軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第405話 血の礼拝堂

不謹慎にも教会の礼拝堂で、女を犯そうとしていたやつらが俺の挑発に乗って来た。暴力をふるう事に抵抗のない奴らの手加減の無い殺すつもりの攻撃だ。だが俺が魔人達とやって来た戦闘訓練に比べれば弱く遅すぎる。

《ノロいな。》

全ての攻撃を見切ることができた。

「くっ」

「こら!」

「てめえ!」

「このやろう!」

男たちの攻撃はことごとく空を切り俺にかする事すらできなかった。するすると男たちの攻撃を避けながら、座っている女子供たちの所にたどり着いた。

「怪我は?」

「あ、あの子が!ジョーイが!」

気の強そうな女が指をさす方向をみると、ピクリとも動かない少年が倒れている。

スッ

瞬間で倒れているジョーイと呼ばれた少年の元に来る。

《弱いが息はあるな・・だが頭が軽く陥没して、足が変な方向に曲がってる。》

俺はポケットからエリクサーカプセルを取り出して、パキっと割って少年に振りかけた。すると少年は薄っすら光り出し陥没していた頭蓋骨と足が元に戻る。

「ぷはぁー!」

すぐに少年は思いっきり元気よく起きて、空気を取り込むため大きく息を吸い込んだ。

「よう、少年。勇気あるな。」

「あ、あんたは?」

俺が少年と話をしているところで、ふいに男一人が後ろから斬りかかって来た。トンっと少年を押して自分はスウェイで躱し男の足をはらう。

バダーン

足をからめとられた男は、勢いよくつんのめって壁に顔面を強打してその場にへたり込む。

「足元注意。」

「お前らなにやってんだ!早くそのガキを始末しろ!」

大柄な男から言われた男たちは、左右の椅子を回ってこっちにやって来た。恐らく俺を挟み込むつもりらしい。

「ちょっとどいてろ。」

俺はしゃがみこんで復活した少年に言うと、這うように部屋の脇の方に寄っていく。俺が立ち上がった時には、男数人が俺を囲みこんで逃がさないようにした。

「死ね!」

一人の男が俺の胸に狙いを定めて剣を刺突してきた。瞬時に男の懐に踏み込み軽く腕を掴んで持ち上げ、俺の後ろに立っていた男の喉にその剣を突き立てた。

「カ八ッ」

喉を刺された男は血を吐き出して、喉を押さえうずくまる。するとその両脇に居た男たちが叫ぶ。

「お、おめえ!何やってんだよ!」

「い、いや違う!俺はこいつを刺そうとして…あれ?」

男がこいつを、と言って俺がいた場所を指さしているが、俺は既にそこにはいなかった。そうこうしているうちに、どんどん喉から血を流している男が床の血だまりに突っ伏した。

「あら?仲間割れ?可哀想にその人死んじゃったね。」

「て、てめえ!」

男を突いてしまった男が逆上して、俺の喉をめがけて水平に剣を振ってくる。俺は剣の切っ先を寸分で見切り、俺の目の前を通り過ぎた剣を掴む拳を思いっきり後押してやる。

バシュ

その剣はまた反対に居た男のこめかみに吸い込まれ、10センチほど頭蓋を割ってめり込んだ。

ドサ!

斬られた男は絶命した。

「ヒッ!」

剣をぶんぶん振っていた男は思わず剣から手を離し後ずさる。

「おい!何やってんだ!」

「いや分からねえ。確かにこいつを切ったはずなんだ!あれ?」

男は俺がいた場所を指さすが、俺は既にそこにはいなかった。

「危ないな。」

ざわっ

男たちが俺を見つけて少し距離を置いた。

「おまえ!何をした!」

一番前にいた男が言う。

「いや、何も。剣を避けただけだ。」

「騎士崩れか?」

「なにそれ?商人の従僕だけど?」

「用心棒みたいなもんか?」

「そんな大したもんじゃないって。」

俺がそいつとの会話に気を取られているうちに、後ろのやつが不意打ちで背中めがけて剣を突き入れて来た。俺はその剣と同じスピードで前に数歩出る。

「くっ!」

不意打ちを躱されそうになった男は、更に前に出て俺の背中を追ってきた。次の瞬間俺がその場にしゃがみ込むと、男は俺につまづいて前のめりに転ぶ。倒れ込む瞬間に、男が剣を突き入れて伸びきった腕を肘からまげて剣を上に向けてやった。

ドス

剣は転んだ男の口から鼻の下にかけて刺さり倒れ込んだ。

「はががががががが」

「うわ!痛ったそう!」

ボトボトボト

刺さった傷口から血をボトボトと流し、音を立てて刺さった剣が転がった。目の前で行われる自爆を見て男たちは言葉を失い呆然とその場に立ち尽くす。

「おまえ!なにもんだ!」

「さっきから言ってんじゃん。頭回んねえのか?」

「そんな使用人がいるはずねえ!」

「ここにいるけど。」

「お、お前達なにボーっと突っ立ってんだ!はやく!はやく殺せ!」

「だ、だけどお頭…」

怯んで前に踏み出せない男を、大男は後ろから蹴り飛ばした。男は前につんのめったが俺にかかってくる事はしなかった。

「バカヤロウ!」

大男がわめき散らす。

「お前がこの男たちの頭か?悪い事は言わない黙ってこの村から出ていけ。今ならお前たちを見逃してやろう。」

「たまたまこいつらがヘマをやっただけだ、大した力もないくせに大きい口叩きやがって!」

「なら好きにしろ。」

「どけ!」

ドスドスドス!

大男が男たちを押しのけて前に進んで来た。構えを見る限り武術をかじっているようだが、バルギウスの兵士あたりと比べると全くできていない。

「おら!」

ブン

力任せの剣が俺の上から降ってくる。瞬間で俺は後ろにいた男の後ろに移動し、首根っこを掴んで、その剣が降りて来る場所へと差し出す。

ズバッ

「えっ。」

差し出された男は驚いた顔で、肩口からみぞおち当たりまで斬られて絶命した。

「かわいそうに!信じてた頭にやられるなんてなあ。」

「くそ!この!おまえら!こいつを捕まえろ!」

凍り付いていた男たちはその言葉に反応し俺へと向かって飛びかかって来た。3人は俺がいた空間をつかみとろうとして頭をぶつけた。瞬間的に場所を移したのだった。

「いて!」

「いててて。」

「ぐぅ。」

「頭、大丈夫?」

「どけ!」

その3人を押しのけて大男が突っかかってくる。

「あれ?」

しかし3人を押しのけた大男の先には既に俺はいなかった。

「こっちだ。」

俺が大男に後ろから声をかけると、大男は裏拳を回す要領で後ろに力いっぱい剣を振り回した。

ポン!

ポン!

ポン!

頭をぶつけていた3人の男の首が、大男の剣の一振りにより飛んでしまった。

「あーははははは!ざーんねん!それは俺じゃないよ!」

「ひ、ひいいいい」

臆病そうな男が入り口に向かって走り出した。さすがにこの様子を見て敵わないと悟ったのだろう。俺はそいつに見向きもせずに大男と残った二人、ようやく立ち上がった壁に激突した男を見ていた。

「こ!このやろう!不思議な技を使いやがって!」

いやいや…ただ逃げてるだけだけどね。

「じゃあこっちから行くか?」

俺は瞬間で大男の懐に飛び込んだ。

「うわ!」

大男はたまらず俺から離れようと後ろに飛びのこうとするが、後ろの一人が邪魔になってもつれて倒れ込んだ。

「ただ近寄っただけで大袈裟だな。」

俺はひとり立っている手下の男に振り向いてニマァーと微笑む。

「ヒッ」

その男は後ろを振り向いて、さっき臆病な男が逃げて行った扉の方向へと走る。しかし俺は先回りして男に足払いをする。男が前のめりに倒れ込み、握っていた剣はクルクルと空中に舞う。

トン

俺はそれを瞬時に空中で叩き落すように蹴る。

ドス

「ぐえ!」

剣は転んだ男の背中へ深々と突き刺さる。

「走ったら危ないよ。」

そして俺は再び大男の方を振り向いた。大男は立ち上がり俺を呆然と見ている。俺がじりじりと歩いて大男に近づいて行くと、俺を見たまま後ろへと後ずさる。それを見た俺は歩みを早める。

「く、来るな!お、おめえ!こいつらがどうなってもいいのか!?」

男は女たちが座り込んでいる場所へ行って、振り向かず一人を掴んで俺を脅してくる。さすがに武術をかじっているだけあって、俺から目を離す事は無く集中しているようだった。

「やれるもんならやってみろよ。」

俺はかまわず歩みを進める。

「くっ!近寄るな!」

大男は躊躇なく、左手でつかんだ人間に刃を突き立てた。

ズボッ

「グッ」

「はーはははははは!お前が殺したんだぞ!」

大男が勝ち誇ったように言う。

「まあ、そうかもな。だけどそいつが死んでも俺にとってはどうでもいいけどな。」

「何言ってやがる!」

大男は自分が刺した人間を見る。

「あれ?」

そう、大男が刺した人間はさっき恐れをなして逃げて行った臆病な男だった。目のあたりに深々と剣を刺されて死んでいる。

「よく見ないと。」

俺は歩みを止めずに近づいて行く。

「お、おまえたち!こ、こいつを…」

しかし大男の叫びに答えるものは一人もいなかった。大男のそばに一人のメイドが佇んでいる。

「マキーナ、早かったな。」

「私の相手は5名ほどでしたので。」

「だと15名の相手は骨が折れたんじゃありませんか?お嬢様。」

既にシャーミリアは俺の後ろに立っていた。

「いえ、大したことはございませんことよ。おーほほほほ。」

「さすがはお嬢様です。」

俺が言う。

ーうーん。シャーミリア演技が固いんだけどー

「賊はどうしたんですか?」

「死んだ者は積み上げたわよ。生きている者は一か所にまとめているわ。おーほほほほ。」

ダメか…シャーミリアはこの設定は、ダメか‥‥

「なんだ!お前たちはいったいなんなんだ!」

「こちらが私の主である商人のご息女様で、こっちが俺の同僚のメイドだよ。」

「な、そんな華奢な女が俺達の仲間を全部?」

「そうですよね。お嬢様?」

「は、ははぁー!決まってるじゃないのぉ!全部やっちゃったわよぉ。」

うん…次はこの設定はやめよう。そもそも俺の主の設定はシャーミリアには向かない。

「そんなばかな!」

「お前はどうする?」

「う、うるせえ!近寄るな!」

男が尻もちをつきながらズリズリと後ずさりする。するとマキーナの足元にトンっとぶつかって上を見上げる。

「お嬢様いかがなさいましょう。」

「眠らせなさい。」

「は!」

トン

男はそのままその場に崩れ落ちる。

シャーミリアとマキーナなら主従関係の演技をせずに自然なんだな。血にまみれた礼拝堂に静寂が訪れた。

「あ、あの!」

気の強そうな女が言う。

「はい。」

「あなた達は?」

「他の国から来た商人とその従者ですよ。実は魔獣に襲われて3人で命からがらたどり着いたところなんです。そしたらこんな場所に遭遇してしまいまして。」

「あ、ありがとうございます!」

「いえ、たまたま通りかかっただけですから。」

そしてジョーイと呼ばれていた少年が、気の強そうな女の所に近寄る。

「姉さん!大丈夫かい?」

「え、ええ。私はどうと言う事はないわ。」

ざわざわざわ。

黙っていた他の女の人や子供たちがようやく話し出した。

「良かった…。」

「助かった…。」

「でも、でも父さんたちが。」

「ジョーイ君。お父様たちがどうしたんですか?」

俺が少年に尋ねる。

「盗賊に殺されてある建物に集められました。歯向かう大人は全員殺されてしまって…」

「なるほど。」

この盗賊たちは外道だったって事ね。

女子供たちが立ちあがりよろよろと歩き出す。

「みなさん大丈夫ですか? 」

「は、はい!とにかくみんなの所へ。」

「そうですね。村に賊はもういませんので行ってください。」

「はい!」

「ありがとうございます!」

「急ぎましょう!」

女子供たちが礼拝堂から出て行った。気の強そうな女とジョーイと言う少年だけが残る。

「あなた方はいかなくていいのですか?」

「両親もおじいちゃんも兄さんも殺されました。もう身よりはいません…。」

気の強そうな女がくっと唇を噛んで下を向いた。

「とにかく弔ってやらなければならないでしょう。僕も一緒に行きますから案内してください。」

「まだ生きている賊がいるのでは?」

少年がきょろきょろして言う。

マキーナが殺さずに制圧した奴らがいたようだ。

《生きてるやつらはどうする?》

《ご主人様が殺せと命じるのならすぐ!》

念話でシャーミリアに聞くとそう答えた。

《じゃあシャーミリアとマキーナで分けろ。久々に腹いっぱいになるんじゃないか?》

《よろしいので?》

《戦利品だ。》

《ありがとうございます。》

俺は念話こそこそ話を止める。

「お嬢様こいつらはいかがなさいましょう!」

「ええ、あなたはその方々をお連れしてください。私たちが処理をしておきましょう。」

「はい!ではお嬢様お願いいたします。」

俺は女と少年と共に礼拝堂を出るのだった。シャーミリアとマキーナが俺達を見送る。きっと久々に栄養が取れるんじゃないかな?

さて…この村でどんな情報が取れるか…

遺体の弔いを手伝いながら聞いてみるか。