軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第269話 虹蛇に搾取されてない?

西の山脈のだいぶ奥地まで来た。

西の山脈は物凄い魔獣がいる場所と聞いているが、俺達はまた虹蛇本体内部のソファに座って優雅にお茶を飲んでいる。今は天井からぶら下がっているカーテンのような物に映し出される外の映像を見ていた。

《この部屋はホント人間をダメにしそうなほど快適だわ。》

虹蛇は山肌を縫うようにスルスルと地を這って進んでいるが、やはり実体化すると飛ぶ事は出来ないようだ。西の山脈は岩だらけで木々などが無く、そこいらじゅう雪が積もっており寒そうな風景が広がっている。

「このあたりにあるな。」

虹蛇が言う。

「岩塩を見つけたんですか!?」

「そうだ。」

「こんな奥地まで来ないとないんですね。」

「私の満足する物はな。ここからはお前の出番になるぞ。」

「私のですか。」

そして虹蛇快適ルームの壁に穴が空いた。

「とりあえず出るとしよう。」

「はい。」

七色の髪の毛の女っぽい人を先頭に、俺とトラメルとケイシーがついて行く。

部屋から出るとそこは峡谷の崖の上だった。後ろを振り向くと前と同じように虹蛇の快適ルームも虹蛇の本体も無くなっていた。

「寒!」

ぶるっ

「本当ですわね。」

「そうか、おぬしたちには寒いか。」

「そうですね。」

俺は3人分の米軍防寒着 ECWCSを召喚した。

「これを着てください。」

「助かりますわ。」

「あったかいですね。」

2人は防寒着を来てようやく落ち着いたようだ。

そして虹蛇が言う。

「あの大砲とやらは出せるかな?」

「ええ出せますよ。」

「これから我が言う対岸の数か所を狙って撃つ事はできるかの?」

虹蛇が渓谷の対岸を指さして言う。

「きっちり焦点を合わせるなら魔力を使えば問題ありません。」

「それを聞いて安心した。」

「では。」

ズゥン!

俺はM777 155mm榴弾砲を召喚して崖に設置し始める。後部の駐鋤を取り付け足を伸ばして固定し榴弾を装填した。

「それじゃあ我が言うとおりの所にそれを当てていってくれるか?」

「はい。」

「あの対岸の山頂の下に見える岩が雪から出ている場所。そしてその下に見える雪の凹んだ部分、そしてその下のつららが数本ぶら下がっている滝のあたり。それから・・・」

俺は虹蛇から言われるポイントを全て正確に覚えていく。

「わかりました。ただ虹蛇様、ここで撃つと我々の後方の山が雪崩をおこします。」

「まかせておけ。」

ズッズズズズズ

また俺達の傍にあの虹蛇の巨体が出てきた。

「我がくい止める。お前はただ我に言われたところを正確に射抜けばよい。」

「わかりました。念のため虹蛇様とトラメルさんと神父は中に。」

「わかった。」

虹蛇本体からスポットライトのような物が出てきて3人は中に吸い込まれていった。

《しかし・・本体の胴体の太さは一体どのくらいあるんだろう?山が一抱えにされてしまっているようにさえ見えるな。まっいいかこれで気兼ねなく撃てる。》

キリキリキリ

俺は照準を合わせる。

ズドン!

バゴン!

ズドン!

バゴン!

合計で8カ所に正確に撃ちこんでいく。

すると・・

ゴ・ゴゴゴ・・ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

渓谷の向かいの斜面が氷や岩肌ごと滑り落ちていく。

虹蛇は山の亀裂や岩肌の弱い部分などを見抜いていたのだろうか、岩肌がまるでシャッターの様にスルスルと谷に落ちていくのだった。

「すごっ。」

ズズズズズゥーン

岩の残骸などは全て谷底に落ちて行ってしまった。

ド・ドドドドドドド

遅れて向かいの斜面の上から雪崩が起きて雪や氷が落ちてきた。それも全て谷底に落ちていくのだった。

・・・・・・

やっと落ち着いた。

ズズズズズズズ

すると後ろで今まで雪をせき止めていた虹蛇の胴体の一部が俺の傍に降りて来る。

スッ

虹蛇が消えて3人が出てきた。

「ラウル殿!お怪我などない?」

トラメルが心配して近寄ってくる。

「ええ。全然ですよ。」

「よかったです。」

そして虹蛇が言う。

「それじゃあ、あそこに行くぞ!」

「ここからですか?」

「そうだ。本体で行けばせっかく出た岩塩がまた土や雪で埋もれてしまうかもしれん。」

「一度渓谷を降りねば渡れませんが?」

「我の本体を介して渡ればよい。」

「わかりました。」

ズズズズズ

渓谷の上を蓋するように虹蛇本体が出て来て、4人は虹蛇本体の上を歩いて渡っていくのだった。

《しかし出たり消えたり便利すぎるだろ。こんなに便利だったら、虹蛇だけでも岩塩取りに来れたんじゃねえのかな?》

じっと虹蛇小身体を見るが楽しそうに前を歩いている。

まあ細かい事を気にしていては始まらない。いまさら驚く事など何もないのだ。

虹蛇の上を歩いて対岸に渡り、俺が榴弾砲を当てて岩肌がむき出しになった場所まで登る。

「ラウルも器用なものだな。」

「いえ、虹蛇様の指示に従って撃ったまでです。」

「うまいこと岩塩がむき出しになっておるぞ。」

「あの白に桃色っぽい所がすべて岩塩ですか?」

「そうだな。」

「凄い。」

「たくさんあるじゃろ!」

《たくさんあるなんてもんじゃない。岩盤がずれて出てきた斜面はほとんど白にピンクの物質でできている。》

「本当ですね。」

「でもどうやって採るのですか?」

「手では掘れませんよ。」

トラメルとケイシー神父がもっともなことを言う。

「ラウルよ何か方法は無いのか?」

《虹蛇本体で噛みついたらいいんじゃね?》

俺の心の声はおいといて・・

「いや、方法はあります。」

俺は陸上自衛隊が救助活動用の備品として使った、油圧式カッターやエンジンカッター、エンジン式削岩機を召喚した。

「これらでほじくり出そうと思います。あの3人は危険ですのでそこで見ていてください。」

《やれやれ、まさか旅の途中で土木作業をすることになるとは思わなかったな。》

俺はヘルメットとゴーグルをつけて岩肌を土木作業機器を担いで登る。

「下に落ちますのでそこにいないでください!」

「わかりましたわ!」

「気を付けて!」

「はい!」

早速岩塩をほじくり出す作業を始めた。

ガガガガガガガガガ

キュィーーーーーン

ガンガンガンガン

ボゴッ!ゴロン!

「うおっ!デカイ」

ガガガ

キュィィィィ

ボゴ!コロン

「うーん小さいなちょっと不満。」

ガンガンガン

ガガガガガガガガ

キュィィィィィィ

ボゴン!ゴロッ!

ドン!

「おお!すっげえデカイ!」

俺は1時間ほど土木作業をしていたが、日が落ちてあたりが暗くなってきた。

「すみませーん。ちょっと作業がはかどらなくなってきたので明日の朝にまた再開しまーす!」

「わかった!では今宵は本体の部屋でゆっくりするといい!」

「ありがとうございまーす!」

再び虹蛇の本体が出てきて俺達はまた吸い込まれていくのだった。

《出たり消えたりなんて便利なんだろう。虹蛇も至れり尽くせりしてくれるもんだな。》

そしてまた嘘のような快適な部屋が目の前に現れた。

「我の中なら安心して眠れるぞ。3人ともゆっくりするがよい。」

「虹蛇様は?」

「我に眠りなどいらん。少なくともお前たちのような時間の単位で生きてはおらん。」

「わかりました。ではお言葉に甘えて。」

そして俺達3人は砂漠に転送されてからの旅で、本当に久しぶりにぐっすりと眠りにつく事が出来たのだった。

深ーく

ふかーく

zzz

____________

「朝じゃぞ!」

虹蛇がおこしにきた。

「すみません!つい爆睡してしまいました!」

「わたくしも!なんだかここはとても心地良くて!」

「僕もすっかり疲れがとれたみたいです!」

「そうじゃろ!我の中でなら胎児のように眠れたはずだからな。」

「まさにそんな感じです!これで労働の意欲がわくってもんです!」

「そうかそうか!まずは目覚めの一杯だ。」

虹蛇が俺達にワインのような飲み物をふるまってくれた。そして一緒にパンがでてきた。

「このパンは?」

「加護じゃ、受け取るがよい。」

するとケイシー神父が祈り始めた。俺とトラメルもそれに習って祈りを捧げる事にする。

「素晴らしいです。」

「それではいただきましょう。」

トラメルとケイシー神父が感動していた。

「あの?ケイシー神父。このパンになにか意味があるんですか?」

「神様の体を食するようなものです。」

「そういう物なんですか?」

「ええ。」

俺達3人はパンを頬張る。

「これは・・・」

「すばらしい。」

トラメルとケイシーが言う。

「うん?本当だみなぎってくるぞ!」

虹蛇が出してくれたパンとワインを飲み食いしただけなのに力がみなぎってくる。

《これが神の加護というやつなのか?いずれにせよステータスアップしたみたいな力がわいてくる。自分のステータスとか見た事ないけど。》

神様!今日も一日!肉体労働に精が出せそうです!

そんな感じの元気が出てきた。

「よし勤労はすばらしいぞ!今日もがんばれ!」

「私にも働かせてください!」

「僕も手伝います!」

「そうかそうかおぬしたちもやるか!」

なんか知らんが2人もみなぎってきたようだ。

朝ごはんを食べ終わった俺達はまた祈りを捧げてから、砲撃により現れた岩塩採掘場に向かうのだった。

ガンガンガン

ガガガガガガガガ

キュィィィィィィ

3人で土木作業を始める。

俺が油圧カッターを使ったりしてほじくる。トラメルが削岩機でガガガガガと土に穴を空けていく。ケイシーがカッターで綺麗に岩塩の周りを切っていく。

3人の労働を俺が召喚した椅子に座った虹蛇が眺めている。

《うん。監督が見ていてくれるなら安心だ。》

作業をお昼まで続けて俺は2人に声をかける。

「さてーそろそろ昼にすんべさー!」

「そうだわね!」

「僕も腹が減ってしかたがねっす。」

普段の言葉遣いと違っている気がする。いや細かい事は気にしても始まらない。

昼食をとり結局その日も暗くなるまで岩塩堀りをした。

「あのー!虹蛇様!そろそろ暗くなってきましたのでまた明日にしたいのですが?」

「わかった!では本体の部屋でゆっくりするといい!」

うん。昨日と同じような返事が返って来た。

夜も虹蛇はパンとワインを恵んでくだされた。

そして俺達は昨日と同じように虹蛇本体の部屋で寝るのだった。

胎児のように。

3日目の朝。

「朝じゃ!起きろ!」

虹蛇がお越しに来た。

「は、はい。すみません爆睡しすぎてたかも。」

俺にしてみれば珍しかった。昨日1日ぐっすり眠ったのだからこんなに眠るはず無いのに。

「わたしもすみません。」

「僕もすっきりしました!」

《まるでデジャブだな。》

そしてまた虹蛇が言う。

「加護を与える。」

「ありがとうございます。」

俺達3人はまたしっかりと祈りをささげた。今度は俺も何の疑問もなく祈る。

すると俺達の前にまたパンとワインが出てきた。

「加護をありがとうございます。」

「それではいただきます。」

そして俺達はまたパンとワインを食すのだった。

「では!今日も1日勤労に精をだしましょう!」

「はい!」

「いきましょう!」

俺だけでなく2人もやたらと元気がいい。

《・・・というか、この2人の体つきが何か変わって来た?》

トラメルは騎士ではあるがもともとほっそりとしていたはずだった。それが今は筋肉がしっかりと着いた気がする。ケイシー神父もどことなくナヨナヨしていたのが、男らしくなってがっちりとしてきたようだ。

《1日仕事したくらいでこんなに筋肉つくかな?まあいいか、とにかく今日も岩塩を掘ろう!》

というわけで3人は今日も土木作業にいそしむのだった。

ガンガンガン

ガガガガガガガガ

キュィィィィィィ

作業をしているうちに俺はある異変にきがついた。

《えっと、気のせいかな?トラメルが岩塩を担いでる?50センチくらいの塊を。いや、ケイシー神父もせっせと岩塩を運んでいるが軽々と持っているぞ。》

なんかこの仕事に生きる意味でも見出したように勤勉に働いている。

かくいう俺もバリバリ働いていた。

夜になりすっかり日が暮れてきたので虹蛇に頼む。

「虹蛇様!そろそろ日が暮れてきました!今日もよろしいでしょうか?」

「もちろんだとも!」

そして俺達は虹蛇の体内でまた眠るのだった。

朝になり・・

「ほら!早く起きろ!」

虹蛇が俺達のもとにやって来た。

「す、すみません!またもぐっすりと眠ってしまいました。」

「わたしもですぅ!」

「僕も!」

「まあ良い!加護を与えよう!」

俺達はまた3人で祈りを捧げる。

「神のご加護に感謝を。」

「今日の勤労に感謝を。」

「益々の健康に感謝を。」

そしてパンとワインを食べて体に力をみなぎらせていく。

勤労して神に祈りを捧げて実に清々しい!

ん?

《でもまて・・・》

なにかがおかしい。

俺達の人生がまるで炭鉱夫の様になっているが違う!俺達は村人の為にお礼用の岩塩を取りに来ただけだ!

俺は完全に思考停止していたことに気が付く。

「えっと!!!虹蛇様!!!」

「なんじゃ!?」

「今日の作業を終えたら岩塩を持って村にもどりましょう!」

「どうした?もう採らんのか?」

「もう十分かと!」

「チッ!」

《えっ?こいつ今舌打ちしなかった?》

「まあいいだろう!今日採れた岩塩は全て我の本体に運び込め!山を下るまで運んでやろう!」

「ありがとうございます!」

うん。ようやくこの土木作業も今日で終わるようだ。

「・・・我の道具袋に詰めるだけ詰めようと思ったのに。君のような勘のいいガキは嫌いだよ。」

ぼそりと虹蛇が何かをつぶやいている。

「えっ!虹蛇様!いまなんかおっしゃいましたか?」

「いやいやこっちの事。」

なんだろう?でもどうしても今日も岩塩堀りに精を出したい気分だ!

「がんばるぞぉー!」

「いきましょう!」

「おおー!」

俺達3人は結局最終日もしっかりと土木作業に精を出すのだった。

勘の悪いガキである。