作品タイトル不明
第249話 大サソリの群れからの離脱
うむむ。
でっかいサソリがまた増えてきた気がする。
「だ・・大丈夫なのでしょうか?」
ケイシー神父が聞いてくる。
もちろん・・大丈夫じゃない。ここで火を使えばもしかすると敵に察知されてしまうかもしれない。
「大丈夫。」
心にもない事を言ってみんなを落ち着かせる。
「策があるって事よね。」
「もちろんです。」
《さて・・どうしよう。》
俺が黙ってじっとしているうちにも、大サソリはそこいらじゅうに増えてきた。
《まてよ・・敵はもともと出現地点には現れなかったかもしれない。砂漠の熱で焼き殺そうと思っただけ?こんな虫がいるんじゃあ普通の人間は生き残れないし、ただの転移放置プレイだったかも・・》
ぐるぐる考えていると・・ケイシー神父が焦り気味に聞いてきた。
「で、どうするんです?」
《うるせえな!考えてんだよ!》
グッと堪えた。
「まあ見ていてください。」
《とにかくだ・・万が一があるし火器類の武器はダメだ。デモンが現れたら対処しきれるかどうかわからない。そもそもこの二人は間違いなく瞬殺されるだろう。火はつかえない・・》
「ら・・ラウル殿・・」
「ふふっ!ご安心を。」
《どうする!そうだ!音だ音に反応する!えっと!データベースデーターベース!》
場所 陸上兵器LV5 航空兵器LV3 海上兵器LV4 宇宙兵器LV0
用途 攻撃兵器LV7 防衛兵器LV4
規模 大量破壊兵器LV3 通常兵器LV7
種類 核兵器LV0 生物兵器LV0 化学兵器LV3 光学兵器LV0 音響兵器LV2
対象 対人兵器LV7 対物兵器LV6
効果 非致死性兵器LV3
施設 基地設備LV4
日常 備品LV5
連結 LV3
次
対象 対人兵器LV7 対物兵器LV6
次
《そして対物兵器LV6の中に・・》
あった!
スッっと手を前に差し出す。
差し出さなくても召喚できるのだがカッコいいのでやっている。
ボトン!
俺が召喚したのは爆発物処理用ロボットだった。
ミニキャタピラーにクレーンの様に伸びるアーム。小さくてかわいいマスコット的なロボだ。
「それは?虫?」
「違います!まあ見ていて下さい!」
俺はコントローラーを召喚して爆発物処理用ロボットを、大サソリの間をぬってゆっくり走らせていく。
ウィィィィィ
するとその走行音につられて大サソリが爆発物処理ロボについて行こうとする。
「おお!すごい!あれを使役しているんですか?」
「えっええまあ。」
順調に走っているロボだったが、だんだんと大サソリが群がって行く手を阻み始めた。
《クッソ!通り抜けられない?》
しかもロボに向かって酸のような液を吹きかけている。
《おい!やめてくれ!俺のロボが・・止まっちまう!》
ボトン!
俺はもう一台の爆発物処理用ロボットを召喚する。そのまま同じようにサソリの間を走っていく。
《今度はもっとスピードを上げて!》
キュィィィィィィ
追いつかれないように走らせる。
《いけー!!》
周りから溶解液が飛んでくるが、軽くかかるくらいで何とか走り続けていく。
今度はだいぶ進んだ。
しかし・・ロボは回り込まれてしまい止まってしまった。
《えっー!ダメ?》
「ラウル殿!虫がだんだんと増えてきたように思うのですが!」
「カサカサと音が凄いですけど・・いっぱいいるみたいです!」
「安心してください!大丈夫です!」
二人の視線がなんとなく疑いの目になって来たような・・
ボトン!
もう一台ロボを呼び出す。
今度は走らせない。
ハンマー投げの要領でぐるぐると体を回転させて遠くに投げた。
ブン
ヒュー
ドサッ!
大サソリの群れを飛び越えて後ろに飛んで行った。落下地点に大きな音が出ると大サソリはそちらに向かい始めた。
「よし!」
そして俺は10個のマグロ缶を召喚する。
それを今落ちたロボのあたりにぶんぶんと投げてやる。
ロボの周りに缶が落下した。そして落下した缶から音が鳴りだす。
コン!
カン!
カコン!
コン!
そう・・俺はロボのアームで缶を叩き始めたのだった。
ザザザザザザザザ
大サソリは一気にその音のする方へ動き出す。
《キモッ!》
「今です!俺についてきてください!」
大サソリの大群は音のなる方に一気に移動したため、その逆方向のサソリが手薄になって何とかなりそうだった。
俺はロシアのサイレントピストルPSS-2を2丁召喚した。音を立てればこちらに向かってきそうなので、出来るだけ射出音の出ないピストルで対応する事にした。
パシュ
パシュ
ガキン
ガキン
《えーっ!7.62mm弾を弾くのか・・消音弾だから仕方ない!怯んでいるようだし何とか切り開けそうだ。》
自分達が走り抜ける方向にいる大サソリに向かってピストルを撃つと、びっくりするのか何なのか・・足を止めて固まる。
「よし!」
俺は走る方向に向かってサイレントピストルを撃ち続け、何とか大サソリの動きを止める事に成功した。
時おりピューっと酸の液を噴き出す大サソリもいるが、軽くかかることはあっても致命的な事にはならないようだった。
でも・・まあ意外にいる・・
二人は砂に足を取られてうまく進めないようだった。
「とにかく走って!」
「はっはっふぅ」
「ふぅふぅはぁ」
もう少し!もう少しで群れを突破できる。
すると・・
「うわ!」
ケイシー神父が転んだ!
《あーもう!なにやってんのコイツ!》
「トラメル様はそのまま走り抜けて!」
「ええ!」
俺はケイシー神父を引きずりおこして手を引っ張って走る。
《手をつなぐのは、できれば女の子が良いんだが!》
もう少し!
そして俺の視線の先にはトラメルが走っていた。
追いついた!
その時間は恐ろしく長く感じた・・
パシュ
パシュ
ガキン
ガキン
とにかく強い衝撃を与えれば動きを止めるようだった。
「ぬけたぁぁぁ!」
大サソリの群れを抜けた!
「でもまだ走って!」
「ふうふうふう。」
「はあはあはあ。」
二人の息が切れてきた。足が取られてとにかく疲れるようだった。
俺は銃をしまって二人の手を取りとにかく走った。トラメルは俺の速度について来れず足が空回りしている。ケイシー神父なんかはもう引きずられるようになっていた。
俺はようやく止まって後ろを振り返る。
既に大サソリの群れは見えなくなっていた。やっと大サソリの巣を抜けたのだった。
「抜けました。」
「はぁはぁ・・や・・よくぞ・・」
「ふぅふぅすみません・・足で・・まといに・・」
「大丈夫!抜けれるって言ったでしょう!」
「本当に・・ありがとう・・はぁはぁ。」
「僕も本当に・・ふうふう。」
しかし・・ちょっと油断していた。異世界の砂漠は何が起こるか分からない。暗視スコープをつけて進むべきだった。
「あの。」
「トラメル様・・どうしました?」
「先に走った時に液をかけられまして・・」
「火傷したんですか!?」
「いえ。そうではなくて・・」
「どうしたんです?」
「服が・・」
俺はトラメルを暗視スコープ越しに覗くと・・ズボンがほとんどなくなっていた。ベルトから布的なものがぶら下がっているだけで思いっきり下半身が出てしまっている。
バサッ!
俺は急いでテントを召喚した。
「ちょっとこれを腰に巻いてください。」
「あ、ありがとう。」
ケイシー神父は暗くてどうなっているのかよく分からないようだった。
そしてさらにテントを召喚して設置する。
「すみません。中に・・」
「すまない・・」
トラメルはテントの中に入っていく。
どうやら俺が銃で大サソリを止めている間には液が掛からなかったのだが、ケイシー神父を俺が救いにいったため、モロに大サソリの溶解液をかけられたらしい。剣士の身のこなしで何とか避けていたものの液でズボンが無くなっていったのだとか。
「これ。新しいズボンです。」
「ありがたくいただきます。」
そして俺はテントのファスナーを締めた。
「ケイシー神父は怪我などありませんか?」
「僕は大丈夫です。」
「それならよかった。」
「ありがとうございます。ラウルさんが助けてくれたおかげで助かりました!命の恩人です。」
「それは大袈裟です。」
「いえ。恩人ですよ。」
ケイシー神父は俺に会釈をした。
「まあ・・そうですね。それで・・これからなんですが、少し警戒を強めねばなりません。」
「ですよね。」
「警戒を怠るとこうなりますので十分注意していきましょう。」
「はい。」
トラメルがズボンをはき直してテントから出てきた。
「あの、これは?」
ボロボロになってしまったズボンの布切れを持ってきた。
「捨てましょう。」
「すみません・・」
「いえ。私も砂漠の美しさに気を取られて、油断しすぎてしまったみたいです。」
「それは私もです。」
「気を付けていきましょう。」
「ええ。」
なんだろう?あんなに高飛車だったトラメルがものすごく謙虚になった気がする。
「とにかく皆さんにもこれを渡します。」
そして俺は2人分のENVG-B暗視スコープとヘルメットを召喚した。
「こうやってつけます。」
「こう?」
「ええ。」
トラメルは上手くとり付けられていた。案外器用なようだ。
「ラウルさん僕はなかなかうまくできません。」
「ああ、えっとこれをかぶって目の所にこれを。そしてこの突起を押します。」
「おお!ラウルさんに光の輪郭がでた!はっきり見えます!トラメルさんもハッキリ!」
「これで周りを警戒しながら進むことにいたしましょう。」
「これなら見えるわ。」
「そうですねよ!」
二人は暗視スコープに感動していたようだった。
俺にシャーミリアやカララのような索敵能力があればいいのだが・・残念ながらそれは無い。
「それではあと1刻ほど前進したら休憩しましょう。このあたりは物騒な感じがします。」
「そうね・・あんな毒虫がまたたくさんいたら嫌だわ」
「僕も賛成です。」
毒虫の大群が生理的に受け付けないのは俺だけじゃなかったらしい。とにかく休まずにここから離れる事になった。
「星は綺麗なんですが、地面を見て歩くことにしましょう。」
「ええ。」
「はい。」
「しかも気温がかなり低くなってきました。」
「でもこの服のおかげで温かいわ。」
「そうですよね。」
「ならよかったです。辛くなったら言ってください。」
「わかりました。」
「はい。」
そして俺達は周りを警戒しながらまた進むのだった。
《それにしても・・あんな虫がいるのか・・他にも恐ろしい魔獣がいないと良いけど・・。》
俺は二人に不安を与えないように時おり大丈夫というジェスチャーで振り向く。
《うん・・魔人と違ってやっぱ手間がかかるわ。弱い人間を守りながら動くのは本当に神経を使う。》
ズッ・・ズ・・ズズッ
その時、俺はまだ気がついていなかった。
砂に微妙な揺れが生じている事を。
俺達の足音はこの静かな砂漠では格好の餌食が歩く音。
異世界の砂漠はその広がりを見せ俺を圧倒するのだった。