軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第133話 奴隷商の因縁

俺達は情報収集を終えて村を出ることにした。

奴隷商で買った3人を仲間にして村をでる手筈だが、その前に野菜を買っていきたいと思っていた。大量に購入して運搬したかったので、ファントムたち4人を呼んだのだった。

「市場に行くぞ。」

「はい。」

マキーナが返事をして魔人の配下全員が頷く。

「えっと・・あの、ロードさん?」

すぐにマイルス少年が声をかけてきた。

「どうした?マイルス。」

「夜に市場はやってません。」

「えっ!?」

「日中しかやらないものです。」

「うそ?そうなの?」

するとリューズもそれを補足するように言う。

「大戦前は冒険者が捕って来た魔獣は夕方に入る事が多かったから、夕方過ぎごろから肉や素材を売っていたけど、いまは冒険者が魔獣を捕ってくる事も少なくなって、夜には店は閉まるんです。」

そうだったのか?

「しまったぁぁぁ!じゃあ昼のうちに買っとくんだった!」

やっと普通に生活をする人間の村に来ていろんな情報を入手したと思ったが、まだまだ知らない事があるようだった。

「私たちが先にそれを気づいて教えて差し上げられれば良かったのですが・・」

ティファラが言う。

「いやいや!そりゃ無理がある。みんなに落ち度など少しもないよ。俺達が世間知らずってだけさ。」

「それで・・野菜はどういたしましょう?」

ティファラに聞かれる。

「必要な栄養素は俺が用意できると思うが・・味気ないんだよなあ。」

「では、料理屋さんに戻って八百屋さんの情報を聞いては?」

「いや・・夜にこんな団体が嗅ぎまわったりしたら、住人に迷惑がかかる可能性がある。そこいらじゅうにファートリアやバルギウスの連中がいるんだろう?」

「そうですね・・」

「ここは我慢して村を出るしかないな。」

「それでは出ましょう。」

マキーナが皆を促す。

《よし!全隊聞こえるか?これから村を出てシャーミリア隊が駐屯している場所に向かう、カララ隊も全員そちらに移動しろ。俺達は素人の人間を3名抱えているため、到着が遅れる可能性がある。夜間は今シャーミリア隊のいる場所に、さらにテントを張りもう一晩野営する。今日は俺が3人の人間のために、入浴場を召喚するからみんなもゆったり風呂に入ってくれ。》

《ありがとうございますご主人様。》

《お風呂でございますね!》

シャーミリアとカララのテンションが上がっている。

《おお!風呂ですか!?》

ギレザムが言う。

《やった!》

ゴーグも喜んでいる。

《ふう。羽を伸ばして入りたいです。》

ルピアもお待ちかねのようだ。

魔人達全員が共有された思考の中で、テンションがアゲアゲになっているのが分かる。魔人達もどうやら風呂が好きなようだった。

それで俺はシャーミリアに新たな指示を出す。

《シャーミリア水源の確保は出来そうかな?》

《はい。すぐ近くに滝がございました。》

《よし。それならば滝周辺に駐屯基地を移動してくれ。》

《かしこまりました。快適な場所を用意してお待ちしておりますわ。》

《よろしく頼む。カララ!若干の集合地点の変更がある。修正をお願いする。》

《問題ございません。》

全ての連絡を終えて俺達は村を出るために、暗がりから表通りに出た。

表通りと言っても馬車がすれ違えるかどうかの道だった。建物からの窓明かりで照らされてはいるが、暗い部分もあって治安が悪そうだ。普通の人間はもう出歩いてはいなさそうだった。

そんな道を不思議な10人がぞろぞろと歩いて行く。

もしかしたら家の中から見ている人もいるかもしれない。だが俺達はお構いなしに歩いて行く、この村に敵兵がいない事は既に確認済みなので、いきなり攻撃されることは無い。

「この村には特に問題はなさそうだな。」

「はい、そのようですね。」

俺とマキーナがぼそりと話しながら歩く。

村はそれほど広くはないのですぐに北側の出口に近づいてきた。夜は誰も見張っていない。夜に人が来たり出たりすることは無いため誰もいる必要がないからだ。

そのまま歩いていると、マキーナが俺に話しかけてきた。

「こちら問題はなさそうですが・・ラウル様・・いかがなさいましょう?」

「ああ、とりあえず相手の出方次第だ。」

「左様で。」

マキーナとの会話が終わると、俺達のグループからゴブリンのティラとタピそしてファントムの3人が何も言わず、暗闇に溶けるように消えた。

村の外に出る扉が見えたのでそちらに向かう。すると・・建物の陰からぞろぞろと松明を持った数人の人影が出てきた。

先頭の2人が話しながら近づいてくる。

「こいつらか?おかしな奴らって言うのは。」

「はい、確かにこの者たちですが・・ひとり増えております。」

「ふん・・なるほど。」

俺達の前の道を男たちが塞いで足止めする。

松明に浮かび上がる10人くらいの中に一人だけ見た事のある顔があった。

奴隷商で俺達に奴隷を売った目つきの悪い老人だ。俺はその老人に気が付いたので声をかけてみる。

「ああ、昼間はどうも!良い奴隷を3人もお売りいただきありがとうございます。次もぜひ利用させていただきますよ!」

すると老人の脇にいる、180センチくらいの筋肉だるまみたいなゴロツキが、凄みをきかせて話してきた。

「おう小僧!なにをいけしゃあしゃあと言ってやがるんだ?なんでも・・不正に金を少なく払って奴隷をだまし取っていったらしいなあ。」

「不正?人聞きの悪い事を・・いわれた通り金貨6枚をお支払いいたしましたけどね。」

「いや、こいつら3人で金貨10枚だ。」

「いや、割引される前でも金貨8枚と言う話でしたが?」

するとゴロツキが脇の目つきの悪いじいさんに確認を取る。

「ちゃんと金貨10枚って言ったんだよなあ。」

「ええ、私はきちんと金貨10枚と言いました。」

《あらあら、下手な三文芝居をうってきたな。》

「そうですか。それは失礼しました!私が聞き間違えをしたのかもしれませんね。では残りの4枚をお支払いすれば問題ありませんね。」

俺はひょうひょうとその筋肉だるまに言ってのける。するとその筋肉だるまの表情がみるみる凄みを増してくる。

「てめえ・・舐めてんのか?俺達はガマラ商会だぞ。」

「いえ舐めたくありません。」

「てめえ・・」

すると他の奴らも凄んで来た。

《どう考えても人殺しなんか平気な奴らだよなあ・・》

「フブドさん!こいつ殺っちまいましょう。きっと金も持ってますぜ。」

「どうやら女子供しかいねえようです。なんとでもなります。」

「なんか・・上玉じゃねえですか?」

配下にそんなことを言われたフブドと呼ばれたヤツが、いきなり下卑た目をしてマキーナとアナミス、セイラ、ティファラを穴のあくほど見つめてきた。頭の先から足のつま先まで舐るように見つめる。

「そうだな。どうやら・・ものすげえ美人ばかりを連れているようだぞ。」

「本当だ!こりゃあ・・上玉なんてもんじゃないですよ。」

「売りゃあ相当の金になりますぜ。」

「バルギウスの貴族連中なら喜んで大金を払いそうだ。」

「こいつは・・相当なものですぜ。」

「ああ、どうやらそのようだな。」

《悪党だ・・悪党のテンプレだ・・すげえ凄んでるし、いやらしいなんてもんじゃない目つきで俺の部下をみているぞ!》

「できれば売る前に俺達におこぼれを」

「俺はそのキリッとした黒髪の姉ちゃんがいいな。」

「俺はその赤髪の姉ちゃんとしっぽりと・・」

「聖母様のような顔つきの美人に慰めてもらいたいぜ。」

「小さい坊主!俺が可愛がってやるからな!」

「わかった。傷はつけるなよ!俺はそこの若い女がいいな。」

《間違いなく、今日の夜のいいことを想像しちゃってるな・・かわいそうに・・》

マキーナとアナミス、セイラはまったく表情がなくなってしまった。まるで蝋人形のように男たちを睥睨している。マイルスとティファラがおびえるような目つきで、フブドを見つめている。

「おい!小僧。有り金全部とお前以外の奴をここに置いて村を出ていけ!そうすれば命だけは助けてやるぞ」

フブドというやつが無茶苦茶な交換条件を叩きつけてきた。

「ファイナルアンサー?」

俺が言うと、フブドはポカンとした顔で言う。

「ふ・・ふぁいな・・る?」

「ファイナルアンサー?」

「なにを、わけわかんねえ事を!殺せ!」

フブドが叫んだ瞬間俺も叫ぶ!

「殺すな!」

《御意》

ティラが念話で伝えてくる。

ファントムは加減がわからないので俺が止めた。

ドサ

ドサドサ

ドサドサドサドサドサドサドサ

大男たちが一瞬で倒れたなかに、ひとりの少女が立っていた。

もちろんティラだ。

「良くやった。」

「準備運動にもなりません。」

「全員生きているか?」

「問題ありません。体技で意識だけ刈り取りました。」

「えっと・・素手で?」

「はい。」

「よ・・よし!上出来だ!」

「ありがとうございます。」

特に何の感情もない感じでティラが立っている。

それよりも奴隷商で買った3人が唖然としている。

「???」

「えっとなにが???」

「信じられない!?」

「ああ、うちのティラちゃん強いんだよね・・こう見えて。」

「は、はあ・・」

3人はポカンとしてティラを見ていた。そりゃそうだ・・中学生ぐらいの緑色の肌をした華奢な女の子が、巨漢10人を一瞬でのしてしまったのだから。

「それで?・・いかがなさいます?」

ティラが聞いてくる。

「ああ、これで縛ってくれ」

俺はワイヤーロープを召喚してティラに渡す。

あっというまに10人の男たちが縛り上げられる。

「よし、ファントム!こいつらをまとめて運べ!」

ファントムは鮭でも吊るすように両手に5人ずつの男をぶら下げた。

ティファラ、マイルス、リューズはポカンと見ているだけだった。

「ああ・・力持ちでしょう。こいつはねとっても力持ちなんだよね。」

「ちから・・持ちですか・・ええそうですね。」

もはやティファラしか返答してこない。

「それでさ、ティファラとマイルス、リューズはビックリするかもしれないんだけど、山のふもとの高台に俺の仲間がいるんだけど、そこにみんなで行く事になったんだ。ついてきてくれるかな?」

「えっと僕は・・」

「わ・・わたしは大丈夫です!行きます!」

「も・・もちろん私も行くよ!」

「じゃじゃあ僕も。」

3人はビビりたおしてしまった。

「あのう・・大丈夫だよー。みんな俺の部下だから特に危険なことは無いよー。敵にまわればこの上なく危険だけど、味方であるうちは家にいるより安全なんだよー。」

「マイルス君。この方達は信用できると思います。」

「わかりました。」

「ああ、それは私もわかるな。」

マイルスも落ち着いて来たので、ティファラが何とか場を収める。

「では」

マキーナが皆を促すように言う。村の出口を出て山の仲間の元に向かうのだった。

山には街道からそのまま道が続いていたが、街道からそれると深い森になっていた。山の森は鬱蒼としていて暗闇の中で進むには普通の人間だったら大変だったろう。

その真っ暗闇の中を俺達は何も無いように歩く。

「いてっ!」

「ああ、待ってください・・」

3人のうち2人の新人さん達が森を歩くのに苦労しているようだった。リューズは犬の獣人だけあった暗闇でも歩けるらしい。

「あ・・人間の2人には真っ暗な森は厳しかったね。じゃあこれをあげるから足元照らしてついてきて。」

俺はサーチライトとヘルメットを2つ召喚して彼らの頭にかぶせてやる。

「えっ?いまどこから出されました?」

ティファラが不思議そうに聞いてきた。

《よく考えたら普通に召喚魔法を披露しちゃってたな・・》

「ああたまたま背負子の中に入ってたんだよ。」

「そ・・そうですか・・」

「とにかく歩きやすくなると思うから。」

「そして・・これは・・いったい?」

「ああ、ランプだよ。ランプ帽子。」

「ランプ・・?わかりました・・」

少年と女性自衛官がヘルメットを付けて遅れまいとついてくる。

しんがりは俺とマキーナ、ファントムがいるから大丈夫なのだが必死に歩いている。

「大丈夫だよ。俺達が後ろにいるから・・あと魔獣は全て押さえるから問題ないよ。」

「魔獣を全て?」

「わかりました」

「わ・・わかった・・」

それでも彼らの額から流れる恐怖の汗は、止まる事が無いのであった。

《何をそんなに恐れてるんだろう?》

《ラウル様。きっと魔獣が怖いのでしょう。》

アナミスが念話で伝えてくる。

《俺達がいるから大丈夫なのにな!》

《全くですわ。》

マキーナがほほえましく言う。

彼らはラウル一行を恐れているのだった・・