軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第452話 大賢者の魔法

敵の追撃を退け、ギレザム隊とラーズの車両部隊が合流することができた。

ダークエルフ達が狙撃で敵の騎士を大量に仕留めてくれたので、泥棒髭を修繕するだけの養分を確保する事も出来た。先生との話が終わったら、養分を使っての泥棒髭の修繕をシャーミリアに頼む予定だ。

「ラウル様、ドラゴンの素材や魔石を回収しますか?」

ギレザムが話しかける。

「ああギルそうしてくれ。」

「バルムス達が喜ぶでしょうな。」

「はは…ほんとだ。」

バルムスやデイジーが嬉々として喜んでいる姿を想像すると、ミーシャに対しての悪影響が出ないか懸念してしまうのだった。

「ラウルよ。なんでまた 泥棒髭(そんなもの) なんぞに入り込んでおるのじゃ?」

「まあいろいろとありまして、これはシャーミリアの術なんです。」

「またおかしな術を使うものじゃな。」

「はは、私もそう思います。」

魔人達が草原に横たわるドラゴンを解体している間に、俺はモーリス先生と話をしていた。

「それ…、わしでも入れるものなのかな?」

でたー!モーリス先生のバケモノ好奇心。

「いやあ、これは私が元始の魔人だからなせる技らしいです。」

「なーんじゃつまらんのう。」

「それほどいいものでもないですよ。」

「そうなんじゃな?」

「滅茶苦茶、具合が悪くなります。私もいろいろとあってゲーゲー吐いちゃいましたし。」

「うーむ。それなら遠慮しとこうかのう。」

「正解だと思います。」

魔人軍が周りでいろいろと忙しく作業をしながら右往左往している。負傷者たちはおおむねエリクサーにより回復し、草原に横たわりながら体力を戻すようにしていた。俺と先生はそれをよそに、二人で戦闘車両のハッチを開いて座して話をしていた。

「それにしてもドラゴンとはのう。」

「ええ、かなり苦戦してたんですよ。ですが155㎜榴弾数発で落ちましたね。」

「ラウルの大砲か。あれが効かない奴なんているのかのう?」

「カースドラゴンは直ぐに修復してしまってダメでした。」

「恐ろしいのう。」

モーリス先生がしみじみと言う。

「私は先生の戦いの方が驚きましたよ。」

「ん?そうかの?」

「敵に弾丸が通りました。私たちが散々やって近接からの射撃でやっと効いたんです。」

「結界を解除しただけじゃよ。」

「あ、もしかして王都の書庫でやったあれですか?」

「まあそうじゃな。じゃがあれはラウルの魔力が無いと解除できないくらい複雑じゃったが、昨日今日魔法を覚えたやつの結界の解除なぞ、赤子の手をひねるより優しいことじゃ。」

やっぱ俺の先生は凄いわ。あれを簡単に解除しちゃうんだ、すげえなあ…。

「さすがです。」

「ふぉっふぉっふぉっ!ラウルがいた世界ではどうだったかわからんがの、魔法とは単発で使うのは簡単、広範囲ではさらに難易度が増して、解析して反転させるのがもっと難しいのじゃ。」

「あの、先生。私たちが居た世界には魔法なんてありませんよ。」

「ああ、そうじゃったのう。」

「魔法とは複雑なものなんですね。」

「書庫の結界のように、かなり難解に重ね掛けして更に解読が必要なものに比べれば、戦闘などで使う簡易な結界はそれほど難解ではない。魔法は使う者の魔力に左右されるがの、それを解くのはわしにとって容易な事じゃよ。おそらく弾丸を弾いたのは、日本人の魔法使いの魔力が強いのじゃろ。」

「私は先生の授業は途中までしか受けてませんから、そこまでは知りませんでした。」

「ふぉっふぉっふぉっ!宮廷魔術師くらいにしか教えとらんよ。こんなこと。」

「そうでしたか。」

ふとモーリス先生が悲しそうな顔をした。

「すみません、悲しい思い出を。」

「いいのじゃ。あやつらも全力を出して負けたとあればあきらめもつくであろう。」

あやつらと言うのはモーリス先生の弟子たちの事だ。手塩にかけて育てた魔術師たちは、全てファートリアバルギウスの軍勢に皆殺しにされている。

「残念です。」

「サイナスのジジイがユークリット王都に墓地を広げてくれての、そこで魂を弔ってくれたわい。あやつには多少感謝せねばな。」

「枢機卿が。」

「ふむ。」

モーリス先生が少し遠い目をしつつ言う。

「先生。もう一ついいですか?」

「なんじゃ?」

「敵はもっと危険な魔法を使っていました。土魔法だと思うのですが、地面から槍を突き出してきたんです。」

「土槍じゃのう。」

「その土槍は先生とゴーグが走り回っている時には出ませんでした。」

「もちろんそれも魔法が発動する前に解除しとるよ。」

「魔法解除…。」

「いいじゃろー?わし以外に使える奴は知らんぞ。」

「えっ?先生特有の魔法なんですか?」

「うーん。長い時間をかけて解析して解く事は何人か出来る者もおった。だが瞬時解析と解除となるとなかなか難しいものなんじゃよ。」

「御見それいたしました。」

「言うても、それほど大したことはない。魔法の真理を覗いたものならば使えると思う。」

「魔法の真理?」

「まあ無理に覗かん方がええ。普通なら気がおかしくなる。」

「先生は大丈夫だったんですか?」

「どうじゃろうな。ラウルはわしが普通じゃと思うか?」

えっ?どうだろう?老人なのに好奇心旺盛だし、空飛ぶの好きだし普通じゃないと言ったら普通じゃないよな。何と答えよう。

「…普通です。」

「…なんじゃ?今の間は?」

「はは、すみません。先生を普通と言ってしまったら、世の賢人たちは凡人以下になってしまいます。」

「わしゃ褒められとるのか?」

「褒めてます。」

「そうかそうか。」

目を細めて俺を見つめるが、泥棒髭を見たとたんに気持ち悪そうな顔をする。

「先生…いま気持ち悪いと思いましたよね?」

「お前も鋭くなってきたのう。」

「ふふっ。」

「はーはっはっはっはっはっ!!!」

「はははははは!」

先生と俺が大笑いすると周りの魔人達がキョトンとこちらを見る。

「しかし先生のおかげで同郷の人間を殺さずに捕えることができました。」

「ふむ。だがあやつらをどうするつもりじゃ?」

「決めかねています。元の世界に戻してやる方法も知らないですし、このまま我々魔人の囚人として生きるか、一般市民になるのか。」

「一般市民か…。」

「野放しにするのは危険ですよね?」

「そうじゃな。」

「迷います。」

「ふむ。」

そんな話をしていると丁度アナミスがやってくる。

「ラウル様。あやつらはどうなさいますか?」

「ドラン隊と合流するまで眠らせろ。」

「かしこまりました。ですが何か食べさせねば衰弱死します。」

「あ…そりゃダメだ。たまに起こして俺達と同じものを食わせろ。」

「かしこまりました。」

そしてアナミスは日本人たちを収監している魔人達の元へと歩き去って行った。

「悩みは尽きぬな。」

「はあ…でも案外適当にやってますよ。」

「それがええ。思い込みすぎては良い案も浮かばぬ。わしも気楽にやって丁度良い。」

「はい!」

なんか先生に言われるとホッとする。おかげでこれからの方向性も少し見えてきそうな気がしてくる。

「ラウルさまー!」

「おう!ゴーグ!凄い活躍だったな!」

「いや、あれは恩師様が。」

「ふぉっふぉっふぉっ!ゴーグちゃんの手伝いあっての作戦じゃ!これからもよろしく頼むぞい!」

「うん!」

あらら…すっかり、おじいちゃんと孫じゃん。なんか目に入れても痛くないよーオーラが漂っているんだけど。ゴーグは部隊がもってきていた戦闘迷彩服に着替えていた。一度狼化したので裸同然だったのだが、ぶかぶかの迷彩服とぶかぶかのヘルメットをかぶっている。

たしかにかわいい。

「ラウル様!そろそろ回収作業は終わりです!」

ミノスが向こうで手を振っていた。

見ればドラゴンは全て分解され、肉やウロコや皮骨がそれぞれにまとめられており、木で作ったソリに分けて乗せられている。魔石も取り分けられているようでソリに乗せられているがだいぶデカい。それぞれみんなでテントをかけているところだった。

「ふぉっ!それじゃあ、わしの出番かの?」

「出番ですか?」

「凍らせねば腐るぞ。」

「ああそう言う事でしたか。」

そう言えばそうだ、グレースが居れば全て収納袋に保存できるのだが、ここにグレースはいない。そのため凍らせて運ぶ必要があるのだった。

モーリス先生についてそれぞれの部位の所に行く。すると杖をかざして氷魔法をかけていくのだった。すべてを凍らせて先生が言う。

「あとはわしが魔力を時おり注げばずっと凍っているから。使う分だけ都度溶かせばよい。」

「ありがとうございます。」

俺が礼をすると、いつのまにか横にいたギレザムとミノスとラーズとルピアが一緒に先生に頭を下げた。

「かしこまらんでよい。」

先生は照れたように笑う。

「では出発します。また狭い車両での移動ですが、我慢なさってください。」

「いやラウル!戦闘車両はむしろ楽しいぞい!たまに天板を開けて覗いたりしての!中で飯を食う事も出来るし快適じゃ。」

「そう言っていただけると何よりです。」

「これこそ神の力よの。」

「いえ先生、私の趣味の力です。」

「ふぉっふぉっふぉっ!なんでもええ。」

「では先生!私はこの体を離れます。一旦シャーミリアに任せて補強してもらうつもりですが、補強している所は‥‥見ない方が良いかと。」

するとモーリス先生が青ざめた。

「ファントムのあれと同じじゃろ?」

「そう言う事です。」

「頼まれんでも見ん。」

「賢明です。」

「ギレザム、俺は一旦コイツから離れる。シャーミリアに任せて泥棒髭を補強したのち、北に向かって出発してくれ!」

「かしこまりました。」

「では!先生!また!」

「ふむ。」

スッ

俺は泥棒髭から意識を離した。

《我が主、おかえりなさいませ。》

《ああヴァルキリー変化はあったか?》

《こちらに動きはございません。》

《わかった。出してくれ。》

《はい!》

ガシャン

俺はヴァルキリーから外に出る。するとヴァルキリーの脇には既にシャーミリアがうつろな目をして座っていた。それを守るようにルフラに包まれたカトリーヌがいた。

「カティ、お疲れ様。」

「いえ、私は疲れてなどおりません。」

「交代で寝れているか?」

「まあ、眠りは浅いですがきちんと眠っております。」

「まもなく作戦行動に移る。それまで少し休んでいてくれるか?」

「私はまだ頑張れます。」

「ごめんね。命令かな。」

「わ、わかりました。」

俺は木の上で監視を続けるマリアとマキーナの元へと登る。

「マリア交代だ。そろそろ休め。」

「マキーナに言われて休んでおりましたが。」

「いや、下でカトリーヌと一緒に休んでいてくれ。」

「かしこまりました。」

マリアが一礼をしてスルスルと木を降りていく。

《カララ!カーライルとオンジを休ませてくれるか?》

《かしこまりました。》

俺はカララに頼んでカーライルとオンジを休ませることにする。

「マキーナ。どうだ?」

「魔獣や騎士は交代で見張りに立つようです。恐らくは市民の姿もあるようですが、特に目立った動きはございません。」

「大聖堂は?」

「動きがなく、もしかすると大聖堂に総大将はいないのではと愚考します。」

「そうか。」

と言う事は無差別にやるしかない可能性が出て来た。

一般人の被害も考慮しなければならない。

俺が非情な決断を下すまでのタイムリミットが刻々と近づくのだった。