軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第236話 大名行列の行き先

シュラーデンの王都に暫定政府を作らせるためマーグ隊を置いて来た。間違いなく魔人軍の中で一番冷静で頭が良く、こんな難しい仕事をこなせるのはマーグしかいなかった。

オージェから武道を習っていた市民には師範が変わる事だけをつたえてきた。これからはマーグ師範が武術を教える事となる。

《まあ・・礼儀とか規律とか・・オージェの様にはいかないだろうがな・・》

俺とファントム、ティラ。モーリス先生とサイナス枢機卿一行にオージェ、そして・・3000人の兵士たちが街道を歩いているのだった。

まるで大名行列だ。

シャーミリアには先に駐屯基地に向かってもらい、エミルとケイナとセルマ熊を連れてきてもらう事になった。AH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリは基地に置いて行く事にする。分解するなり研究するなりはドワーフに任せるように伝える。

「あの・・もう間もなく仲間と落ち合う事になっています。」

「わかりました。それではその場所についたら兵士達にも一息つかせましょう。」

オージェは厳しいながらもきちんと兵を休ませることを考えている。

あれからこの兵達とも少し話してみたのだが・・シュラーデンに送られた兵士たちはオージェにきっちりと教育されてしまったようだ。ほかの地域の兵士たちがかかっていたような”魅了”の影響を感じない。

《むしろ・・長期の監禁訓練によって、すっかりオージェに洗脳されているようにも感じる・・》

一行は黙々とラシュタル方面に向かって歩く。

ぐるぅぅぅぅ

ドドドドドドド

いきなり森の中から巨大な何かが飛び出して来た。

「うわぁぁぁぁ」

「グレードレッドベアー?」

「それもヌシ級のデカさだ!」

「こんなところでか!」

ファートリアとバルギウスの兵達がざわめく。逃げ出さないで構えを取ったのはさすがにオージェの教えが良いからだろう。

飛び出して来た熊はもちろん・・セルマだ。

スゥ、とオージェが全員の前に立ちはだかった。

「えっと!まってまって!オージェさん!あれは俺のペットです。」

「えっ!ああそうなんですね?」

オージェが冷静に言う。

「ぺ・・・ペットォォォォ!」

ファートリアとバルギウスの兵士たちから驚愕の声が発せられた。

俺がオージェの前に立って両手を広げてセルマを待つ。

ドドドドドドド

セルマは突進の勢いそのまま俺を抱きかかえて走り止まった。

「セルマ。お待たせしたね。」

くるるるるぅ

「そんな待たせてないってか・・」

くるっぅ?

「ああ・・この人は新しい仲間のオージェさんだよ。」

がぁろるぅるぅ

「えっとオージェさん。どうか俺をよろしくだそうです。」

「えっと・・・ラウルさん熊と話してます?話してる事わかるんですか!?」

オージェが驚いていた。そう・・俺はセルマとずっと一緒にいるうちに、彼女が何を言いたいのか分かってしまうようになってしまった。

「おおよそは。」

「えー!?」

「ずっと一緒に旅してるので・・」

「ずーっと一緒に旅をすると熊の言う事が分かるんですか!?」

「自分でも不思議です。」

セルマは俺にスリスリと頬ずりをしている。

すると森の中から遅れて3人の人影が出てきた。

シャーミリアとエミルとケイナだ。

「おお!エルフだ!」

「こんなところに?」

「大森林からほど遠いこんな森に・・」

兵達がエルフの姿を見てどよめく。

俺がエミルに手を振ると、エミルとケイナも俺に手を振り返した。

「エミルおまたせ。」

「えっとラウル・・一つ聞いていいかな?なんでこんなに大人数なの?列がどこまでも続いてる、みたいだけど。」

エミルとは念話で話す事ができないので今この状況をはじめて知る事になった。3000人の兵を前にして驚いている。

「まあこれから説明するけど・・まずこちらは新しい仲間のオージェさん。」

「シャーミリアさんから聞いています。初めまして私はエルフのエミルと申します。」

「初めまして。私は龍の子のオージェです。」

「龍・・なんですか?」

「はい。龍から生またのですが、人間の様な姿になりまして・・」

「ラウルと似た境遇なんですね。」

「はい。昨日もそんな話になりました。」

続いてケイナもオージェに挨拶をする。

「私はケイナです。エミルの面倒をみています。」

「おいおい!やめろよ!子供じゃないんだから!」

「初めましてオージェです。エミルさんのお姉さん?」

「ふふ。私はお姉さんじゃないですよ。昔からエミルの面倒を見ているだけです。」

「こんなお綺麗な人に・・エミルさんは幸せですね。」

「うぐぐ・・まあ助かってます。」

エミルがオージェに何かを言いたそうだったが言葉を呑んだ。

「では。皆がそろった事だし、一度オージェさんにいろいろと説明をしたいのですが?」

「わかりました。」

するとオージェが兵士たちのほうに向きなおる。

「全隊!ここで休憩を取る!各班ごとまとまり周囲に警戒を怠るな!」

ビリビリビリビリ

凄い声だ。外なので全体に聞こえるように叫んだのだろう・・腸が震えるようだ。まるで地鳴りの様に広がっていく。

兵達はそれぞれにまとまり休憩を取り始める。

俺はオージェを連れて隊列から離れる。3000人の兵士たちが逃げ出さないように見張るのは、ファントムとシャーミリアとティラの3人でお釣りがくる。しかし兵達はオージェに心酔しているようなので問題を起こす事は無いだろう。

《・・というか休めと言われているのに、きちんと休む者と見張る者を立てて周りを警戒している。教育の賜物だろうが、こんな明るい草原の真ん中に魔獣なんて来ないよ。何を警戒するのだろう?》

もちろん普通ならこんなに警戒する事はないが・・先ほどのセルマ熊の出現が強烈すぎて警戒している事を、ラウルは知る由もなかった。

俺、モーリス先生、サイナス枢機卿、オージェ、エミルが集まって話を始める。

「それでこの大所帯をどうするつもりじゃ?」

モーリス先生が言う。

「ええ。彼らにはこのままルタン町まで一緒に来てもらいます。」

「ルタンまでか。」

「はい。そこにはすでに大勢の魔人がいます。ルタンまでならシュラーデンから持ってきた食料で足りますしね。」

するとオージェが聞いてくる。

「それからどうするのです?」

「ルタンの周りにはすでに魔人の町が拡大していますので、兵士たちはそこの労働力として働いてもらう予定です。」

「兵の管理を魔人に任せるという事ですか?」

「はい魔人がします。マーグに及ばなくても物凄いのがゴロゴロしてますから。それが数千人おります。」

「数千!魔人がですか?」

「はい。そこへ魔人の国を作る予定でしたから。」

「魔人国の領地拡大のためですか?」

「そうです。すでにかなりの魔人が大陸に進出して各地に拠点の建設を始めています。」

「なるほど。それでシュラーデンにも来たわけですね。」

「そういう事です。」

「そしてこの兵達の将来はどうなります?」

「バルギウス帝国は既に手中に収めましたが、ファートリア神聖国とはまだ敵対中です。バルギウスの皇帝ともまだ話をしていない状態ですので、それらが全て片付いて和平を結べたら解放します。」

「強制労働という事ですか?」

「はい。しかし人道的に行います。食事も休息も与え怪我をすれば治しもします。」

「それを聞いて安心しました。」

《オージェはどうやら今まで指導してきたこの兵達を、ひどい目に合わせたくはないらしい。素晴らしい考え方だが・・俺にそんな考えはない。オージェはどこか甘く感じる・・もしここで働かせても、将来敵対するような事があったら容赦することはない。》

「というわけで・・ルタンまで行軍します。ここからなら5日でつくでしょう」

「わかりました。」

オージェは納得してくれているようだが、考え方は大分違うのですり合わせが必要になりそうだ。

「それでは出発します。」

「行きましょう。」

「シャーミリア!兵を先導してルタンに向かっていてくれ!俺はエミルと話した後で合流する!ファントムも兵の周辺に展開し、しんがりはセルマが頼む。」

「かしこまりました。」

「・・・・・・・・」

くるるるるるるる

「それじゃあオージェさんは先に行っててください。私が後を追います。」

「それじゃあお先に。シャーミリアさんについて行けば良いですね?」

「そうしてください。」

「ではモーリス先生とサイナス枢機卿一行も一緒に残ってお話をしましょう。」

「わかった。」

「残ればいいのじゃな?」

そして俺達はオージェや3000の兵を見送った。

「それじゃあこれからの計画を話します。」

「ふむ。」

「なんじゃ?」

「どうするんだ?」

モーリス先生と枢機卿とエミルが聞く。

「えっとここからは、先生たちはエミルと行動を共にしていただこうと思います。」

「またあれに乗れるのか!」

モーリス先生のテンションが上がる。

「もちろんです。」

パァァァァァァ

モーリス先生とサイナス枢機卿の顔が輝いた。ヘリに乗るのがものすごく楽しいらしい。

「シャーミリア様は・・一緒にはいかないのですね・・」

カーライルがめっちゃ悲しそうだった。

一方で・・聖女リシェルが真っ青な顔をしている。彼女はヘリが滅茶苦茶苦手だからだ。

「エミル。実は3000の兵を連れていく事は誤算だった。俺がルタンに行って説明をする必要がある。また別行動で先生達を連れてギレザム隊の所に飛んでほしい。正直ルタンまでの5日のロスはデカイ・・。」

「わかった。あの龍の民を仲間にするために・・といったところか?」

「まあそうだ。彼は強い必ず戦力になる。そのためにはこのロスはやむを得ない。」

「そういうことか。わかったそれじゃあ西へ飛ぶよ。」

「ティラを連れて行けば念話でギレザムの場所が分かるはずだ。サナリアから西へ行った山脈付近で合流する事になっている。彼らを拾ったらユークリット王都へ飛んでくれ、そのあたりで燃料が切れるだろう。」

「了解。隊長。」

「それでは!先生またお会いできる日を楽しみにしています。マリアによろしくお伝えください。」

「ほほっ!マリアに会えるのは楽しみじゃわい!あやつもだいぶ大人になったんじゃろうな。」

「ええ。マリアは大人の女性になりました。魅力的ですよ。」

「それも伝えとくわい。」

「いっ・・・は、はい。」

「カトリーヌもおるんじゃろ?」

「いると思います。」

「じゃあ彼女にも伝えておくかの。」

「よろしくお願いいたします。」

そして俺は少し開けたところに行ってCH53Eスーパースタリオン 巨大ヘリを召喚する。

ドン!

「ううう・・・」

聖女リシェルがあからさまに嫌な顔をした。

「リシェルよ諦めるのじゃ。」

「慣れたくても慣れないんです。」

「リシェル様。いざという時は私がおります。」

「カールがいたって具合は悪くなるのよ・・」

「ラウル!じゃあの!またすぐに会えるじゃろうが頑張るのだぞ!」

「はい!先生ありがとうございます!」

エミルがすでにスーパースタリオンのローターを起動させた。

シュンシュンシュンシュン

風切り音がして当たりの草を巻き上げ土ぼこりが舞う。

全員が手を振りながらヘリに乗り込んでいく。聖女リシェルだけが・・俺を恨めしそうに睨んでいた・・

《睨まれても・・》

そして後部ハッチが閉じてゆっくりと上昇していくのだった。

「さてと・・追いかけるか。」

俺は振り向いて先行する隊を追いかけるのだった。