。マリアとカトリーヌ、カーライルとオンジさんはテントで寝てください。3時間程度だが申し訳ない。セイラ!みんなを深い眠りにつかせてくれ。3時間後に起こす。」

「わかりました。」

「一番最初の攻撃、それは計画通りマリアが行う。」

「はい。」

「そしてカーライル…すまんが、聖都には無差別攻撃する事になる。」

「致し方ございません。」

「作戦は当初の通り決行する。」

「「「「「はい!」」」」」

「では俺は一度中央のギレザム隊の所に戻る。」

「お気をつけて。」

カトリーヌが言う。

「大丈夫、向こうで死んでも俺が死ぬわけじゃないから。」

「は、はい。」

「では3時間後。」

「「「「「「は!」」」」」

《ヴァルキリー入れてくれ。》

《は!我が主。》

そして俺は再びヴァルキリーを着こんで、ふたたび泥棒髭にリンクするのだった。

リンクするとギレザム隊は指示通り進軍中だった。車両部隊は全て北へ向かって走っている。

「ギル!」

「は!ラウル様。」

「何か変化はあるか?」

「追撃も無いようです。順調に北へと進んでおります。あと1時間もすれば北の街道に出るはずですが。」

「わかった。アナミスは?」

「後ろの車両に。」

「了解。」

俺の操る泥棒髭はそのまま後部ハッチに歩いて行き、走行中にもかかわらず開く。

ガチャ

そのまま飛び降りて地面を転がる。

もうこいつを丁寧に使う気は毛頭ない。

「よいしょ。」

そして俺は後ろから走って来た車両の後部へと走り、ハッチを開いて乗り込んだ。

「アナミス。」

「ラウル様!」

「一緒に日本人たちの車に行ってくれ。」

「かしこまりました。後ろの車に乗っております。今はミノスが見張っております。」

「了解だ。」

そして俺はまた走っている車から飛び降り、アナミスは飛んで後方の車へと向かって行く。そのまま後部ハッチを開けるとミノスとオーガ一般兵2人がいた。車両の床には縛られたままの日本人3人が横たわっている。アナミスの催眠のおかげで深く眠り込んでいる。

「ラウル様、どうされました?」

「こいつらに尋問する。」

「了解です。」

「アナミス!」

「は!」

アナミスが日本人たちの元へと言って耳元で何かをささやいた。

「3人を支えて起こしてくれ。」

ミノスとオーガ2人が3人を支えて座らせた。

「お前たちに聞きたいことがある。」

「はい。」

「はい。」

「はい。」

ホウジョウマコと茶髪の女とナガセハルトが、従順に返事をしてきた。

「お前たちは6人召喚されたって言ったな? 」

「はい。」

「はい。」

「はい。」

「まず全員の名前を教えろ。」

「ホウジョウマコ」

「ナガセハルト」

「キチョウカナデ」

「そうか。死んだ拳法家は?」

するとナガセハルトが答えた。

「アラカワリョウジ」

「魔法使いは?」

「イショウキリヤ」

なるほどそれで5人。

「もう一人は?」

「エドハイラ」

キチョウナカデが言う。

「そいつはどこにいる。」

「‥‥‥。」

「‥‥‥。」

「‥‥‥。」

3人とも黙ってしまう。

「分からないのか?」

コクコクと3人が頷いた。まあアナミスが操っている状態では嘘は言っていない。

「そいつの能力は?」

「‥‥‥。」

「‥‥‥。」

「‥‥‥。」

やはり黙ってしまった。エドハイラとやらはこいつらとは別行動だったのだろうか?そして今どこにいるのか?

「お前たちの他に人が召喚出来ている可能性は?」

「‥‥‥。」

「‥‥‥。」

「‥‥‥。」

やはりわからないか。とにかく1人の行方が分からない、魔法使いはギレザムの部隊を途中まで追って来ていたが、撃退されて退却していった。好きな女を置いて逃げてしまうとは…まあ平和な日本男児には無理かな。

そして俺は戦闘糧食の炊き込みご飯缶詰とスプーンを出してやる。

「食え。」

しかし3人は呆然としていた。

「アナミス。食わせろ。」

「は!」

アナミスが操って3人が缶詰を開けて食べ始めた。操られているとはいえ、味付きの炊き込みご飯の感覚は覚えていたのだろう。ガツガツと勢いよく食べ始めた。

よほど腹が減っていたと見える。

こいつらの話から考えても、日本人の最後の1人は聖都にいる可能性がある…か。

「そいつは自分の不運を呪うしかないだろうな。さすがにそこまでは面倒見切れない。」

俺はガツガツと缶詰を食う日本人を見ながら憐れみを感じるのだった。平和に日本で暮らしていればこんなことに巻き込まれる事も無かったろうに…

カラになった缶詰をまだほじくっていたので、新しい赤飯の缶詰とたくあんをだしてやった。次に出て来たそれをうまそうに食う3人を見ていると、ふつふつと敵に対する怒りがこみあげてくるのだった。

「関係ない奴をドンドン巻き込みやがって…。」

俺は喉がつかえないようにペットボトルの水を召喚して3人に渡す。どうやら操られていてもペットボトルの開け方は覚えていたようだ。蓋を開けて飲み始めるのだった。