軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第396話 国の吸収合併

俺はイオナをユークリット王にするという話をするため、ポール王の王城へと来ていた。ポール王の王城といってもそんなに立派なものではなく、むしろフォレスト邸の方が城と呼ぶにふさわしいかもしれなかった。

応接室にいるのは俺とモーリス先生、イオナ、ポール王の4人だ。重要な話なので人払いをしてもらっている。

「なるほど話はよく分かりました。ナスタリア家のイオナ様であれば十分にそのお力を発揮される事でしょうな。しかも後ろ盾が魔人国とあれば問題なく復興する事でしょう。」

「すみません王よ。私もここではずいぶんお世話になったのですが。」

「いやいや!イオナ様にはこちらが助けられっぱなしでした!法案の制定や組織運営なども大変勉強になりましたし、魔人達との橋渡しなどでも本当に助かっております。」

ポール王とイオナが礼を言い合っている。

「それでポール王。母さんが抜けるのは戦争が終結する頃になるんだけど、それまでに人員体制を整えていただければありがたいのですが。」

俺が本題をきりだす。

「それでしたら、私からもラウル様にお話したいことが御座いました。」

「なんです?」

逆にポール王から話があるらしい。

「この都市は既に魔人で埋め尽くされております。」

「はい、護衛のつもりでしたがいつのまにかこんな増えてしまいましたね。居候をさせてしまって申し訳ございません。」

「人間の割合は一つまみほどです。」

「そのようです。」

「そこで私から提案が御座います。」

「なんでしょうか?」

「グラドラムからルタン町に至るまでの地域を、魔人国の一つの領としていただくわけにはまいりませんか。」

「えっ?」

俺は戸惑う。グラドラムの復興のために魔人を送り込んで来た。大陸に進出する拠点として、確かに魔人を住まわせてもらってはいるが、この国を征服するつもりなどは無かった。

「驚かれるのも無理はない。ですがこの状況からしても、その方が自然の流れです。」

「あくまでも魔人国には、拠点を置かせていただいていたつもりなんですが。やはりグラドラムはポール王の国ですし…」

「それは既に形骸化していると思われます。というよりも我々としてはその方がありがたいのです。」

ポール王の意志は固く決まっているようだった。

「ラウルよ。ポール王のおっしゃることは至極当然の事だと思うがのう。」

「先生…。」

「ラウル様。我々が生き延びるためにはそれが一番なのです。」

「そうじゃろうな。魔人国の一員となる事で完全に魔人の保護下となるからのう。百数十名の人間が再び人間の国家を復活させるまで、どれほどの歳月がかかるかもわからん。」

確かにモーリス先生の言うとおりだった。将来的に魔人をこの地から引かせることは彼らにとって死活問題だろう。それならば彼ら魔人国の国民として生きた方が良いと言う事か。

「ポール王はそれで良いのですか?」

「もちろんでございます。そして我々は既に魔人国の技術力を知ってしまった。こんな便利な生活から元に戻せと言われても無理と言うものです。」

「ふぉふぉふぉふぉ。よーく分かるぞい!ポール王の言う事はわしも強く同意するわい。」

え、文明の利器に触れて、その生活から戻せなくなったって事?

「ラウル。ポール王のおっしゃることは当然よ。」

「そうですか?」

「ええ。」

と言うことは、魔人国の土地がかなり広くなることを意味する。ラシュタルやシュラーデンより広くなりそうだ。

俺が沈黙しながら考えているとポール王が言う。

「もしかすると王の許可がいると言う事でお悩みですか?」

「いや、それは問題ないですが一応連絡はしておかないとですね。」

「わかりました。それでこの提案はどうされますか?」

・・・・・・・

「分かりました。グラドラムを魔人国の領土といたしましょう。ですがポール王には引き続き領主としてこの地を任せたいです。」

するとポール王は椅子から床に下りて俺に頭を下げる。

「ラウル王太子よ!喜んで拝命いたします。」

「えっと!ポール王よ頭を上げて下さい!」

いきなりさっきまで王様だと思っていた人から跪かれると困惑してしまう。

「既に王ではありません。私は一介の領主にございます。」

「えっとわかりました!とにかく椅子に腰かけてください。」

「はい。」

ポール王が再び椅子に座る。

「ラウル。それではポール卿に爵位を与えなくてはいけないわ。」

「え、えっ?爵位?」

「私など末席に加えていただけますれば。」

「そう言うわけにはいきませんわ。」

爵位の事についてはよくわからん。ハリスやマーカスは伯爵と言う地位を授けたが、さすがにそれ以上の爵位が必要だろう。でも王族でも公爵でもないしどうしたらいい物か?

「ラウルよ、この場合は魔人国に対して多大な功績をもたらした人じゃし、第二爵位である侯爵が妥当ではないかの?」

モーリス先生が助け舟を出してくれた。

「わ、私めが魔人国の侯爵などと恐れ多い。」

「いいえポール卿。私は相応しいと思いますわ。」

イオナが言う。どうやらそのくらいの爵位が妥当らしかった。

「では!ポールお・・・卿。侯爵という爵位を受けていただけますか?」

「かしこまりました!その地位に恥じぬようこれからも精進してまいりたいと思います。」

えっとこんなにあっさり決めていい物かな。よくわからないけどいきなりだったので勢いで決めた感じもするけど。

「それならラウル。すぐにルゼミア王に伝令を出しなさい。」

イオナが言う。

「は、はい。わかりました!」

《タピ!》

《はい!》

《これから魔王国まで魔人を飛ばす事になった。ハルピュイアかサキュバスを一人こちらによこしてくれ》

《すぐに!》

俺は伝令役のタピに念話で伝える。

それから5分後に一人のハルピュイアが部屋にやって来た。

「お呼びでございましょうか!」

入り口のドアを開けて白い羽を生やしたハルピュイアが膝をつき俺に頭を下げている。俺が彼女にどういう風に指示を出そうかと考えていると横からイオナが言う。

「これから書面にて重要な内容をしたためる予定です。その書簡をすぐにルゼミア王へと届けてほしいのです。そしてあなた一人では大変でしょうからグリフォンのゴローを連れて行きなさい。」

「かしこまりました。」

「ポール卿。羊皮紙とペンを。あとは封蝋のフォレスト印は持ってきていますから蝋も。」

「はい!」

パンパン!

ポールが手を叩くとすぐにメイドがやって来た。人間のメイドだがそれほど若くはない、ちょっと年配のメイドだった。

「すぐに羊皮紙とペンと蝋を。」

「ただいま!」

皆があわただしく動いている。

というかイオナはこれを推測していたのだろうか?ずいぶんと用意が良いようだが。

直ぐに羊皮紙とペンが用意されて、蝋も準備される。

「さ、ラウル。」

俺はイオナからインクにつけたペンを渡された。

「は、はい。」

俺はグラドラムからルタンまでを魔人国とする件、そしてグラドラムのポール王をその領主とし、魔人国の侯爵を任命した件をしたためる。

「ではフォレスト家の封印を。」

火で溶かした牢に印を押しつけて書簡に封をした。なんかあれよあれよという間に進んで準備ができてしまった。

「それではあなた、私とフォレスト邸へ。」

「はい。」

イオナとハルピュイアはさっそうと部屋を出て行ってしまった。

「ふぉふぉふぉふぉ。イオナはせっかちじゃのう。」

「はい、あの方は仕事が早くていつも先回りをされているように感じるのです。」

ポール王がイオナに対しての感想を言う。

「ではポール卿。これからもよろしくお願いしますね。」

「はい!魔人と人間のよりよい未来に向けて精進いたします。」

「ありがとうございます。」

これで良かったのだろうか?ポールがいきなり言い出して、イオナに急かされ手続きをしてしまった。おそらくルゼミアは俺のすることにNOはない。魔人国が元グラドラム王の許可を得て拡大されてしまった事になる。

「それでは私もラシュタル王国にその旨を正式な書簡としてしたため、通達しようと思います。」

「お願いいたします。」

「シュラーデンはまだ王政は復活していないのでしたね?」

「はい。」

「ユークリットはイオナ様が王になられると言う事で、既に通達の必要はございませんね?」

「そうですね。」

「かしこまりました。つきましては魔人の方から当領の要人を選出していただきたいのですが。」

とかいきなり言われても全く見当がつかないんだけど…

「えーっと…はい。おって通達したいと思います。」

「はい!」

だが俺にはひとつ凄く気になる事がある。人間と魔人が上手くやっていけているのかが心配だった。軋轢は無いのか?差別などがあるなら論外だ。

「ポール卿。」

「なんでございましょう?」

「魔人と人間は上手くやれていますかね?」

「あれ?ご存じない?」

「何がですか?」

逆にポール王に聞かれるが何のことか分からない。

「グラドラムでは既に何組もの夫婦が生まれております。」

「えっとグラドラムで新しい夫婦が生まれたと言う事ですか?」

「ええ、魔人と人間の。」

「えっ!」

「なんじゃと?」

俺とモーリス先生が驚く。

「到着したばかりでお耳にしていないのですね。既に魔人と人間が結婚をして暮らしております。」

「えっと…子供は?」

「いまだ生まれておらぬようですが、そのうちできるでしょう。」

「ポール卿!十分に注意せねばならない事があるのをご存知ですか?」

「注意する点でございますか?」

どうやらポール王は魔人と人間の結婚についてあまり詳しい事は分かっていないようだった。俺の母さんはガルドジンの子を宿し、俺を生んでまもなく死んでしまった。それだけに魔人の子を産むというのはリスクが高いのだ。その逆の女が魔人のパターンは俺にも分からんが、人間の女性はその覚悟が無いまま結婚した可能性がある。

「えっと…私はガルドジンと人間の子だと知っていますよね?」

「聞き及んでおります。それだけに魔人と人間の夫婦はめでたいと思っておりました。」

「それが…実は…。」

「実は?」

「私の母は私を生んですぐに死んでしまったのです。魔人の子を産むと言う事は、人間の体にどんな負担がかかるか分かっていません。もしかすると死んでしまう可能性もあると言う事なのです。」

「ああそう言う事でしたか。それならばイオナ様に聞いておりましたが?」

なーんだその事か。っとでも言うようにポールが言う。どうやら既に知っていたようだった。

「え、知っているんですか?」

「結婚した者達もみな知っておりますよ。」

「そうなんですか?」

「ええ。愛は盲目とでも言うのでしょうか?私もその旨は伝えたのですがね、当人たちはそんなこと関係がないとばかりに愛し合っております。」

「そうだったんだ…」

やっぱり人間と魔人が一緒に暮らすと言う事はそう言う事だった。それを知ったうえでも魔人と結びつく人間がいるなんて。

「ラウル。分からんか?愛だ、愛。きっとラウルの実の母親も同じような思いでいたのじゃろうな。」

「はい。もしかしたら私と同じようなあいのこが生まれるかもしれませんね。」

「親子ともども無事でいる事を祈るとしよう。」

「はい。」

驚いた…まさか魔人と人間が既に結婚していたなんて。しかしこういう状況になってしまえば自然の摂理なのかもしれない。

「ポール卿。」

「なんでございましょう。」

「もし可能ならば、これから1軒1軒魔人と人間の夫婦の家を回って挨拶したいのです。」

これは俺の素直な気持ちだった。俺は魔人と人間のあいのことして無二の存在だと思っていたが、俺の二人の生みの親のような気持で子を望んでいる人がいると思うと無性に応援したくなった。

「よろこんで。」

「その際に私の友人であるエミルを連れて行きたいのですが。」

「精霊神様を?」

「ええ、少しでも無事に子供が産めるように加護を与えてもらおうと思います。」

「なんと…そのようなお気遣いをしていただけるとは、彼らも喜ぶ事でしょう。」

俺を生んだ母さんのようになっては欲しくなかった。俺ができる事なら何でもしてやろうと思う。話を終えた俺達はそのまま魔人と人間夫婦の元へと向かうのだった。

これからの世界に魔人が進出するうえでも、観察しておくべき事がある。

「ならばわしも診察してやろうかの。」

「診察ですか?」

「わしゃ賢者とか校長と言われておるがの、医者でもあるのじゃぞ。」

「えっ!先生って医者だったんですか?」

「あれ?言ってなかったかの?」

「初耳です。」

「藪かもしれなんだが。」

「いえ!とても心強いですよ!」

「ならいこうかの。」

このお爺さんはホント底が知れない。

とにかく魔人夫婦を診察してもらえば、死なない為の手がかりがつかめるかもしれなかった。

魔人夫婦か…

俺は見たことのない生みの母親に思いをはせるのだった。