軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第432話 ファートリアの状況

スラガからデモンの干渉の確認作業が終了したと一報がはいった。さらにギレザムの隊からは最初の村で光の柱を確認したためスルーし、次の村でのデモンの干渉の確認作業に入ったとの報告を受ける。ガザム隊は既に最初に接触した農村の確認を行っている。

光の柱を確認した村は、恐らく何らかの理由があってデモンの干渉を受けたのだろう。

「以前行ったあの村は、ミリアの見立て通りデモンに干渉されていないようだ。」

斥候をマキーナに代わって隣を歩いているシャーミリアに話しかける。

「それはなによりでございます。」

「あとは村の側に防衛拠点を築くだけだ。冒険者のクランが来たと伝えるように言ってある。」

「信じますでしょうか?」

「信じるも信じないもないよ。これからの関係性で信頼を築くしかないだろう。」

「はい。」

俺達はデモンに支配された街や、敵兵の拠点を避けるようにして東へと進んでいた。その間にも各隊からの連絡を受けて進捗の確認をしている。

「やはり…中心部は酷い。」

カーライルがつぶやくように言う。

「ああ、かなり深刻なようだな。」

俺はフォローの言葉も無く事実を言う。

「そのようですラウル様。もう私がいたころのファートリアは影も形もないようです。」

「そうか。」

「ええ。」

カーライルが悲愁断腸の思いで唇を噛み、そこから血が流れ落ちた。

それからしばらくは言葉も無くただ突き進んで行くのだった。

《我が主。》

ヴァルキリーが俺の脳に直接語り掛けて来る。

《なんだ?》

《この聖騎士よりとてつもない悲しみと怒りを感じます。》

《ああ、故郷がこんな風にされたら誰でもこうなるのさ。》

《我が主からも同じものを感じる時があります。》

《俺も似たようなもんさ。仲間を大勢失った。》

《仲間を大勢失うとそうなるのですか?》

《まあそうだな。ヴァルキリーにはその感覚は無いか?》

《良くは分かりませんが、我が主の怒りを感じるとその対象を破壊したい衝動にかられます。》

《分体だからだろうな。》

《はい。》

《俺は今回の戦いでは誰一人失いたくないんだ…だけど…》

俺が言い澱む。

《どうしました?》

《おそらく敵は強大だ。全員を守りたいが無理かもしれない。》

《この潜入作戦はその被害を最小限にとどめようというものなのですよね?》

《そういう事だ。敵の大将を仕留めれば何かが終わるかもしれない、そう思っての潜入なんだがな。》

《それで終わらなければ?》

《総攻撃しかないだろう。》

《総攻撃を仕掛けずに、この国の民の被害を減らすための作戦でもあるのですよね?》

《ああ。しかしながら…点在する村に民はいるんだが、主要都市は既にデモンにやられて全滅しているところが多いんだ。》

《それでひとつひとつの小さな村を探って、無事な村の側に基地を立てて防衛をすると。》

《そう言ういう事だ。一人でも救える命があるのであれば何とかしてみようと思っている。》

《わかりました。我が主の思いを遂げられるよう、我も最善の努力をいたします。》

《ああ、あてにしている。》

《我はその聖騎士との戦闘訓練で様々な力を身につけました。》

《そうなのか?》

《お役に立つかは分かりませんが、戦闘時にご覧に入れますので有用かどうかの判断を。》

《わかった。》

ヴァルキリーはカーライルと二人で戦闘訓練を行ってきた。ヴァルキリーに感情があるのかはよくわからないが、カーライルの辛い思いを受けて何らかの反応をしているらしい。もしかしたら人間的な感情が芽生えてるのかもしれないが、声のトーンが機械的なのでよく分からない。

「ラウル様。すでに聖都を抜けて東に抜けたと思われます。」

カーライルが言う。

「わかった。全体止まれ!」

部隊が止まって俺の元に集まってくる。

「進路を変えるのか?」

オージェが言う。

「ああ、出来れば聖都付近で潜伏できる場所を探したいのだが、しかしここからは野にも敵がいる可能性がある。」

「だな。」

「見つかる可能性もありますね。」

「そういう事だグレース。」

その会話を聞いて、かなり疲れた顔をした人間達がさらに顔を曇らせる。かなりの過酷な状況で疲れた上に、これからデモンといつ遭遇するか分からないと言っているのだ。そんな顔をするのも無理はなかった。

「最初の村ではデモンの干渉が確認されなかった。よって作戦通り前線基地から遅れてやってくる者達で防衛拠点を作る。スラガとドランがそのまま部隊を率いて直線的に聖都へと進軍を開始する予定だ。」

「エミルは飛ばすのか?」

「いや陸を移動してもらう。」

「ドラゴンか。」

「ああ、不可視のドラゴンがいる以上はヘリを飛ばすわけにはいかない。」

「モーリス先生はどうなりますか?」

「ああ、マリア。ギレザムとラーズの中央の部隊と一緒に居る。光の柱には近づかせないようにしているが、今はその先の村のデモンの干渉を調べている頃だ。」

「無事なら良いのです。」

「ギレザムとラーズだ。恐らく一番安全な隊だよ。あいつらで守れそうになきゃ撤退してもらう事になっている。」

「わかりました。」

マリアがモーリス先生の心配をしていた。カトリーヌも心配そうな顔で俺を見るので、ニッコリ笑って大丈夫の合図をおくる。

「というわけで、一番先行している部隊に大花火を上げてもらうつもりだ。」

「一番先行している部隊?」

「一番南から侵入している部隊だよ。」

そう、ミノスとゴーグの部隊がより深く侵入している。南は二カルス大森林にほど近い為か村がほとんどなかった。その結果だいぶ深くまで侵入する事になったのだった。

「ご主人様。あの者達も一番槍として戦えることを喜んでおりますでしょう。赫々たる戦果を上げる事を期待したいものです。」

「ああ、ミノスとゴーグとルピアにアナミスだ。派手にやってくれると思う。」

「うまく向こうに釣られてくれるだろうか?」

「ああオージェ。せいぜい派手に暴れてもらうしかないだろうな。」

俺は南の部隊に、透明なドラゴンがいる方向に向けて進軍するように指示をしていた。そこまで何も無くたどり着けても良し、敵に遭遇したら好き勝手に暴れるように言ってある。ギレザムから聞いた話だと、ミノスとゴーグの部隊はいろいろと難しい注文をつける事が難しいらしい。ならば気のすむまで暴れてもらった方が良いだろう。

二人はやっぱり脳筋だった。

「その間に市民が居たら?」

オージェが言う。

「コラテラル・ダメージだ。」

カーライルに分からないであろう言葉で答える。

「そうか。そういう事なら何も言うまい。」

俺はこの国の市民にも生き残ってほしいとは思っている、しかしそのために仲間を危険に晒す事はできない。仲間は俺にとって優先順位1位なのだ。敵国の市民を守るために自分の仲間を危険に晒すつもりは毛頭ない。仲間を死なせるぐらいなら犠牲になっても仕方がないと思っている。

「というわけだ!南のゴーグ隊が敵に接触するまで、我々はこの森に潜伏して休憩をとる。人間のみんなは出来るだけ体を休めて、ポーションで回復を試みてくれ。魔人は人間を守るように周辺の防衛にあたれ。」

「「「「「「は!」」」」」

「ありがとうございます。」

「すみません。」

「かたじけない。」

「助かります。」

マリア、カトリーヌ、カーライル、オンジが言う。さすがに彼らも気を遣う余裕は無さそうで、俺の指示におとなしく従ってくれるようだった。

「トライトンも休んでくれていい。」

「わいは疲れておりませんよ。ただ歩いて来ただけですし。」

「そうだラウル。トライトンは生半可な鍛え方をしていないから大丈夫だ。」

「そ、そうか。とにかく無理は禁物だ。」

「まあわいは適度に休んでおりますし。お気になさらないように。」

「わかった。」

トライトンって種族はいったい何なんだろう?海底神殿からずっと龍神のオージェについて来るようになったが、まるで魔人のように疲れ知らずだった。

「セイラも休め。」

「それが‥。」

「どうした?」

「疲れないのです。」

「疲れない?」

「原因も分かっております。」

「どうしてだ?」

「恐らく龍神様と行動を共にしているからです。」

「オージェと?」

「はい。」

そうか…そういえばそうだった。セイラは龍神に生み出されたのだと、ラシュタル王国でレヴィアサンとの戦闘の時に言っていた。そのおかげでセイラの歌でレヴィアサンを鎮める事が出来た。と言う事はオージェがセイラの創造主で、そのそばに居る事で力が漲っているって事かもしれない。

「とにかく無理はするな。」

「かしこまりました。」

俺達は森の中に迷彩のテントを張り始める。この森は深いので人間が入り込んでくる事は無いだろう。とにかく人間達にはしっかり休息をとってもらわないと、死んでしまう危険が高まる。

《ラウル様。》

《どうしたアナミス。》

ゴーグ部隊のアナミスから念話が入った。

《村があります。そこを見過ごして作戦続行しますか?》

《いや、まだ敵に遭遇していないのなら、一度身を隠しデモンに干渉されていないかを確認してくれ。》

《では、すぐに。》

待つ事数秒。

《干渉されていません。》

《一人もか?》

《はい。》

アナミスがほぼ一瞬で村にデモンの干渉が無いかの確認をしたらしい。

《側に基地を作らなくてもいい。森の民だと言って全部隊を村に入れろ。》

《かしこまりました。》

どうやらデモンに侵食されていない村がまだあったらしい。

「カーライル。」

「はい。」

「休み前に朗報だ。」

「ええ。」

「どうやら無事な市民をまた発見したぞ。」

「そうですか!それは良かった!ありがとうございます!」

カーライルは俺の手を取って喜んでいる。その瞳に悲しみを湛えつつも、少しの希望に全力で歓喜しているようだった。

《ミノス。》

《はい。》

《その村の村人たちには二カルスの森から守りに来た、精霊の化身だと言っておけ。》

《し、信じるでしょうか?》

そう言えば…ミノスは、世紀末の武闘家の王のような厳ついいでたちだった…。精霊とか言っても信じてもらえないか。

《ルピアは天使で、ゴーグが精霊だと言え。あとは全てその僕だと言えばいい。》

《また私が天使ですか?》

《そうだルピア。ユークリットに連れて行った村人と同じ要領だ。》

《わかりました。》

《アナミス。》

《分かっております。》

《滞りなく頼む。》

《は!》

西部の村々ではデモンの干渉を受けていたため、俺の魔力を使ってアナミスがその魂ごと解除作業をおこなったが、今回新たに見つけた村は干渉を受けていないらしい。

ならばやる事は一つだった。

それは…

洗脳だ。

アナミスが魂核に触らなければ洗脳の解除も出来るらしいので、ひとまずアナミスに村人に信じ込ませてもらう事にしよう。

今は地道に信頼関係を築いている時間はない。

そんなことを考えている時だった。

《ラウル様》

ガザムから念話が繋がるのだった。