軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第444話 人心掌握スキルを利用

ゴーグとアナミスを走らせてホウジョウマコを連れてきてもらった。

アナミスの催眠は強力なため何をしても起きない。バルギウスの屈強な兵達でもあっさり洗脳されるのだから、港区あたりでパパ活をしていた女には術を破る事は出来ないだろう。

…ホウジョウマコは顔を見ればなかなかに可愛い顔をしていた。研ぎ澄まされた俺の仲間達の美貌のほどではないにせよ、向こうの世界ならまあまあモテてパパ達を騙せていただろう。オークが見張っているとはいえ、男たちの元に置き去りにするのも危なかったかもしれない。殺させるなと言っただけで、何もするなとは言っていなかったから。

俺の前にアナミスとゴーグがいる。

《俺がやりたいことは…》

アナミスとゴーグにある事を説明していく。やる事は簡単だが、彼らに怪我をされてもいけないので段取りを慎重に話していく。

《分かりました。》

《ラウル様、後ほど服をお願いします。》

《了解だ。》

ウウウウウウ!!

ゴーグが歯をむき出しにして唸る。徐々に体が盛り上がっていき、あっというまに白銀の巨大狼に変身した。いつ見ても毛並みが美しい立派な巨大狼だった。変身の際はかならず服が破れてしまう、首元にはアクセサリーのように鎧が巻き付いているが、そうなるようにグラドラム滞在時にバルムスやミーシャが仕込んでくれたのだとか。

ゴーグがひょいっとホウジョウマコをくわえて持ち上げる。そしておもむろに背中に放り投げた。

「アナミス乗って。」

「ええ。」

アナミスがゴーグにまたがって、ホウジョウマコを支えるように座る。

《戦闘開始が合図だ。》

《わかりました。》

《仰せの通りに。》

そして俺はギレザムの元に行く。集中して敵の方を警戒している脇に立つ。

《どうだ?》

《動きはあるようですが、こちらに向かって来る気配がありません。》

《やっぱなんか仕込んでるな。》

《そのようです。》

《悠長に準備なんかさせている場合でも無いか。こちらから動く事にするぞ!》

《は!》

俺の指示を受けたギレザムが、後ろに待機していた魔人達にハンドサインで指示を出した。すると部隊が右と左に分かれる。一つの部隊はミノスが隊長ルピアが副隊長として率いるらしい。もう一つの部隊はギレザムが指揮をするようだった。

《なら俺とシャーミリアはまた囮になるか。》

《かしこまりました。》

俺の言葉の終わりと共に魔人部隊は左右に散開していった。すでに阿吽の呼吸と言うやつだな。

《アナミス、ゴーグ!作戦を開始する。あとは手筈通りに頼む。》

《《はい。》》

俺とシャーミリアの操る泥棒髭と河童は、子汚いサンタのように腰に袋をぶらぶらとぶら下げて、敵がいるであろう方面に疾走する。

《こいつ動くぞ!5倍以上の体力がありそうだ。》

もちろん往年の名台詞をはいてみる。

《はい、盗賊ではない上質の騎士を与えましたから、だいぶ改良を加える事が出来ました。》

まっとうな答えが来た。

《人の質でこんなにも違うものなんだな。》

《気のめぐりが良いようです。》

《ふーん。》

シャーミリアが言っている事はよくわからんが、どうやら循環系が改善されたらしい。もしかしたら俺の魔力が通りやすくなったと言う事かな?とりあえず今は戦闘中なので、そのうち聞く事にしよう。

「来たぞ!」

軽装の敵兵が俺達を見つけて叫んだ。斥候として偵察に出てきたようだったので、俺の泥棒髭が極端にスピードを上げて接近し、思いっきりラリアートをかましてみる。

ぐきり

斥候の首があらぬ方向へと折れてしまった。

《調子いいな。》

《ご主人様に喜んで頂けて何よりです!》

《とりあえず身を隠せ。》

《はい。》

そのまま突撃すればまたあの魔法の餌食になりそうだったので、近くにあった大木に身を潜めた。

《さてと、敵が右往左往し始めたな。》

《そのようです。》

俺の目の前にいるシャーミリア河童は、顔色こそ悪いものの筋肉は盛り上がり、艶々とテカリすらあるようだった。もちろん禿げた頭のてっぺんが。

《恐らくこいつらでは、日本人剣士と拳闘士にぶつかればやられる可能性が高い。なんとか魔法使いにたどり着く方法は無いかね?》

するとシャーミリアが木の上を見上げた。

《上を行くか。》

《性能の向上と共に可能かと。》

俺の泥棒髭と河童が一気に木の上によじ登る。

軽い軽い!

先ほどまでできなかった動きが出来るようになっている。そのおかげで作戦の幅も広がりそうだ。

《木の上から手榴弾投げようぜ。》

《名案にございます。》

《味方の居ないところにな。》

《はい。》

そして俺はギレザムとミノスとルピアに指示を出す。

《俺達が攻撃を仕掛ける!爆発音を合図に攻撃を仕掛けろ!》

《《《は!》》》

そして俺の泥棒髭と河童が敵の居る方向を向いて、敵が隠れているであろう木をマークしていく。

《シャーミリア。俺はあそこ一帯をやってみる。》

《それでは私奴はこちらを。》

二人で左右に分けて手榴弾攻撃をすることになった。やり方は簡単で手榴弾本来の攻撃方法である、遮蔽物の向こうに投げて破裂させる。ハイグールの腕力はなかなかのものだが、いかんせんコントロールが難しい為、正確に敵の居る位置へ投げ込めるかがポイントだ。

頭陀袋に手を突っ込んでM26手榴弾を1個掴む。隣では河童も同じように手榴弾を取り出していた。二人同時にピンを抜いて数を数え一気に敵の気配がある木の向こうへと頬り投げる。

3,2,1

ボン!

ドン!

「ギャ!」

「ぐあ!」

「やられた!」

そんな声が聞こえて来る。

ボグウ

俺達が手榴弾を投擲したことで敵がこちらの位置を把握したらしく、また石弾が飛んで来て木ごと河童の胴体を貫通した。

《ずいぶん正確だな。》

《そのようです。手榴弾を投げ込んだことで位置がバレたようです。》

《ああ。まあ想定内だ。》

パララララララララ

タララララララララ

「ぐああああ。」

「こ、攻撃だああ!」

「どこからだ?」

「魔法か?」

敵兵たちが再び銃の射線に入り掃射を浴びたらしかった。何人かはそこに倒れて動かなくなっている。

《ギル、敵は何も仕込んでないのか?》

《いえ、ラウル様。前衛の数が少なすぎます。》

《オトリ?》

《可能性はあります。》

俺はいきなり勘が働く。

《《《ギル!ミノス!ルピア!兵を下がらせろ!》》》

俺が言うと魔人軍部隊は後方に下がって森に消えた。その直後だった!!

敵兵たちが大勢いた場所の地面から岩の槍が大量に突き出て来た。敵兵たちは腹から背中に貫かれ空中にぶら下がったり、ケツから入って口に抜けた者がいたり、よけきれず顔の真ん中から後頭部にかけて岩が突き出たりと悲惨な光景が広がる。

《仲間もろともか。》

《そのようです。》

《みんな!木に上がれ!》

《《《は!》》》

どうやら敵は自分の味方すらも囮に使って俺達を討ち取ろうとしているらしい。

危ない危ない‥‥

ボグウ

「ぐっ」

木に登ったライカンの1人が、木を貫通して来た石弾に貫かれたようだ。肩を押さえて苦しそうにしている。

《ポーションを!木の上は狙い撃ちだ!一度俺たち二人を置いて森の中に撤退しろ!》

《《《は!》》》

魔人達が一気にもと来た森の中へと後退していく。そこを狙い撃ちされないように、俺とシャーミリアが数個の手榴弾を敵がいるであろう方向へと投擲した。

ボン!

ドン!

バン!

ズン!

《なんか手ごたえが無いな。》

《敵はおりますが…》

《先の兵は倒せたのに。》

ボグウ

また敵の石弾が飛んで来て、今度は俺の腹を貫通していったようだ。

《無駄に死んでも仕方ないな。》

《いかがなさいましょう?》

《一度ひくか。》

《は!》

シャーミリアと撤退の準備をする。

《ゴーグ!アナミス!どうか?》

俺は別働で動かしていたアナミス達に念話を繋いだ。

《ラウル様の目論見どおりに。》

《オッケーオッケー!じゃあ俺達も引くぞ!ゴーグとアナミスは迂回して、魔人部隊に合流するんだ!》

《《は!》》

そして俺が操る泥棒髭と河童は木の上を飛び移りながら、森の奥へと退却していくのだった。

…これが人間の部隊だったら全滅してたな…

今の敵の攻撃の質を考えると、木の上を移動できる魔人でなければ大量に死んでた可能性があった。ギレザムが選んだ精鋭を連れてきてもらって正解だ。

敵は俺達を追ってくる事は無く、無事にギレザムたちの本体までたどり着く事が出来た。少しするとゴーグとアナミスも戻ってくる。

その巨大狼ゴーグの口には…ロープが加えられていた。そのロープの先には眠った5人の騎士が数珠つなぎに引きづられている。

「おお!大漁大漁!」

「ラウル様やはりこの女を連れていたおかげで、敵の魔法使いは攻撃して来ませんでした。」

アナミスが言う。

「だろ?なんか、あの魔法使いはこの女に気があったみたいだからな。」

「女に気づいていたのでしょうか?」

「間違いなくな。だがこの女の気配も感じ取って攻撃をしなかったらしい。」

《さすが、ラウル様の作戦勝ちですね。》

ゴーグが嬉しそうに笑う。狼形態なので念話で話さないとなんて言っているか分からないので、近くに居ても念話で話している。さらにその笑いはものすごくおっかない。あの可愛い少年のゴーグはどこに行ってしまったんだろう。

俺の小ズルい作戦に、魔人のみんなが尊敬のまなざしを向けて来る。

いやいや、これはどう考えても悪い奴がする作戦だ。そんなに褒め称えられるようなもんでもないんだが。

《ではやってくれ。》

俺がアナミスに向かって言う。

《はい。》

アナミスが地面に降り立ち、ゴーグがホウジョウマコを咥えてそっと地面に降ろした。

次にアナミスがホウジョウマコの耳元に何かをささやく、赤紫の霧が耳に入っていくようだ。

「ん…んんっ。」

ホウジョウマコがトロンとした目をして目覚めた。しかし俺達を見てもなんら反応する事は無く、無表情のままだった。

次にアナミスが数珠つなぎになった5人の騎士に何かを語り掛けると、騎士たちもホウジョウマコのようにトロンとした目をしながら起きる。

「みんな、この男たちを押さえて。」

魔人のオーガやオーク達が騎士1人に二人づつついて押さえ込んでいく。

「目覚めさせるわ。暴れさせないように。」

魔人達がその手に力をこめる。

パチン!

アナミスが指を鳴らすと、騎士たちに変化が起こった。

「ん!」

「な、なんだ?」

「ここは…」

「なん…」

「なんだお前たちは!」

すると目の前にスッとホウジョウマコが座る。

「あなた達、良く来たわね。待っていたのよ…ずっと…」

「えっ…」

「はぁ…。」

「待って‥」

「俺達を?」

「だってあんた…。」

「やってくれるんでしょ?私の為に、私だけの為に。」

「なにを?」

「俺がか?」

「どうすればいい?」

「願いを言え。」

「わかった。」

「ふふ、いい子。これからは私の言う事を聞いて、敵の騎士たちを撃ち滅ぼしてくれるかしら?ここにいるのは皆が味方よ。この人たちは私の友達だから命がけで守ってね。」

「お安い御用だ。」

「守ればいいんだな。」

「俺達の力を信じろ。」

「友達は大事だ。」

「俺を頼ってくれてありがとう。」

騎士たちの瞳はトロンとして、完全に術に入り込んでしまったらしい。

「あなた達の敵は、ファートリアとバルギウスの兵隊よ。」

5人ともホウジョウマコの言葉を聞いてコクリと頷いた。

「それじゃあ私がうーんと強くしてあげるわね。」

そしてホウジョウマコが一人一人の唇に接吻をしていく。すると騎士たちの体が光輝き、力が漲っているのが分かる。バフがかかっているような感じだろうか?

術が全て終わったのかホウジョウマコが呆然と立っている。

《おっけーアナミス。もう眠らせて良いよ。》

《は!》

ホウジョウマコにアナミスがささやくと再び深い眠りにつくのだった。

「よっしゃ。こいつらなら何かあっても痛くもかゆくもないや。囮にでも特攻隊にでも使えるぞ!」

俺が言う。

おおーーーーー!

そこにいた30の魔人全員が拍手をして俺を称えている。

いやぁ‥‥どうかんがえても悪党のすることだから、あんまり褒め称えないでほしい…

僅かな罪悪感を抱き俺は下を向くのだった。