軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第421話 謎の襲撃者

グレースが10体のゴーレムを収納袋から取り出して命を吹き込んだ。俺達の前にずっしりと佇んでいるゴーレムたち。グレースが出した指示は泥棒髭と河童に付き従う事。

「それで、二人のお名前は?」

カーライルが聞いて来る。

ガスと…もう一人はなんだろ?

「ヘンナオとアルシンだそうだ。」

とりあえず俺が忘れ無さそうな名前を付けておく。

「よろしくお願いしまうす。ヘンナオさんアルシンさん。」

カーライルが手を伸ばすが泥棒髭と河童は無反応だ。しかたがないので俺が操りカーライルと握手した。

「冷たいですね…。」

カーライルが言う。

「ヴァンパイアだからね。」

量産型盗賊ハイグールだけど。

「それにひと言も喋っていない。」

カーライルの言葉に、オージェとグレースがファントムを見た。もしかしたら雰囲気が似ている事に気が付いたのかもしれない。

俺が慌ててヘンナオの口から言葉を発する。

「あーすまん。おりゃあこんな声だから。」

物凄い滑舌の悪いしゃがれ声が出て来た。たぶん声帯とか変化してまともに発音できないのかもしれない。

「こちらのかたも?」

アルシンが頷いた。

《ご主人様。申し訳ございません…こんな出来になってしまうとは。》

《ハイグールに喋らせるなんて元々無理な要望だったし、お前が気にすることはないよ。》

シャーミリアが謝ってくる。

「気になされている事を強要してしまったようですみません。」

逆にカーライルが変な方向に気を使ってくれたので良かった。ヘンナオとアルシンが顔の前で手を左右に振る。動きがあまりにもシンクロしすぎているのは仕方がないだろう。

微妙な空気が流れたがオージェやグレース、トライトン、オンジ、カトリーヌ、マリアがヘンナオとアルシンに挨拶をした。カララ、ルフラ、セイラ、マキーナは完全に事情を把握しているため黙っている。

《ラウル様。》

《どうしたルフラ。》

《私とカトリーヌが一緒になればバレますが?》

《彼女は大丈夫だ。むしろ泥棒髭と河童を前線に送り出す事に納得してくれるはずだ。》

《わかりました。》

ルフラはカトリーヌの神経まで浸透していくのだが、その時に意識を共有する。そうすればおのずと泥棒髭と河童を仲間にした経緯は分かるだろう。しかし彼女はナスタリア家の血を引く者、そんなことで動じないだろう。

「それじゃあヘンナオさんとアルシンさんにはゴーレムを率いて、王都方面に向かってもらいます。」

「こんな危険な任務を本当に大丈夫なのか?」

オージェが言う。

「もちろんです。」

ヘンナオにガラガラ声で答えさせる。

「グレース。 頭陀袋(ずだぶくろ) を二つ用意してくれ。」

「了解。」

グレースが頭陀袋を用意してくれたので、俺はその中にM26手榴弾を詰め込んで泥棒髭と河童に一袋ずつ渡した。

「何かあったらこれを使ってください。」

俺が言うと、泥棒髭と河童がコクリと頷く。どんどん顔色が悪くなってきており、どことなくファントムの質感に似てなくもない。

そして泥棒髭と河童の二人がゴーレムの前に立つ。

「それじゃあ、お二人はゴーレムを率いて王都に向かって下さい。」

ぺこりと頭を下げて街道の方に向けて歩いて言く泥棒髭と河童。そのうしろをぞろぞろとゴーレムたちが付いて行くのだった。

「ラウルよ。」

「ん?なんだオージェ。」

「あんな大雑把な説明で大丈夫なのか?」

「ああ、彼らは歴戦の猛者だ。」

「ならいいんだが。」

俺のよくわからない答えに、なんとなく納得するオージェ。

そして俺達の視界をぞろぞろと歩いて行く、二人の盗賊とゴーレムたち。

俺達が陽動部隊を見送っていよいよ東へと向かう事になった。俺達が進むのは相変わらず森の中となるが、目立つ陽動部隊を送ったため日中も動いてみる事にする。俺とシャーミリアが盗賊狩りをしながら国内を見て回った限りでは、日中も普通に生活しているような村があった。それほど警戒する必要が無いと判断しての事だった。

「なんか顔色悪かったですが、やっぱり彼らも怖いんじゃないですかね?」

「いや、グレース。彼らはヴァンパイアだし、ああいう顔色なんだよ。」

「えっと、シャーミリアさんとマキーナさんはそんな顔色してませんよね?」

「ああ、この二人は進化して俺に近づいたからな。元は白炭のような顔色をしていたんだ。」

それは本当。

「そうなんですね。なっとくです。」

グレースがなぜか納得してくれたので俺は皆に号令をかける。

「よし!みんな!出来るだけ急いで聖都の東側に向かう。敵との接触はなるべく避けるように動き、万が一接触した時に人間なら銃火器を使わず対処、デモンとの接触となれば銃火器を使用する。敵の戦力が対処不能と判断されたときは、オージェの母君であるメリュージュさんに救援要請し戦線を離脱する。」

俺の指示に皆が返事をした。

「では行こう。」

俺達は再び東に向かって進み始めるのだった。

《シャーミリア。進軍の舵取りは任せる、俺は南に仕向けたゴーレム隊に意識を向ける。》

《はい!ご主人様は集中していただいてよろしいかと。》

《ああ、よろしく頼む。》

隊の先導はシャーミリアに任せた。

俺が視界共有で泥棒髭の視界を見ていると、のどかな田園風景の中を黙々と歩いているようだった。シャーミリアと視界共有した時はかなり鮮明にはっきりと見る事ができるのだが、泥棒髭の視界はセピア色でノイズが混ざる。

ゴーレム隊が、のしのしと歩いて行くと村に差し掛かった。村の中をそのまま通らせると、さすがに村人がビビると思うので迂回して村を回り込んで歩いて行く。

《ここの村は盗賊に襲われてないのかな?》

そんなことを思いながら見回していると、村人がゴーレム隊に気が付いて一目散に逃げて行った。村の中には村人もいたのだが、慌てて家の中に入って扉を閉めている。

《そりゃそうだよな。バケモノと石の人形の行列だもんな…怖すぎるよな。》

早速村人に発見されてめっちゃ警戒されてしまった。

それでもお構いなしで突き進んでいく。

《なんとなくこんな感じか。》

小隊が悪目立ちしている事を確認して手ごたえを感じる。

《よし。》

俺は次に泥棒髭を走らせ始めた。すると河童もゴーレムたちも一斉に走り出してついて来るのだった。人間と違い動きがそろっていて面白い。

ドスドスと地響きを立てながらゴーレム隊はひた走る。

そして2日が立ち泥棒髭と河童、ゴーレムたちは街道が分岐している場所にある街に着いた。これまで通過して来た村々とは違って、かなりの大きさがあるようだ。この街を抜けて更に東に突き進んでいくとファートリア神聖国の聖都があるらしい。もちろん俺はその街に入ることなく迂回して行こうとする。

《あれ?街が変だな。》

いままでの村とは違い市壁が設置してあり門もあるのだが、その門は閉まっておらず人の姿も見られなかった。俺は迂回するのをやめてゴーレム隊を門の方に差し向ける。門番などもおらずどこにも人影は見えなかった。

《入ってみるか。》

俺は泥棒髭を操りそのまま街の中へとゴーレム隊を入れる。街に人影は見えず馬車があれど馬も何もいなかった。街中の大通りを歩いているが、どうやらゴーストタウンのようになっていて建物は荒れ果てていた。

《何があったんだ?》

なんとなく予感はしているが、それが正解かどうかは分からない。俺は泥棒髭を通じて叫んでみる。

「だれかいませんかー!」

しゃがれ声で叫んで様子を見てみる。

シーン

一切答えが返って来ないので隊をそのまま進めてみる。3メートルも超えるゴーレム隊街中を悠々と歩いて行く。

《もしかしたらビビッて隠れているんだろうか?》

そんなことを考えている時だった。

「おや?これはなに?」

どこからともなく声が聞こえて来た。

「この町の人ですか?」

姿の見えない相手に尋ねる。

「今はね。」

なんとも落ち着いたしゃべり口調だが、どうやら女のような声だ。

「姿を見せてもらえませんか?」

「お前達。西に住み着いたバケモノだろう?」

いきなり確信を突いたような事を言われる。

「バケモノ?違うぞ。」

「あははははははは!」

その声が笑い始めた。

「なにを笑う?」

「どこからどう見てもバケモノなんだけど!それを信じろって方がおかしいよ。」

んー確かに。正真正銘のバケモノだよな。

「とにかく姿を見せてもらえませんかね?」

「だって、おっかない魔法を使うとか言われてるから。」

「誰に?」

「言えない。」

うーむどうするか?

「じゃあいいです。この街は素通りして行こうかと思います。」

「はあ?」

「ダメなんですか?」

「お前たちはこれ以上進むことなんて出来ないけど。」

「なぜです?」

「いや、だって。そんな盗賊みたいななりをしたやつらをのさばらせておくわけにいかないし、岩のオバケが列をなしていくのを放っておけない。」

「じゃあどうするんだ?」

バシュー

ドゴッ

どこからか魔法らしきものが飛んで来てゴーレムの1体に当たった。

「何をする!」

「効くか試した。」

「いきなりだな。」

「でも簡単に壊れないんだ?」

なんだろう?今魔法攻撃をされたが相手がどこから攻撃しているのか、どんな魔法だったのかが分からなかった。幸いにもゴーレムは壊れていないようだ。次の攻撃を避けるため俺はそのまま泥棒髭を走らせ始めると、部隊も後ろをついて走り出す。ゴーレムがどれくらいのスピードを出せるか分からなかったが、そこそこの速度でついて来れるようだった。

「逃がさない!」

正面に土の壁がせりあがって来た。

壊れるかな?

「あの壁に体当たりしろ!」

ゴーレム一体に命じると、ゴーレムが思いっきり土の壁にぶつかる。

ガガ!

土壁が崩れてゴーレムがバランスを崩して転げる。

「壊すんだ?」

「全員、土壁を迂回して進め。」

ゴーレムは土壁を迂回して回り出す。しかし敵も回った先に土壁を出現させゴーレムを食い止めた。転んだゴーレムはそれぞれの場所でムクリと起き出して、何事もなかったようにその場所に立った。

うーん。

相手の正体も分からないしどうしたものか?

「建物を壊して散開しろ。」

泥棒髭を使って俺が指示を出す。するとゴーレムたちは四方に広がり建物の壁を壊して入っていく。

「まて!」

声の主がどれを追うべきか迷ったらしい。

俺はいったん泥棒髭と河童も建物に避難させて様子を見る。

「こら!でてこい!」

「ならお前が姿を現せ!」

「‥‥…。」

どうするか?遠隔での戦闘だと敵の位置などの掌握がし辛い欠点があるな。

泥棒髭の俺は建物に潜んで次の行動を考えるのだった。