軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第129話 善意の食事

奴隷を買った。

金貨6枚がいくらの価値なのか分からないが、とりあえずちゃんとお金を出して買ったんだから堂々と歩ける。

だが・・しかし・・

「服・・ボロボロだよね。」

「ごめんなさい。」

「売られたときに取られました。」

「私も・・」

「そうか。じゃあ俺が出してやるから着てくれればいいよ。」

少年には迷彩戦闘服2型の一番小さい奴を召喚してみる。

「とりあえず着てみようか。」

だぼだぼだった。6才か7才くらいだもんな・・そして痩せているし。

「ローラ!半そで半ズボンにしてくれるか?」

「はい」

シュッと白刃が走る。

ストン

ダボダボだがこれで引きずる事は無いだろう。あとはベルトで引き絞ってやれば何とか着ていられそうだった。

「二人には・・これを着てもらおうかな」

陸上自衛隊の深緑のブレザーとタイトスカートにYシャツとネクタイを召喚する。アナミスが軽くかけた術が解けて犬の獣人がはっきりしてきたようだ。

「あの・・私はどうすれば・・」

「ちょっとまって。」

二人を連れて隣の泊まっていた宿屋に入っていく。

「いらっしゃ・・あ・・昨日泊ったやつじゃねえか!また来やがったのか!」

カウンターのご主人が適当に凄んでみせる。

「あのーすみません。女の人に着替えをさせたいのですが・・」

「はあ?なんで部屋貸さなきゃいけねえんだ。でもそんな恰好でいられちゃ邪魔だな!さっさと着替えて出ていきやがれ!」

「手早くします。」

そしておばさんが出てきた。

「なんだい!ユークリットのやつらは邪魔なんだよ。早くこっちに来な!」

おばさんについて3人で隣の部屋に移る。部屋の中に入るとおばさんがこそこそと声をかけてくる。

「あんた!こんなにもらえないよ!金貨を置いていっただろ!」

「いいんです。僕の気持ちですから・・」

「それにしたってもらいすぎだろう。」

「受け取ってください!とにかく着替えをさせてください。」

「お安い御用さ。着替えたボロは置いてっていいよ、捨てておくからね。」

「助かります。」

「わざわざ隣の奴隷商から奴隷を・・あんたたちも辛かったろうね。」

「ありがとうございます。」

「う・うう・・」

優しい言葉をかけられて二人の女は涙ぐむ。

「急がないと店がバルギウスの連中にまた何か言われたら困るでしょう。手短に着替えをして出ていきますよ」

「悪いねえ・・風呂を貸してあげたいんだけど、それを見られたらあいつらが暴れるからね・・」

「わかっています。」

「じゃあ着替えが終わったら、いらない物は置いてっておくれね。」

「はい。」

そんな会話をしておかみさんは出て行った。

「俺は部屋の外で待ってるよ。」

「あ・・あの・・これはリボンですか?リボンなら結んだことがあるのですが」

人間の少女の方から声をかけられた。

「あ・・そうか。ネクタイなんて締めたことないよな。じゃあシャツとスカートと上着だけ来て出てきてくれ。」

「わかりました。」

「はい」

そして俺は部屋の外に出る。

少しすると中から二人が出てきた。白シャツに深緑のタイトスカートのスーツ。どこからどう見ても女自衛官だが・・髪の毛がぼさぼさなのと、犬の耳が出ていて違和感がある。

「それではおじゃましました。」

「さっさと出て行ってくれ!」

カウンターの主人が大きな声で言う。

そそくさと俺達は宿屋を出てきた。本当に良い宿屋だった。

「おまたせ。」

「見違えるようですわ。」

「本当ですね。後は顔の汚れと髪をどうにかしたい所です。」

マキーナとアナミスが声をそろえて言う。

「じゃあ俺がネクタイを結んであげるよ。」

二人の女の人にネクタイを結んであげた。どう見たって女自衛官だ。

「不思議なお洋服ですね。」

人間の女が言う。

「獣人には少し暑苦しいな。」

獣人の女が言う。

「俺達は、ロードにローラにカーだ。君たちの名前を教えてもらっても良いかな?」

「僕はマイルスと言います。」

男の子はマイルスというようだ。

「私はティファラです。」

人間の少女はティファラ。

「私はリューズ」

犬の獣人はリューズというそうだ。

「マイルスにティファラにリューズね。それで・・あらためて聞くけど・・皆どうしたい?」

俺は3人に尋ねる。

「僕は・・ラシュタルから連れてこられました。でもラシュタルに帰る場所もありません。」

「どうしてかな?」

「お父さんが戦争で死んでお母さんと暮らしていたんですが・・母さんが・・死んで・・」

「それで奴隷として売られて来たのか。」

「はい。僕と同じような子供と一緒に生きていたんですが、仲間も数人どこかへ連れていかれました。」

「そうか・・」

少年は兵士の子供だったらしい。

《孤児がいっぱいいるのか、そりゃそうだよな。兵士が大量に殺されたんだ、その子供たちの数もそれだけいるってことだよな。》

「君は?」

中学生くらいの女の子に聞いてみる。

「私は・・・」

「言いたくないなら聞かないけど。」

「・・・・助けていただいたので正直に言います。」

「ああ悪いようにはしない。」

「ラシュタル王国の貴族の娘でした。一族は滅ぼされましたが数名が生き延びました。」

「・・・そうか。」

「私がそのまま野に出ても、ばれればファートリアに売られるでしょう。」

「間違いなくそうなるだろうな・・」

「私を・・売りますか?」

「売らない。」

「ただ・・どこにも行くあてが無いのです。」

「じゃあ俺達と一緒に居ろ」

「ありがとうございます。」

リボンは結んだことがあると言っていたから、もしやと思ったらやはりそうだった。そして自衛官の制服を着せたら汚れた顔の中に品がある。カトリーヌにも通じるような気品を感じた。

「お前は?」

「ルタンに仲間がいる。そこに帰る。」

「ルタンで捕まったのか?」

「はい。」

「ニケを知っているか?」

「もちろん知っています!知っているのですか?」

「俺達が彼ら獣人を解放して来たから分かっているよ。」

「解放ですか?彼らは自由になったのですか??」

「ああ信じられないかもしれないが事実だ。」

「彼らが無事なら私もそこに帰ります。」

「ならしばらくは俺達と行動を共にした方が安全だろう。どこかで捕まればまた逆戻りだ。」

「ルタンに戻る予定があるのですか?」

「探している人を見つけたら戻る予定だ。」

「付いて行きたいが返せるものが何もありません。」

「特に何もいらないけど。」

「それでは・・あなた方には何も得するものがない。」

「いや、獣人たちが喜ぶのであれば俺達もうれしいよ。」

「とにかく!私が出来る事があれば何でもします!」

「まあ・・飯の準備くらいかもよ。」

「やります!」

とりあえず奴隷商で買った3人と行動を共にすることにした。きっとここで巡り合ったのも何かの縁かもしれない・・実際いろいろと導きのようなものを感じるようになった。直感を信じて進むのも悪くないかもしれない。

午前中の街に人が結構出てきた。

自衛官の格好をした人間が3人が珍しいため、じろじろと見られてしまうようだった。

《この世界にこんな格好をしている人間はいないからな、そりゃ目立つよな。》

「とりあえず・・3人とも腹減ってるだろうな。痩せてしまってるしまともな食事なんかしてないだろう?」

グゥゥゥゥ

俺が飯の話をしたら男の子の腹がなった。

「す・・すみません。」

「飯屋に行こう。」

「え!」

「いいんですか?」

「お、お腹が・・」

目指したのはとりあえず飯屋だった。

「飯屋は・・どこなんだろう?」

すると犬の獣人のリューズが言う。

「こ・・こっちです!」

「さすがは犬の獣人だ。鼻が効くんだね。」

「す、すみません。」

「いや、助かるよ。」

リューズについて行くと確かに飯屋があった。古い建物ではあるが小綺麗にしてあって、うまそうな匂いが外まで漂って来る。

ギィ

ドアを開けて中を見渡すと、普通に何人かが座って飯を食っていた。すでに酒を飲んでいるやつがいるが特に問題なさそうだ。

「どうも・・飯を食いたいんだがいいかな?」

「ちょ・・ちょっとちょっと!お客さんそっちのは犬の獣人じゃないか?」

「ああ奴隷商で買ってきた。」

「他のお客が寄り付かなくなるよ。外に出しておくれ」

「どうしてもだめかな?」

すると・・女中が顔を近づけてくる。

「裏にまわりな・・」

こっそりと声をかけられる。

「ああ、奴隷なんか入れて悪かったね。」

そのまま店をでて、裏口に入っていき店の裏に出る。すると、さっきの女中がドアのところに立っていた。

「だめだよ!あんた獣人なんか中に入れたら。昔と違うんだよ。」

「ああすみません。お金はあるのですが何か食べられますか?」

「いま作ってやるから待ってな。」

裏口で俺達6人が待つことにする。しばらくするとトレーに乗った料理が出てきた。

「悪いんだけどさあ、この鍋から取り分けて食べてくれるかい?お椀によそってさ。あとは硬めのパンしかないんだけど、これをスープに浸して食べるとうまいからさ。」

「気遣いいただいてすみません。」

「仕方ないよ。中のテーブルで朝から酒飲んでるやつらはバルギウスの奴らだからね。物騒だから気を付けておくれよ。」

「料理はいくらですか?」

「何言ってんだい!お店で出してるんじゃないんだよ!賄いで金をとる料理屋があるもんかい!」

「それじゃお店の損になります。」

「とりあえず、食ったらとっとと行きなよ。見つかるとひどい目にあっちまう。」

「わかりました。」

結局、食堂の裏口で飯を食う事になった。

「俺達は食べないから3人で食べていいよ。」

「えっ良いんですか?」

「遠慮なく食ってくれ。」

すると3人が無心に食べ始めた。

豆と煮魚のなんていう料理だろう・・この地方の料理なのだろうが、後は硬めのパンを添えてあるスープに浸して食べる。

「おいしい・・」

「ほんとうに・・」

「ああ、幸せ。」

とにかく黙って食べつづけ、あっという間に鍋もスープも空になった。

すると・・男の子が言う。

「僕はこうやってラシュタルでも生きていたんです。ファートリアやバルギウスの人間の目を盗んで・・どうにかおこぼれをもらって・・でも捕まってしまったんです。」

そのわきでポロポロと涙を流し始めるティファラ。

「私は病気になってから・・まともに食べてませんでした。もう死ぬんだと思っていました!でもこうして食べ物を食べて生きている・・本当にありがとうございます。」

「私だってそうさ!もうだめだと思った。愛玩奴隷にされて最後は殺されるのが獣人奴隷の末路だからね。最後まであきらめてなかったけど・・こうして助けてもらえた。感謝しかないよ。」

そして俺たちはその場を早々に離れることにした。

飯屋の女中はこの店の女主人だった。

裏口から出てきて皿が丁寧に重ねてあるのを見る。

「よかった。全部食べてくれたんだね。」

そして片づけるためにトレイを持ち上げた時に驚いた。

そこには金貨が1枚置いてあったからだ。

「はあ!こんなにもらいすぎだろう・・銅銭3枚ぶんにもならないのに・・気遣いし過ぎだよ。」

ラウルは・・金銭の価値が良く分かっていないのだった。