軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第395話 深夜の会食

俺達はミーシャと共に研究所からフォレスト邸へと戻って来た。

研究所施設と兵器の視察を終え俺達が家に戻ってこれたのは深夜だった。既に寝ているかと思ったが家の灯りはまだついていた。イオナとミゼッタが俺達の帰りを待っていたらしい。

「アウロラは楽しみに待っていたんだけど、待ちくたびれて寝てしまったわ。」

イオナが言う。

「すみません母さん。」

「謝る事はないわ、仕事ですもの遅くなることぐらいはあるわよ。」

うーん残念。可愛いアウロラちゃんといちゃいちゃしようと思ったのに仕方がない。

「皆様の為にお夜食をご用意しております。」

マリアが言う。

「マリア!お夜食の準備は私がやります!」

ミーシャが言うと横からイオナが口をはさむ。

「いいえ、ミーシャ。あなたも遅くまで仕事をしてきたのだから、今日はラウルと一緒に食事を楽しんだらいいわ。」

「イオナ様の言う通りよ。また戦線に戻ったら会えなくなるのだし、しばらくは私に給仕させてね。」

マリアがニッコリと微笑む。

「あ、あの!奥様!マリア!ありがとうございます。」

「あとミゼッタも一緒に食事を楽しむといいわ。」

イオナが言う。

「私も?よろしいのですか?」

「もちろんよ。」

「ありがとうございます!」

ミーシャもミゼッタもめちゃくちゃ喜んでいた。

「じゃあミーシャとミゼッタは俺の隣に座ろうか。」

「え、あの!はい!」

「ありがとうございます!」

ミーシャは頬を染めて頷いた。ミゼッタはきっと前線で頑張っている可愛い狼君の話を聞きたいのだろう。

全員が席に着くと料理が運ばれて来た。夜食用に作った物らしくあっさりしたものが食卓に並ぶ。

「美味そうだ。」

「ミーシャ、久しぶりのマリアの手料理よ。私は先にいただいたから、じっくり味わって味を覚えるといいんじゃないかしら?」

「はい!」

ミーシャがめっちゃ嬉しそうなので、つい俺も嬉しくなる。

「しかし母さん。ミーシャの研究は凄いんだよ!」

「そうなの?」

「ああ魔人国の重要機密と呼べるものばかりだ。」

「凄いわね。」

とりあえずまだ詳細までは伝える事は出来ない。情報を知ってしまえば、何か起きた時にイオナが狙われてしまう可能性がある。

「ただ母さんからもミーシャには無理をしないように言ってくれないか?」

「あら、無理をしているの?」

「い、いえ!奥様!無理などしておりません。むしろ楽しんで仕事をしているくらいです。」

「ラウル、こう言っているわよ?」

「とにかくだミーシャ。きちんと規則を作るからそれを守るようにしてくれ。」

「わ、わかりました。」

それから俺は料理を食べながら、これまでの経緯を面白おかしく話してやった。戦争をやっていると言うのに冒険譚のような内容になってしまう。ミゼッタもゴーグの話をしていると目を輝かせてたくさん質問して来た。今はファートリア西部ラインの一拠点の隊長をしていると聞くと、ずいぶん立派になって…と涙ぐんでいたが、お前はゴーグの母ちゃんか!とツッコみたくなる。

「あの。」

「なんだいミーシャ。」

「ラウル様もご無理はなさらないようにお願いします。」

「ミーシャの言う通りですよ!村人救出の作戦はかなり厳しかったみたいじゃないですか!」

ミーシャとミゼッタが心配そうに言う。

「あ、ああ…そうだな。ちょっとしんどい作戦もあったけど、今は仲間達がやってくれているし、これからはあまり無理をしないように心がけよう。」

「そうだぞラウル。お前は人の事は心配するけど、自分の事になるとまるで無頓着になる。気を付けた方がいいぞ。」

「わかったよエミル。」

「俺なんか、ほぼほぼヘリで待機する事が多いからな。もっとこき使ってくれていいんだぞ。」

「いや、必要ならお願いするって。」

どうやらエミルは全く戦闘に参加させてもらえず、ヘリで待機する事に不満を抱いているようだった。とはいえ緊急時にはどうしてもエミルのヘリが必要になるから、戦闘でエミルに何かあってはまずい。そこだけは我慢してもらうしかなさそうだった。

「ふぉふぉふぉふぉ。そうじゃなラウルは無理をしすぎるからのう、気を付けた方がいい。」

「せ、先生には言われたくなかったです。書庫ではふらふらになりながら解析作業をしていたじゃないですか!」

「ありゃ趣味じゃ。」

「しゅ、趣味って。」

「そういったであろう。ほとんどがわしの興味を満たすためにあるようなものじゃと。」

「あ、確かにそんなことを言っていましたね。」

「そのおかげで、わしがここに滞在している間に、イオナとミゼッタの魔法効率を上げてやれるぞ。」

「あら嬉しいですわ。先生にまた魔法を教われるなんて。」

「あの…私もいいのですか?」

「二人の魔法の基礎を底上げしてやれるじゃろう。今は既に消えた古代の魔法概念を見つけたのじゃ。わしも全てを読み解いてはおらぬが、おぬしたちの魔法力を向上させることは出来そうじゃわい。」

「しかし、私はもういい年です。ここから魔法が強くなるなど聞いた事はないですわ。」

「いや、イオナよ。その部分から修正が必要なのじゃよ。」

「そうなのですね?それはとても興味深いです。」

「先生!私の魔法も強くなるのですか?」

「うむ。恐らくは問題ないであろうよ。」

「そうなのですね!」

イオナもミゼッタも食いついている。彼女らも俺の役に立ちたいと思っているようなので、魔力が向上する事は願ってもない事なのだろう。モーリス先生が隠し書庫で入手した情報を元に、試してみたいことがあるようだったので丁度よかった。

俺としても、どうしてもヴァルキリーを空輸する手段を手に入れたいと思っていた。そのため今回ユークリット書庫で回収した、魔道武具に使われた技術を取り入れてもらい、ブースターやスラスターがついた外骨格をバルムスに仕上げてもらわねばならない。恐らくは試作段階で持ち出す事になると思うがそれでも良かった。ただそれには数日かかるだろう。

さらに次の作戦は危険を伴うため、シャーミリアとカララは絶対に連れて行きたかった。何とか俺の強化も間に合えば良いとは思うが、陸路を進むシャーミリアとカララも、ヴァルキリーとカーライルを引き連れて移動しているため、前線基地まではまだ数日かかるだろう。

そのためグラドラムにはしばらく滞在する事になりそうだった。

「先生。それは私のような魔法にも応用できますかね?」

俺が聞いてみる。

「それがわからんのじゃ。おぬしの魔法は解読が難しいからのう。ひとまずは魔力量の少ないイオナやミゼッタにいろいろと試してもらおうと思うておる。」

「わかりました。それならばマリアもまぜてやってください。」

「マリアもか?いいじゃろう。」

するとミーシャがうらやましそうな顔をしている。

「ミーシャには魔導武具の研究が待っているよ。そして魔法が使えないから教えてもらっても、あまり意味がないかもしれない。」

「い、いえ!私は!わかっています!」

「俺はミーシャの力には本当に期待しているんだ。」

「私の力ですか?」

ミーシャが不安そうに言う。

「ミーシャさん!すでにあなたは凄い実績があるのですよ?」

エミルが言う。

「そんな大したことはないです。」

「いや、エミル君の言う通りじゃて。おぬしは既にこの世がひっくり返ってしまうくらいの発明をしておるのじゃよ。」

「そんな…。」

「これは嘘ではないぞ。」

先生が強い調子で言う。

「ああ、先生の言うとおりだ。そして申し訳ないけど、ミーシャには明日から護衛がつくことになるから。」

俺が言う。

「私に、ご、護衛ですか?」

「ああ、デイジーさんにもな。」

「どうしてです?」

ミーシャが恐れ多いと言ったような顔で言う。

「気が付いていないと思うんだけど、先生が言った通りの事だよ。あの研究所はかなり堅牢に守る必要があるし、ミーシャたちの研究は絶対に外に漏らしてはいけないんだ。それだけの成果が上がっているという自覚を持ってもらえると嬉しいな。」

「わ、わかりました!心しておきます。」

「まあ常に周りに魔人がいたら、気になって夜も眠れなくなりそうだから、隠密タイプの魔人を頼んでおくよ。」

「ありがとうございます。」

ミーシャはやはり自分が重要人物だという自覚が無いようだった。あの研究成果を見たら、彼女がどう考えても魔人国の最重要人物であることに間違いはない。

「デイジーさんが言っていたぞ。ミーシャの機転や発想がとんでもない物を生み出すと。」

「そんなことを?」

「ああ。」

ミーシャが申し訳ないような顔をする。

「私はラウル様に喜んでいただきたい一心でやっているだけです。世界の事などは分かりませんが、とにかく一生懸命取り組まさせていただきたいと思います。」

「だが無理はするな。」

「は、はい!」

「ふぉふぉふぉふぉ。」

「うふふふふ。」

「ふふ。」

モーリス先生とイオナ、給仕をしているマリアがミーシャのしぐさを見て笑う。きっと彼らはミーシャの事を愛おしく思っているのだろう。

「それで母さん。明日、私はポール王の元に行こうと思います。」

「そうね、それが良いと思うわ。」

「つきましては…。」

「もちろん一緒に行くわよ。」

「ありがとうございます!」

俺はポール王にイオナをユークリット王の座につかせることを報告する予定だった。まだ先になると思うが、それまでにイオナ抜きにしても国が回るようにしてもらわなければならない。また現状グラドラムは人間だけを要職につかせているが、魔人と一緒に国政を行えないかを相談するつもりだ。

「根回しも大変じゃのう。」

モーリス先生がしみじみと言う。

「今のうちに言っておかないと、急ではポール王も困るでしょうからね。」

俺が言う。

「政治とは面倒なものじゃのう。」

「先生はあまりお好きではないんでしたね。」

「わしゃ自由に動きたいからの。」

「ふふ。先生は相変わらずでいらっしゃいますね。」

イオナが言う。

「イオナよ、こればっかりは生来のものじゃ。変わりようがないわ。」

「はい。」

どうやら先生は昔からこんな感じらしい。それでも魔法学校の校長先生をしてた時もあるらしいから、きちんとした仕事もやって来た実績はある。いざという時はできるのだろうが、いまのところ俺は先生を縛るつもりはなかった。

「でも先生。」

「なんじゃラウル。」

「母さんがユークリット王をするなら、先生には陰で支えていただきたいんです。」

「まあそれくらいはいいじゃろ。老いぼれが役に立つとは思えんがな。老後はあの書庫の完全解読を目指して、ゆっくりと過ごさせてもらおうかのう。」

「ぜひともお願いします。」

俺は先生に深々と頭を下げる。

あとグラドラム滞在中にやるべきことは、都市内の視察くらいなもんだった。

そして深夜の会食も終わり皆がそれぞれの部屋に行く。

俺は部屋に行く途中で、こっそりアウロラの部屋をのぞく。するとベッドですやすやと眠るアウロラがいた。

《明日の仕事が終わったら遊んでやるからな。》

「…むにゃむにゃ…にいさま…。」

アウロラが寝言を言っている!その言葉の内容からすれば俺の夢だ!

俺は一人、深夜の妹の部屋の前でほわほわになっていた。