軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第423話 ゴーレム脱出作戦

俺は遠隔操作していた泥棒髭アバターから一旦意識を放す。俺の隣ではまだ河童を操るシャーミリアが座っていた。俺達二人が広めのテントで話もせず、ボーっと座っているのを誰かが見たら、一体何をしていると思われるだろう。

それはさておき、俺はみんなの様子を見るため一旦テントを出る事にした。

「さて…。」

テントのカバーを上げて外を見ると…

「ラウル様!」

目の前にカトリーヌとマリアがいた。いきなりカトリーヌから声を掛けられたため俺は少し驚いてしまう。

「お、おう!どうした?」

「…あの…。」

「ん?何?何かあったのか?」

「いえ、あの…。」

「敵襲か?」

「特にそういう事ではございません。」

「じゃあなに?」

「ラウル様は今このテントで何をなさっているのですか?」

カトリーヌが聞いて来る。

え?やっぱり心配させちゃったかな?

俺がどぎまぎしながらも、カトリーヌなら別にいいかと思い真相を話そうとする。

「ちょっと立て込んでいるんだ。俺とシャーミリアである事をやっていてな。」

「ある事を?ずいぶん静かでいらっしゃいましたが?」

「実は周りに聞かれたくない事もあったから。」

俺はカトリーヌの耳に口を寄せて小さい声で言う。

「聞かれたくない事!?シャーミリアと二人きりのテントで何をなさっていたのですか?」

ん?いきなり二人でテントに潜りこんだから心配してくれていたのかな?

「えっとまずは説明しなくちゃならないんだけどいいかな?」

俺はカトリーヌの腕を掴んでテントの中に引き込む。

「あっ。」

「マリアもおいで。」

「はい。」

テントの中に入り、二人はボーっと座っているシャーミリアを見た。

「え?シャーミリアは大丈夫なのですか?」

「ああ、これはある事を頼んでいるからな。話しかけても大丈夫だよ。」

「いえ、何か集中しているようですが?」

「とにかく俺達がやっている事を話すから、内密にお願いする。」

「はい。」

「マリアもいいね。」

「私はラウル様からのお話を他で話す事などございません。」

「わかった。」

そして俺は盗賊をハイグールにした事、かなりの数の盗賊を養分にした事、そしてそのハイグールを俺の系譜に組み込みシャーミリアの眷属にして操っている事を教える。

「‥‥‥。」

あれ?なんかカトリーヌが静かになってしまった。さすがに非人道的な事で引いてしまったかな?

「カティ…」

「失礼しました!」

カトリーヌが頭を下げて来る。

「え、え!どうしたんだい?なんでカトリーヌが謝るんだ?」

「私は少し勘違いをしておりました。」

「えーっと、勘違い?」

「は、はい!いえ。何でもありません!そんな重要な作戦を遂行中だったとは露知らず、おかしな勘繰りをしてしまいました。申し訳ございません。」

「おかしな勘繰り?」

すると後ろにいるマリアが口を開く。

「ですからカトリーヌ様。ラウル様がこの状況で何かやるとすればそういう事です。」

「ごめんなさいマリア。本当にマリアの言うとおりだった。」

「マリア?どういう事?」

「いえ、大したことではございません。カトリーヌ様がラウル様を心配なさっていただけです。」

「そうかそうか!カトリーヌは優しいな。俺は大丈夫だよ!遠隔で泥棒髭を扱うのがしんどいけど、慣れれば何とかなりそうだから!」

「わ、わかりました。それではお続けください。」

「じゃあ、カティがここで俺を見ててくれよ。衰弱しそうだったりしたら回復魔法をかけてもらうから。ただシャーミリアには回復魔法はかけるなよ。」

「はい!」

「マリアは周りの人たちが心配しないように、話をしておいてくれるか?俺が疲れているようだから深く休んでいるとでも言っておいてくれ。」

「かしこまりました。」

マリアがテントを出ていく。俺がみんなにいろいろと話をする手間が省けて良かった。

「カティは嫌じゃなかったかい?」

俺は盗賊を生贄にした事を聞く。

「いえ、盗賊を利用してそんな入り組んだ作戦を遂行なさっているなんてすばらしいです。」

「やっぱり!カティならそう言ってくれると思っていたよ。」

「は、はい!ありがとうございます。」

「じゃあ安心して潜れる。俺に何かあればすぐに頼むよ!」

「はい。」

気のせいかカトリーヌが真っ赤になっているような気がするのだが、きっと俺のやっている作戦を聞いて興奮したのだろう。さすがはナスタリア家の血筋を引くものだ。それぐらいは許容範囲のようでよかった。

とりあえず俺がいろいろやろうとしていた手間が省けたので、再度泥棒髭ハイグールに同調した。

再度視界に貴族の屋敷とゴーレムたちが戻る。

《どうだ?シャーミリア。》

《動きはございません。》

《膠着状態に入ったか。恐らく先ほどの手榴弾が多少効いたんだろうな?》

《しかし致命傷にはならなかったと思われます。》

《そうか。さてと‥どうするかだが…。》

《ご主人様。》

《なんだ?》

《カトリーヌ様はよろしいのですか?》

《よろしい?なにが?》

《ご主人様に対する感情の変化と体温上昇、分泌物の過多が見受けられました。》

《ああ、そりゃ盗賊をグールにして全部殺したなんて聞いたらそんな風にもなるさ。》

《いえ、私奴が感じ取ったものはそういった類ではなかったように思います。》

《だとしたらいったいなんだ?》

《‥‥いえ。私奴が無粋な推測をしたまで、このような作戦中に無駄話をしてしまい申し訳ございませんでした。》

《ん?なんか分からんけどいいのか?》

《はい、問題は無いかと思われます。》

なんだなんだ!カトリーヌといいシャーミリアと言い、俺の知らない何かを知ってる感じがする。だがそれこそシャーミリアの言う通りで、重要な作戦中だから戦闘に集中しなければ。

「ゴーレム!防御態勢を解け!」

ゴーレムが広がり、ドーム状に俺達を守っていた体制から整列するように両脇に並ぶ。

「お前たちはここで待機!敵の侵入を確認したらすぐに攻撃をしろ!しかし建物から出るな!魔法で蜂の巣にされる可能性がある。」

ゴーレムはもちろん返事をしない。

《シャーミリア!この建物の一番高い位置に登って周辺の確認を行う。》

ゴーレムたちにこの場を任せ、街を見渡せる最上階へと向かう事にする。

《かしこまりました。》

《ついてこい。》

《は!》

泥棒髭を操り屋敷内を徘徊する。後ろには河童のシャーミリアがぴったりとくっついて来るが、やはりシャーミリアとの戦闘コンビネーションは安心できる。

階段にも絨毯が敷かれており、相当位の高い人物が住んでいたと思われる。二階に上がると廊下が左右に続いており、更に上に上がる階段があった。俺達はさらに上の階を目指して登っていく。

《3階が最上階だな。とりあえずどこかの部屋から外を確認するか。》

《はい。》

しかし…泥棒髭と河童が貴族の屋敷を徘徊していると本当に泥棒みたいだった。

ひとつの部屋のドアを開くと中は寝室だった。

《ここの住人たちはどこに行ったんだろうな?》

《残滓も残っておらないようです。》

《そうか。いなくなってからだいぶ月日が経っているのかもな。》

《はい。》

泥棒髭と河童が窓際によると壊れた街並みが眼前に広がる。壊したのはもちろん俺達だが。

《敵はどこだ?》

《気配は遠いですが、こちらに意識を向けているのは間違いありません。》

《敵も警戒しているって事か。》

《あるいは何かを狙っているものかと。》

《方角はこっちか?》

《はい。》

敵は俺達が侵入してきた方角の街の入り口か外にいるらしい。ゴーレムの大きい図体では動けば目立って直ぐに見つかってしまう。恐らく回り込んでの攻撃は無理だろう。

《逃げるか。》

《それも手段としてはあるかと愚考します。》

《ちょっと市街戦はこちらの方が不利だよな。》

《はい、動けば目立ちます。そして守りに入るには木造の住居は弱すぎます。》

‥‥という事はこの街を抜けて郊外に出てみるか。東は方角からすれば聖都方面になるはずだ。だがそちらに逃げても何があるのか分からない以上、行き当たりばったりになってしまう。あっという間に追いつかれて魔法の集中攻撃を浴びるだろう。

《囮はいかがでしょうか?》

街並みを見ていた河童のシャーミリアが言う。

《囮か…》

《破損してしまったゴーレムが3体ございます。それらの2体を住居の密集する南の方向に逃げたと見せかけて突進させます。もう1体を遅れて南西に走らせます。》

《その間に俺達が東に抜けると。》

《はい。》

《倒されれば直ぐに来るだろうが、敵は手榴弾にビビってるよな。》

《効果はありそうですが、驚いているだけかもしれません。》

《3体のゴーレムの手にピンを抜いた手榴弾を握らせて、追いつかれそうになった時に上空に放らせるか。ゴーレムの突進にひるんだすきに俺達が東へ抜ける。》

《かしこまりました。》

《東も確認しよう。》

そして泥棒髭と河童が東側の部屋へと入っていく。東側に見えているのは壊れていない街並みと開いている門。そこから先には草原が広がっているようだが、その更に先に山が見える。その山には森も見えるので、そこならば多少有利に立ち回れるだろうか。

俺達はそのままゴーレムの待つ一階まで降りる。

「よし!お前とお前とお前!手を出せ!」

壊れたゴーレム3体が手を前に出した。一体は手が一本しかないので合計5本の手だ。

「これを握りしめろ!敵の攻撃で行動不能になりそうになった時、上空に思いっきり放り投げるんだ!」

ピンを抜いた手榴弾のグリップを放さないように、ひとつひとつ慎重に握らせていく。

「今はぜったい放すなよ!」

そして3体のゴーレムを再度玄関口に連れて行く。

「お前とお前!先にこっちの方角へと真っすぐ走っていけ!とにかく走れるだけ走り続けろ!そしてお前!お前は2体が見えなくなったらこっちの方角へと走り出せ!なるべく建物を突っ切って壊しながら進むんだ。」

ゴーレムが俺の指示した方向を向く。

「行け!」

ドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドド

2体のゴーレムが土煙を上げて南方に走って行った。

「よし!残りのゴーレムは俺達についてこい!」

泥棒髭と河童に1列になってついて来るゴーレムたち。建物をなるべく壊さぬように裏口に向かって歩いて行く。

ドゴーン

バゴーン

ズガーン

どうやら魔法攻撃が始まったようだ。それでもゴーレムが走る足音が聞こえるのでまだ生きているようだ。

「いまだ!」

泥棒髭と河童が裏口を出て街の東に向かって走る。するとゴーレムたちも一列になってついて来るのだった。

ドドドドドドドドドドド

静かにとはいかないが、向こうで魔法の爆撃音が響いているから気づきづらいはずだ。

バゴッ

ドドドドドドドドドド

どうやら正面玄関に待機していたもう1体が走り出したらしい音がする。

《本当に指示通り動くんだな》

バギッ

バキバキバキバキ

さらに俺に言われた通り、建物の中を突き進んで行ってる音が聞こえる。その音を聞きながら、俺達は都市の裏門を抜けて街を出る事に成功したのだった。

パパンッ

手榴弾の炸裂した音を聞き分ける。

手榴弾の音は1回なので1本腕がやられたらしい。

「無駄死にではないぞ!」

俺はそう言うと一目散に東の山に向かってひた走るのだった。