軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第231話 団体行動訓練

もしかしたら仲間にすることが出来るかもしれない。そう思い俺はファートリアとバルギウスの兵をしごいているという男に会いに城に来た。

兵士3000人を殺さずに制圧するなど、余程の実力差がないと出来ない事だ。

いったいどんなやつなんだ・・

城の外で練習中の男が師範のところまで案内してくれると言う。

・・そして俺たちが男に案内されて城に入ろうとした時だった。

《ご主人様!出来ればこちらに入るのをやめていただけませんでしょうか?》

《どうした?》

シャーミリアが切羽詰まったように念話で俺に話しかけてくる。

《はっきりとは言えませんが、私奴で対処しきれるかどうかわかりません。》

《デモンか?》

《いえ・・デモンではございませんが、大きすぎる何かがおります。》

《ファントムで対応は?》

《分かりません。》

わからない?ファントムでも対処しきれない可能性がある?

・・そりゃまずいな。

《わかった。モーリス先生もいるからな・・ここは一旦撤退しよう。》

《ありがとうございます。》

シャーミリアとは念話で内緒話が出来るが、モーリス先生にこのニュアンスが伝わるだろうか?

俺はモーリス先生に話しかけた。

「あの先生。ちょっと急用が・・ここを出ませんか?」

「ん?どうしたんじゃ?」

「なんとなくそうしたほうがいいかと。」

「・・・わかった。ラウルがそう言うのであればそうじゃろうて。」

モーリス先生が俺の様子から雰囲気を察してくれたようだ。流石は俺のお師匠様、真剣な顔でここを出ることに同意する。

《とにかく危険度マックスだ・・早く出なくちゃ。》

「あのう・・ご案内していただいている所を申し訳ないのですが、急用を思い出しましたので今日は帰ろうと思います。」

すると前を歩く青年が振り向いて言う。

「えっ?そうですか・・・。練習風景だけでもと思ったのですが残念です。それではまた今度いらしてください。」

「すみませんねえ。」

「わるかったのう。」

俺と先生が案内の男に頭を下げる。

「いえ。こちらの大きい男の人も、てっきり仕合にいらっしゃったと思ったものですから。」

案内の男がファントムを見て言う。

「仕合?」

「ええ、時折腕試しにいらっしゃる方がいるんですが、ほとんどが師範から返り討ちにされます。」

そんなもの好きがいるんだな・・おそろしい。

「ほほっ。師範は物凄く強いと聞いておるが、挑戦する奴がおるのじゃな?」

「そうなんです。今日いらっしゃった騎士様と師範の仕合なんて見ものでしたよ。」

「今日来た・・騎士??」

嫌な汗が俺の背中をつたう。

モーリス先生と顔を見合わせる。モーリス先生の額から漫画で言うところの青ざめの縦線が入っていた。

「ほほう・・騎士とな?どんなやつじゃったかの?」

「ええ、身のこなしは上品で髪は美しいブロンド、そのお顔はとても美しく紳士的なお方でした。」

「えっと?一人でした?」

「いえ・・お連れ様がいらっしゃいました。」

「連れと言うと、どんな感じじゃったかの?」

「一方は老人で一方はお美しい女性でした。」

はあ・・・これはまずいぞ。

「あのう、その騎士さん達は今どこに?」

「おそらく練習風景をご覧になっていると思います。」

うわぁ・・・・

「なるほどー。そうでしたか・・先生・・どうしましょう?」

「ふむ。あやつらがいるとなれば意外と安全かもしれぬが・・」

どうしよう。いざという時モーリス先生だけならなんとかなりそうだったが・・

「まあおいていく訳にもいきませんしね。」

「そうじゃな。まあわしはおいて行ってもいいかと思うがの。」

そんな・・モーリス先生ってば薄情な。

「えっとすみません?」

「はいなんでしょう?」

「そういえば急用の話なんですが明日でした!今日は見学をさせてください!二転三転して申し訳ありません。」

「いえいえ!そうですか!それは良かった。それならばご案内差し上げますのでついてきてください。」

「はい。」

こうなったらもう覚悟を決めていくしかない。

《シャーミリア。いざとなったらモーリス先生とサイナス枢機卿を掴んで飛べるか?》

《もちろんでございます。しかし指示をせねばファントムは自動でご主人様しか守りません。》

《ティラとリシェルか・・大丈夫だ俺が指示を出してふたりを助け出す。》

《かしこまりました。》

念話でもシャーミリアの緊張が伝わって来た。シャーミリアが緊張するなんて・・初めての事かもしれない。ティラも何かを感じ取ったのか・・震えている気がする。

《ティラ大丈夫か?》

《はい。なんとか・・・》

《いざとなったら一目散に逃げろ。》

《しかしそれではご主人様が。》

《俺は兵器を大量に召喚して何とかする。》

《私も戦います!》

《いや・・マーグたちを呼んでくれ。》

《・・わ・わかりました。》

すると奥から掛け声が聞こえてきた。

どうやら舞踏場の様な場所に、たくさんの人間が集められて何かをしているらしい。

はっ!はっ!

ザッザッ

舞踏場の様な場所をチラリとみてみると、そこは吹き抜けになっていて下の階で人間たちが一糸乱れぬ行動をしていた。

「すごいのう・・あれが・・バルギウスとファートリアの兵かの?」

モーリス先生が聞くと男はうなずく。

「今は皆の行動の指導中です。」

「ふむ。それなら師範とやらは忙しいのじゃろう?」

「そうですね。終わり次第ご紹介します。」

「あの・・見学している3人はどこに?」

「おそらくは師範と一緒におります。」

「えっと連れてきてもらうわけには?」

「申し訳ございません。訓練中は声をかけないように言われておりますので・・」

「いえ。いいんです。」

どうしよう。練習中ならこっそり3人に声をかけて連れてきてもらおうと思ったのだが、それが禁じられているとなると・・待つしかない。

魔人なら念話で済むのにな・・

「どうぞここから入ってください。」

ドアから中に入ると演習が見渡せるような渡り廊下が、部屋の上周りを囲むようにめぐらされている。

「先生・・ここから見ていましょう。」

「そうじゃな・・あ・・あの前の壇があるじゃろ・・あの脇をみてみい。」

・・・いた。

サイナス枢機卿と聖女リシェルとカーライル。

そして3人がいる脇の壇の上で兵士たちに掛け声をする男がいた。その男の声に従い兵士達が一糸乱れぬ団体行動をしているのだった。物凄い正確な動きをしている。

「あの壇上の男の人が?」

「はい。師範です。」

声が・・声が凄い・・まるでLRADで思いっきり発声しているようだ。

ビリビリビリ

建物の全てのガラスが響いている。

「名前は?」

「はい。オージェ・リバーオールと言う方です。」

「オージェさんね・・」

「はい。」

すごい。掛け声に従ってみんながビシッと動いている。

すると・・

「止まれ!!!」

ビリビリビリビリ

「12列目の右から三番目のおまえ!今の動きは遅れていたぞ!!」

ビリビリビリビリ

すんごい迫力だった。

《シャーミリア・・あいつだな?》

《はい・・あれは私達に気が付いていないのでしょうか?》

《どうなんだろうな。》

そして・・オージェさんの声掛けにより動きを止めた兵士が、ビシィっという起立の姿勢で一斉にオージェさんに目を向ける。

「おまえ!なぜ遅れた!」

「す!すみません!!!ほんの少しだけ気が緩んだようです!」

「よーしわかった!みんな聞いたな!この男は少し気が緩んだんだ。だから俺の掛け声に遅れてしまった・・気のゆるみは死につながるぞ!全員!腕立て500回!よーい!いーち!・・」

全員がその場に伏せて腕立て伏せを始めた。これも一糸乱れぬ行動だった。

「にーい!さーん!よーん!・・」

えっ?こんな調子で500回も!

「あの・・もうしわけないがの・・ワシらはそれほど時間が無いのじゃ。」

モーリス先生が男に聞いてみる。

「しかし・・途中では止められませんので・・」

「あそこにいる3人・・彼らをここまで連れては来れんかのう?」

「すみません。一旦休憩をはさんだ時であれば何とかなったのですが、500回の腕立てが始まってしまいましたので・・難しいです。彼らが勝手に出てくれればいいのですが・・」

なるほど・・勝手に出てくればいいのね。

「モーリス先生。シャーミリア。ティラ。思いっきり手を振りましょう!そうすればこちらに気が付くと思います。」

「そ・・そうじゃな!手を振ろう!」

俺達4人がバンザイの様な格好になって両手を振り始める。声は出せないので必死に目立つように動き回る。

「おい、ファントム!お前もやれ!」

ファントムもバンザイの体制で大きく手を振り始める。

その調子で・・20分・・・

ようやく奴らが気が付いた!

アホか!早く気がつけ!

「ようやく気がつきおったぞ!」

「そうですね。」

俺達が手を振るのをやめて見ていると・・サイナス枢機卿と聖女リシェル、カーライルが上品に・・3人右手をあげて振っている。

まるで・・前世の王族のようだ・・

そして俺達4人が彼らに対しておいでおいでをする。

すると・・逆に彼らが俺達においでおいでをした。

「わかっとらん!」

「そうですね。もっと大袈裟にやった方がいいのでしょうか?」

「そうじゃな!」

みんなで体全体を使っておいでおいでをする。まるで野球観戦のウエーブの様になっているが・・一向に出てくる気配がない。

「なんでしょう?彼らは何でこんなにどんくさいのでしょう!」

「まったくじゃ!あやつらはなんてどんくさいのじゃ!」

「どうしましょう。」

「うむ・・もう・・仕方ない。ここで終わるのを待つしかないかのう・・」

「ですね。」

かなりの時間待った。全員が500回の腕立てを終えてふうふう言っている。

「ぼやぼやしているな!たて!」

ビリビリビリビリ

全員が素早く立ち上がってきをつけの体制で男を見る。

「おまえたち!わかったか!一人のミスは全員のミスだ!戦闘においてその一人の為に全員が犠牲になる事もあるのだ!覚えておけ!」

「「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」」

全員が一斉に返事をする。物凄い規律だった。

「全員その場に休め!」

「「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」」

どうやら一旦練習が休みになるようだ。

すると・・男の目が・・俺達を向いていた。

「あのーさきほどから・・何をふざけておられるのです?こちらは真剣に訓練をしているのですが?」

ザッ

すると全員の視線が俺達を向いた。

うそ・・・・

俺は大きい声で言う。

「えっと違うんです!そこにいる3人が知り合いで呼んでいたのです。」

「ああ、そうですか!お客様ですね!失礼いたしました。ぜひこちらへお越しください!」

オージェさんから下に降りてくるように言われてしまった。

こっそり逃げる作戦失敗。

俺達は案内係に連れられて下の階に降りていくのだった。