軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第317話 新兵器試験

俺達はそのまま魔人軍の兵器試験場で、氷手榴弾と炎手榴弾とRPGの新型の弾頭を試験する事にした。さらに研究員のゴブリンたちが数名ついてきて、竜化薬と狼化薬そして鏡面薬の性能を見せてくれるという。

試験場はグラドラム都市の外にあり、荒野の広大な土地にドワーフ達が作った木の人形や土の人形などが大量に並べてある。

「ではカーライルさんとオンジさんがこれを試してみますか?」

「はい。」

「わかりました。」

この二人は気を高め身体強化で戦うスタイルのため魔力は持っていない。その二人に氷手榴弾と炎手榴弾がどんな力を発揮するのかを試してもらう事にする。

モーリス先生とサイナス枢機卿、聖女リシェル、ケイシー神父は安全の為少し離れた場所にいた。

俺は二人に氷手榴弾と炎手榴弾の安全装置の外し方を説明して、敵兵に見立てた人形にそれを投げつけてもらう。

「ではどうぞ。」

シュッ

カーライルが目にもとまらぬ投擲を見せる。さすがに剣の達人だけあってその動作を見る事が出来なかった。

バシュッ

瞬時に50メートルほど先の人形に氷手榴弾が当たって炸裂したようだ。

《ナイスコントロール。》

ビキビキビキビキ

なんと人形は10メートル四方の範囲で、数十体があっというまに凍り付いてしまった。

するとデイジーがカーライルに言う。

「カーライルよ、あの土人形を叩いてみてごらん。」

「わかりました。」

カーライルが土人形に走り寄り、剣を鞘に入れたまま小突いてみる。

バリン

ガラガラガラ

なんと凍った土人形が一か所から割れて崩れ落ちてしまった。

「これは…。」

カーライルが呆然としている。

するとそれを後ろから見ていたモーリス先生とサイナス枢機卿が言う。

「これほどの効果は魔法では得られんな。」

「その通りじゃ、土人形が芯まで凍りつくなどないわ。氷魔法は動きを止めたりするのに使うか、もしくは槍のように尖らせて飛ばしてやるとかそんなところだ。」

「ふん。お主らのなまくら魔法と一緒にするではないわ。」

デイジーがどや顔で言う。

実は驚いているのはモーリス先生やサイナス枢機卿だけではなく、異世界組も度肝を抜かれていた。まるで液体窒素を大量に浴びせたようなその結果に身震いする。

「ミーシャ。前に見た時より強力になっている気がするけど。」

「デイジーさんのおかげで、内包している薬の純度が格段にあがりましたので。」

「そういうものか。」

「はい。」

普通に答えるミーシャに、もう俺はなにも言う事は無かった。

「え、っと。じゃあオンジさんは炎手榴弾を。」

「はい。」

オンジは俺から指示されたとおりに安全装置を外し投げる。オンジの投擲も素早くていつ投げたのか分からなかった。人形が置かれている50メートルくらい先でそれが炸裂した。

ボォウッ

一気に10メートル四方に炎が広がる。あっという間に人形が焼かれていくが土人形は崩れずに耐えている。しかしその炎がいつまでたっても消えず、土人形はいつまでも炎をあげ続けてそのうちボロボロと崩れるのだった。

「まるで地獄じゃの。」

サイナス枢機卿が言う。

「どうじゃ恐れ入ったじゃろ。」

デイジーがどや顔で言う。

「自分で全部やったような顔でいいよるのう。」

モーリスが言う。

「もちろんミーシャがこれを見つけ、バルムス達がその兵器を作り、わたしはその中身の純度を上げただけじゃけどな。」

「とにかく素晴らしい成果じゃな。これなら普通の人間たちも魔法使い以上に戦う事が出来るじゃろう。」

モーリスが言う。

「そうじゃなぁ。これを使うのならモーリスを尊敬してついてくる、物好きな冒険者たちが丁度ええじゃろ。」

デイジーが返す。

「物好きとかいうな。」

「こんな耄碌爺を支持する冒険者がいるなんてのう。」

「うぐぐ。ま、まあよい。とにかく彼らが使えばかなりの戦果を挙げられるじゃろうの。」

「先生。確かに騎士が使うより冒険者の方が工夫してうまく使ってくれそうですね。彼らなら戦法も豊富にあるでしょうし。」

「うむ。」

そして次にバルムスが言う。

「では次にロケットランチャーをお試しになってはいかがでしょう。」

「そうだねバルムス。この試験は誰でもできるから、聖女リシェルとケイシー神父にやってもらいましょうか。」

「私がですか?」

「僕も?」

「ええ。」

俺が二人を座らせて膝をつくようにして姿勢を作らせる。バルムス達が作った弾頭を装填したRPGを構えさせて、300メートルほど先の人形の群に狙いを定めさせた。

「すみません聖女リシェル。裾に土がついてしまいますが。」

「お気になさらずに。」

「はい。」

俺が聖女リシェルの体を支えて言う。

「あとはここを押しながら引き金を引くだけです。」

聖女リシェルが法衣に身を包みながら、RPGを構える様子はものすごく違和感があった。戦闘尼さんなんて見た事が無い。

カチ

バシュウウー

RPGから射出された弾頭は勢いよく300メートル先に飛んで着弾する。

バズゥゥゥン

中の数万倍に膨張する液体が膨らみ大爆発をおこして、着弾した先の人形達が数十体吹き飛んでいく。

《やはりサーモバリック弾のようだが爆風に指向性があるんだな。さらにアルテマとかいう甲殻類の破片が飛び散って人形がずたずたになっているようだ。》

「きゃあっ!」

ガラン

聖女リシェルは驚いて空になったRPGを落とした。

「大丈夫ですか?」

俺が声をかける。

「え、ええ。すみません。驚いてしまいました。落としましたが大丈夫ですか?」

「問題ありません。先に説明しておけば良かったです。」

「いえ。」

そんなビビり散らかしてる聖女のことは見もしないでモーリスとサイナスが言う。

「おおお…これほどとは。」

「これが誰にでも扱えるというのか…。」

「そういうわけです。」

俺が言う。

「ラウル達が数人の魔人だけでバルギウスを制圧したというのもうなずけるわい。」

「今までの快進撃はこの兵器の力もあるという事か。」

モーリス先生とサイナス枢機卿が納得している。

「はい。こういった兵器を、さらに魔人という恐ろしい身体能力の者が使った結果です。」

「確かにのう。魔人と言うだけでも一騎当千の強者だというに、魔人にラウルの武器を持たせれば鬼に金棒を通り越しておるわい。」

「はい。さらにミーシャやデイジーさん、バルムスの知恵が加わってこんな物凄い兵器が生まれたわけです。」

するとモーリスは少し考え込んで言う。

「…ラウルよ。この技術は世界に流れんようにせんといかん。独り歩きしてしまったら取り返しがつかなくなるやもしれん。」

「確かにそうですね。私たちの技術力に追いつく者がでるかもしれません。技術を流出させないようにしていく必要がありますね。」

「情報漏洩などの対策も施しておったほうが良いぞ。」

「わかりました。」

《モーリス先生の言うとおりだな。そこはおいおい相談する必要がありそうだ。俺の兵器は30日ルールがあって消えちゃうけど、ドワーフ達が作った兵器は召喚したものではない。これが盗まれたりすると他で武器が作れてしまう可能性がある。》

俺がそんなことを考えている隣で、まだガチガチにRPGを構え続けているケイシー神父が目に入る。

「ケイシー神父も撃ってみますか?」

「いやあ…僕はもう大丈夫です。武器の威力は分かりました。」

《やはり平和主義のケイシー神父はこういうのは苦手だよな。》

「じゃあケイシー神父はやめておきましょう。」

ケイシー神父を見ていて俺は変な事を思いつく。

《情報統制に関してはサキュバスの霧毒を使って流出を防ぐのも良さそう。ケイシー神父が敵に捕らえられたりしたらすぐ、ゲロっちゃうだろうからコイツで試してみるのもありか。シャーミリア曰くケイシーは嘘はついていないらしいが、素直すぎるのも危険だからな。》

俺は後で内々にミーシャとデイジーに相談してみようと思うのだった。そんな酷いことを考えているというのに、ケイシー神父は申し訳なさそうに俺にRPGを返してくる。

後ろを振り向くとモーリス先生とサイナス枢機卿が、目をキラキラさせて俺が持ってるRPGをみつめている。

「先生と枢機卿も撃ってみますか?」

「いいのか!」

「わしまで、すまんのう。」

そして二人は1発ずつロケランを撃ってワーキャーいってる。そんなキャッキャ言っている老人二人をしり目にデイジーが言う。

「それじゃあ次に、新型の竜化薬と狼化薬を見てもらおうかのう。」

「デイジーさん。ちょっと気になったんですが、これ身体に影響は?」

「今のところ深刻なものはない。約一刻(3時間)もすれば竜化や狼化はとける。じゃが竜化狼化中に怪我を負うと、身体能力の低い魔人が元に戻った時には重傷を負っておった。」

「なるほど、竜化狼化しているときは身体の強度が上がっているから、解ければその怪我は元の身体では大怪我になっていると。」

「おそらくはそうじゃ。まあ取り扱い注意と言うやつじゃな。」

「人間が使う時は特に要注意ですね。」

「そうじゃな。竜化狼化している時は耐えられても死んじまうじゃろう。」

「わかりました。」

そして俺達の前にゴブリンが来る。

「おう、お前達も無理するなよ。」

「いえ。それがこれを飲んで竜化した時はなんというか…。」

「なんというか?」

「すっごく…。」

「すっごく?」

「気持ちがいいんです。」

「えっ?」

「あの気分が爽快になるというかなんというか。」

その話を聞いて俺は元異世界組の方を見ると、何か聞いちゃいけない事を聞いてしまったような顔をしている。

「あの、ラウル…。」

「なんだオージェ。」

「くすり、と言うよりもヤ〇」

「しっ!違うぞオージェ。決してそれとは違うぞ、何か別の理由があるんだろう。」

「そ、そうだよな。きっとそうだ、うん。」

「は、はは、ラウルさん僕はちょっと敬遠したい気が。」

「俺もかな。」

グレースとエミルも言う。

「虹蛇様、精霊神様!私の作ったお薬を使ってから元に戻ると、やけに頭がすっきりしているというか、私も次から次へといろんなアイデアが浮かぶんですよ!」

ミーシャが力説している。

「うん、そうなんだね。でもミーシャはこの試験にはもう参加しないようにね。」

「でも。」

「俺からの命令だ。」

「わ、分かりました。ラウル様のご命令とあれば。」

ミーシャは納得してくれたようだ。魔人はそれぐらいで何かなるようなやわな存在ではないはずだが、人間のミーシャは何かおかしな事があってからは取り返しがつかない。とりあえずこの実験はやめておいてもらおう。

俺達はとりあえずこの薬は慎重に使うべきと結論付けるのだった。

「では。」

俺達の前で薬を口に入れるゴブリンたち。

ズ、ズズズズ

竜人のようなうろこをまとっていくゴブリンと、ライカンのように巨大な狼へと変化していくゴブリン。あっという間に変身してしまった。

「ほう!こりゃすごいわい!こんなものを作るとは物凄いの!」

「まったくじゃ、こんな変化をわしは見た事が無い。」

異世界組の俺達は変身していくゴブリンに対して、何か見てはいけないものを見るかのような気持ちになっている。

「デイジーよ!これはわしでも変化できるのかの?」

「もちろんだよ。」

「わしでもか?」

「ああ、えせ宗教家でも問題ない。」

「えせ宗教家て。」

デイジーはそう言いながらも、モーリス先生とサイナス枢機卿に薬を渡している。

「先生!一旦試験は終わりにしましょう!今変化されると家に戻りづらくなります。」

「む?そうか?そうじゃな。」

「面白そうじゃったんじゃがの。」

とりあえず俺は二人の竜人化と狼人化を止める。

異世界組がグッと親指を突き出してサムズアップして見せる。

《でもきっといずれこの二人は飲むだろう。》

俺はその時の事を想像しながら何もない事を祈るのだった。