軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第212話 実践訓練の潜入

ユークリット王都を出発してから2日目の夕方。

すでに1度、L-ATV(ライトコンバットタクティカルオールトレインビーグル)を解体して新しいL-ATVを召喚し880キロほど西に走って来た。西の山脈はもう目前に迫ってきており、山脈の裾野には広い森が広がっていた。その山脈に夕日が沈もうとしているのだった。

ユークリット王都より西へ向かう途中の村々には多少の敵が潜伏していたが、10〜20人程度の小隊がたむろするぐらいで脅威になるようなものはいなかった。5つの村を通過し10個小隊程度を潰したと思う。

全て一瞬で殲滅して来た。

「シャーミリア!明日の朝、あの森に入って南下するぞ。」

「かしこまりました。それでご主人様お腹はへりましたか?」

「・・ま・・まだ大丈夫だ。」

そして・・毎食のようにシャーミリアが肉をふるまってくれる。

どうやら俺が料理を褒めた事がよっぽどうれしかったようだった。結局シャーミリアは料理がこれしか出来ないようで、俺は毎食肉を食っている。肉はグレートボアにビッグホーンディア、レッドベアーと変えてくれているが・・やっぱり肉は肉だった。

グレートボア、ビッグホーンディア、レッドベアーの毛皮が溜まっていくので丸めてファントムが背負っている。

ガシャガシャ

ファントムが歩くとガシャガシャいっているのは刀狩をしたからだった。倒した剣士の武器でイイ感じのを集めてきた。それを数十本背負っていた・・相当な重量のはずだ。

俺は肉以外も食いたくて・・こっそり戦闘糧食のたくあんや乾パンを一緒に食っていた。

「町が見えるな。今までの街より大きい・・名のある領主の土地かもしれない。」

もうすぐ陽が落ちそうだが・・ここに民がいれば何か他の食い物にありつけるかもしれない・・

「しかし貴族が生きている可能性は低いかと。」

「もちろんそうだな。そして大きめの部隊がいる可能性もある。」

「はい人間の気配は多数。魔力を持った者もかなりおりそうです。」

シャーミリアの”目”が都市にいる人間の魔力をも見極めている。

「なら大部隊がいるのは確定だな。」

「左様でございますね。」

《なるほど・・西の辺境の町に大部隊ね。敵が魔獣をおびき寄せていたのも西だったしな。確か生前のグラム父さんが、魔獣との戦い方を教えに来ていた領がこのあたりだったはずだ。》

「今まで通り普通の旅人として入る。この2日間でやってきたことを反復する事になるが、おそらく多少は歯ごたえのある部隊がいるだろう。これまで通り民に被害が出ないように処理をするぞ。」

「かしこまりました。遺漏のなきよう心してかかります。」

「ファントムもな。」

「・・・・・」

もちろんコイツから返事はないけど。

「じゃあファントム。L-ATVを丸めて蹴っ飛ばして。」

ガンガンガンガン

あっというまに6トンもの車が丸い鉄球になる。ガソリンが漏れているようでガソリンの匂いがする。

ドゴン

L-ATVはファントムに蹴られ草原の遥か彼方に飛んで行った。

「ファー!」

俺は大声を出してみる。

「ご主人様!どうされました!」

「いや、こっちの話。」

「???」

シャーミリアがキョトンとしているが、特に何も言わなかった。

「じゃ、行こか。」

俺たち3人は旅人を装って都市に近づいて行くのだった。

町には普通に明かりが灯っている。バルギウスやユークリット王都で起きた事などは、まだ伝わっているはずがなかった。おそらく兵士たちも首都からの伝令などが無い分、他の村同様に油断して酒でも飲んでいるんだろう。

この都市には低いながらも市壁があり門のところには門番が数名いた。

「どうもー。バルギウスから来ましたぁ。」

門番に声をかける。

「ん?なんだお前たちは。こんな時間に歩いて来たのか?」

「途中までは荷馬車で来たのですが、魔獣に襲われ命からがら逃げてきた次第でさぁ。」

「バルギウスの市民証明はあるか?」

「はい。」

俺はバルギウスから盗んで来た市民証を見せた。この市民証は銅で出来ておりケイナがノームの力を使って偽造したものだった。土を掘る要領で名前の改変が出来るらしい。

「商人の・・ドラネコ・タロウ?おかしな発音の名前だな。」

「はい。珍しいとよく言われます。」

「南方の血が入ってるのか?シン国の名のような響きだ。」

「先祖がそっちなもので。」

「なるほどな、そしてそっちは?」

「妻のハナコです。」

番兵はシャーミリアを見てゴクリと唾を飲みこんだ。その美貌に思わず見とれてしまい数瞬意識が飛んでしまったようだ。数人の番兵が舐るように足元から頭まで眺めている。いやらしい顔つきからも何を考えているのかがわかる。

「姉さん女房か?」

「はい。まあそんなところです。」

「こっちは?」

「使用人のヒロシでさあ・・」

「聞きなれない名だな。3人だけか?」

「そうです。馬もやられ護衛の人間もやられました・・俺達だけでさぁ・・」

「そいつは大変だったな。」

「わずかながら補給物資も持ってきました。剣と槍ですが・・持ってこれるだけ持ってきました。あとはここより30キロメード東に置いてありますので、明日の朝に行けばまだ回収できると思います。」

「入れ。」

「ありがとうございます。兵舎はどちらですか?」

「その剣や槍を持っていくのか。それなら案内させる。おい!」

「はい。それじゃあお前たち!ついてこい!」

隊長格に指示を出され一般兵士が俺達を案内してくれるようだ。

「へい。」

俺とハナコとヒロシは兵士について行くのだった。歩いている途中で案内する兵士にいろいろ聞いてみた。

「この街はずいぶん大きいようですが、兵隊はどのくらいいらっしゃるのです?」

「1000人は駐留しているぞ。」

「1000人も!それは大変だ。」

ちょっと面倒だと思ってつい本音が出た。

「なにが大変だ?」

「いや皆さん大変だと思いましてね。地元に家族を残してきているのでしょうね。ファートリアとバルギウスに。」

「そうだな。だが当たり前のことだ!我々は世界を守るためにやっているのだからな。」

「世界を守る?なにから守るのです?」

「知らんのか?北から来る悪魔の手先どもから人間を守るために命令されてきたのだ。」

「そうなんですね。悪魔の手先かあ・・怖いですねえ。」

「恐ろしい魔物たちだそうだ。」

「あなた様はどちらから?」

「ファートリアから遣わされている。」

「ここに居るのはファートリアの人が多い?」

「いや・・半々だが?」

「悪魔の手先ってどんな奴なんでしょうねぇ・・」

「わからん。ただしグラドラムに行った奴らが全滅したとか消息を絶ったと聞いている。」

「屈強な兵士が?」

「ああ強い兵士がだ。ちょっと考え難いがな・・名前の知れたバルギウス4番大隊長のグルイス・ペイントスがいたはずなんだ。」

ああーなるほどね。たぶんファントムの素になったやつだと思うなそれ。

「そんなに強かったんですか?」

「4番大隊隊長止まりだったのは、あまり言う事を聞かないからだそうだ。1番大隊長と互角にやるという噂だが・・消息がわからないんじゃ確かめようがないな。」

「そうなんですね。」

そして俺達は兵舎の前についた。男が振り向いてここだという。

「じゃあ中に武器を降ろしてから街の商会に行きたいと思います。」

「ああ。そうか・・」

「ところで・・北の魔物ってどんな見た目なんですかねぇ・・」

「恐ろしい見た目のバケモノだと思うぜ。きっと背の丈はそう・・このヒロシくらいで恰幅もきっとこんな感じ。見た目はおよそ人間ではなく人の形をしたなにか・・ってところだろうな。」

「たとえば・・こんな感じ?」

ファントムが深くかぶっていたローブのフードを脱ぐ。

「ひっ・・お、おま・・」

シュッ

俺達の目の前から案内役の男が消えた。シャーミリアが瞬間的に命を奪い抱いて上空に飛び去ってしまったのだった。おそらく屋根の上にでもぶら下げておくつもりだろう。

シュッ

シャーミリアが降りてきた。

「ご苦労。」

「はい。」

コンコン!

俺がドアについている呼び出し用のドアノッカーを叩く。

「どうした?」

ドアの小窓が開いて目がのぞく。

《トリックオアトリート!お菓子をください!》

と心でふざけつつ・・

「あのう・・実はバルギウスから来たんですが、補給用の武器をお届けにあがりました。」

ガチャ

ギイィィ

重厚なドアが開けられて中に入れられる。

「入れ!」

兵舎の中に入ると兵士たちがウロウロしている。夜の番を受けていない奴らが飯を食っているらしい部屋もあった。

「武器はどこへ下ろせば?」

「こっちにこい。」

俺達は案内されるがまま兵士について行く。

「ここだ。」

どうやら武器庫のようだった。ドアを開けると武器庫内には管理しているらしき人間が数人いた。

「あのう。武器を持ってきました・・」

「そうか。入れ!」

俺達3人が中に入るとテーブルを指さして兵が言う。

「ここに並べろ。」

「はい。」

ファントムがガシャンと刀を巨大なテーブルの上に置いた。

「それにしても・・ずいぶん綺麗な女がいたもんだ。」

「はい。妻のハナコです。」

「ふん!そうか・・お前の妻か。」

すると一緒に入って来た兵が俺達の後ろに回りこみ、武器庫内にいた兵3人が周りを囲む。

「おいおまえ旦那か?ずいぶん若いな。」

「姉さん女房でして・・」

「おう・・お前とお前・・ちょっと外にでてろや・・」

偉そうな兵士が俺とファントムを指さして部屋の外に出ろと言う・・シャーミリアを置いて・・

えっ?大丈夫?

「最愛の妻をここに置いてですか?」

「なあに悪いようにはしない・・ちょっとだけ目をつぶってくれりゃいいんだ。すぐに終わるさ・・たったの4人だからな。」

「そんなあ・・ご無体なぁ!やめておくんなましぃ!私の最愛の妻なんでございますぅ」

「だから傷つけたり殺したりしねえって、ちょっと借りるだけだ。」

「やめてくだせぇ・・」

「おう!!なんならお前ら全員殺してもいいんだぞ!!」

「は、はいいいい!!それではせめて・・優しくしてやっておくんなましぃ!」

「わかればいいんだ。」

俺とファントムはぞろぞろと部屋を出てドアを閉め数十秒。

カチャ

武器庫のドアが開いた。

「ご主人様。お心遣い本当にありがとうございます。私奴の為にどれだけお優しいのですか・・」

「だって俺だけ肉食って申し訳ないし。」

「そんな!とんでもございません。褒美をいただいてばかりでは・・」

「いいのいいの。」

そして俺達は再度武器庫に入る。

そこらへんに4つの砂の塊と服があったので、服は折りたたんでしまいこみ砂は置いてあったチリトリとホウキで掃除する。

「さてと俺とシャーミリアが一緒に。ファントムが一人で建物の中を掃除してまわろう。」

「かしこまりました。」

「・・・・・・・・・」

ファントムからは相変わらず返事がない。今まで通りだけど・・

「シャーミリアは俺の護衛。ファントムは自分で殺った奴と俺達が殺した奴を全て吸収するんだ。いいな!」

「・・・・・・・・・」

とりあえず分かったのか分からないのか・・返事もなくファントムは武器庫を出て行った。

「シャーミリア俺の戦闘訓練に付き合わせて悪いな。」

「いえ。私がやってしまったのではご主人様の訓練になりませんので、3歩後ろをついて行きますわ。」

「頼む。」

そして俺はサイレンサー付きのハイキャパ化したコルト・ガバメントを2丁召喚する。ハイキャパ化で45ACP弾を14発装填する事が出来る名機中の名機の最終形態だ。

「じゃあ、ハナコはん行きまっせ。」

「はいご主人様!」

俺達は兵舎の中で戦闘訓練を開始するのだった。