軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第428話 簡単な罠を踏む

俺達は丘陵の麓の森で4時間ほどの休息を取り、再び東へと向かって進み始めた。すでに聖都まではもう少しの所まで来ているとカーライルは言う。ここから南に3日も歩けば聖都に続く街道に出るらしいが、もちろん俺達は正面から突入するつもりはない。聖都の東側に回り込み様子をうかがって敵の大将を狙撃、もしくは爆撃による奇襲攻撃をかけるつもりだ。

「聖都の東側にも大きな都市があるんだよな。」

俺はカーライルに聞いた。

「はい。」

「そこの人間達が生きていてくれればいいんだけど。」

「…先日の都市も既に人は居ないとカララさんが言ってましたし、絶望ではないかと思われますが。」

カーライルは苦渋に満ちた表情をうかべて言う。

「一概にそうとも言えないんじゃないですか?」

オージェが言う。

「どういうことです?」

「敵は恐らく西から進軍してくると思っているはずです。リュートの民を生贄に差し出すくらいですから、既にリュート王国も敵の支配下にあると思われます。もしかするとそちらからの進軍は無いと考え、デモン召喚はして無いかもしれません。」

正直オージェのそれは気休めだろう。カーライルを気遣っての言葉だとも思える。オージェも言っちゃってるんだが、リュートの民を生贄に差し出すくらいな敵が他に何もしない訳がない。

「まあそうとも考えられますが、楽観視は出来ないでしょう。」

カーライルの言う通り楽観視は出来ない。大きな都市には人間がたくさんいるから、より強力なデモンを呼び出すために既に壊滅させている可能性の方が高いだろう。まさか自国の民を壊滅させているとは思わなかったので、先の都市を見てその可能性はさらに強くなった。

「とにかく先を急ごう。西部ラインから出発した魔人軍も、最初の村のあたりまで進軍しているからな、敵もそろそろ黙ってはいないだろうと思う。」

俺が言う。

「はい。国を奪還してから生存者の確認をしていくしかないでしょう。」

「ええカーライルさん。必ず取り戻しましょう。」

「ありがとうございます。ラウル様。」

それから俺達は黙々と行進を続けた。2時間ほど歩くと森林地帯が終わり再び草原が広がる。

「よし!みんな集まってくれ!」

俺の周りにみんなが集まる。

「ここからは遮蔽物が無い。敵に発見される危険性もあるため斥候を2人出し、4人が周辺の哨戒行動を行いながら進む。」

シャーミリアが中央のハイグールにシンクロさせたままなのだが、そろそろどうにかしないといけない。彼女はこの隊ではオージェとファントムに並ぶ戦力だが、とりあえずシャーミリア抜きで隊列を組むことにする。

「マキーナとオージェが先行して偵察してくれ。カララとファントム、トライトン、と俺が周辺の哨戒行動を行う。カーライルとマリアとオンジさんそしてセイラは物資を運搬しているグレースと、回復の要であるカトリーヌとルフラを護衛するようにしてくれ。」

「了解だ。マキーナさん行きましょう。」

「ええ。」

オージェとマキーナが斥候として先に進んでいく。

「カララ、ファントム、頼むぞ。」

「はいラウル様。」

「………。」

ファントムは俺を見ずにどこかを見ているが了承しているんだと思う。

「トライトンさんは無理をしないように。何かあれば側にいるカララを頼ってください。」

「わい、迷惑を掛けんようにします。怪我などしたら足を引っ張りますからね。」

「お願いします。」

「あと気温が上がって来たから、人間チームは水分と塩分の補給をマメにしてくれ。グレースは希望者に水と岩塩を出してくれると助かる。」

「わかりました。」

「だれかが具合悪くなったりしたらルフラが俺に合図をくれ。」

「はい。」

ルフラが返事をして人間達が頷く。

そして俺とファントム、カララとトライトンが散開していく。

気温が上昇して来た。陽炎がユラユラと上り風も無い、背の高い草以外は遮蔽物も無く、遠方から発見されないように身を低くして歩いた。ヴァルキリーは全く重さを感じないので、着ていないような感じで動くことができる。皆には悪いが暑くも無くとても過ごしやすい、恐らく見ためは俺が一番暑そうだが実は快適だった。

ガサガサガサ

草をかき分けながらの進軍はだいぶ進行速度が遅い。魔人達は問題ないが、人間達は睡眠不足と疲労に栄養不足もある。かなり厳しい状況になっているはずだった。

その調子で4時間ほど進み一度皆を呼び戻す。

「それでは一旦休憩に入る。」

皆が草原の草むらに腰を落とす。

「ふう。」

マリアが一息ついた。カーライルとオンジが額の汗をぬぐい、グレースが出してくれた水をがぶ飲みしている。マリアとカトリーヌもペットボトルの蓋を開けてゴクゴクと飲み始めた。俺も一度ヴァルキリーを脱いで水を飲む。そのわきでグレースがオージェとセイラにも水を渡していた。

そして俺が戦闘糧食を渡していく。

「熱いな。」

オージェが言う。

「ああ、みんなは大丈夫かい?」

皆は特に問題ないというジェスチャーで答えるが、口数が少なくなっているので疲労が蓄積している違いない。

「ラウルさん。やはり夜の行軍の方が皆の負担が少なく済みそうですね。」

「ああグレース。焦って日中動いたら皆がばててしまいそうだな。」

「しかしラウル。こんなところに長居は出来ないぞ、遮蔽物も無く遠距離から見つかる可能性がある。少し休んだらまた進まないと。」

「オージェの言うとおりだな。車両を召喚したいところだが目立ってしまうし、とにかく休憩を短くして先に進むことを考えよう。」

「オージェさんのおかげで魔獣の処理が無いからだいぶマシですよね。」

「そうだな。」

《ご主人様。》

俺達が話をしているとシャーミリアから念話が入る。

《どうした?》

《人間がおります。》

《人間が?》

《はい。》

《どんな奴らだ。》

《おそらく騎士…ですね。》

《わかった。》

俺が周りを見渡すと、皆が素早く食料を口に詰め込んで消化していた。

「俺は哨戒行動から外れる。3名体制で周辺の警戒を頼めるか?」

「問題ございません。」

「わいも。」

「‥‥‥‥。」

「とりあえず頼む。オージェ!オージェが全体の指揮をとってくれ。」

「了解だ。」

「斥候はマキーナ一人で大丈夫か?」

「は、最善を尽くします。」

「カティは誰かが怪我をしたらすぐ回復できるように。」

「わかりました。」

「そしてちょっと重たくなるが、武器を召喚するから全員装備を頼む。」

オージェにHK MG5機関銃、マキーナとカララにはベレッタ ARX160機関銃を、セイラとルフラを纏ったカトリーヌにはウージーサブマシンガンを、グレースにはM40スナイパーライフル、マリアにはマクミランTAC50を、トライトンとカーライルとオンジは自分の得物で護身してもらう事にする。ファントムにはM240中機関銃とバックパック召喚する。

丸腰のシャーミリアは皆の後方から追うようにし、しんがりはファントムに任せると伝える。

俺は再びヴァルキリーを着てから、食事が終わったみんなに指示を出す。

「では出発するぞ。」

食べ終わってから少しの休憩で、再び隊は東に向かって歩き出すのだった。とにかく草原をはやく抜けて森林地帯へと身を隠したい。それまではこのスタイルで突き進むしかなかった。

《ヴァルキリー》

《はい我が主。》

《俺は再び意識を放す。》

《お任せください。》

ヴァルキリーに行軍を頼んだ次の瞬間、俺は泥棒髭に意識を移すのだった。そこは雑木林の中で、すぐ隣にはシャーミリアが操る河童と、後ろにゴーレムがうずくまるように潜んでいるのを掌握する。ゴーレムはもともと大きいので少し目立つが。

《敵は?》

《はい。ここは先立って見つけた村から東に向かった場所なのですが、あそこに建物が御座います。》

確かに村でもないのに、いきなり大きめの建物が立ち並んでいる。

《あそこに人間がいると?》

《おります。感覚的には騎士のようですが100名ほどが駐留しているかと思われます。》

雑木林の中からその駐屯地を監視していた。そして駐屯地の周りには騎士らしき人間がウロウロと動き回っているようだった。

《魔獣の気配もありますがいかがなさいますか?》

《騎士か…養分に使えるかな?》

《いえ、どうやら駐屯地の中に魔獣が数体いるようです。もしかしたら破壊されてしまうかもしれません。》

《そうか。盗賊のようにはいかないって事か。》

《左様でございます。》

《じゃあやめとこ。このまま雑木林に潜ってここをやり過ごして東へ。》

《かしこまりました。》

「ゴーレムたち。左向け左!そのまま前進!」

ドスドスドスドス

林の中を走り抜けてくゴーレム。

ガランガランガランガラン!

《うわ!ゴーレムが罠を踏んだぞ!》

いきなりゴーレムが罠を鳴らしてしまった。

《このままでは見つかってしまいますね。》

単純なロープに括り付けた木の板が気の上で鳴り響いていた。ゴーレムにこれを避けるすべはなかった…いや‥俺のせいか…

「おまえ!そのままあの駐屯地へ向かってつっぱしれ!」

ロープを踏んでしまったゴーレムを敵に差し出す事に決めた。ゴーレムは俺に命ぜられるまま一直線に兵士がいると思われる駐屯地へと走っていく。

《今のうちに逃げるぞ。》

《は!》

ドスドスドスドス

俺はゴーレムたちの戦闘に立ち、駐屯地から離れるように雑木林の奥へと走るのだった。

「敵襲ー!」

林の向こう側の方から兵士と思しき男の声が聞こえる。どうやらゴーレムがツッコんで来たので味方に知らせたらしい。

「止まれー!」

バガーン

恐らくゴーレムが気の建物に突っ込んだのだろう。何らかの破壊音が聞こえた。

ドスドスドスドス

《あれ?静かになったな?》

特に暴れる音などは聞こえない。

《はい。》

《ゴーレムどうなったんだろ?》

《見当がつきません。》

しかしあんな単純な罠にひっかかってしまうとは。シャーミリアからきちんと引き継がずに勝手にゴーレムに指示を出した俺のミスだ。

《ご主人様、気が付かれたようです。こちらに追手が向けられています。》

《マジか。俺達に気が付いたって事か。》

《そのようです。》

もうゴーレムは4体しかないが致し方ない。

「お前とお前、回れ右して進め!そして何かと遭遇したら殺せ!全力で暴れろ!」

そう指示すると2体のゴーレムが周り右して、向こう側へと走り去ってしまった。

《とにかく急ごう!多少の時間稼ぎにはなるはずだ。》

《はい。》

ドスドスドスドス。

俺達はただ、敵の駐屯地とは反対方向へと走り去っていく。

《どうだ?》

《恐らくゴーレムが交戦中です。敵の気配がめぐるましく動いております。》

《よし!とにかく離れるだけ離れるんだ。》

《かしこまりました。》

とにかく俺達は無我夢中で敵から離れるのだった。