軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第409話 治安維持と防衛隊

俺は貧しい人たちから手厚い施しを受けていた。

それほど広くない食堂で、ペルデレやアデルフィアに囲まれながら一人粗食を食べている。貧しい人たちが丹精込めて作ってくれた料理だ、俺はひとさじひとさじをじっくり味わって食べていた。

味は無いけど。

ここにいる皆は俺に気を使わせまいと微笑みながら見守っている。さっき村に提供するために出した岩塩を削って入れたくなるが、じっと我慢して味の無いスープをすすっている。

「本当にありがとうございます。」

俺の心の奥から感謝の声が出て来た。

「いえ。このような貧しい食事でおもてなしなど本来はすべきではないのでしょうが、流通が途絶え、この村の周辺で取れる物だけで何とか食いつないでいる状況なのです。どうかお許しいただけたらと思います。」

ペルデレが言う。

「いえ。私たちがやった事はそうたいしたことではございませんし、そんな立派なおもてなしを受けるような事はなにも。」

するとペルデレやアデルフィア、女たちが驚いた顔をして見合わせる。

「村を盗賊から助けていただき、そして火葬の手伝い、更にはこのような貴重な岩塩までいただいたのです。このような粗食でおもてなしなどでは到底お返しにはなりません。」

「いいえ。このお気持ちは何物にも代えがたい。」

本心だった。しかもあのような惨劇があった日にこれほどの事をしてもらうなんて、十分すぎるほどのお返しだった。

「そう言っていただけると助かります。本当にありがとうございます。」

「こちらこそ。」

皆が深々と頭を下げるので、俺も深々と頭を下げる。

「それで、この国の事なのですが。」

「はい。」

「冒険者が来ないとおっしゃってましたね?」

「こんな200人余りの村にも、小さなギルドの屯所があったのでございますが、いつしか解体されてしまい冒険者は寄り付かなくなりました。」

「ギルドが無くなった…」

「はい。さらに衛兵も来なくなって久しいです。」

やはりこの国でもやはりギルドは解体されてしまったらしい。これでは横の情報が取れないだろう。衛兵も来ないとなるとそりゃ治安維持は難しくなるか。

「だと魔獣などの退治は?」

「ここには大きな魔獣も来ませんので、村の自警団で対応できておりました。」

「だけど、その自警団がやられたということですね。」

「そうです。あのような盗賊が襲って来るなどは考えていなかったものですから。通常は盗賊が旅団などを襲って人を殺めれば、国の騎士がやってきて盗賊を討伐しますし、ギルドの冒険者が盗賊を撃退します。しかしそれらが居なくなってしまった今、我が物顔で奴らは荒らしをくりかえしていたようです。そもそも村に盗賊団など襲ってくる事は無かったのです。」

「なるほど。」

どうやらファートリア神聖国は完全な無法地帯と化しているようだ。そんな暴力が行われている現場に俺達が出くわしてしまったと言う事か。それなら内地はいったいどうなっているのだろうか?西部の辺境の村が平和に暮らせていたのは、俺達をおびき寄せるための罠だったのか?西部の村々では読み通り魔法陣が設置されていた。しかしこの村の中心には魔法陣は設置されてなかった。村人が一人も外出していなかった為、罠とは違う不穏な何かを感じ取って村に侵入したが、それが盗賊に襲われていたからという原因だった。

「それとしばらく前に、リュート人が大勢この道を通って西に行きました。そのリュート人たちが戻ってくる事は無かったのですが、戻らないのは西に巣くう魔物のせいだという噂だけが流れてきたのです。」

ペルデレが続ける。

「その噂を流した人物は?」

「それが、パッと現れて知らないうちに居なくなってしまったのです。」

「どんな人でした?」

「女性でした。どことなくとげとげしい雰囲気をまとう人でした。」

「そうですか…。」

村にそんなことを流布したからと言って何ができるのだろう?

「商人も訪れる事は無くなり、人の行き来が無くなってしまったのです。」

「そんなところに俺達が来たと。」

「はい。」

「誰か周りの村に行った方はいないのですか?」

「おります。」

「その人はなんと?」

「帰ってまいりませんでした。」

「帰って来なかった?」

「はい。」

「どうなったかは分かるのですか?」

「いいえ。その後迎えに人をやったのですが、その者も帰らず…もしかしたら魔獣に襲われて死んだか、盗賊に襲われてしまったのかわかりません。」

「そうですか。」

「これ以上被害を出さないためにも、それ以上の使者を送る事はやめました。」

「なるほど。」

そりゃ恐らく正解だろう。出て行ったものは既に死んでいる可能性がある、更に人を出しても戻ってこないだろう。

「村に魔法が使える者は?」

「おりません。」

「さらに自警団もいなくなってしまったと。」

「盗賊に殺されました。」

ペルデレが苦い顔をして言う。

「それで、これからどうするおつもりですか?村長もいなくなり、自警団もいなくなってしまった。村を守るすべがなくなったようですが。」

「村にいる男たちにどうにかしてもらうしかないでしょう。そして新しい村長を選ぶ必要があります。」

「ペルデレさんが村長になるわけにはいかないのですか?」

「ファートリア神聖国に女の村長などおりませんよ。」

そうだった。ファートリア神聖国は保守的で古い考えを持つ国だ。女性が村長をやる事は考えられないのだろう。

「そうなのですね。」

しかし村にまたあんな盗賊が来たらどうする事も出来ないだろう。しかし現状は村人を救う手立てがないか…。

しかし困った。最初に立ち寄った村でいきなり課題にぶつかってしまった。魔法陣罠はないようだが、他に懸念する材料が出てきてしまった。無法地帯となってしまった村々の治安をどうするのか?しかしそれをどうこうする前にもう一つ調べなければならない事がある。それはこの村人たちの魂核にデモンの刻印が無いかどうかだ。もし既に村人にその刻印がなされていれば、確実に敵に俺達の動きが筒抜けになる。

《シャーミリア。俺の会話は聞こえているな?》

《は!》

《俺は村を救いたい。しかし俺達の計画が筒抜けになる可能性がある。どうするのが妥当だろうか。》

《恐れながらご主人様。ルタンにて強制労働させている人間兵を連れてきて、村に潜り込ませ守護させればよいのではと私奴は愚考します。》

なるほど。村を守るための肉壁…いや護衛として、オージェが仕込んだ人間を護衛にか。さすがシャーミリア!人間兵を道具としか考えていないアイデア!

《今から飛んで2人ほど連れてこい。現地のサキュバスに冒険者としての記憶を植え付けさせろ。帰りは最高速度で飛ぶなよ、俺と違って簡単に死ぬぞ。》

《万が一の為、エリクサーの用意をお願いいたします。》

《分かった。朝までにはたのむ。》

《夜明け前にはご用意いたします。》

《マキーナはついて行けない、残していってくれ。》

《かしこまりました。》

「あの。お口にあいませんでしたか?」

どうやら俺は食事のスプーンが止まっていたらしい。念話に気を取らてボーっとしていたかもしれない。

「いえ。すべていただきます。」

俺は再び食事を始める。

「皆さん。今日はあんな恐ろしい事があったのです。そろそろお帰りになった方が良いのでは?」

アデルフィアと女たちに声をかける。

「いえ。命の恩人である方のおもてなしをおろそかには出来ません。」

なるほど。俺がゆっくり飯なんか食ってたらこの人たちは休めないのね。

俺は急いでパクパクと食べる。味が無いのでなかなか進まなかったがそれでも全て平らげた。

「ごちそうさまでした。」

「こんなものしかお出しできなくてすみません。」

「とても美味しかった、ありがとうございます。」

「いえいえ。」

「とにかく皆さんもお休みになった方が良い。出来れば私も休みたいです。」

「他の部屋も荒らされておりましたので、お嬢様方が寝ているお部屋と相部屋になりますがよろしいでしょうか?」

「ええかまいません。俺はお嬢を護衛しなくてはなりませんので、むしろ部屋は同じにしてください。」

「わかりました。」

そしてアデルフィアやジョーイ、女たちが俺に礼をして食器を台所に下げて行く。

「皆さんありがとうございました。」

「ゆっくりお休みください。」

アデルフィアが言う。

「はい。」

そして俺はペルデレの案内で寝室へと向かう。寝室の前に立って俺がノックした。

コンコン

「はい。」

マキーナが返事をして出て来る。

「お嬢様は?」

「既にお眠りに。」

「わかった。それではペルデレさん朝までお部屋をお借りします。」

「ごゆっくり。」

パタン

ドアを閉めて、ペルデレが階段を降りる足音が聞こえた。

「シャーミリアは行ったか?」

「はい。」

「朝まで間に合うかね?」

「私では数日かかって連れてこれるのは一人でしょうが、シャーミリア様ですから。」

「だな。」

「ご主人様はどうかお休みください。」

「すまないマキーナ。」

「私は休息など必要ありませんし、なにより先ほどご褒美をいただきましたので、かなり魔力が上昇しております。」

そう言えばそうだった。

「わかった。じゃあお言葉に甘えて寝るよ。」

「は!ご安心してお眠りください。」

「ああ。」

バフ

俺は急速に眠りにつく。いきなり深い眠りにつけるようになったのは、これまでの試練の賜物なのか、俺のスキルにそう言う物があるのか…

眠りに落ちた。

《ご主人様。》

夢の途中でシャーミリアから念話が入った。そして俺は急速に目覚めるのだった。窓の外は薄明るくなってきている。朝の4時半といったところだろうか。

《シャーミリア。人間は無事か?》

《3人連れてまいりました。生きてはおります。》

《3人連れて飛べたのか?》

《はい。》

《それでこの時間で着いたのか?》

《はい。》

すげえ…。

《エリクサーは?》

《必要です。》

《今行く。》

「マキーナ。これをもってシャーミリアの所へ、3人の兵を蘇生させたらシャーミリアと二人で戻ってこい。」

「はい。」

俺はマキーナにエリクサーカプセルを3つ渡す。

カチャ

窓を開けてマキーナは外に飛んで行った。そして待つ事数分、二人が窓から戻って来た。

「シャーミリアお帰り。」

「遅くなりました。」

「いや想定した以上で驚いたよ。サキュバスには洗脳させたか?」

「はい。人間は私達と離れ離れになってしまった冒険者だと思っております。私達を探してここにたどり着いたと。」

「上出来だ。」

「は!」

俺達と巡り合うのに自然なシチュエーションをお膳立てしてくれたわけだ。

すると一階から誰かが上がってくる足音が聞こえる。

パタパタパタパタ

コンコン

「はい!」

俺が扉を開ける。

「朝早くにすみません。皆様の護衛だったという冒険者が訪ねてきました。」

ペルデレが扉を開いて言う。

「え!そうですか!」

知ってるけど。

「村の護衛をしていたものが知らせてきました。」

「わかりました。今、お嬢様をおこします。」

「1階にておまちしております。」

「はい。」

パタン

ペルデレは俺達にそう告げると一階に下りて行った。

「よし!計算通りだな。」

「は!」

「じゃあ「冒険者」たちを迎えるとしようか。」

「「かしこまりました。」」

俺と2人は部屋を出て一階に下りて行く。すると階段の下でペルデレが待っていた。更にエントランスには村の男二人が立っていた。

「すみません。冒険者が来たと聞きましたが?」

「はい。ただ盗賊の件もありましたので、確認を取りにまいりまいした。」

「それでは会わせてください。」

「はい。」

村の男たちについて村長宅を出た。俺達の後ろにはそのままペルデレがついて来る。

村の西側の入り口には数人の村人と、めちゃくちゃ屈強な武装した3人の男が立っていた。

《えっと…オージェに鍛えられてた段階でも強そうだったけど、ずいぶん凄みに磨きがかかったようだ。》

《魔人達との連日の狩で鍛えられたそうです。》

《了解だ。》

念話で確認する。

「おお!お前達!よくぞ生きていたわね。」

シャーミリアが言う。これは俺が言わせているのではなくシャーミリアのアドリブだ。少しずつ演技というものを覚えて来たらしい。

「はい!お嬢様!魔獣に襲われて、はぐれてしまいましたが、ようやく追いつきました。」

冒険者に化けた兵士が言う。いやこの兵士は自分の事を本当に、俺達とはぐれた冒険者だと思っているけど。

「とにかく良かった。」

「お嬢様も二人も生きていて良かったです。」

「何とか森を逃げてきました。」

「よくぞご無事で。」

そしてそのやり取りを見ていたペルデレにシャーミリアが言う。

「この3人は私達が雇った冒険者です。元はバルギウスの兵だったと言う事で腕は確かですわ。」

「そ、それはそれは!よくぞこの村に!とにかくお疲れでしょうから、村長宅へどうぞ。」

「ありがとうございます。」

ペルデレについて、俺達と3人の屈強過ぎる男たちが村に入っていく。

《シャーミリアは、こんなデカイの3人も持って飛んで、もう着いたの?》

《申し訳ありません。5人持って来れましたが、加減が分からず死ぬ可能性がありましたので3人となりました。》

《いやいや十分だ。》

《ありがとうございます。》

昨日倒した盗賊たちだったら、恐らくこの3人には太刀打ちできないだろう。

《とりあえずこの村の護衛はこの3人に任せて俺達は旅立つことにしよう。冒険者がここに残るいいわけを考えなきゃな。》

《《は!》》

しかしシャーミリアのドライな発想は役に立つときがあるんだな。俺の国の大切な魔人じゃないから、心置きなく3人を置いていける。ペルデレは貧しいのにあんなに手厚い料理をふるまってくれたんだ、このくらいのプレゼントがあってもバチは当たらない。

俺はいつしか魔王的な考え方をするようになっていたのだった。