軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第266話 異世界の和風な村

シルバーウルフが集まって来た。

輸送防護車・MRAPをどんどん加速させる。

「左右から近づいてきました・・後ろにもいます。」

草原の方からどんどんシルバーウルフが近づいて輸送防護車と並ぶように走る。まるで海原を走る船の周りを泳ぐイルカのようだ。

時速60キロで走っているが余裕で着いてくる。

「えっとケイシー神父。中に入って上部のドアを閉めてください。」

「はい。」

ガパン

バン!

ケイシー神父を中に入れる。

「シルバーウルフは足が速いですね。」

ケイシーが言う。

「そのようです。」

「あっ!飛びかかってきました。」

ガシュン

どうやら爪で輸送防護車の装甲に攻撃してみたらしい。シルバーウルフは爪を立てる事が出来ずに落ちて後方に転がるが、体制を立て直してまた追いかけて来る。

「あ、また飛びかかって来た。」

ガシュン

「今度は天井に乗っていると思います。」

「了解です。とにかくハッチを開けたりしないでくださいね。」

「はい。」

ガシュン

「たぶんもう一匹乗られました。」

「了解です。」

ブロロロロロロロロ

俺は輸送防護車のスピードを上げていく。70キロに到達してもシルバーウルフの群れは脇を走っていた。

しかし・・

10分くらいは追走していたが、シルバーウルフたちはじりじりと離れ始めたのだった。

「どうやら・・そろそろ体力切れのようですね。」

「離れ始めましたね。」

「このまま行きます。」

時速80キロ近いスピードで走り続けていると、シルバーウルフは見えなくなっていく。

「まだ天井に乗っているやつが降りた形跡がありません。」

「大丈夫です。このまま走り続けましょう。」

それから1時間ほど草原を走り続けると、どうやら振り切ったようだった。

「トラメルさん。前に来て虹蛇様のベルトを締めてもらえますか?」

「ええ。」

トラメルが前に来て虹蛇のベルトを締める。

「じゃあ二人は後ろの席でベルトをしっかり締めてください。」

「はい。」

「わかりました。」

二人が席に座ってしっかりとベルトを締める。

「では。」

ギュゥ!

俺はブレーキを親の仇の様に踏んづけた。

ズサササササササ

すると2匹のシルバーウルフは天井から前に放り出される。地面をゴロゴロと転がって驚いたように立ち上がり草原に逃げていく。

虹蛇の要望通りに相手を殺すことなくふりきれた。

「うーん。シルバーウルフは音では驚かなかったですね。」

「そうみたいでしたわね。」

「とにかくふりきれたようです。」

「うむ。平和的に解決できて何よりなにより。」

虹蛇も満足そうだった。

最初っからそうすればよかった。

時速80キロで走っていたら、シルバーウルフはじきに体力が切れて追うのをやめた。

どうやらレッドベアーやブラックドッグなどとは比較にならないほど弱いらしい。

《セルマ熊だったら3時間は余裕でついてきてるぞ。》

俺がまだ小さかった頃にシルバーウルフの群れに襲われた事を思い出す。

《あの頃はあんなに脅威的な魔獣だったけど、今では簡単にあしらえる魔獣になってしまったんだな・・まあ輸送防護車のおかげだけど。》

「もう来ませんわね。」

「本当ですね。」

トラメルとケイシー神父が後部座席で俺に言う。

「よかったです。」

「そうだな。無駄な殺生は好まぬ。」

「虹蛇様のおっしゃる通りです。」

そして俺達は何事も無いように北へ向かうのだった。

それから1刻(3時間)ほど走ると遠くに小さい村が見えてきた。

「えっと。村人を怖がらせるかもしれませんので、一旦車を隠したいと思います。」

「わかった。」

虹蛇が返事をする。

俺達は車を背の丈ほどもある草が生えそろった草原に停めて車を降りた。

「暖かいですね。」

「良い日だの。」

虹蛇も嬉しそうにしている。どう見ても可愛い女の人だがこの人は神様のような存在だ。おそらく性別なども無いのだろう。

《グレースが言っていた・・なんもついてないと。》

とにかく最重要な護衛の対象となる。

「トラメルさん。すみませんがこの銃を持っていてください。」

俺はAK-47を召喚してトラメルに渡した。

「これも銃なのですね。」

「そうです。脇にこう当てて構えはこう。そしてこの穴を覗き込んで敵が穴に入ったら撃ってください。」

「わかりましたわ。」

俺は身軽に動けるようにデザートイーグルを2丁召喚した。

《俺も・・こんなドでかい銃を軽々と振り回せるようになっちゃったな。まあどんな敵が出て来るか分からないし準備は怠らないようにっと。》

そして俺は召喚したホルスターを腰につけてデザートイーグルを差し入れた。マガジンはいつでも召喚できるので出してはいない。

「ケイシー神父。」

「はい。」

「神父はこれを。」

そして俺は神父にVP9ハンドガンを1丁召喚して渡す。

「撃ち方は教えた通りです。」

「わかりました。」

俺達は村の方向へ道沿いに歩いて行く。村の周りには桜の花のような木々が咲き、美しい景観となっていた。

「綺麗な花だわ。」

「本当ですね。」

「ほほっ!花をめでるのはいいな。」

3人は綺麗な花に見とれているようだった。

俺は村を警戒しながら見る。しかしバルギウスのはぐれ兵やファートリアの兵などは見当たらない。

「村の周りに柵があるだけですね。」

「特に門番などはいないようだけど。」

「じゃあ入りましょう。」

俺達は村の柵の入り口の蝶番をあけて村に入っていく。

村には4軒ほどしか建物が無かった。

《これでは軍事的な重要拠点にはなりえないか・・》

するとさっそく人をみつけた。

《第一村人発見。》

「あのーすみません。」

「はい。」

こちらを振り向いた人は・・なんというか・・日本人のような見た目だった。着ている服も異世界情緒はあるものの和風な感じがする。おばあちゃんと言うにはまだ早い初老の女の人で、ニコニコと優しそうだった。

「えっと。南から旅をしてきました。こちらに宿屋などはございますか?」

「うーん。ここは農家の村だで宿屋などはないんでさぁ。」

「そうなんですね。という事は食べ物屋さんも?」

「ないねぇ。」

「そうですかわかりました。すみません!お邪魔しました。」

「ああ、待って!待って!せっかく立ち寄られたんじゃしお茶でもいかがでござんしょ。」

「えーっと。ご迷惑では?」

「なーんもねえ村じゃし、せっかく訪れてくださったのじゃから。」

「すみません。ではお言葉に甘えさせていただきます。」

田舎のおばちゃんって感じだけど温かみを感じる人だった。そして俺達はそのおばさんの後ろをついて行くのだった。

ついて行くと言っても、目の前に建ってる家の縁側に通されただけだが。

《うん・・建物もどことなく昔の日本家屋のようなたたずまいだ。でもやっぱりどこか異世界的な雰囲気があるし、まんま日本風と言うわけでもないか。》

俺達を縁側に座るように言っておばさんは家の中に入っていく。

「ちょっとまっててねぇ。」

俺達は縁側に座って庭を見ていた。

「なかなか変わった庭ですわ。」

「見た事ありませんね。」

二人は見た事の無い庭らしい。

《しかし・・俺には見覚えがある。日本庭園とまではいかないが小さくてかわいい和風の庭がある。》

「なんか・・落ち着きます。」

俺が言う。

「ですわねぇ。ほのぼのとしているというか・・」

「さっきの人も人が良さそうだ。」

俺達が話をしていると奥からお茶セットを持ったおばさんが来る。

「ぜひゆっくりしてくださいねぇ。」

そして・・おばさんは俺達にお茶をついでくれた。

俺達がお茶碗をもらって口に運ぶ。この茶碗もどことなく和風だった。

《これは・・・》

「変わったお茶ですわ。」

「たしかに変わってますね。少し苦いけどスッキリします。」

「これもまたいいなあ。」

俺だけが違和感なく飲めていた・・

《これは・・緑茶だ。ああ・・なつかしい・・うまい。》

「あの、こんなもんしかねぇけんども・・」

そして俺達の前にはふかした芋みたいなものが出てきた。

「これは?」

俺が聞く。

「見てのとおり・・いもです。」

「あ、はい。」

そりゃそうだ。

「あったかいうちに食べておくんなさい。」

「すみません。」

俺が手にとってみる。

「あっちっ!」

「ああ、すみません。熱かったですか!ではもう少し冷めてから。」

「でも食べます。」

俺は手でその熱々の芋を転がしながらぱくりと頬張る。

「ほふっほふっはふっ」

「どうでしょう?」

《これは・・サツマイモだ・・しかしサツマイモよりすっごく甘みが強い。》

「う、うまいです!」

「それはよかった!」

人が良さそうな顔で笑いながらおばさんが言う。

「すみません・・いきなり来てご馳走にまでなっちゃって。」

「いやあ、せっかく遠いところをおいでなすったんですから。」

「ありがとうございます。」

「アラリリスから?モエニタから?」

《えっと・・なんて言ったらいいんだろう?》

「砂漠からだよ。」

「えっ!砂漠から・・そんな・・砂漠に町なんか。」

「ああ、この3人が砂漠を迷っていてね。私が助けてここまで連れてきたんだ。これからさらに北に進むつもりさ。」

「ああ、そういう事なんですか。それは大変な事で。」

「でもここまでは楽に来れたし、ここからも楽に進めると思う。」

《えーっと。虹蛇はあけすけだ。なんにも隠さないで普通に喋ってる。》

でも相手は普通に納得して聞いているようだった。

《虹蛇様の神通力かな・・?》

「じゃあ我も芋をいただこう!おぬし達もいただくといい」

「すみません・・では。」

「ありがとうございます。天の恵みに感謝いたします。」

トラメルとケイシー神父と虹蛇が芋にかぶりつく。

「おいしいですわ!!」

「甘い!芋というよりお菓子だ。」

「本当じゃ!あれ?こんな芋昔からあったっけ?」

「いえ。何代もかけてここまで甘く育ててきたんですよ。」

「凄い美味しい芋です!」

俺も賛同する。

「そういっていただけると作った甲斐あるってもんでさぁ。」

「あの・・ほかの村の皆さんは?」

「ああ、この時間はみんな畑だで、わたすはたまたまお昼を取りにきたんです。」

「そう言う事だったんですね。あの・・畑について行っても?」

「はあ?いいですが・・なんも面白い事ないですよ。」

「ぜひ見てみたいんです。」

「物好きですねえ。」

「皆さんもご飯を待ってるでしょうから一緒に行きましょう。」

「ああ、すみませんねえ。」

そしてまたおばさんが家の中に入っていく。

俺達が待っていると今度は背中に何かを背負っている。

「それがお昼ですか?」

「みんなの弁当です。」

そのおばさんが背負っている物・・まちがいない・・風呂敷だ。

《どう考えても日本テイスト満載だな・・》

俺は異世界にもこんなところがある事に驚いていた。

「それじゃあ、ついてきてください。」

俺達4人はお百姓のおばさんについて行くのだった。