軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第366話 仲間の支援

俺は憂鬱だった。

アナミスが人の魂に刻む支配術。

やりたくない。

本来ならば魂の外殻だけに刻んでも、ある程度は思い通りに人を動かす事が出来るのだそうだ。ファートリアやバルギウスの兵に施したのはそれらしい。しかし魂核やそれを繋ぐ魂幹に刻み込む行為は、言ってみれば人そのものを変えてしまうようなものに思える。更にそれをなすためには恐ろしく魔力を消費した。

俺の中では魂核や魂幹に干渉する方が人間には危険な事だと思うのだが、アナミスが言うには外殻に強制的に書いて指示する方が魂には負荷がかかるのだとか。魂核や魂幹に書き込めばその人が魂の底から考えている事になるから、自分の意志として動いているのと同じなのだそうだ。

ようわからん。

「ふぅ。」

「ご主人様。おやめになってもよろしいのではないですか?」

俺の気持ちを察してシャーミリアが言う。

「いや、人を助けるのにこれ以外の策が思いつかないんだ。やるしかないだろ。」

「ご主人様があれほど疲弊してしまうのは見るに忍びません。」

「大丈夫だ、魔力は完全に満たされたからさ。」

「ですが…」

シャーミリアにしては珍しく俺に意見してくる。それだけ心配だったと言う事かな…うん。ありがとうシャーミリアお前の気持ちはうれしいよ。

「私もシャーミリアの言う事に賛成です。」

「カトリーヌ…。」

まさかのカトリーヌもこの作戦に反対の様だ。

「あんなに消耗するとは思いませんでした。他の作戦を模索する事は出来ないでしょうか?」

「ダメだ。作戦は急を要する。こうしている間にも前線基地に敵が迫っているかもしれないんだ。」

「それはそうですが…。」

カトリーヌも本気で心配してくれているみたいだ。しかしここで止めるわけにはいかない。めっちゃ可愛い顔で言われるとグラグラくるがそう言うわけにいかないのだ。

「私もラウル様から魔力を取るのは嫌です。」

「アナミスまで。」

「消耗していくラウル様を見ているのは身を切るより辛いです。」

「ダメだぞアナミス、逆に手加減したら俺が困るんだからな。」

「しかし。」

アナミスも物凄く躊躇しているようだった。それだけ俺は酷い状態になったって事か。ギャルチックな格好でアナミスが心配してくれるが、ついその煽情的な胸に飛び込みたくなる。

「そうですよラウル様!私がラウル様を包みこんだ時に感じた感覚はとてもひどかったです。」

「ルフラ…。」

もともとやりたくないのに更にそんなに言われると、本当にやめようかなとか思ってきた。だってあんなに辛いんだし他の方法だってあるはずだ。皆の気持ちを汲んで止める事も必要なのかもしれないな。思い切って他の作戦を考えるように話し合いをするべきかもしれない!

「えっと、み」

「いや!皆さん!ラウルはそんなこと気にしてませんよ!昔からの付き合いだから分かるんです。コイツはこういう時はやる男なんです!」

「そうそう!ラウルはね、本当にやるときはやるんです。自分が危険なほど消耗するからって止めるような奴じゃないですよ。」

オージェとエミルが思いっきり女子陣の言う事を否定した。

「ラウルが、困っている人がそこにいて、それを自分が疲れるからって止めるような男だと思っていますか?」

「そ、そんなことはございません龍神様!ご主人様は確かにお強いのですが、あの作業だけは本当に魂の叫びが聞こえたと言いますか…。」

「シャーミリアさん!それは見てれば分かりますよ。でもねラウルって言う男は、簡単に考えを変えるようなカッコ悪い奴じゃないのも確かですよね?」

「でも、あんなに苦しいのが伝わってくると…。」

ルフラが言う。

どうやら元始魔人の系譜の力で魔人達に俺の苦しみが伝わっていたらしい。

「ははは。ルフラさんもまだまだラウルの知らない部分があるんですね。コイツは物凄い芯が強くてそんなことくらいでは全くぶれないんです。」

いやあ…さっきぶれかけたけどね。

「いえ精霊神様!私がラウル様から魔力をもらうたびに血を吐くような悲鳴が…。」

「もちろんそれはそうです!それは多少は辛いでしょう、でも彼の本当の魂の叫びに耳を傾けてください。ドンドンやってくれ!と言っていますから。」

「精霊神様…そうでしょうか?」

「まったくみんな心配性だなあ。」

「ホントホント!ラウルはすっげえ強いんですって。」

オージェとエミルが”まったく!心配しすぎだよ!”みたいな顔で言う。

すると女子陣たちが次第に俺に尊敬のまなざしを向け始めた。

「ご主人様。大変失礼いたしました。私奴とした事がご主人様のお気持ちに水を差すような真似を。」

「私もでした。ラウル様のお気持ちも良く理解せずに、お恥ずかしい限りです。」

「その通りでした。とにかく遠慮などせずに魔力を使わせていただきます。」

「私もきっちり支えさせていただきますので、気のすむまでやってください!」

シャーミリア、カトリーヌ、アナミス、ルフラの順番に納得して、俺を応援するムードになって来た。

「だよなあ!ラウル。」

オージェが屈託のない笑みを浮かべながら言う。

「は、はぁ。まあそうだね。やるのは決まってるよ。」

「やっぱりね。」

エミルもどや顔だ。

いやね…もともとやる気でしたよ、でもね一旦くじけそうになった気持ちを再度奮い立たせるって言うのはきついんですよ。それを分かっていらっしゃいますでしょうか?いやあ…そんなにキラキラした目で見つめられたら弱音吐けないですよね。やりますよ!やりますけどちょっと今のくだりはいらなかったなあ。

「ではラウル様、そろそろ。」

「あ、ああガザム。」

ガザムが何事もなかったような冷静なカッコイイ顔で言う。

「いかがですかな?お話はまとまりましたでしょうか?」

「ええマキタカ様。すみませんお騒がせしまして、もちろん作戦開始しますよ。先日の村で大体の流れはつかみましたから、連携も大丈夫そうですし。」

「分かり申した。」

マキタカと配下達が一礼する。

「じゃあトライトン!俺たちも一緒に潜入するぞ。」

「わかりました。」

トライトンが少し心配そうな顔で俺を見ながら言う。

「では皆さんまたよろしくお願いします。」

既に数日が過ぎているが村の人たちはまだこの旅団の事を覚えているだろう。さらに村に潜入するための口実として、ファントムに獲らせて血抜きしたビッグホーンディアを荷馬車にのっけている。これを手土産にすれば快く受け入れてくれるはずだ。

「ラウル様、ごめんなさい。俺は全然役に立てなくて。」

「いやゴーグ、ここまでみんなを連れてきてくれてるんだから十分だよ。俺がまた気を失ったら眠らせてくれ。」

「はい!」

「私もお役に立ててないです。」

「ケイナさんも十分です。またベッドを作ってくださるとうれしいです。」

「お安い御用ですわ。」

皆が俺にやたら気を使ってくれる。とにかく嫌でもこの作業はやり遂げなければならない。

「あの。」

「なんです?」

アナミスの部下のサキュバスの一人が言って来る。

「私達もどうにか協力いたしたいのですが?私たちはアナミスの幻惑に影響を受けませんので。」

「うーん。でもやってもらう事があるかな?」

「お連れした村人にアナミスの術が入れやすいように、村人の魂に安らぎを施してはいかがでしょう。」

ちょっとサキュバスの言ってる意味が分からなかった。

「それってどういう事かなアナミス。」

「なるほどそれは名案です。魂核までたどり着くために村人が心に持つ障壁を突破し、外殻に侵入せねばならないのです。その心の障壁を取り除くだけでもほんの少しは楽になります。」

「そうか。それじゃあお前達も一緒に作業をやってくれ。」

「「「「「はい!」」」」」

5人のサキュバスたちが嬉しそうにしている。

「彼女たちがほんの少しでも進化してて良かったです。」

「そうじゃないと出来ないの?」

「普通のサキュバスなら淫夢を見せるだけです。」

「淫夢…。」

それはそれで、ちょっと興味があるなあ。どんな夢なんだろう?今度それを見せてもらう事は出来るんだろうか?

「と、とにかく!助かる!よろしく頼む。」

「それではラウル殿まいります。」

マキタカと配下達が出発の準備をする。

「はいマキタカ様!ちょっと微調整させていただきましたが大丈夫です。」

「では。」

「ラウル!大船に乗ったつもりで任せろ!」

「すまんなオージェ。」

「お前は魔力を注ぐ事だけに集中してくれ。」

「わるい。」

「どうということはない。」

そういってマキタカと配下達、オージェとトライトンが荷馬車をひいて街道の方に向かって行った。

「ラウル様、村が見える峠に岩場があります。その岩場が隠れるのに良いと思います。」

「よしわかった。行こう!」

ふうっ

俺は心でため息をついた。

俺達は村にそばにある峠の岩場に向けて進むのだった。俺の後ろには魔導鎧ヴァルキリーとファントムが影のようについて来る。

これから始まるあの過酷な作業に憂鬱な気分になるが、みんなに伝わってしまうといけないので表面上ではキリリとした表情を作る。

《我が主、凄く嫌なんですね。》

ヴァルキリーが言う。

《ああヴァルキリーお前には隠せないか。》

《我は主の全てを感じ取ります。》

《分体だもんな。》

《はい。》

岩場に付くとすぐにケイナがベッドを用意し施術場所を作ってくれた。

はぁ

その数台のベッドを見るだけで、実際に思いっきりため息をつきそうになるが我慢する。

《お辛いのですね。》

《なんつーかさ、人の根幹に触るみたいなことはしたくないんだよな。》

《はい、我が主の性格ならばそうかと。》

《そうそう、だって俺人間と魔人と獣人が平等に暮らせればいいと思ってるだけで、なんでこんなことしなきゃいけないんだって思ったりするわけよ。》

《ですが、その目的のために恐らくこれは避けては通れそうにありません。》

《だよなぁ。まあやるしかないね。》

《未来を考えましょう。》

《未来をか…》

《我が主の理想とする未来のために。》

なんかヴァルキリーに言われているうちにだんだんやる気が出てきた。どうやら今日は乗り越えられそうだな。

《とにかくありがとう。》

《いえ。》

そして俺達はまた夜になるのを待つ。きっとマキタカ達も村に入ったかどうかの時間だ。これから村長に挨拶をして下地を作ってそれから作戦決行だ。

「とりあえず休んどこう。」

俺がベッドに腰かけるとシャーミリアとカトリーヌが両脇に座って腕を揉んでくれる。ルフラが後ろに回って肩や首をほぐしてくれた。サキュバスたちが俺がリラックスするような香りを出しはじめる。

めっちゃメンテナンスしてくれる。

「気休めかもしれないけど、精霊の加護を。」

「ああエミルありがとうな。」

前の村とは違い今回は準備万端だった。村に潜入したメンバーも俺に全く気を使わせないようにしてくれていた。

なんだかんだ言ってみんなが俺に気を使ってくれている。それだけ俺が参っていたのを分かっているのだろう、オージェもエミルもわざと鼓舞するように言っていたのが分かる。

「シャーミリア。この村には何人いる?」

「98名ほどいるようです。」

「分かった。」

まだ陽は高いところにある。時間は16:00を回ったところだった。

考えるな!

やるだけだ!

俺は何度も何度も自分に言い聞かせるのだった。