軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第288話 身内の有意義な雑談

皆が奇跡の光景を見て興奮冷めやらぬようだった。

《しかしグレースは明らかに一旦灰になったよな。蘇生したって事なのかな?》

皆がグレースを囲んで話をしていた。

「グレースはなんともないのか?」

「ええラウルさん。何というか以前より調子がいいみたいです。」

「調子がいいってのは体調がいいとかそういうもんか?」

「うーん。そういえばそうなんですが、そうじゃないと言えばそうじゃないというか。」

「はっきりしないと?」

「なんかよくわからない感じなんですよ。」

するとオンジが話し始めた。

「虹蛇様は受体と申しておりました。」

「オンジは何か知ってるの?」

グレースが聞く。

「はい。グレース様が虹蛇様になられたと言う事です。」

「何言ってんの?」

「化身ではなく分身体になられたという事です。」

「化身とか分身体とか、ちょっと何言ってるか分かんない。」

「分かりやすく言うなれば分家が本家になるようなものです。」

「僕が本家になったという事?」

「左様でございます。」

「なに?本家って。」

「虹蛇様はグレース様に引き継がれたのです。」

「何を?」

「虹蛇様を。」

《なんかとんちの問答みたいになってる。でもオンジの言ってる事を額面どおりに捉えると、グレースが神になったと聞こえる。》

ここにいる誰もが何を意味するのか分かっていないようだ。

「僕が虹蛇になった?」

「はい。」

「さっきと今は何も変わらないけど?」

「はい。恐らくそのようにお感じになっているだけです。」

「えっとオンジ。話を整理すると僕が虹蛇になったって事だよね?」

「左様にございます。」

「だとしたら、元の虹蛇はどこに行ったの?」

「あなた様と共に。」

「共に?どういう事?」

「またさらにご成長なされたと言う事です。」

「あのぅ…オンジが言ってる事さっぱりわからないんだけど、もしそうだとしたら僕はどうしたらいいの?」

「なすがままに。」

「なすがまま?なんか良くわかんないけど何もしなくてもいいんだね?」

「御心のままに。」

《グレースは何を言われているのか全くわからないようだが、もちろん俺も何のことか分からない。きっとこれも必然だったのだろう。なんとなく虹蛇もそんなニュアンスの事言ってたし。》

「まずは皆さん館に戻りませんか?夜ももう遅いですしまた明日と言うことで。」

俺が皆に言う。

「そうじゃな。ラウルが戻ったことで明日からはさらに忙しくなるじゃろ。シン国の方々もお疲れでしょうし今宵はもう休まてれはいかがかの?」

モーリス先生が言う。

「それでは将軍様と従者の方達は、客間にご案内させていただきます。」

マリアが声をかけた。

「かたじけない。それではお言葉に甘えて休ませていただこう。」

カゲヨシ将軍が影衆に声をかけた。影衆がカゲヨシに頭を下げる。

「しかしもの凄い物を見たの。」

サイナス枢機卿が目をキラキラさせて言う。

「はい。これもアトム神のお導きによるものかと。」

聖女リシェルがそれに答えた。カーライルはどこ吹く風といった表情でただ側らに立っていた。

「では。」

皆が振り向いて館に戻る道を歩き出すと、後ろには魔人が大勢集まっていた。

《そういえばさっきの落雷の音で集まって来たんだった。》

「あーみんなお騒がせしたね。家に戻っていいよ。」

ザッ!

俺が言うと魔人達が一斉に跪いた。

「お前たち!ラウル様は帰られたばかりでお疲れだ。当初の予定通りに明日ご報告などがある。今日はみな下がっていいぞ!」

ギレザムが言う。

「「「「「は!」」」」」

一斉に返事が返ってきた。

「それではご主人様参りましょう。」

シャーミリアに促されて歩き出す。

「ああ。」

俺たちは頭を垂れる魔人達の前を通り過ぎて館に向かうのだった。

《流石ギレザムは男前だな魔人達への指示がカッコイイ。シャーミリアも秘書の仕事が板について来たようだ。》

館に着くとマリアがシン国の人達を客室に案内するために先に入って行った。

サイナス枢機卿が立ち止まりケイシー神父にふりかえる。

「ケイシー神父よお前は私の部屋に来なさい。」

サイナス枢機卿が丁寧な言葉で言う。

「は、はい。」

ケイシー神父が直立不動で返事をする。

《なんかケイシー神父がやたらびびってんなあ。もしかしたらサイナス枢機卿ってファートリア神聖国では怖い人なのかも。なにか募る話があるんだろうからそっとしておこう。》

「ではトラメル様はこちらへ、客室へとご案内いたします。」

アナミスが妖艶な笑みを浮かべて誘う。

《アナミス?客だって分かってるよね?》

俺が念話でアナミスに語りかける。

《ふふっ。もちろんでございます。何を勘違いなさっておいでですか?》

《いや。すまん俺の勘違いだ。》

間違ってもトラメルの精を吸う事は無いと思うけど。

「ではラウル殿。私もお言葉に甘えて休ませていただきますわ。」

「はいトラメルさん。ゆっくり休んでください。」

「ありがとうございます。」

トラメルがかるく会釈をしてアナミスについて行った。

「それでは私たちもお休みさせていただきます。」

「ラウル様。それでは私もここで。」

聖女リシェルとカーライルもお辞儀をして、自分達があてがわれた部屋に戻って行った。

「ラウルよ。おぬしはもう休むのかな?」

モーリス先生が聞いてくる。

「いえ実はまったく疲れておりません。よろしければ先生に話を聞いていただきたく思っております。」

「そうかそうか!」

モーリス先生が嬉しそうだ。

「あのー?ラウルさん。」

「なんだいグレース。」

「なんか常に眠かったのが嘘のようで、僕はまったく眠くもないし疲れもないみたいなんです。」

「じゃあグレースも一緒に話そうか?」

「ぜひ一緒に!」

《確かに受体とやらでグレースが虹蛇になったのならば、疲れも眠さも一切無いだろう。》

「それでは私は部屋の外にてお待ちしております。」

オンジが頭を下げて言う。

「良ければオンジさんにも話にまざっていただきたい。」

俺がオンジに言う。

「よろしいのですか?」

オンジがグレースに聞いている。

「いいんじゃないの?」

「わかりました。ではご一緒させていただきます。」

俺とモーリス先生とグレースとオンジが、さっきまでみんなで食べていた部屋に戻る。すると既に部屋の料理は片付けられていてテーブルがきれいになっていた。

「あれ?皿が片付けられてる。」

「仕事をしたのは魔人のメイドじゃろ。」

モーリス先生が言う。

「魔人のメイド?」

「魔人のメイド志願者からマリアが選んで教育したのじゃ。」

「えっ?魔人にですか?」

「おう器用なものじゃぞ!魔人は皆が皆大雑把ではないようじゃ。ドワーフだけが器用なわけではないぞ。」

「それは凄いです。」

「驚きじゃろ?」

「ええ。」

そして俺たちは席に座る。

「ギルもミリアも座れよ。」

「わかりました。」

「かしこまりましたご主人様。」

ギレザムとシャーミリアも席につく。

「とにかく良くぞ戻って来てくれたの。」

モーリス先生が孫を見るように目を細めて俺に言う。

「いやあ…一時はどうなるかと思いましたよ。」

「ザンド砂漠に飛ばされたのか?」

「はい。」

「恐ろしかったじゃろ?」

「ええ。それはもう!人間二人を守り通して良く帰って来れたと思います!」

「そうじゃろうな。生きてる方が不思議なくらいじゃわい!偉いぞ!」

「ありがとうございます!先生の教えがいろいろなところで役に立ちました。もっと勉強していればと思いましたよ。」

《なんだろう。先生に褒められるとめっちゃうれしいんだけど。》

「ザンド砂漠に準備も無しに行って帰ってくるなど想像できんわ。」

「先生はザンド砂漠には行ったことあるんですか?」

「わしは尻尾を巻いて逃げ帰ってきたがの。確かに行ったことがある。」

「砂漠の旅は凄かったですよ!」

「そうかそうか!」

モーリス先生が身を乗り出してくる。

するとグレースも話してくる。

「どうやって砂漠に飛ばされたんです?」

「フラスリアでケイシー神父と握手したら次の瞬間ザンド砂漠にいたんだよ!」

「ええ?転移魔法って人間にもセットできるの?」

「そうとしか考えられないんだよね。しかも転移罠にかかって砂漠に行った後は、ラッキーなことに敵がいる逆方向に逃げたんだ!」

「ラウルさん!もってますねぇ〜。」

「たまたまなんだけど、我ながら本当についてるなと思ったよ。」

するとモーリス先生が言う。

「それはたまたまではなく、恐らくお導きというものじゃぞ。」

「導きですか?」

「そうじゃ。その後に虹蛇様にお会いしたんじゃろ?」

「そうです!そして私が虹蛇に会ったのは必然だと言ってました。」

「そうかそうか。虹蛇様がそう言ったのか。」

「はい。」

するとオンジが口を開く。

「ラウル様。虹蛇様を無事にグレース様の元へとお連れいただきありがとうございます。感謝のしようもございません。」

「感謝なんていらないです。逆に虹蛇様のおかげで帰って来れたんですよ!」

「そうでしたか。それでもラウル様のおかげでございます。」

オンジが丁寧に頭を下げる。

「そして凄いんですよ!モーリス先生!」

「どうしたんじゃ?」

「虹蛇様って乗れるんです!」

「なんじゃと?乗れる?虹蛇様に?」

「そうなんですよ!」

するとオンジも物凄い興味を示した顔で聞いてくる。

「ええ!もしかすると御神体をご覧になられたのですか?」

「はい。全体像ではないのですが腹の部分をみました。その腹の部分から光が射したと思ったら中に乗ってたんですよ!凄くないですか!」

「凄いのう!羨ましいのう!」

モーリス先生がめっちゃ羨ましそうだ。

「先生もぜひご一緒したかったのですが、なにぶん急な出来事でしたので。」

「命がけじゃが楽しそうな冒険じゃったのう。」

「はい!必死でしたが凄い冒険でした!」

モーリス先生もグレースも身を乗り出して話を聞いている。

「砂漠ってなにか変わった事あったんですか?」

「すんげえ魔獣がいた。」

「えっ?どんな魔獣が?」

「サメ!」

「ええ!砂漠にサメ!?」

「そう!砂を泳いでくるんだよ!マジで食われるかと思った。しかも何で引き寄せられたと思う?」

「なんです?」

「おしっこ!おしっこに引き寄せられて集まって来たんだ。」

「えー!砂漠でおしっこしちゃダメなんですね。」

「だめだめ!」

するとモーリス先生も興奮して聞いてくる。

「他にはなにがおった?」

「黒くてでっかい虫ですね。」

「虫か。」

「はい。いつの間にか囲まれてていきなり溶ける液をかけてくるんですよ!あれを掛けられたら私の車でもおそらくただでは済まなかったと思います。」

「恐ろしいのう、それでどうやって逃げたんじゃ?」

「小さい車でおびき寄せてその間に。」

「ほう、考えたものじゃのう。」

「いやー本当に切羽詰まって苦し紛れにやったのが当たった感じですよ。」

「ははは、ラウルさんらしいや!天才的なひらめきで切り抜けるなんて。」

グレースが前世の経験をひっくるめて言っているようだが、モーリス先生は特に気がついていないようだ。

「して、サメとはなんじゃ?」

モーリス先生が聞いてくる。

《やばい。そういえばこの世界の人たちは海に出ることは無い。サメなんて海洋生物を知っているわけがない。》

「魚ですよ!」

グレースが何も考えずに言う。

「魚?川に住むあれかのう?」

「そうです…」

グレースがようやく気が付いたようだ。俺達が前世の記憶も交えて話している事に。

「なるほど!ラウルは魔人国の海に潜ったと言うとったものな!そうかそうかサメという魚がおるのか!」

「そうなんです!」

どうやらモーリス先生はそう解釈してくれたようだ。

「そのサメと言うのは肉食系の魚なんですが。」

「魚が砂を泳いできたというのじゃな!?」

「ええ!そうなんですよ。砂の下を泳ぐってどうやって呼吸しているのか不思議でした。」

「まったくじゃの。不可思議な事があったものじゃ。」

《本当に不思議だったなあ。どうやって呼吸してるんだろう。》

「そして極めつけは砂の壁が迫ってきまして、それに飲みこまれて砂に埋まり虹蛇の住み家へと落ちたのです。」

「砂の壁じゃと?」

「ええ!砂の壁が迫って車が飲まれてしまったのです。」

「そんなことが…恐ろしいのう。」

するとグレースが聞いてくる。

「住み家?」

「そう!ダイヤの木々が生えたそれは美しい空間だったよ。」

「なんと!ダイヤの木々が!」

モーリス先生が食いついた。

「そうなんです。少しでも持って帰ってこれれば良かったんですけど、結局持ってこれませんでした。」

「それは惜しい事をしたのう。」

するとオンジが言う。

「それはスルベキア迷宮神殿ですか?」

「おそらくそうだと思うのですが、しかも迷宮神殿とはなんと虹蛇様の腹の中だったんです!」

3人が目を見開いて驚く。

「なんじゃと?腹の中?」

「うっそ、虹蛇の腹の中に神殿があるんですか?」

「そのような話をはじめて聞きました。」

「私もまさかと思ったんですがね、間違って腹の中で大砲を撃ってしまいまして。虹蛇様にすっごく怒られたんですよ。」

「ふっはははは!それは酷いのう!ラウルよお前は何という事をしたんじゃ!わっはっはは!」

モーリス先生にめっちゃウケてる。

「ははは!ラウルさんらしいですね!よくそんなことしましたねえ!」

グレースもウケてる。

だけどオンジさんは笑っていなかった。

下を向いてプルプルしている。

《あれ?怒っちゃったかな?自分が敬う神様の腹ん中で、武器をぶっぱなしたなんて聞いたら怒るよなそりゃ。》

「うわーっはっはっはっはっ!す、すみません…不謹慎なのですが、あまりにも豪快な話過ぎて笑ってしまいました。」

オンジさんもウケてる。

俺が意気揚々と話すのを見て、ギレザムとシャーミリアもめっちゃ嬉しそうだった。

《二人は俺をうっとりした目で見ているが、きっと俺との冒険を想像しているんだろうな。》

「ギルもミリアもいつか一緒に行こうな。」

「よろしいのですか!?」

「ご主人様ぜひお供させてください!」

「もちろんだよ。」

ギレザムとシャーミリアが嬉しそうだ。

「わしもいきたいのう。」

「僕も。」

「ぜひいつか魔人軍を連れて行きましょう!」

結局、俺達の雑談は夜明け頃まで続いたのだった。