軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第137話 山賊と王族

俺達の部隊に助けた3人が加わった。

朝になり駐屯地のテントと風呂を破壊して放棄した。

ラシュタルに向かう前に高い山があり、俺達はそれを越えねばならなかった。

「ティファラ!乗り心地はどうだい?」

ティファラとカトリーヌが狼ゴーグにまたがっていた。

「ええ、ふっかふかで速くて風になっているようです。」

ティファラとカトリーヌが友達同士でゴーグの背中に座っている。

《上品な女子二人が狼の上に乗って走ってるよ・・なんか不思議な光景だ。それにしても・・貴族ってのは美形が多いのかね?カトリーヌがイオナに似て物凄い美人だから、ティファラが霞んでみえるが十分な美人だよな・・》

マリアはファントムの肩に乗っているが、どうやらファントムの肩はカッチカチなようだった。

「こちらは、ちょっと硬くておしりが痛いです。」

「マリアごめんね!ファントムは石みたいだもんな・・安全性は最高だから我慢してね。」

「ふふ。そうですねここより安全なところはないでしょうね。」

マイルスはミノスの肩に乗っていた。

「僕はつかむところがあって安定しています。」

「そこも、この中では1〜2を争う安全な場所だよ。」

「ありがたいです。」

どうやらミノスが自分の角をつかまさせているらしい。

皆が移動しているのは馬車がすれ違うのがやっと、といったところの細い山道だ。

「ここは険しい山だね。」

「そうですね、でも凄いお仲間のおかげで凄い速さでここまで来てしまいました。」

「ラシュタルまではどのくらいなんだい?」

「山を越えればすぐに首都が見えてくるはずです。」

俺とティファラが話をしながら移動している。

今日の朝・・カトリーヌとマイルスとリューズが俺の配下を明るいところで見てさらに驚いていた。

一番驚いたのはゴーグとスラガの変身だった・・

ポッカーン

とした顔でゴーグの変身を見ていた。

伝説の魔人。

御伽噺の本の中でしか見た事の無い狼男と、夜に巨人だった男がいきなり小男に変ってしまったスプリガン。それも絵本でしか見た事がなかった。

《あとは人間のままだから驚くことは無かったが、ハルピュイアのルピア、アラクネのカララ、ミノタウロスのミノス、竜人のドラン、セイレーンのセイラなど・・伝説の最上級魔人のオンパレードだから、正体を知ったら驚くだろうなあ・・まあ知らん間に人間を食ったのだけは教えないでおこう・・》

魔人の移動は早い。

あっというまに山の頂上を越えて下っていく。

山を越えるのに普通の人間なら馬車でまる1日以上、徒歩なら2〜3日はかかるところだが、みなが風のように進んでいく。この世界の悪路ならトラックより彼らの足の方が速いだろう。

《ラウル様》

《なんだ?》

斥候のガザムから連絡が入る。

《人間の集団が森に隠れています。おそらくは山賊かと・・》

《そうか。アジトを突き止めておいてくれ。》

《御意》

「みんな!聞いた通りだ。この先に山賊が潜んでいるらしい。いったん体制を整えるから止まれ!」

全員が停止する。

「ゴーグは人間の状態に戻れ!」

「はい!」

「全員!念のため装備を確認!」

「「「「「「はい!」」」」」」

「相手は山賊だ重装備は必要ない、拳銃をホルスターに確認し自動小銃を構えろ!」

ゴブリン隊はVP-9をホルスターに収める。男の魔人は全員デザートイーグルがホルスターに収まり、女の魔人はマリアと同じP320をホルスターに収めた。

自動小銃は全員がAK-103アサルトライフルを携帯し仕様弾薬は7.62x39mmだった。

潜行するゴブリン隊だけはアサルトライフルの代わりに、全員が戦闘ナイフを2本携帯している。彼らには体の大きさと反射スピードを考えこの装備にしている。ちなみにガザムも自動小銃を携帯しておらず、戦闘ナイフを2本携帯していた。自分の剣も腰にさしている。

「マリア以外の人間は魔人の中心へ。魔人は全てカトリーヌ、ティファラ、マイルス、リューズを守るように動け。」

「「「「は!」」」」

全ての装備を確認し、すべての魔人と意識の共有をして全員が森に入る。

《ガザムどうだ?》

《はい。相手の数は37名、剣が12槍が15弓が10です。地に12の剣が点在して配置され、槍はその後方に1名から2名がおります。弓隊は全て木の上に登ってすべてが街道を向いて狙っています。》

《わかった。》

「ゴブリン隊。素手で木の上の弓をかまえた人間を全て押さえろ!一人も殺すな!木の上を制圧したら一気に地上の山賊をおさえる。いいか!多少の怪我は仕方ないが絶対に殺すなよ。」

「「「「「はい!」」」」」

「まあ今回は出番が無いと思うが、シャーミリアとマキーナ、ルピアは上空待機だ。何か問題があれば攻撃の合図を出す!」

「「「かしこまりました。」」」

森に散開して前進していく。

敵から気づかれない位置まで接近すると、ゴブリン隊から念話で連絡が来た。

《木の上は全て制圧しました。》

《ご苦労様》

「じゃみんな!行くぞ!ファントムは手を出さず、ティファラとカトリーヌとマイルスを守っていろ!」

「・・・・・」

もちろん返事はない。

先に進むと、人間の位置が手に取るようにわかる。

ガザムからの意識の共有で全員がどこに何がいるのかすでに掌握済みだった。

《ギレザムです8人黙らせました。》

《ラーズです6人が沈黙です。》

《ミノスです10人を制圧》

《ゴーグです3人を制圧》

「よし!全員を一か所に運べ!」

あっというまに山賊を黙らせて一か所に集めるように指示をした。

山賊が集められた場所につくと、魔人達が周りを囲んで待っていた。

「造作もないな。」

俺が言うと皆もコクリと頷く。

「それはそうです。30名ほどの元兵士であればティラ1人でも抑えられましょう。ただし・・手加減は出来ないかと思われますが。」

ギレザムが俺に言う。

「ああ、死んでもらっては困るんだ。なにせ・・味方になる可能性があるからな。」

「心得ております。」

ガザムが俺の前に降り立つ。

「ラウル様!森の奥に彼らのアジトがございました。」

「じゃあこの人たちみんな連れてそこに行こうか?」

意識を失った37人を連れて森の奥に進んでいく。

「アジトの前に二人見張りがいるな・・」

するとクレとマカが瞬時に飛び出していき、2人の見張りを体技で沈黙させる。

アジトは木でできた山小屋風のそこそこの大きさの建物だった。

魔人達を森の中に待たせて、俺とギレザムとゴーグがアジトの前に立つ。

コンコン

ノックをしてみると中から声がした。

「なんだ?」

どうしよう・・なんて言っていいのか分からない。

黙っていると・・

ギイ

扉が開いて屈強な男が顔を出す。

「あのすみません。」

「なんだお前たちは?こんな森の奥に入ってきたのか?俺達の仲間がいなかったか?」

「すみません。そのお仲間をお返しいたしたくて来ました。」

「どういうことだ?」

その男が扉の外に出てくると気を失った二人の見張りが目に入った。

「この!」

いきなり飛びかかりそうだったので、ギレザムがトンッと殴って意識を刈り取った。

あーあ、まずはゆっくり話をしたいんだがな・・

《アナミスぅ―、来て―。》

するとアナミスが俺のところまでやってくる。

「建物の中の人眠らせちゃって。」

「はい。」

アナミスがするりとドアから建物の中に入っていく。

ぴょこっとアナミスの顔が出てきて言う。

「全員眠りました。」

瞬殺、いや・・瞬眠だな。

《全員捕まえた人間を連れてこい。》

気絶している見張りも含め全員を建物の中に入れる。

建物の中は・・男くさかった。男たちがここをアジトにしているためこんな臭いがするのだろう。

「汗くっさ。」

実は魔人達はこういう臭いはしない・・ミノスやラーズ、スラガはなんというか獣の匂いに近いので更に強烈だが、久々に嗅ぐ男子部室のような臭いにちょっと懐かしさを覚えたりする。

「でもアナミスが入ったおかげでちょっといい匂いがする分ましか。」

男たちは全部で47人いた。

するとマリアが何かに気が付いたようだった。

「あの!ラウル様!エリックさんがいます!」

本当だ!俺達を助けてくれたエリックさんがいた!

「よし!アナミス!この人をおこしてくれ!」

アナミスが近づいてエリックさんを起こしてくれた。

「う、うーん・・」

「エリックさん!」

「は・・あ・・誰?」

「あの!以前助けていただいた、覚えていますか?ニクルスさんと一緒に!」

「あ・・ああ!!君はユークリットの女神のご子息!」

「覚えていてくれましたか!すみませんお仲間を全て眠らせてしまいました。」

エリックさんは周りを見渡す。何が起こっているのか・・分かってない様子だったが、だんだんと状況が飲みこめてきたようだ。

「これは!なにを!」

エリックが立ち上がろうとするが、まだアナミスの催淫効果があり立ち上がる事が出来ない。

「すみません・・寝ているだけです。」

エリックが周りを見渡すと、俺の配下や人間の女性たちが見えたようだった。

エリックの前に一人の女が座ってのぞき込む。

「エリックさん!」

「あなたは・・」

「あの時、助けていただいたメイドです。助けていただいた御恩は今の今まで忘れた事がございません。」

「この人達は?」

「私たちを助けてくれた仲間達です。皆、私たちと共に行動しています。」

「どうして俺の仲間たちは寝ているんだ。」

エリックは至極当然な質問をしてくる。

「あの・・俺達が街道をラシュタルに向かっているところを待ち伏せされましたので・・」

「あ・・ああ。申し訳ない俺達がこんなことをしているから。」

自分達が山賊のような事をしている事を恥じているようだ。

「いえ、ファートリアやバルギウスから身を隠しておられるのでしょう?」

「どこでそれを?」

「山に登る前の村で聞いてきました。」

「ラシュタルには何を?」

「人探しです。」

「人探し?」

「俺達はファートリアバルギウスに反抗するために来たんです。その手助けをしてくれる可能性のある人を探しています。」

「あの強大な国に反抗?」

「はい。その前にエリックさんはここではどんな立場なんですか?」

「ああ、俺はここでまとめ役のようなものをしている。」

「俺達で皆を制圧してしまったのできっと怒っています。説得していただけませんか?おそらく誰も怪我をしていないはずですが・・」

「怪我をさせずに制圧した?そんな馬鹿な?」

「・・・・すみませんが・・そのとおりでして。」

マリアが申し訳なさそうに言う。

エリックはポカンとした顔で周りをもう一度見渡してみる。何かを悟ったように俺に話してくる。

「わかった説得しよう。」

「じゃあ、アナミス!みんなをおこしてくれるか?」

アナミスが皆を気付けるような匂いを発する。

「うーん。」

「いてててて」

「ここは?」

「どうしたんだ?」

山賊のみんなが起き出した。

エリックはようやく立てるようになったらしく皆の前に立って説得しようとする。

皆が呆然とエリックを眺める。

「エリック。何でそこに立っているんだ?」

1人がエリックに声をかけるとエリックが言う。

「あのー、この人たちは俺の知りあいなんだ・・」

「しりあい・・」

「え・・そ・そんな・・」

「まさか!」

「信じられない!」

全員がエリックを前に跪いて頭を下げた。

「おいおい、みんなどうしたんだよ。」

皆はエリックに頭を下げたんじゃなかった。

エリックの後ろにはある人が立っていた。

エリックが後ろに気が付き腰を抜かした。

「ティ・・ティファラ様!」

エリックがざっと跪いて頭を下げる。

そういうことか・・

ティファラはラシュタルの王族だったんだっけ・・そりゃそうなるわなあ。

ティファラのおかげで説得の手間が省けたのだった。