軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第407話 誤魔化し作戦

ぼろ切れに包まれた自分達の父、夫、息子、友、恋人だった者の亡骸を運ぶ村人たちの足取りは重い。身近な人を見つけては泣き叫ぶ者、遺体から離れない子供、あまりの惨劇に吐いてしまう者、それでもどうにか動ける人々が必死に広場へと遺体を運び出していた。

建物から運び出された遺体は16体で、村長と比較的若い男たちがそこに眠っていた。広場に集まった人たちは嗚咽を漏らしながらも祈りを捧げている。

《シャーミリアとマキーナも俺を真似てくれ。》

《《はい。》》

念話で伝える。俺が村人と同じように手を組んで祈りを捧げると、俺と同じように二人が遺体に向かって祈りを捧げた。

「それでどのようにすれば?」

村長婦人ペルデレが俺に聞いて来る。その遺体の中には自分の夫だった村長も横たわっており、涙を溜めながらも気丈にふるまい俺に尋ねるのだった。

「薪を集めてください。」

「わかりました。皆!家から薪を持ってきておくれ。」

ペルデレが言うと村人たちは一斉に薪を取りに行く。しかし戻って来た村人がもってきた薪の量では、16体の遺体を燃やす事は出来ない。

「ペルデレさん。これだけでは足りません。」

「しかし…これしか。」

「森に行って薪を拾ってこなければなりません。」

「森に?」

「はい。」

村人たちがざわつく。

「どうしました?」

「しばらく神都の騎士や衛兵が巡回をしなくなりまして、自警団の数だけでは魔獣を倒す事もままならなかったのです。森には魔獣が住んでおりますので、ここにいる者達だけではどうにもなりません。冒険者も訪れる事は無くなったため森にはとても入れないのです。」

あら。どうしよう…俺達が勝手に拾ってきてもいいけど、無防備に森に入って大量の薪を3人で運んできたら、村人は俺達を完全にモンスター認定してしまうだろうし。商人設定だから武器を持って無い体裁になっているしな。

「みんなで取りに行くしかないんじゃない?」

アデルフィアが言う。

「これ以上犠牲を増やすのはだめよ。」

ペルデレが答えた。

確かにペルデレの言う事が正しい、しかし今はこの周辺の森には魔獣がいない。オージェが来ているため数十キロにわたって魔獣は近寄らないはずだった。でもそんなことを知っているのは俺達だけなので言うわけにはいかないし、何とか誤魔化してみんなを連れて行くしかない。

《シャーミリア》

《は!》

《俺の言うとおりに言ってくれ。》

《かしこまりました。》

シャーミリアが村人に向かって口を開いた。

「みなさま!私達は商人と言う商売柄、旅をすることが多かったのですが、多少の狩りの心得が御座います。昼間にこの近隣であれば小型の魔獣しかいないはずです。私の従僕とメイドであれば何とか対処できるでしょう。薪を取りに言っている間に、もし大型の魔獣が来た場合はくい止めますので、その間に皆さんは逃げてください。」

俺がシャーミリアに言わせている。

「お嬢!それはいい考えですね!」

シャーミリアの口を通じて俺が言ったことに俺が賛同する。

「あなた、先ほど倒した盗賊たちの武器が教会にあるはずだわ。ちょっと取ってきて頂戴。」

「かしこまりました!おい一緒に取りに行くぞ。」

マキーナに言う。

「まいりましょう。」

俺とマキーナが盗賊が使っていた武器を取りに教会に行く。しかし俺は教会で武器よりも驚愕の光景を目にしてしまった。礼拝堂の中に入っていくと盗賊たちのひっからびた死体が、カッサカサになっていたのだ。

いっけねえ。ご褒美だとか言っちゃったっけ。

「ああ、そう言えば俺、ご自由にって言ったもんね。」

「この者たちの事ですか?」

「いやいいんだ。とりあえずこいつらの事どうやって誤魔化そうか?」

マキーナにアイデアを聞いてみる。

「誤魔化す?あ…。」

「村人に見られたら不味いだろ?」

「左様でございますね。」

「‥‥思いつかん。」

「ご主人様、村人は盗賊の人数を覚えていますでしょうか?」

「おお!良い案だ!他の放置した遺体を3体ずつここにもってきてくれ。」

「は!」

シュッ

マキーナが消える。

《シャーミリア。ちょっと困った事になった。村人が教会に来ないように適当につないでいてくれ。》

《か、かしこまりました。》

俺が何もせずに少し待っていると、鐘塔の上からドサドサと3人の盗賊の遺体が落ちて来た。

「よしよし。」

《ご主人様…申し訳ありません。アデルフィアとジョーイと言うものがそちらに向かいました。どうしてもお手伝いをしたいと言う事で。》

シャーミリアが念話で緊急通信をしてきた。

《うっそ!》

《はい。》

《マキーナ!急げ!!》

ガチャ。

うわ!教会の正面玄関が開いたようだ!まもなくアデルフィアとジョーイがここに来てしまう!

トントントン

足音が近づいて来た!

ガチャ

ドサドサドサ!

同時だった…

「旅の方!武器は大丈夫でしょうか?」

「え、ええ!結構な武器の数になりそうです。よく考えたら盗賊たちの遺体も処理しなくてはいけないんですね。」

「そ、そうでした…。」

アデルフィアが嫌そうな顔で言う。

「メイドさんは?」

ジョーイ少年が言う。

「あ、お二人の後ろに。」

「えっ?」

「ああ!」

マキーナが何事もなかったようにそこに立っていた。しかも瞬間的に盗賊たちの武器を懐に抱えていた。めっちゃ優秀。

「それではお二人には、こちらを運んで行っていただけますでしょうか?」

「はい、分かりました。」

「重いですね。」

「私達は残りを回収して向かいます。お先に。」

「はい。」

「わかりました。」

アデルフィアとジョーイは、マキーナから盗賊の武器を受け取って外に出て行った。

俺の足元には干からびてカピカピになった遺体があったが、椅子の陰になって彼らには見つからなかったようだ。

「見られてないよな?」

「恐らくは。」

俺がカピカピの遺体を蹴っ飛ばすと、ファッサーっと砂になって床に広がった。

「マキーナもやってくれ。」

「は!」

スパッ

パッサァー

スパッ

パッサァー

二人でカピカピの盗賊の遺体を蹴り飛ばして回り、あちこちに中身が無くなった衣服と砂だまりができて行く。

「よし!これでなんとなく誤魔化せるぞ。」

「では武器を回収してまいりましょう。」

「おう。」

俺とマキーナは二人で盗賊たちの武器を集め外に出た。

「あー遅くなりました。」

村人たちに言う。

「いえいえ。お嬢様から従僕であるあなたのお話を聞いておりました。」

ペルデレはさっきより柔らかい印象だ。

「俺のですか?」

「はい。とても良い人で、何でも仲間思いのお人だと。」

「は、はあ。お嬢様!そんなことを?」

「ええ、それはそうよ。ご‥あなたは素晴らしいのですから、自慢のご‥従僕なのですわ。おーほほほほ。」

「はは…それほどでもありませんよ。」

えっと余計な事は言っていないと思うが、何を話したんだろう?

《シャーミリア!何を話したんだ?》

《それは当然ご主人様の栄光の日々を。》

《俺達は商人なんだぞ。》

《もちろんその決まりは守って御座います。従僕としてどれだけ周りの人たちに良くしてくれたのか、どれだけの人を幸せにしたのかをお話しました。》

意外に器用に話をしていたらしい。

《な、なるほど。場を繋いでくれてありがとう、よくやった。見直したぞ!》

《もったいなきお言葉!》

「はぁぅ…。」

シャーミリアがスカートを押さえてぺたりと座り込んでしまった。どことなく息遣いが荒いようだが…俺が不用意に褒めてしまった。

「えっ!えっ!どうされたのですか?」

ペルデレが心配そうにシャーミリアに手を差し伸べて来る。

「いえ、大丈夫です!お嬢の発作が起きただけです。さあ…お嬢!息を吸って!はいて!吸って!はいて!」

「ふうふう、はぁはぁ。」

「お嬢!」

シャーミリアがスッと立ってキリリとする。

「大丈夫です。おさまりました。」

「本当に大丈夫ですか?お体が弱くていらっしゃるのね。」

ペルデレがシャーミリアの背中をさする。

「あら!こんなに体が冷えて!具合が悪いのね。」

いやいやいや。シャーミリアに体温は無いからそりゃ冷えてるわな…てか、体が弱い?シャーミリアが?ご冗談を。

「私は大丈夫です。さあ薪を取りにまいりましょう。」

「皆さん!お嬢様もこういっております!陽の高いうちに森から薪を集めましょう!」

「わ、わかったわ。」

そしてアデルフィアとジョーイ、俺達がもってきた盗賊の剣を若い男たちに配る。

「帰ったら、盗賊たちの遺体もどうにかしないといけません。とにかく急いでいきましょう。」

俺とシャーミリア、マキーナを先頭に若い男10人ほどが盗賊の剣を持つ。アデルフィアとジョーイを含む若い男女50人くらいがぞろぞろとついて来た。とにかく総出で一気に薪を集めるために森を目指す。

村を出てしばらく歩くと森が近づいて来た。とりあえず森の入り口の前に立ってみんなに声をかける。

「森は危険です!皆さん十分警戒して進みましょう!」

「おう。」

「わかった。」

村人たちが剣を構え周りを警戒する。

もちろんファントムが倒木などを集めてその辺に置いてあるはずだ。あとは魔獣を警戒するふりして薪を集めれば‥‥

あれ?

なんと倒木が几帳面に理路整然と積み上げられているのを遠目に見つけてしまった。どうやらファントムが一か所にきちんと集めてしまったらしい、奴はあまり器用じゃないので適当ではあるが不自然過ぎた。

《シャーミリア!先に薪の所に行って蹴散らしてこい!不自然だ!》

《は!》

シャーミリアが村人の死角に回るように木の陰に隠れる。

シュッ

一気に薪の方へと究極ダッシュで消えた。

そのまま村人と一緒に進むと、アデルフィアが言う。

「あれ?お嬢様がお見えにならないようですが?」

「え?そうですか?」

「その、木の陰にでも。」

そしてアデルフィアが木の影を覗く。

「ああ、こちらにいらしたんですね。一瞬見えなくなったので驚いてしまって。」

「ずっと前を歩いているわよ。」

「すみません。」

アデルフィアが不思議そうな顔をしている。

《薪はいい感じに散らしたか?》

《はい。仰せの通りに。》

《オッケー》

「きっとこっちの方にあるんじゃないでしょうか?」

「そうね、きっとこっちね。」

「大体は薪ってこういう場所にあるんですよね。」

俺とシャーミリアとマキーナが声を合わせて言う。

「そ、そうですか!ではそちらへ行って見ましょう。」

アデルフィアが言う。

「姉さん、あまり先行したら危ないよ。」

10歳のジョーイも短剣を握りながら周りを警戒している。剣を持つ村人が周りを囲み、武器をもたない人たちが真ん中を歩いて行く。

「そうだな。ジョーイの言うとおりだ、この森にはグレートボアが出る時もある。慎重に行った方が良い。」

「わかったわ。」

アデルフィアが答える。

そして俺達が薪が散らばっている場所に着くとあちこちから声が聞こえる。

「このあたりに倒木がいっぱいあるようだ!」

「とにかくみな手に持てるだけ集めろ!」

「集めた薪はここへ!」

村人たちが指示を出して薪が一か所に集められていく。

「なんかずいぶん集めやすく感じるな。」

「枝が切り落とされてる?ちがうか?」

「太いのもあるぞ。」

そして村人たちは十数本を一束にまとめて薪を縄で縛った。その作業をくりかえす事十数回、ゴロゴロと薪の束が転がされていく。

「だいぶ集まりましたね!」

俺が言う。

「そうですね。」

「じゃあ皆さん。薪を持って帰りましょう。」

4人一組で束になった薪を四つ角で持ち運び始める。結構な重さになると思うが4人でなら何とか運べるようだった。

「なんか…。」

男が一人つぶやく。

「ん?」

「ファングラビットも、動物も何も見当たらないようだが?」

「そう言えばそうだな…。」

「静かすぎないか?」

「確かに…。」

あれ?ヤバいぞ村人が異変に気が付き始めたんじゃないか?

「みなさん!とにかく陽が落ちたら森は危ない!急いで運び出しましょう!」

「お、おう!そうだな!」

「そうだそうだ!」

「急ごう!」

俺の掛け声にみんなが慌てて運び始めた。

《ふう。なんかひやひやすんなあ…》

《ご主人様。人間もなかなかに察しがいい物ですね。》

《あれだけの事があったんだ。用心もするだろうさ。》

《なるほどでございます。》

とにかく誤魔化しながら必要なものは全部集めた。

魔獣にも襲われる事はなかったし、村人の心も多少は雪解けしてくれるといいのだが…、あんな惨劇が起こった後じゃ無理かな…

俺は剣を構えて警戒するふりをしながら村人の後ろをついて行くのだった