軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第431話 司令官の使命 ~ギレザム視点~

ラウル様からの念話で各地の進行状況を聞いた。すでにスラガが目的地についてデモン干渉の見定めを行っているらしい。我は西部ラインの押し上げをするために、中央の拠点に居た軍を引き連れて東へと進軍している。

「ラウル様が用意してくださった無線機の状態はどうだ?」

「すぐに通話が出来そうです。」

「わかった。」

我がラウル様から預けられた戦闘車両を降りて、無線機を搭載した車に向かう。

ここからだと北のガザムの軍と、南のミノスとゴーグの軍までは無線が届くようだった。前線基地やスラガのいる村まではこの機械の範囲外となるらしい。

「ガザム隊きこえるか。」

無線でガザム隊に話しかける。

「こちらガザム隊。」

「ガザムはいるか?」

「呼んでまいります。」

少し待つとガザムが無線に出る。

「なんだ?」

「そちらの侵攻状況はどうだ?」

「街道に沿って問題なく東に向かっている。」

「村などは?」

「まだ村などは見えていない。」

「わかった。既に最北で先行したスラガが村に接触して、デモン干渉の確認を行っているらしい。」

「そうか。こちらもラウル様の指示通り、村を見つけたら冒険者を装って侵入するつもりだ。」

「予定通りという事だな。」

「そういう事だ。」

無線を切る。昔からガザムはそつがない。ラウル様から単独潜入捜査を任せられるだけはある。北の軍は特に問題が無いだろう。

そして次に北を進軍中のミノスに無線を繋いだ。

「ミノス隊。」

「は!」

「ギレザムだ。そこにミノスは居るか?」

「先頭を走っております。」

なんだと。ミノスが自ら斥候に出ている?

「呼び戻せ。」

「は!」

しばらくするとミノスが無線に出た。

「おお!ギレザムよ!どうしたのだ?」

「ミノスが斥候に出ているのか?」

「そうだ!手持無沙汰でな!」

「だれが指揮を?」

「そ、そりゃあもちろん我が。」

「出来れば斥候はライカンの誰かに任せろ。ゴーグもダメだ。ミノスとゴーグは後方の車両で待機を。」

「ギレザムよ!いざという時にデモンを蹴散らすのが我の役目では?」

「そうだ。」

「なら一番槍は我の仕事ではないか?」

やはりか。ラウル様の言葉を借りればミノスもゴーグも脳筋と言うやつだ。じっとしていられないのは分かっていたが、まさか先頭を走っているとは思わなかった。

「俯瞰してみるべきだ。」

「う、うむ。わかっておる!少しなまった体を動かしたかっただけだ。」

「ゴーグは?」

「あ、あやつか?あやつはもちろんここにいるぞ。」

「出せ。」

「う、ごゴホン!ゴーグ!」

無線機の向こうでとてつもない大声が聞こえる。恐らくはゴーグはここにいないのだろう。

少し待つ。

「なんだい!ギル!」

滅茶苦茶、明るい声でゴーグが無線に出た。

「今なにをやっている?」

「えーと、狩りに行こうとしてた。」

「か、狩りだと?」

「うん。皆のご飯がいるだろ?」

ダメだ…

「お前には部隊を指揮するという使命がある。狩りが必要ならダークエルフに任せろ。お前は部隊全体を見る必要がある。」

「えー。拠点でもずっと一人でぶらぶらしてたんだ。せっかく移動してるんだし狩りくらいいいじゃないか!」

「ラウル様から部隊を任されているんだぞ!」

「わかったよ。じゃあダークエルフに行かせるよ。」

「わかったのならいい。」

「はーい。」

うーむ。我やラウル様と一緒の時は、きちんと作戦行動をしているのだが、ミノスとゴーグを組ませるとこんなことになってしまうのか…

「アナミスを出せ。」

「わかった!」

「なにかしらギレザム。」

すぐに出た。どうやらすぐそばにいたらしい。

「アナミス。ミノスとゴーグの指揮はどうか?」

「どうって…どうもこうもないわ。二人ともとーっても自由よ。」

「だろうな。」

「私でもどうこうできないわよ。」

「分かっている。もうひとりはルピアだしな…アナミスには苦労を掛けるが作戦の為だ。どうにかお願いしたい。」

「もちろんやれるだけの事はやるわ。ラウル様の為ですから。」

「そういう事だ。逆に言えば村に到着した時のデモン干渉の見定めは、アナミスが一番早いだろうから、そこでなるべく効率よくやって進軍を遅らせないようにしてくれ。」

「そのつもりよ。」

「よろしく頼む。何かあったら俺に連絡をしてくれ。」

「了解。」

やはり南の部隊の統率が問題になりそうだ。ミノスは拠点づくりなどではどっしりと構えて事を行うのだが、いままでずっと二カルス大森林にくぎ付けにされていたから、此度の進軍は思いっきり動きたいのであろう。とにかく奴をアナミスにきっちり抑えてもらうしかない。ゴーグに関してはあきらめよう。

「ギレザム様。」

斥候に出していたライカンの1人が戻って来た。

「どうした?」

「この先半刻(1時間半)ほど行ったところに村が御座いました。」

「わかった。そしてお前は時計を覚えろ。1時間30分で村に接触するんだな?」

「はい、そうです。1時間30分で村に到着します。」

このたびグラドラム方面から送られて来た兵士の中には、まだラウル様が下賜くださった機器を、きちんと使いこなせないものもいる。戦闘力なら申し分ないのだが、細かい所ではまだまだ教えなければならないところが多かった。

「方角はこのまま12時の方向で良いのか?」

「そうです。街道沿いに村が隣接していました。」

「分かった、1時間後に部隊を止めるように全軍に通達を出せ。」

「はい!」

斥候はライカン部隊の元へと走って行った。ライカンがその機動力で全軍に今の指示を伝えるのだった。

「車両を操作する前線基地から来た奴らは良くできてるんだがな…。」

我ながら、ついぼやいてしまった事に苦笑する。

自分の部隊の大半は1次進化したホフゴブリンとオークだ。彼らは良く動き車両の扱いも上手い。戦闘になればオーガやライカン、竜人やスプリガンには敵わないが、ラウル様から下賜された兵器を使えば一騎当千となる。

「サキュバスを呼んでくれ。」

「は!」

一緒に乗っていたホフゴブリンがサキュバスを呼びに行く。

いよいよファートリアの一般市民と接触する。デモンに干渉されている場合は、その村を通り越していくようにラウル様に言われているが、辺境にあるこのあたりなら干渉されていない可能性が高いともラウル様は言っていた。

「だが…最西端にあった村はデモンの干渉を受けていたからな、可能性としては五分五分と言ったところか…。」

そう、今はもう更地になってしまったが、ラウル様とアナミスがその農民たちの魂核を操作して救出したのだった。その農民たちはいまやユークリットの貴族をしている。

ガチャ

車両にサキュバスが乗って来た。

「ギレザム様。」

「まもなく人間の村に接触する。デモンの干渉を受けているかを見定めてもらう事になる。」

「かしこまりました。」

「村には我とお前、ライカン3人で潜入する事となる。」

「はい。」

「見落としの無いように十分注意せよ。」

「確認だけなら問題ございません。」

「わかった。」

それから1時間が過ぎて村の西20キロあたりに軍を止める。戦闘車両などもあるので草原にいるため警戒が必要だった。森と違って発見される可能性があるからだ。

「全軍!ここで待機だ!警戒を怠らず、敵が来た場合にはラウル様から下賜された兵器で攻撃せよ。」

「「「「「「「は!」」」」」」

「我はこれから村へと潜入する。デモンの干渉が無ければ、村に30名をのこして兵站線を確保する事になっている。我が隊を組み調査をしている間、北に見える森に行き食料としての魔獣を調達するように!以上だ。」

その草原から北を見ると山脈の麓に森が見えた。そこで食料の調達を行うよう指示をする。

「ではお前達。我に続け。」

「「「「は!」」」」

深くローブをかぶったサキュバスに、冒険者のなりをしたライカン3人がついてきた。

「走るぞ!」

ここから村までは約20kmなので、15分もあれば到着するだろう。我が走ると皆が同じ速度で走る。しかしサキュバスは飛べば早いが、我々の速度について来れないようだった。

「お前。おぶされ。」

「は、はい。」

サキュバスが我の背中におぶさる。

おかげで走行速度が格段に上がった。ライカンは足が速いため問題なくついて来れるようだ。

それから15分後きっちりに村が見えるところまで来た。

「よし、ここからは歩きで行くぞ。」

「「「は!」」」

我々は冒険者を装い村に近づいて行くはずだった。

「止まれ。」

我は村に近づく前に皆を止めた。

「あれは‥」

ライカンが言う。

「ああ、光の柱だ。」

その村には光の柱が突き出ていた。

《ラウル様。》

すぐさまラウル様に念話を繋ぐ。

《どうしたギル?》

《光の柱です。》

《位置は?》

《中央の拠点より東に100キロほどでしょうか?村に光の柱が立っています。》

《スルーしろ。一番近隣の森に見張りの魔人を50。》

《かしこまりました。簡易の拠点を作らせます。》

《ああ、よろしく頼む。くれぐれも村に近づかせるな。》

《かしこまりました。》

ラウル様との念話を切って隊に作戦中止を伝える。

「戻るぞ。」

「「「「は!」」」」

ファートリア中央より西に位置するこの村で光の柱。あの柱はラウル様の恩師でも正体が分からないと言っていた。柱をやり過ごすというのは、下手に手を出しても危険なだけと判断したラウル様の指示だ。

隊に戻り全員に説明をする。

「ではどうなされますか?」

竜人の1人が聞いて来た。

「ここより南に移動しそこから東へと進軍する。森に光の柱の監視所を作り50名が駐屯、残りはそのまま進軍を続ける。」

「は!」

魔人全員に伝わり我らはさらに東へと進むことになった。無線車に乗り再度ガザムに連絡を取る。

「こちらには光の柱があった。作戦通り監視部隊を残してさらに深く進軍する事になる。」

「わかった。と言う事はこちらもその可能性が高いと言う事か。」

「十分あり得るだろう。だが柱が規則的に立っているとも限らん。村を確認して干渉が無ければ村の側に駐屯地を設立するんだ。」

「了解。」

ガザムとの念話を切る。

ラウル様はもしデモンの干渉が無い村であれば、護るための基地を建設する予定でいるらしい。ファートリア国の一般市民が、ほとんどいなくなっているかもしれないと懸念されており、ファートリアの国民は一人でも多く生かしたいとの事だった。

さて…ファートリア北の更に奥では光の柱を確認したとラウル様から聞いている。そして西の3つの拠点に光の柱、何らかの意図があるはずだがモーリス先生にも予測がつかないらしい。とにかくラウル様が考えたように動くしかない。

「ミノス。」

ミノスに無線を繋ぐ。

「なんだ?」

どうやらさっき忠告したことを守り、無線車の中にきちんといたらしい。

「こちらの発見した村には光の柱があった。よって監視の魔人を置きさらに先に進むことになる。」

「そうか…またあの不気味な柱か。」

「ああ。あれが何なのか分かればな…。」

「わかった。これは忠告だな?」

「そうだミノス。ここからは十分注意して進むようにしてくれ。くれぐれも気を緩める事の無いようにな。」

「ふふ。我も戯れがすぎたわ。心してかかるからギレザムも心配するな。」

「ふっ。わかった。それじゃあゴーグを頼むぞ。」

「まかせよ。」

ミノスの気を引き締め、我々はさらに東に向けて進軍を開始するのだった。

《ギル。》

再びラウル様から念話が繋がる。

《は!》

《そこから更に東に進むと山岳地帯があり、村がいくつかあるはずだ。》

《はい。》

《シャーミリアの見立てではそのあたりの村には干渉が無かった。サキュバスに確認させて拠点を作れ。》

《かしこまりました。》

《さらに奥に進むと、透明なドラゴンがいる村にぶつかる。その前にまた連絡をくれ。》

《御意。》

ラウル様からの念話が切れた。

どうやら全部の村にあの光の柱が立っているわけではなさそうだった。

「だれか羊皮紙を持ってきてくれ。」

「は!」

するとホフゴブリンが羊皮紙と羽筆を持ってくる。

我は西の3つの拠点とゴーグが確認した光の柱、今しがた確認した村の光の柱、ラウル様より報告があった光の柱のおおよその場所を羊皮紙に書き出していく。

とにかく少しでも役に立つ情報を集めなければならない。光の柱に近寄る事は許されていないが、出来るだけの情報を集めてラウル様に渡そうと思うのだった。

猫夏さとるさんに描いていただいたギレザムです。