軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第340話 緊急通信

デイジーとミーシャの武器保管庫から持ち出せるものは全て運び出す。今回は更に品質の上がったエリクサーと竜人化薬を大量にもらっていく事にした。すでにグレースが全て道具袋に収納済みだった。グラドラムの名産品も魔人達がすでにヘリに積み込んでくれていた。

またグラドラム防衛用の兵器は既に召喚してタピに任せている。タピにはそのままグラドラムに残ってもらいすべての管理をしてもらう事になる。

「それでは母さん行ってまいります。」

「ええ、気を付けて。」

フォレスト邸の前でイオナとミーシャとミゼッタに挨拶をしていた。

「ミーシャとミゼッタは母さんを頼むぞ。」

「お任せください。」

「かしこまりました。」

「ラウル様の御武運をお祈りいたします。」

「必ず帰ってきてください。」

「わかった。ミーシャはあまり無茶な開発とかしないようにな。」

「もちろん分かっております。」

俺はミーシャが無謀な実験をしないようにクギをさしておく。

「ミゼッタ。ゴーグは必ず連れて戻る。」

「お願いします。ゴーグにもラウル様を守るように言っています。」

ミゼッタはヘリの方にいるゴーグを見て頷いていた。

そして俺は上を見上げて言う。そこには巨大な黒龍のメリュージュがいた。

「メリュージュさん。すみませんお客様だというのにお願いしてしまって。」

「いえいえ、私も息子のお友達のご家族と一緒にいれて嬉しいですよ。」

「助かります。龍神様は必ず連れて帰ります。」

「お願いいたします。」

そして俺は今度は目線を下に下げる。

「アウロラごめんな。またお兄ちゃん遠くに行かなければならないんだ。」

「アウロラも一緒に行く!」

「ダメなんだよ。もしかしたら危ない事もあるかもしれないし。」

「アウロラ、にーちゃん守る!」

「そうかそうか!でもまた今度一緒に行こうな。」

「いま一緒に行く!」

《うむむむむ。かわいい!!困ったどうしようか?連れて行こうかな?》

《ご主人様。それはいささか危険ではないでしょうか?アウロラ様に何かあってからでは…》

《分かってるミリア!分かってるんだ!》

《出過ぎた真似をお許し下さい。》

《いや…いいんだ。》

念話で、シャーミリアともちゃもちゃやっていたがハッキリ言う時は言わねばならない。

「ごめんねアウロラ。必ず連れて行くから今は我慢してくれ。」

「でも…。」

「はいはーい、アウロラ!お兄ちゃんが困ってるから聴き分けなさいね。」

イオナがそう言ってアウロラを抱き上げる。

「うん、わかった…」

アウロラがしょんぼりしている。

《ううう。ちょっと切ないけど我慢だ。》

「じゃあ行って来るよ。」

「行ってらっしゃい。」

「行ってらっしゃいませ。」

「ご無事で。」

イオナとミーシャ、ミゼッタがにこやかに俺を送り出してくれる。

「にいちゃん行ってらっしゃい!」

「アウロラいい子にしてるんだぞ!みんなも元気で。」

アウロラの頭をくしゃくしゃしながら言う。

俺が家族とあいさつを終えると隣から声がかかる。

「ではラウル様!アウロラ様は私達が責任をもってお守りします。」

ポール王だった。

「ポール王。ありがとうございます。そしてファートリアに消えたポール王のご家族の消息が分かりましたら必ずお救いします。」

「お気遣いなく。ただ…もしあいつらが生きていたら、いや苦しい思いなどをしていたらその時は何卒よろしくお願いします。」

俺はポール王と固い握手をする。

「セルマも母さんをたのむぞ!」

くるるぅぅ

「心配するな。俺は必ず戻ってくる。」

がるるるる

「ああ、だから母さんを頼む。シロとイチローニローたちもセルマと仲良くな。」

俺はシロやグリフォン達から舐められたり甘噛みされる。

俺はセルマはイオナのそばに置いておくことにしたのだ。護衛にこれ以上心強い者がいるだろうか?しかもセルマはイオナの親のような存在だ。必ず守ってくれるだろう。

「イオナよそれでは達者でな。」

「先生も無理はなさらずに。ラウル、先生をお守りしなさい。」

「はい。母さん必ずお守りします。」

「お願いね。」

「はい。」

「まあ、わしも足手まといにならんように後方にいるでな。心配はいらんぞ。」

「また、先生はそう言って危ない事に首を突っ込むんですから。」

「うっ。そんなことはないぞい!わしはおとなしい爺じゃからのう、縁側でお茶を飲むのが趣味なんじゃ。」

「イオナ様。この爺はわしが責任をもって見張っております。」

「サイナスよ!おぬしのような爺にいわれとうないわ!」

モーリスとサイナスがいつものやり取りをしている。

「はは。ラウル、とにかく先生をお守りしなさい。」

イオナも聞いちゃいねえ。

「わかりました。」

モーリス先生が微妙な顔をしている。

異世界組とその付き人(オンジ、ケイナ、トライトン)と配下の魔人達、マリアとカトリーヌ。モーリス先生とサイナス枢機卿一行、カゲヨシ将軍と影衆がキングスタリオンに乗り込んだ。

「ではエミル行こうか。」

「了解。」

エミルの操縦するキングスタリオンが空中に舞い上がる。するとメリュージュさんが飛び立ってキングスタリオンの周りを飛び回った。

「母さん!ラウルの家族をよろしく頼む。」

「ええ、龍神様。お任せください。」

メリュージュがオージェに言う。

「では行って来る!」

「行ってらっしゃい。」

ホバリングしているメリュージュの前からキングスタリオンは、フラスリアに向けて飛び立つのだった。

「うおおお。やっぱり凄いのう!」

「ヘリは良いのう。」

やっぱり爺二人は喜んでいた。どうやらヘリ旅行が滅茶苦茶気に入ったようだ。

「素晴らしい国でしたな。」

カゲヨシ将軍が言う。

「ありがとうございます。一度は焼け野原になったのですが、魔人達のおかげであのような街になったのです。」

「マサタカ達が聞いたらさぞ悔しがるだろう。自分も見てみたいとな。」

「戦争が落ち着いたら、シン国との航空便を繋ごうと考えておりますがいかがでしょうか?」

「もちろん大歓迎ですな。旅費の方はぜひとも友好国価格で。」

「もちろんです。将軍には大変お世話になりましたから、そのあたりは十分心得ております。」

「ありがたい。」

フラスリアに向かう景色は既に夕日が射していた。グラドラムから南西に向かい太陽に向かって飛んでいる。まもなく陽が落ちるだろうが今日中にフラスリアに到着する予定だった。

「美しいですなあ。」

カゲヨシ将軍が言う。

「まったくですじゃ。このような風景を生きているうちに何度も見れるとは思わなんだ。」

「そうですな。」

「そしてあの龍。わしは龍など初めて見ましたわい。あれがオージェの母君だというのだから二重に驚きじゃわい。」

「我らシン国の人間でも、わしと影衆だけが見た事になる。眉唾物だと笑い飛ばされそうですな。」

「恐らく人間には龍なぞ見た者はいないでしょうな。」

「この時代に生まれて幸せですな。」

「本当ですじゃ。」

オージェがなんとなく誇らしげな顔をしていた。やはり母親の事を偉大な者として話されるのはうれしいのだろう。

「フラスリア迄はそう時間はかかりませんが、このあたりで軽食はいかがでしょうか?」

「おお!また機内食かの?」

「ええそうです。マリア!」

「はい。」

「あ、私もお手伝いします。」

カトリーヌが言う。

すると少し青い顔をして聖女リシェルも言う。

「あ、あの…私も。」

するとカトリーヌがそれを止めた。

「いえ、リシェル。あなたは高いところが苦手なのでしょう?座っていて。」

「でも。」

「良いのよ。私は平気だし。」

するとシャーミリアが言う。

「ええ、聖女リシェル。私奴が手伝いますから座っていて。」

吸血鬼に気を使われる聖女の絵面がなんかおかしい。前世のゲームで言うところの敵同士のような気がするのだが。

「シャーミリアさん、すみません。ではお言葉に甘えて。」

リシェルは椅子に腰かけてベルトを締めた。

「窮屈ではないですか?」

俺が聞くが聖女リシェルはフルフルと首を横に振るだけだった。どうやらその方が落ち着くらしい。

マリアとカトリーヌとシャーミリアがみんなに料理を配る。

「ミーシャと一緒に焼いたパイです。」

マリアが言う。

「おお!セルマ直伝のパイかのう?」

「そうです。」

「そりゃうれしいわい。」

大好物の特製パイを目の前に手を揉むモーリス。

皆がうまいうまいとパイを食っている。

《確かにこのパイは美味いんだよな。何度食べても飽きない味わいだ。》

グラドラムに向かった時と同じように皆が機内食に舌鼓をうっている時だった。

《失礼します!》

急な念話が入った。

《おう!暫くだなガザム!》

《はいラウル様。緊急の為、用件だけをお伝えする事お許しください。》

俺は少し胸騒ぎがする。

《いやいい。緊急か?どうしたんだ?》

《国境警備からの連絡で、ファートリア軍に動きがみられるようです。》

《なんだと!行き先は?》

《まだ不明ではありますが、敵は国境を超えていないようです。ファートリア国境沿いに続々と兵が集まっている状況です。》

《進軍の可能性は?》

《可能性は濃厚かと思われますが、一気に攻めてくるわけではなく国境に拠点を作り始めたとの事です。》

《わかった。とにかく相手国の国境を超えるな。どんな罠が仕掛けてあるか分からん。》

《はい、ラウル様の命令の通りに動いておりますのでご心配はいりません。》

《わかった!位置は?》

《ファートリアの西の国境ですので、進軍するとなれば行き先はバルギウスかユークリット王都となるでしょう。》

《了解。引き続き警戒を怠るな。動きを見て逐一報告するんだ!くれぐれもこちらからは攻撃を仕掛けるなよ。》

《心得ております。》

《ユークリット及びバルギウスのわが軍の状況は?》

《バルギウスには我とタロスとマカ。そして12名の直属と50名の魔人が援軍としてサナリアから送られてきてます。》

《分かった。それではさらにサナリアから早急に援軍を送らせる。ユークリットは?》

《ラーズとスラガ、および魔人が500人と人間の冒険者が100名前後。》

《ユークリットは今の所問題なさそうだな。バルギウスにはバルギウス兵もいるが寝返る可能性もある。なにかあっても今の所お前たちで制圧可能な状況だろうが、急ぎでかなりの大部隊を差し向けるつもりだ。》

《かしこまりました。》

《前線の監視部隊には、くれぐれも気を付けるようにと伝えてくれ。》

《は!》

《また連絡する。》

俺はガザムとの念話を切る。

ここに居るシャーミリア、マキーナ、カララ、ルフラ、ギレザム、ゴーグは既に俺の念話は共有されている。

「ラウル様。」

「ああギル。行き先変更しなくてはならないようだ。」

「はい。」

俺は今のいきさつを異世界組と先生たちに伝える。

「というわけなので、先生と枢機卿と将軍様はどうされます?できればフラスリア領に残られた方が安全かと思いますが。」

「何を言うとる。ここまで乗り掛かった舟じゃ、その状況であればわしらは戦力としてユークリットに行くのが妥当ではないか?」

「お願いできますか?あそこには冒険者が多数おりますので。」

「もちろんじゃ。ユークリットなら地の利も分かっておるし、人間には人間のやり方というものがあるというものよ。」

「頼もしいです。フラスリア経由でユークリット王都へと飛びます。エリクサーと竜人化薬そして私の召喚兵器を大量にユークリットに置いて行きます。ただし竜人化薬はいざという時の為の物です。人体への影響はよくわかっておりませんので慎重に取り扱い下さい。」

「もちろんじゃよ。あんなおっかない物そうそう飲めるものではない。」

「はい。」

「じゃがエリクサーとセットなら何とかなるんじゃないかの?」

「先生。私は母さんに先生を守るように言われているのですよ?」

「も、もちろん分かっとるわい。」

「お願いします。」

《この冒険大好き爺を落ち着かせるのは至難の業だけど、きっと俺が思うようにじっとしていてはくれまい…。》

するとカーライルが言う。

「ラウル様。大丈夫ですよ、モーリス先生と枢機卿は聖女リシェル様が見張っています。」

「ああ、そうですね。リシェル様がついていていただけるのであれば間違いはないでしょう。」

「ええ。そして私もグラドラムでは魔人達にかなりしごかれました。自分では出来ない訓練が山ほどできましたのでお役に立てると思います。」

「カーライルさんがいれば心強いです。」

「シャーミリア様もご無事で。」

「はぁ?お前のような弱い人間に気を使われるまでもないわ!」

「は、はい。」

カーライルさん…そろそろシャーミリアに避けられてる事気づいた方が良いよ…

「ラウル殿。」

カゲヨシ将軍が話しかけて来る。

「なんでしょう将軍様。」

「わしもユークリット残留をさせてもらうよ。」

「しかし、危険です。」

「なあにどうせここで守らねば明日は我が国が攻めいられるのです。わしも協力させていただきたい。」

「わかりました。では先生とサイナス枢機卿、カゲヨシ将軍様もユークリット王都で敵を迎え撃つ準備をお願いできますか?」

「微力ながら協力させていただく。」

「戦況が落ち着き、シン国から出た商人や冒険者の消息がわかりましたら必ずお送りいたします。」

「よろしく頼む。」

「では残りの物は一度バルギウスでガザムと合流し、敵が集結している場所へと進軍しようと思う。」

「了解。」

「了解。」

「了解。」

異世界組が返事をする。もちろんその従者たちはそのままついて来るだろう。

「エミル!一度フラスリアへ立ち寄り武器を置いて行く。」

「了解だ。」

「その後進路をユークリット王都、そしてバルギウス帝都に向かう。」

俺が指示を出すと皆が頷いた。

今度の敵は恐らく今までとは違うような気がする。こちらの動きを察知していきなり攻めてこないようだ。用心に用心を重ねていくしかない。

そんな話をしているうちに既に陽は沈み、外には夜のとばりが降りてきていた。