軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第338話 魔導鎧バーニア

黒龍のメリュージュは無事にグラドラムに受け入れられた。実はメリュージュはこう見えて龍の中では若いらしく大陸は初上陸だったらしい。これからどうするのかを聞いてみたがイオナとも馬が合うらしく、龍国に帰る予定もない為しばらくグラドラム周辺に滞在するようだった。

「先生。龍のしばらくってどのくらいになるんですかね?」

俺がモーリス先生に聞く。

「わしもよう分からんが、10年20年は一瞬じゃなかろうか。」

「ですよね。とにかく魚が逃げれば漁をするにも困るので、海は入らないでもらうようにお願いしようかと。」

「そうじゃな、そのほうが良いじゃろ。」

「研究所の洞窟は狭すぎて入れないですし、そのあたりも要相談ですね。」

「じゃな。」

「私も早速最前線に戻りますので、すぐに話をつけて準備をしたいと思います。」

「いよいよなのじゃな。」

「ええ。」

直ぐにフラスリアに戻り作戦を開始せねばならない。大陸の北にはくまなく基地を作り魔人と武器を配備してある。ラシュタルとシュラーデン及びルタン町とサナリアには、弾薬や砲弾を追加で輸送させる予定だった。すでに魔人軍の兵士ほとんどが車両の運転が出来るようになったようで、そのあたりは以前とは比べ物にならないほど作戦行動の効率が上がっていた。

《俺達全員が受体をして海底神殿で強化もしたし、心置きなくファートリアの攻略が出来るな。》

コンコン

俺とモーリス先生が話していると、部屋を誰かがノックした。

「はい。」

「失礼します。」

入って来たのはミーシャだった。

「どうした?」

「あの…デイジーさんがちょっと話がしたいと。」

「わかった。すぐ行く。モーリス先生はどうします?」

「ふむ。わしも行ってみるかの。」

「では。」

俺とモーリス先生はミーシャについて研究所に行く事になった。部屋を出て廊下を歩いていると髪の毛を切り髭を剃ってさっぱりしたオージェがいる。

「おお、さっぱりしたな!」

「ラウル、もう行くのか?」

「いや、まだ準備もあるし、今はデイジーさんに呼ばれてるんだ。」

「そうか。俺もついて行っていいか?」

「暇なのか?」

「そうだ。」

「じゃいいよ。」

俺達の後ろをオージェがついて来る。

俺達が歩いて行くと隣の客室からグレースが出てきた。

「あ、ラウルさん。」

「おおグレース。どっかいくのか?」

「いや手持無沙汰で出てきました。」

「そうか。」

「どこかに行くんですか?」

「デイジーさんの所。」

「ついて行っても良いですかね?」

「暇なの? 」

「はい。」

「じゃ、いいよ。」

するとその話声を聞きつけて隣の部屋からエミルが顔を出す。

「話し声が聞こえたから。」

「ああ、これからデイジーさんのとこ行くんだけどエミルも来る?」

「いいの?」

「みんなでついて行こうかってなってる。」

「じゃあ俺も行く。」

ミーシャの後について異世界組とモーリス先生が一緒に玄関を出る。するとフォレスト邸前の大通りの昨日と同じ場所に、巨大黒龍のメリュージュが座っていた。

「あら?みなさんお出かけ?」

「ああメリュージュさんすみません。外で一夜をお過ごしくださったんですね。」

「ええ、大陸はポカポカして夜もすごしやすいですのね。」

「建物に入っていただけたら良かったのですが。」

「大丈夫ですわよ。それで、どちらへ?」

「ああ、これから研究所に行くんですよ。」

「あら。私も付いて行っても?」

「でもメリュージュさんは洞窟には入れないかもしれません。狭くて身動きが取れなくなるかも。」

「あら。では入り口まで。」

「それならどうぞ。」

俺と異世界組とモーリス先生とメリュージュが、ミーシャについて歩いて行く。

ズシーンズシーン!

地響きが鳴り周りの家の人が窓から顔を出してみている。通りを歩いている魔人達も畏怖の念を抱きながらメリュージュを見上げているようだ。

俺達が市街地を離れ洞窟方面に向かって歩いて行くと、岩壁の前にドワーフのバルムスとデイジーさんとお手伝いのゴブリンたちが待ち構えていた。俺達は彼女たちの元へと近づいて行く。

「あれ?デイジーさん。研究所の中にいるかと思いました。」

「ん?いやなに、ちょっとラウルに試してもらいたいものがあってな。」

「試してもらいたい物?」

「これじゃ。」

俺達の目の前には、見た事の無い道具が並べられた。

するとデイジーの隣にいるバルムスが俺に言う。

「ラウル様!どうやら我らの技術の粋を集めて改良した鎧を持ってきたのですよね?」

「そうなんだよ!グレース!鎧を出してくれ。」

「はい。」

そしてグレースの道具袋から俺の鎧をだしてもらう。スッと手をかざすとそこに俺の鎧が出てきた。

「おお、懐かしい。」

バルムスが言う。

「これはドワーフが作ったんでしょ?」

「まあ正確にはドワーフが管理して来た、というのが正しいでしょうか?」

「作った訳ではない?」

「見た目の装飾を施したり、体に自動的に密着するように改良をしたのです。」

「じゃあ半分作ったって感じかな。」

「まあそんなところです。」

バルムスが我が子を見るような目で、ガルドジンから譲り受けた鎧を見ている。

「それで?俺は何で呼ばれたんだ?」

「ああ、すみません。実はこの装備におあつらえ向きの機能を追加しようと思いまして。」

「おお!何か新しい機能を実装しようって言うのか!?」

「はい。」

なんという胸がときめくワードだ。新機能実装なんてメカっぽくてかっこいい。

「それがこれか?」

「そうです。まずは鎧を着てくださいますか?」

「ああ。」

俺が鎧に魔力をそそぐとガシャンと後ろ側が開く。そのまま前に進みしっかり鎧に体を入れると自動で後ろが締まった。

「ラウル様。それではこれなんですが。」

バルムスが俺に渡すのは先ほど目の前に並んでいた道具だった。

「ああ。」

「これを背負ってもらいます。」

するとゴブリンたちがその背負子のような物を俺の鎧の背中に背負わせる。腕を通してランドセルのような感じになった。

「おお!ピッタリです!」

「バルムス。これは何だい?」

「デイジーと我で考えた推進装置です。」

「推進装置?」

「こちらに突起がありますよね?」

俺が背負ってる右の肩掛けにボタンがあった。

「これは?」

「それを押すと推進装置から、あの指向性の爆発的に膨張する液体が噴射されます。」

「なんだと!?」

「ええ、ですから推進装置から…。」

「いやいやそうじゃなくて。もしかして空を…空を飛べるのか?」

「水平飛行できる物ではありませんが、かなりの高度まで上がると思います。」

「す、すごいぞ!すごいぞ!バルムス!」

「喜んで頂いて光栄です。」

なんと…バルムスとデイジーはあの爆発的に膨張する液体を使って、ジェット推進機を作り出したようだった。

《こんなんロマンしかねえ。》

「それで操作は?」

「この左の肩掛けにある出っ張りを上や下にすると推進剤の調節ができます。右左に動かすと方向が変えられます。」

「なんと!」

「上にすると噴射口が開いて下にすると閉じます。」

「すごいぞ!ちょっとやってみていいか!」

するとバルムスとデイジーとミーシャが顔を見合わせて言う。

「…あのラウル様。」

「なんだミーシャ。」

「この推進剤の噴射口に使ったのは、ペンタのウロコなんですが。」

「ペンタウロコ?」

「はい。加工がしやすいのと、かなり丈夫なので使ってみたのですが。」

「なんだ?」

「強度的な問題があります。」

「強度の問題か‥‥。」

「はい。ですので試験でどのくらい持つかやってみなくては分からないのですが、今日はとにかくその鎧につけれるか試してみたのです。」

「えっ…。」

「ですので。私的にはとりあえずこの鎧に密着するか、見て見たかっただけと言う状況なのですが。」

《えー!ここまで期待させておいて使えないの!そりゃないぜセニョリータ。》

「すまんのう。軽い噴射試験では壊れる事が無かったのじゃがな、実は飛翔するほどの強度があるか分からんのじゃ。」

デイジーが言う。

「じゃ、じゃあ飛ぶのはやめといた方がいいでしょうか?」

「はい!やめましょう!ラウル様がお怪我をしてはいけません。」

ミーシャが言う。

「とにかく鎧にあうのが確認できましたし、少し微調整がいりますね。」

バルムスが言う。

「微調整?」

「その操作部をもう少し下にした方が良さそうです。」

「ああこれね。」

ポチッ

《ポチ?》

バッシュゥゥゥゥゥ

物凄いGが俺を襲う。

間違って押してしまった。

いきなりの上昇のGで血液が下に降りそうになるのを、ぎっちりフィットした鎧が防いでくれたようだ。

「ウぎゃぁぁぁぁぁ」

俺はとても人様に聞かせられないような声を発して、ロケットのように飛びあがってしまったのだ。下を見るとグラドラムの街がぐんぐん小さくなっていく。何千メートル上がったか分からない。

《とにかく推進剤を下にすると絞れるんだっけ?》

シュゥゥゥゥ

《お!凄い上昇がゆっくりになった。とにかくこれ…まるで宇宙ロケットのような推進力があるぞ。推進剤を絞って行けばゆっくり降りられるのかな?》

俺はレバーを下に下げていく。

パキン!

《うん。まちがいない…いまのは鳴っちゃいけない音だ。》

バグゥン

ボーン!!

いきなり背中でランドセルの下側が破裂したようだった。

ビューン!

爆発的に加速して雲を突き抜けて更に高度を上げていく。推進剤が一気に漏れ出してしまったようだった。

「さ、さむい。なんか温度が下がって来たぞ。てかいま壊れたよな?」

上空に登り切ったと思ったら、今度はゆっくりと降下を始めた。

「え!ヤバイ」

カチャカチャンカチャカチャ

俺が必死に操作レバーを上に下に動かしてみる。

《ぜんぜん舵が聞かない!ってか推進剤が出てこない!》

ヒューーーーーーーーーーー

「うっわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

俺は相当な高高度から自由落下を始めるのだった。

《えっ?この鎧この高高度から落ちても大丈夫なのか?これは!!》

ヒューーーーーーーーーー

真っ逆さまに落ちて雲を突き破りグラドラムが見えてきた。

「うわうわうわ。」

俺は死を感じた。

《ミリア!来い!》

ドン!

俺が落下をしていると、瞬時にシャーミリアが俺のところに来て俺を抱きかかえた。

…が多少落下速度が落ちただけで落下は続く…

「申し訳ありません。ご主人様!相当な重量で私一人では!」

「わかった!マキーナ!」

だんだんと地面が近づいて来る。シャーミリアより時間がかかったがマキーナも来てくれた。

「遅くなりました!」

俺をシャーミリアとマキーナが二人で支えるが鎧の重さに耐えかねて落下していく。しかし落下する戦艦の軌道を変える事すら出来るシャーミリアが、この鎧をもてないとは思わなかった。

《ルフラ!デイジーやモーリス先生たちを避難させろ!》

《かしこまりました!》

《カララ!いまバルムス達がいるあたりに糸で網を張ってくれ!》

《はい!》

「シャーミリア!マキーナ!下にカララの網がある!危険だからその前に俺から離れろ!」

「しかし!」

「命令だ!」

「はい!」

すると俺が打ちあがった場所のあたりの上空にカララがネットを這ってくれていた。

「放せ!」

「はい!」

「はい!」

俺からシャーミリアとマキーナが離れて行く。俺はそのままカララのはった網に絡まる。

グーン

糸がかなり伸びて落下速度が多少落ちて来る。

「ほっ。」

ブチブチブチ

「うそ!」

まさかカララの糸が切れるとは思わなかった。

バッシィィィィ

ん?

俺は…

地面に落下していなかった。俺の落下地点にいたメリュージュさんが手で受け止めてくれたらしい。

「あら。」

ポロ

ズゥゥゥゥン

俺はメリュージュさんの手から零れ落ちて地面に落ちた。しかし魔人のみんなとメリュージュさんのおかげで無事に地面に落ちる事が出来たらしい。

するとシャーミリアとマキーナ、カララが俺の周りにやって来た。

「ご主人様!大丈夫ですか?」

「お怪我は?」

「すみません!かなりの重さで!」

「いやあ大丈夫だよ。この鎧のおかげで全く問題ないようだ。」

「どうしてこのような事に?」

「いや大丈夫だよシャーミリア。」

「しかし。」

「いや俺の不注意なんだ。」

シャーミリアが驚いたように俺のそばに跪いて手を握っている。

するとみんなが近づいて来た。

「ラウル様!申し訳ございません!」

バルムスが謝る。

「いやこれ。安全装置を考える必要がありそうだな。」

「安全装置でございますね!かしこまりました!」

「しかし、凄い!デイジーさん!ミーシャ!これはかなり使えるよ!」

「そ、そうなのですか?」

「あとは強度の問題を解決すればいいわけだろ。」

「はい。」

「飛んで壊れてしまってから言うのは、わしもおかしいと思うのじゃが強化する方法が見当たらないのじゃ。」

デイジーさんが言う。

「ペンタのうろこを使って、あんなに強度が出たんですよね?」

「そうじゃ。」

「では…もっと強いうろこがあればいいと言う事ですよね?」

「そうなるのう。」

俺はそこにいた巨大な龍を見上げる。

「メリュージュさん。もし可能であれば鱗をいただくなんて事は出来ないでしょうか?」

「ああいいですわよ。古くなった鱗が生え変わって剥がれたところはすぐ再生しますから。」

メリュージュが快く受けてくれた。

「と、いうわけです。デイジーさんバムルス、ミーシャ。」

「メリュージュさん。よろしいのですか?」

ミーシャが聞く。

「ええ大丈夫ですよ。」

「しかしあの薬品をかなり圧縮する事に成功したんですね。」

「ふむ。試行錯誤の結果、更に10分の1まで圧縮する事が出来たんじゃよ。」

「素晴らしいです。」

これで俺の鎧の強化は間違いなくされそうだ。

「しかし…ランドセルですかあ。」

グレースが言う。

「そうだな、まさかのバーニア。」

エミルが言う。

「ロマンだな。」

オージェが言う。

前線に戻る前に完成しないのは残念だが、開発はそのまま継続してもらおうと思う。

熱を発しない推進剤はいろんな使い道がありそうだった。俺だけじゃなくて飛べる魔人達が使えばシャーミリア並みの加速が出来るかもしれない。ただ体の強度の問題もあるので使えるとすればファントムとマキーナだけかもしれないが。

もしかすると俺が召喚する乗り物にも応用できるかもしれない。

俺はデイジーとミーシャが生み出した、謎の推進剤の使い道をあれこれ考えるのだった。