軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第111話 現場監督

マリアがいつのまにかゴブリン隊の隊長の隊長になっていたことに衝撃を受けた。

俺は気を取り直して、グラドラムの街の外に出る。

そこにはすでにドワーフやサキュバス、ハルピュイア、ゴブリンたちの住み家が出来上がりつつあった。

「結構できあがってるな!」

俺がファントムに語り掛けてみるが、こいつはどこか遠くをみて何も答える事はなかった。

バサバサバサバサ

上空からルピアが降りてくる。

「ラウル様!お疲れ様です!」

「ルピアもいつも見回りご苦労様」

空を飛べるハルピュイア達は警備も含め、困っている人や怪我人の早期発見などに大いに役立っていた。いってみれば監視カメラのような役割を担っていたのだ。

「異常あるか?」

「これといって特にはありません。軽い怪我人が出ましたが私たちの能力で吸い取りました。」

「すまない。ハルピュイア達にはかなりの労働を強いている気がするが、今は継続して頼むよ」

「いいえ。全く問題ございません。」

ルピアはまた業務に戻るため飛び去って行った。

「それにしても・・暑いな。お前はいっさい汗とかかかないんだな。」

ファントムに声をかけてみるが、どこか遠いところを見つめるだけで何も答えなかった。

町がだいぶ出来てきた。ドワーフの技術は素晴らしくさらに効率がよかった、木と岩を上手に組み上げてしっかりした家が立ち並んできたのだ。合間合間にはまだ召喚したテントがあり休憩や寝泊まりなどに使っている。

あちらこちらにミノタウロスと巨人になったスプリガンが資材を運んで歩き回っていた。資材を下ろしたばかりのM939 5tカーゴトラックが町の入り口に向かって走り去っていった。ミノタウロスと巨人がいるから異世界と感じるが、前世でいうところの分譲住宅の工事現場のような雰囲気を醸し出している。

そう・・俺は現場の見回りをしているのだった。

「ミノス!みんなにはちゃんと休みを与えているか?」

「ラウル様、我らには休みなど不必要でございますが?」

「人間と話す時間もまめに設けてくれよ!」

「ええそれでしたら、マリアやミーシャが人間との話し合いを設けてくれてます。」

「お前たちが一番人間たちに恐れられているからな。まあ顔のせいだと思うが・・」

「まあ我らは人間の顔をしておりませんからな。」

「種族的な特性からするとお前たちが一番温厚だと思うんだがね」

「そう思うのはラウル様だけかもしれませんよ。この見た目では人間が怖がるのも無理はない」

《実は魔人の中では見かけによらずミノタウロスが温厚だった。キレさせたらたいしたもんだ。ただし・・キレたら恐ろしい事になるらしい。ギレザムが言っていた。》

魔人にはまだまだ知らない事がある。

シャーミリアは数千年の眠りから目覚めたオリジナルヴァンパイア

カララは国を一つ滅ぼしてしまうほどの力を持つアラクネ

ルフラは人間の言葉を話し人に化ける、いつから生きているのかさえ分からないスライム

こいつらの強さは本当に未知数で最大に能力を使った時はどうなるのか?

それらを筆頭に

温厚だがキレたらおそろしい強さのミノタウロス

変身すると巨大な狼になるライカン

自由に巨人化できる小人のスプリガン

炎を吐き硬化するうろこを持った土龍の血筋をもつ竜人

鬼の力を持ち独特の武術を使うオーガ

パワーと持久力を兼ね備えたオーク

森の行動力と集団戦闘での連携が冴えるダークエルフ

小さく闇に紛れ込む能力に長けるゴブリン

人間をはるかに超越した力を持った彼らが、ここまでの3年、俺の我流ではあるが軍隊式の特殊訓練を行なってきた。

またサキュバスには集団催眠や幻惑など、戦闘や交渉で有利になるような使い方を教えた。

ハルピュイアは貴重な航空戦力となるため、遠距離からの殺傷の兵器の訓練を行なった。また諜報活動は軽いゴブリンを運んで行い、索敵にも非常に有利に使えることが分かった。魔人では1番非力とされていたらしいが俺の兵器と組み合わせると、絶大な能力を発揮したのだった。

俺は彼らをまだまだ知る必要があった。そのためにも魔人国にいた時から続けている巡回を今も続けているのだ。

そんな彼らの住処がどんどん広がっていく。大陸に魔人をもどす準備は着々と進んでいた。

ただしグラドラム外に勢力を拡大していくには数が圧倒的に少なかった。全軍で進軍してしまえはグラドラムが手薄になり危険だ。さらに俺と共に動かねば弾薬が尽きてしまうため軍を分散できない。もっと輸送トラックなどを運転する技術を身に着けてもらわねば武器弾薬を輸送する事が出来なかった。

「敵にこちらの兵器などの情報が敵に知られている以上、迂闊に動くことが出来なくなってしまったな」

ミノスに尋ねてみると、ミノスも似たようなことを考えていた。

「ええ、さすがにすべてを防ぐような事は無理でしょうが、なんらかの方法で邪魔をすることは考えられますね。」

「あの転移魔法やインフェルノも厄介だしな。クルス神父でも発動するまでは気が付かなかったらしい」

「魔法が流れるまで気が付かないとは恐ろしいです。」

「ああ、まずは引き続き頼むよ。」

「わかりました。」

そして俺は最初の魔人セクションを通過して、一番西側に位置する入り口の強い魔人達の住む領域に移動する。こちらもかなりせわしなく魔人達が動いていた、ミノタウロスにスプリガン、他オーガやオークもフル稼働しているようだった。ここが一番最初の砦となる為急ピッチの作業となっていたのだった。

「ギル!順調なようだな」

「ええ、ここに一番労働力を割いていただいてますからね。とにかく一刻も早く堅牢な街を完成させないといけません。」

街の第一ゲートから入ったすぐの街は、魔法の攻撃にも耐えられるように石で作られていた。どちらかというと大きな体の魔人が多いセクションなので建物も大きい。どうしても木を使うと強度的に難しいらしいのだ。岩と泥、固まる砂を混ぜてまるでコンクリートのような建造物が出来てきている。これもドワーフの技術らしい。

すると前の方からドワーフのバルムスが近づいてきた。

「バルムス。凄い技術だな!こんなことができるとは・・あのグラウス国の石像もこの技術で作られているのかな?」

「ラウル様!技術は一緒でございますが・・あれは石像ではありませんぞ。」

「へっ?だって人型してたけど石像じゃないなら何なの?」

「ゴーレムです」

「えっ!!あれ動くの!」

俺は滅茶苦茶テンションが上がってしまった。

「もちろんです。命を吹き込めば動き出しますよ、そのそれにはルゼミア王の力がいりますが。」

「俺も魔力あるんだけど、もしかしたら使えるかな?」

「ええ、試してみる価値はございます。人間界にはゴーレムなどおりませんし驚きますよ!」

「ほしい!ゴーレムほしい!」

「はい、では早速1体目を作らせましょう。1体出来たら声がけいたしますのでぜひ魔力をそそいでみてください。ラウル様は元始の魔人の系譜にあると聞きました。おそらく動かせるのではないかと思います。」

「楽しみにしている。」

そうか・・あの魔人国にちょくちょくあった人型の巨大像はゴーレムだったのか!?

「ゴーレムの軍団にここを守ってもらえれば、少しは遠征できる人数も増やせるかもしれないな。ゴーレムは作ってみる価値はありそうだ。これから拠点の防衛にも役立ちそうだしな。」

石でできた家の間にもまだテントなどがあったが、そこに行ってみることにする。

「入っても良いか?」

「ええ、いいですよ!」

「おおガンプ隊長じゃないか?ご飯中かな?」

「いえ丁度すんだところですのでどうぞお入りください。」

「じゃあ食後にこれを。」

俺はコーラを人数分召喚してやった。

「おお!これはスッキリして素晴らしい飲み物ですな!」

「ラウル様!ありがとうございます。いつも助かります。」

「うまいですなあ・・ゲフッ」

コーラを飲んでゲップをすればストレス発散になるらしいので、現場の休憩所に来てはたまに出してやるようにしていた。

「オークのみんなは元気にやってるかい?」

「ええ!みんな大陸の食べ物や風景に興味津々で、早く遠征に行きたいと言っております。」

「そうだな。とにかくこの地を盤石な物にしてから出たいと思っている。工事を急がせて済まないがよろしくお願いするよ。」

「かしこまりました。ほぼ休みなしでやっておりますよ!」

「いやあ・・10日に1日くらいは休んでほしいものだが・・」

「休みと言っても何をしていいのやら。」

「じゃあお前たちも極力人間と話をするようにしてくれよ。ミノタウロスのやつらの次に怖い顔をしているから」

「怖い顔ですか・・すみません。」

「いや責めてないけどね。」

「マリア殿から人間とつないでもらって話をさせていただいておりますよ。」

「それならよかったよ!」

オークはどちらかというと人情味に厚い種族だ、仲間を大切にして仲間のために身を犠牲にする性質がある。ほかの魔人よりさらに自分に厳しく一番軍人に向いてると言える。

《だが俺は極力死んでほしくはないのだ。自己犠牲も良いがなるべく自分の身を案じるようにしてもらいたい。本能だから仕方ない所もあるんだけどね・・》

「じゃあまたくる。」

「はっ!」

そして俺はテントを出て、ギレザムに話しかける。

「じゃあオーガはみんな作業中かな?」

「ええ、今はオークの番ですので休憩している者はおりません。」

《えっ!自分たちでローテーション決めて休んでるのか。凄いなこいつら勝手に規律を作って動いているんだ。》

「じゃあオーガが休みに入った時にまた来るよ。邪魔したね。」

「は!」

そして俺は正面の第一ゲートまで来る。ここには装甲車両が数台置いてあって、その上には12.7㎜重機関銃が並べてある。急な敵襲があったとしても魔獣が来たとしてもここでかなり敵の戦力を減らす事が出来る。30日の期限があるので俺はそれをイオナに管理してもらっていた。彼女はデスクワークに長けていてかなり助かっている。俺の武器召喚の帳簿をつけているから、いつどこで出していつ消えてしまうのかを把握していた。

我が母ながら素晴らしい才能の塊だと思う。

そしてこの魔人達と人間の橋渡しをしてくれている、マリア、ミーシャ、ミゼッタ、カトリーヌにも凄く感謝していた。彼女らのおかげでかなり魔人に対するハードルは下げられていた。彼女らがいなければここまでコミュニケーションを潤滑にはかれてはいなかったであろう。

そしてルゼミア母さん(まおう)の兵は凄く規律が図られており、さすがは元始の魔人の系譜に連なるもの達だと感心させられるのだった。

人間と違い魔人の軍人としての能力はかなり高いだろう。

ただ数が圧倒的に人間より少ない不利な要素を、どう打開していくかがカギなのだった。