軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第280話 兵士を救う神の御業

ドサ!

最後に倒した一体はエルフのゾンビだった。

「少しは勘を取り戻すことが出来たかな。」

将軍様ご一行が大量の獣人やエルフのゾンビに襲われていたので、救出するついでに実践訓練をしたのだった。体を動かすのに丁度よくリスクのない相手だった。おかげでいろいろと試すことが出来た。

「さてと将軍様に会いにいきますか。」

俺は高速揚陸艇EDA-Rとグリフォン装甲輸送車に向けて歩き出した。足元にはゾンビの残骸が大量に散乱している。

《人間のゾンビと違って獣人やエルフのゾンビは強かったぞ。どうやらゾンビは生前の身体能力を継承するみたいだ。エルフゾンビに至っては多少の知恵があるのか武器を巧みに操るヤツもいたし。》

俺がゾンビについて考えながら歩いていると、ケイシー神父が俺が置いてきた拡声器を使って声をかけてきた。

「ラウルさーん。大丈夫ですかー?」

俺は頭の上で丸を作って合図をおくる。するとトラメルとケイシー神父、マキタカと虹蛇が車から出て来る。

「ラウル殿!将軍様は無事なのでしょうか!」

「おそらくは。」

俺は高速揚陸艇EDA-Rの上にジャンプをして飛び乗る。そして揚陸邸の前方部分を下ろす。

ゴォンゴォン

揚陸用のハッチがおりきると兵士たちが構えていた。

「おお!殿!」

マキタカが声をかける。

「マキタカよ!よくぞ来てくれた!」

「ご無事で何よりでございます!」

将軍が中から出てくると他の兵士たちも続いて外に出てきた。

「しかし・・これはなんだ?」

将軍が高速揚陸艇EDA-Rやグリフォン装甲輸送車を見て言う。

「はいこれは虹蛇様とグラドラムからの使者であるラウル殿が、神通力で呼び出したものにございます!」

俺とトラメルとケイシー神父が将軍の前に跪いて頭を下げる。虹蛇はただ脇に突っ立ったままだった。

「よいよい!わしらを助けてくれた恩人であろう!頭を上げてくれ!」

「はい。」

俺達は頭を上げて将軍を見上げた。

将軍は髪がオールバックになっていて頭の先に髷が結ってあった。その体は甲冑に隠れてはいるが相当な筋肉量があるのが見て取れる。左の眉毛の上のおでこから目の下にかけて傷があるが目が潰れているわけではない。アゴにだけ髭があり精悍な顔をしていた。ちょっと眉毛が吊り上がっていて怖い感じもある。

「はじめまして将軍様。私はグラドラムからまいりましたラウルと申します。」

「おお!グラドラムから!北のはずれではないか!」

「はい。」

「私はユークリット公国フラスリア領主のハルムート辺境伯にございます。」

「ハルムート辺境伯?お父上はどうしたのだ?」

「ファートリアバルギウス連合に殺されました。」

「何と!ファートリアとバルギウスが組んだ?」

「はい。」

「北ではそのようなことが起きたのか?」

「はい。」

「そちらのものは?」

将軍は虹色の髪をした虹蛇が気になったようだ。するとマキタカが慌てて紹介する。

「将軍様!こちらが砂漠からまいられた虹蛇様にござりまする。」

「おお虹蛇様ですと!申し訳ございません。高い所から挨拶をしてしまいもうした。」

将軍が慌てて跪いた。

「よいよい我は特に礼儀にうるさいわけでもない。それより将軍よ!ぬしの同胞に怪我をしている者が多数いるようだが大丈夫か?」

虹蛇が揚陸艇内にいる兵士たちを見て言う。

「それが治癒士もいたのですが、先に屍人に殺されてしまい残り数名になってしまったのです。治癒が追い付かずに諦めねばならぬ者も・・」

「通せ。」

虹蛇は将軍に言って怪我人の場所に案内しろと言う。

「はい!」

俺達が将軍について行くと揚陸艇の甲板に横たわった兵が十数人いた。

「う、うう。」

「しょ将軍様・・ご無事でよかった。」

「・・・この程度で怪我など、不甲斐ないさまをお見せしてしまいました。」

《いやいや!どうみても重症じゃん!そんな気遣いしてる場合じゃないよ。》

動けなくなった人たちは相当の重傷で、腕がちぎれかけている物、腹に穴が空いてしまった者、足があらぬ方向に折れ曲がった者が多数いた。

「ひどい・・」

トラメルがつぶやく。

「この者たちは既に動く事も出来ずにおります。」

将軍が虹蛇に言う。すると怪我をした兵士たちが口々に言う。

「将軍様!私たちを置いて行ってください!」

「この森は怪我人を連れて無事に抜け出せるような生易しい場所ではないようです。お見捨てになっていただければ!」

「そうです。お役に立てた事を本望に思います。こうして将軍様が無事でいられるのであればお役御免と言う事で・・」

兵士たちの言葉に将軍は苦い表情を浮かべた。

「このような結果になったのはわしの責任じゃ・・・しかしおぬしたちの言う事はもっともである。おぬしたちの言うようにせねば生き残った他の兵士たちが死ぬ。」

「はい!」

「お見捨てください!」

「将軍様のお役に立てて幸せでした。」

「うむ。」

将軍が悲しみを湛えながら返事をする。

すると・・

「まてまて!何を勝手に別れをのべておるのじゃ?怪我を治せばいいのであろう?治せば。」

「ですが治癒士は既に魔力が切れており、魔力の回復を待ったとしても間にあいませぬ。」

虹蛇に言われ将軍が悔しそうに言う。

「ほれ。」

すると虹蛇の前にいきなり薬品の小瓶が出てきた。どうやら道具袋から何かを取り出したらしい。

「数千年も前の代物じゃが、我の中では時が止まっておるでな腐る事は無い。」

「これは?」

「おぬしらは知っとるかの?エリクサーという物じゃな。」

虹蛇が道具袋から出したのは数千年も前に作られたエリクサーらしい。

《なんと・・デイジー婆さんが禁を破って作った薬が、数千年前にはすでにあった物だったのか。》

「エリクサーとな?マキタカは知っておるか?」

「いえ存じ上げませぬ。」

「つべこべ言わんと早く怪我人に飲ませい!死んでしまうであろうが!」

虹蛇に言われ将軍はぺこりと頭を下げて周りの部下に目配せをする。

将軍と影衆、マキタカ、他の配下達がエリクサーを持って怪我人の元へと駆け寄っていく。

「飲め!」

将軍が重症の兵士にエリクサーを飲ませようとするが、すでに意識が無くなっているようで自力で飲むことはできないようだった。

すると虹蛇が言う。

「ふりかけるだけでも良い!」

パシャ

パアアアアア

怪我をした兵士たちが光り輝く。

すると兵士たちのちぎれかけてた腕が、複雑に折れたあしが、胴体に空いた傷が綺麗に治っていく。

「おおおお!」

「すばらしい!」

「奇跡だ。」

治っていく兵士たちがその神の御業とも思える修復力を見て驚いている。

「これは。」

「我が数千年の昔に人間にもらった物だ。使う事もなかったのだが役立つ時が来てよかったぞ。」

将軍とマキタカ以下全てのシン国の兵士が虹蛇に頭を下げていた。

《物凄い感謝の気持ちが溢れているっぽいな。》

すると将軍が語り始める。

「虹蛇様!その素晴らしき御心で我々は救われました!シン国にも伝わる虹蛇様の伝説は真でございました。その奇跡の御業は末代まで語り継がれる事でありましょう!」

「うーん。そんなに凄い事した?」

虹蛇が俺に顔を向けて言う。

「それはもう素晴らしき神の御心に感動でいっぱいだと思いますよ。」

「そうかそうか!それならよかった!えーっとではこれも飲むがよい。」

気分を良くした虹蛇がまた何かを取り出した。今度は赤い色の液体が入った小瓶だった。。

「これは?」

「ポーションと呼ばれるものだ。これも貰い物だがなかなり体力が回復するだろう。」

「ポーションなら存じ上げております!ありがたく頂戴いたします。」

「いっぱいあるので人数分出してやるわ。」

「ははっ!」

次々と出て来るポーションの瓶。

兵士たちが回復しそのおかげで活気が出てきた。兵士が元気になるのを見て将軍が俺達の所に来る。

「虹蛇様!おかげさまで配下達を救う事ができました!国を上げてお祭りさせていただきたく思います。虹蛇様に望まれるものはございますでしょうか?」

「特に何もいらんわ。」

「何も?」

「死にかけていたから救った。それだけの事でいちいち祭り上げられてたのでは疲れるわい。」

「疲れるって・・」

「そんなことよりこれからどうするかじゃろ?」

「わかりもうした。それでは虹蛇様への御礼は国に帰ってからという事に致しましょう。どうやらそちらに北の事情をお知りになっている方がいらっしゃるようだ、ぜひお伺いさせていただきたく!」

「ラウルよ、そう申しておるが。」

「わかりました将軍様。主要な人を集めて話し合いをいたしましょう。」

「わかりもうした。そのまえに亡くなってしまった兵を弔ってやっても良いでしょうか?」

「もちろん。私たちの仲間に神父がおります。教えが違うかもしれませんが、魂を鎮めるための祈りを捧げさせてもらいましょう。」

「かたじけない。そしてこの襲ってきた屍人達であるが、この者たちもなぜこのようになってしまったのか?」

「恐らく敵に殺された森の住人たちでございます。彼らの魂にも祈りを捧げさせてもらいます。」

すると将軍が兵士たちに声をかける。

「皆の者、死んだ仲間と無念にも屍人になってしまった森の獣人を弔ってやろう!」

「「「「「は!」」」」」

そして円形に木が無くなってしまった大地へ、シン国の兵士たちが木べらや手で穴を掘り始めた。

《それは骨が折れる・・》

「みなさん!良ければこれをお使いください!虹蛇様の御心です!」

俺は兵士に呼びかける。

「なに?」

虹蛇がなにか言うのを無視して、俺は自衛隊の備品である土木作業用ショベルを150本ほど召喚した。

「おおお!」

「なんと!」

「すばらしい!」

《よしよし召喚も虹蛇がやっていると思っているな。なんでも虹蛇がやったことにした方が都合がいい。》

兵士たちはみんなシャベルを手に穴を掘り始める。急に効率が良くなりどんどん人が埋められていく。

《しかし・・屍は2000くらいあるな・・》

結局、掘って埋めて掘って埋めてをくりかえしているうちにどんどん時間が過ぎていく。2000ほどの屍を埋める頃にはすっかり夜になっていた。

《この時間帯は魔獣がさらに活発に動く時間帯だ。危険だな。》

兵達を危険にさらすといけないので、全員に高速揚陸艇EDA-Rへ入ってもらうことにする。

「将軍様!それでは皆にこの中に入っていただき休息を取ってもらおうと思います!」

「かたじけない!」

「いえ。その代わり私だけでは四方を見張れませんので、影衆のお力をお貸しいただけませんか?」

「もちろんだ。お前たち!」

「「「「「は!」」」」」

俺の周りに影衆が来た。

「それでは兵の皆さんに休息を取らせねばなりません。」

「はい。」

そして俺は虹蛇に聞こえないようにボソッという。

「虹蛇様がまたお恵みをくださいます。これを兵達に食べさせましょう。」

影衆の前に戦闘糧食の乾パンを200食用意した。いきなり目の前に出て来る乾パンの袋に影衆は驚いているようだった。

「これは?」

「こうやって袋から出して食べます!」

「おお!すばらしい!これも虹蛇様の?」

「ええ。神の御業です。」

そして乾パンはあっというまに兵士に配り終えられた。

「影衆の皆さんもどうぞ!」

「ありがとうございます。」

「そしてこれを食べたらこの壁の上に乗って、私と一緒に見張りをお願いしたいのです。」

「もちろんでございます!」

「何かあれば私にいち早くお教えいただけますでしょうか?」

「わかりました!将軍様へは?」

「もちろん私と同時期にお教えください。」

「は!」

皆が乾パンを食べ始めたので俺は揚陸艇の外壁の上に登る。

森はすっかり陽が落ちてしまった。不用意に光を使えば何かを呼び寄せてしまう可能性がある為、みな月の光で照らされながら乾パンを食べていた。

《うーむ。森に来たならエルフかトレントに連絡をとりたいが・・そのすべがないな。セルマ熊なら一発でトレントを見つけてくれるんだけどな。》

俺は明日からの行動予定を模索し始めるのだった。