軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第426話 大規模侵略作戦

洞窟での窒息作戦を受けてから2日ほど立ち、俺達は森の中を東へとひた走っていた。

だいぶ聖都に近づいており、慎重の上にも慎重を期すため俺はヴァルキリーを着ていた。カトリーヌにも常にルフラを纏わせ、マリアにはカララにマンツーマンで護衛についてもらい、ファントムとオージェとトライトンには、カーライル、オンジ、セイラの護衛を念頭に動いてもらう事にしていた。

《シャーミリア、そっちは?》

《いまだ動きはありません。そろそろ火が消えるかと思われます。》

《だとまもなくだろうな。》

《動きが御座いましたら直ぐにご連絡をいたします。》

《ああ。》

シャーミリアが意識を半分ほど河童のハイグールに飛ばしてはいるが、こちら側では問題なくついて来ている。さらに斥候はトライトンに代わりに、空を飛べるマキーナが専任で行っていた。

《ギル。》

俺は進みながらも西部戦線で総指揮をとっているギレザムに念話を繋げる。

《は!》

《こちら敵の本拠地のひとつ前の都市に到着しそうだ。》

《ではこちらも計画通りに。》

俺は既に魔人達に指示を出していた。

まず西部の3つの拠点にはモーリス先生が結界を張り、更に敵を捕らえた収容所にも防御結界を張ってもらった。次に前線基地に置いて来た戦闘車両を、各拠点へと移動させるように伝えそれも全て完了している。

《モーリス先生は置いてきたいところだがな。》

《主力が動きますので拠点に残すのも危険かと。》

《だな。とにかくラーズには集中して先生の護衛をさせるように。》

《わかりました。我も細心の注意を払います。》

ギレザムとラーズが付いていればモーリス先生に万が一は無いだろう。

《ドラン!》

《は!》

俺は次に前線基地にいるドランに念話を繋ぐ。

《ゼダとリズはおとなしくしてるか?》

《いえそれが…》

《どうした?》

《一緒に連れて行けと。》

やっぱりそうなるか…自分たちがお世話になりっぱなしで、守られ続けている事を良しとしていなかったようだしな。

《わかった。彼らの護衛はどうなっている?》

《精鋭を張り付けています。》

《であれば致し方あるまい。連れてこい。》

《は!》

《エミルとケイナは?》

《我と共に。》

《分かった。最重要人物だからな護衛は抜かりの無いように。》

《もちろんでございます。》

《では全部隊に告ぐ!侵攻作戦開始だ!》

《《《《《《《《《は!》》》》》》》》》

部隊長の9人が返事をする。ギレザム、ガザム、ゴーグ、ラーズ、ミノス、スラガ、ドラン、アナミス、ルピアそれぞれが部隊を率いていた。

前線基地から500名と、3拠点からはそれぞれ300名の精鋭部隊を編成させファートリア地内に進軍させる。前線基地には数千人の魔人を残し、拠点にもそれぞれ200以上の魔人を残した。先行した部隊が拠点を設置し次第さらに兵士をおくり出す手筈になっている。また先行しているスラガの部隊100名が、まもなく俺達が最初に接触した村付近に到着するようだった。

部隊には前線基地に召喚していた、陸自16式機動戦闘車、87式偵察警戒車、87式自走高射機関砲、19式装輪自走155mmりゅう弾砲を移設、数台ずつ配備しデモン対策も万全にしている。

今回、急に大作戦決行を決断したのには理由があった。

南の村の跡地に陣取った敵の兵士がまた数人死んだのだ。そのおかげで村の跡地には光の柱が8本ほど立ち上った。さらに他の収容所にも数本の光の柱がたったらしい。建物の中で死んでも柱は天に昇るのだとか。恐らくは人死にが出るように、疫病を患っているやつなどを入れていたと推測された。

一番南の村では死肉を食わせたから死ぬのが早まったらしいけど…

そしてもう一つ

「まさか内地にまでそれがあるとはな。」

俺達が行軍している時にも光の柱が立っている村を発見したのだった。最初に接触した村では、盗賊に襲われて死人が出ても光の柱は立たなかった。おそらくは最初の村はデモンの干渉を受けていなかったのだろう。しかし昨日通りかかった村で数本の光が上がっていたのだ。

「あちこちに光の柱か…なんだろうな?」

オージェが言う。

「わからんがデモンなどが発生した報告も無い。」

「不気味ですね。」

「本当だよ。悪い胸騒ぎしかしない。」

「とにかく早く敵の本丸にたどり着くのが優先だな。」

「ああオージェ。ここからは本当に危険だと思う。オージェには面倒をかけるが人間たちを守ってくれ。」

「もとよりそのつもりだ。面倒などと思ってないよ。」

「ああ。」

「ラウル様。」

「どうしたカーライル?」

「まもなく聖都方面と東へ抜ける道の分岐に差し掛かります。そこにはファートリアの10指に入る大きな都市が御座います。」

「わかった。さてと虎穴に入らずんば虎児を得ずだな、鬼が出るか蛇が出るか見ものだ。」

「ふふ、デモンが出るかカースドラゴンが出るかって感じですね。」

グレースが気楽な感じに言っているが、緊張しているのが伝わってくる。あのカースドラゴンの脅威を知っているだけに無理はない。

それから俺達は3時間ほど進んだところで小高い丘の上に出た。その崖の上から眼前に広がるのは巨大な都市だった。この世界に良く見る市壁に囲まれた堅牢な都市である。

俺達はその崖の上で先行していたマキーナと合流した。

「大きいですね。」

グレースが言う。

ユークリット王都ほどではないが、そこそこの人間が住んでいるだろう大きさの都市がそこにあった。

「カララ。都市に人はいるか?」

「‥‥‥。」

カララが集中する。

「その…」

「どうだ?」

「残念でございますが、人間の反応は一人もございません。」

「やはりそうか。」

「そして間違いなくデモンがおります。これまで相対した者よりもかなり気配は大きいかと思われます。」

「数は?」

「それが…、強大なデモンは1体ですが、デモンは数体おります。さらにデモンの配下と思われる者の数が無数に…。」

どうやらだいぶ深刻のようだ。出来れば人間が生きていてくれればなんて淡い期待を抱いていたが、そんなに甘くはなかった。

「街を迂回するしかないだろうな。」

「街の周辺の森は大丈夫なんだろうか?」

オージェが言う。

「近郊はまずいだろ。かなり遠回りになるが、北に見える丘陵地帯を越えて行かないとダメだろうな。」

「日数がかかるぞ。」

オージェがチラリとマリアやグレース、カーライル、オンジ、セイラを見る。もちろん彼らが居なければ1日で走破できそうな丘陵地帯ではあった。

「僕たちが足を引っ張ってますかね?」

グレースがそれに気が付いて言う。

しかし決してそんなことはなかった。カーライルが居なければ迷わずに聖都に着く事など出来なかったろう、マリアには暗殺の時に遠距離狙撃をしてもらわなければいけないし、オンジに関してはグレースの精神的な支えになっている。もちろんそのグレースにはヴァルキリーの運搬と言う意味でいてもらわなければならない。

「いや、この作戦に最低限必要な能力の持ち主を集まって来ているんだ。そしてこんなことは想定内だよ。」

「そもそも敵は、現段階で俺達の存在に気がついては居ないのだろうか? 」

「もし気が付いていれば既にどこかで攻撃を仕掛けて来るだろうさ。」

「それならば、母さんを呼んで背に乗って飛んでいくというのはどうだ。」

オージェは巨大龍のメリュージュをいつでも呼べるらしいが…

「それだと敵にばれてしまう可能性が高い。ここまで深く侵入した意味が無くなってしまうから、それはあくまでも脱出する時だけだろうな。」

巨大な龍が飛んで来れば間違いなく敵は気が付くだろう。暗殺も奇襲も全てが水の泡になってしまう。

「そして見ろ。」

「ああ。」

「ですね。」

到着した時から気がついていた。その巨大な都市には光の柱が数十本上がっているのだった。

「人間の死体を苗床にした光の柱が、この都市の近隣にも数本立ち上っている。」

「あれはいったい何なんだろうな?」

「わからん。モーリス先生の知識にもない物だそうだ。」

「あれについては手の打ちようがないと言う事ですね。」

「そうだ。」

とにかく俺達は時間を短縮する為の話し合いをした。あまりぼやぼやしていると敵軍と侵入してきた魔人軍部隊とが衝突してしまうだろう。

「戦闘車両は発見される可能性が高い。よってこれまで同様に森林地帯を縫うように東へと向かうが、ここからはほぼ休み無しの行軍となる。疲労の具合を見て俺かオージェ、ファントムがその者を背負って進むことにする。ここからは時間の勝負となると思うので皆そのつもりで。」

「「了解。」」

「「「はい!」」」

「「「「かしこまりました」」」」

それぞれが返事をした。

人間達にとっては過酷な行軍が始まった。

丘陵地帯から丘陵地帯へと道なき道を突き進んで行く14人。昼夜を問わずに移動すれば明日には向こうの丘陵を越える事が出来るだろう。

《ご主人様。》

俺達のグループの後方をついて来ているシャーミリアから念話が入った。

《動きがあったか?》

《はい。》

《どんな感じだ?》

《誰かが洞窟入り口の岩をどかしているようです。》

《分かった。》

そして俺は着ているヴァルキリーに話す。

《ヴァルキリー。》

《はい我が主。》

《俺は移動から意識を放す。お前が隊の先頭を走り、俺達が話していた内容どおりにサポートしてくれ。》

《お任せください。》

そして俺はヴァルキリーに進行を任せ、泥棒髭ハイグールに意識を移したのだった。

《シャーミリア。》

《は!》

俺の隣には河童に意識を共有したシャーミリアがいる。洞窟の中にはゴーレムが立ち並んでいた。

ゴガン!

ガラガラ!

ゴゴゴ!

そして入り口の方からは岩をどけるような音が鳴り響いでいた。

《敵は侵入して来たか?》

《いえ。気配はしますが、今のところ洞窟に侵入してくる様子はございません。》

《手の込んだことをしてくる割には確認しないとか、大雑把な相手なんだろうか?》

そんな疑問を持っているとシャーミリアが言う。

《ご主人様!1体が中に入って来たようです。》

《1体?》

《はい。》

ズズズズ

ズズズズ

ズズズズ

なんか壁にこすれたような音が響いて来る。しかもノロい感じがする。

《もう間もなく姿が見えると思われます。》

ズズズズ

ズズズズ

ズズズズ

《ご主人様。もう見えても良いかと思うのですが、敵は恐らく姿を消しているのだと思います。》

ガァァァァァァァァ

いきなり物凄い吠える声が鳴り響く。

ビリビリビリ

もしかすると敵はゴーレムを見つけて威嚇しているのかもしれなかった。

《ご主人様見てください。》

俺は洞窟の入り口の方を見る。

《四方の壁が削れております。》

シャーミリアに言われて目を凝らす。すると洞窟の天井や壁が崩れており、何か図体の大きい物がこちらに進んできているのがわかった。

《敵はこの穴に対していっぱいいっぱいって事か?》

どうやら敵はわざと入ってこなかったんじゃなくて、体がデカくて洞窟に入ってこないようにしていたらしい。

《この敵は攻撃して来た敵集団の先兵かと。気配は弱いようです。》

《なるほどなるほど。コイツは狭い洞窟に無理やり突っこんで確認しに来たって事か?》

《いかがなさいましょう?》

《だと身動きできなくなってるんじゃないか?火を吐けば自分にも被害が及ぶぞ。》

何も言わずともやる事が決まった。

俺とシャーミリアは黙ってハイグールの二人を操り、シンクロするように手榴弾の頭陀袋に手を突っ込んだ。

泥棒髭と河童は不可視の敵に対して、次から次へと手榴弾を放っていくのだった。