軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第109話 イレギュラー ー大神官アヴドゥルー

おかしい・・

《どんなに追手を差し向けても捕まらねえ。》

俺がいくら追手を差し向けても、ユークリットの女神は全く捕まえられなかった。それどころか見つけたという報告すらない。

サナリアに兵を差し向けた時にはすでにもぬけの殻だったらしい。カラス頭にどこに逃げるか予想を聞いてみたら・・

-北のシュラーデンだろう-

と言われたがそこにもいなかった。

それから1年近く経つというのに、まったく足取りがわからない。

ただ一つおかしなことがあった。差し向けた部隊の中に帰ってこない奴らがいる。北に広く罠をかけたが、兵士が帰ってこなくなるおかしな現象が起き始めた。

きっと何かあると思い北東方面に兵士をばらまいていたが、全く足取りを掴むことが出来なかった。

俺は大神官の部屋でうとうとしていた。

「アヴドゥルさま!アヴドゥルさま!」

「はっ!」

俺は間抜けに涎をたらして寝ていた。

「報告がございます。」

「なんだ?」

あわてておきる。

「北方よりバルギウス帝国のジークレスト小隊長が戻られ、アヴドゥル大神官様にお目通りをと。」

「女神が見つかったか!?」

「いえそうではないそうです。」

「なんで俺に会いにきた?」

《やれやれ、また処刑しなくちゃいけねえやつがでてきたか?》

「それが・・報告があるようです。」

「ふん!ろくでもない報告じゃないだろうな。そいつをここに連れてこい。」

しばらくすると、地味などこにでもいるおっさんがきた。

《なんでこれが小隊長なんだ?》

「お初にお目にかかります。私はバルギウスのジークレストヘイモンともうします。バルギウスの皇帝陛下に報告したところ、私から直接アヴドゥル大神官様に報告しろと命ぜられて馳せ参じました。」

「用件はなんだ?」

「はい。北の街でファートリア神聖国の枢機卿なる人物と出会いまして報告に伺いました。」

《枢機卿?神生祭のときにあらかた捕らえたはずだったが、他国にもあいつらの仲間がいたのか?誰もそのことを吐かなかったな。》

「そいつはどうした?連れてきたのか?」

「それが・・めっぽう強い、この世のものとは思えぬような気の冴えを放つ騎士がついており、そのままその街で別れました。」

「何?」

「その街からどこかへ向かったようです。刃向かえば我が隊は全滅でした。」

「ほう!そんなに強いのか?」

「はい、一騎当千かと。」

「綺麗な女が一緒にいなかったか?」

「おりました。まるで女神のような女が。」

《見つけたぞ!きっとそいつが騎士失踪の原因だな。》

アヴドゥルは勘違いをしていた。

《教皇一派がそいつらの事を言わなかったのは、俺から国を取り返すためだろうな》

この推測は当たっていた。

《しかしファートリア神聖国の上層部は、教皇を含めて皆殺しにしたからなぁ・・いまさらどうするってんだ?》

「それでそいつらはどこへ?」

「いまこちらに向かっていると思われますが、そこで別れたため詳しくはわかりません。」

《まあいいか・・やっと手がかりみたいなものを掴んだんだ。こいつには褒美をやった方がいいんだろうな。

「お前には大金貨20枚と美しい女の使用人を3人くれてやる。」

「は!そんな大金を!?」

「いらないのか?」

「い、いえ・・頂戴いたします。ありがたき幸せ!」

「下がっていいぞ。」

「ははー!ではバルギウス帝国に帰らせていただきます。」

「ああ、好きにしろ。」

ジークレストはまた命拾いをしたのであった。

《よし・・どうやら鴨があちらから来るようだ。俺はなんてついてるんだ。南方の国もほぼ手中に収めたし、世界中の戦争でだいぶカラス頭に命も送られただろうしな!》

その夜は適当に魅了で従えた美女数人とやってから、眠りについた。

だが、次の日も次の日もしばらくはなにもする事がなかった。こっちに向かっていると言う情報も入ってこない。

《どうなってんだ?なにも進展しねえぞ?》

何日も何日もしばらく待ったが何も起きない。

《まさか?ガセか?》

そんな事を考えてた時だった。

-間抜けよ聞け-

カラス頭が夢に出た。

「なんだよ!こっちは問題ねえはずだぞ!」

-問題は大アリだ-

「どういう事だ?」

-北東の街で屍人の術が使われた-

「なんでえ屍人の術ってえのは?」

-死者の霊魂を定着させ僕として使う術だ-

「それに何が問題あるんだよ!」

-ここ数百年使われた事のないものだ-

「だから俺になんの関係があるんだ?」

-お前に与えた魅了にも近いのだが魂に作用する-

「だからなんだよ。」

-我以外の魔が動いたと言うことだ-

「味方じゃねえのか?」

-違う-

「だったらどうなんだよ。」

-わからぬが、おそらくそちらの方でなんらかの動きがあるということだ-

「なんらかの動き?」

-我以外の魔の使徒が動いてるだろうな-

「敵か味方か?」

-おそらくは敵・・-

「まさか、ユークリットの女神が絡んでると?」

-いや・・確証はとれぬが・・何かがおかしい-

「どうすりゃいいんだよ。」

-ファートリアとバルギウスの兵隊をグラドラムという地へ1000人送りこめ-

「グラドラム?どこにあるんだ?」

-最北東だ大陸のはずれだな-

「わかったよ。とりあえず命令しとくわ。1000となると魔獣に運ばせるか。」

-1000も送れば十分だろうが、もしそっちにユークリットの女神が向かえば厄介だ-

「なんでだ?俺が行って魅了しちまえばいいだろう。」

-グラドラムは魔人の国との玄関口だから魔人がいるかもしれん-

「そいつも魅了すりゃいいんだろ?」

-魔人に魅了は効かぬ、魅了で従えることはできん-

「そうなのか・・」

-お前は動くな相手が魔人では分が悪い-

「わかったよ」

-ユークリットの女神は未だに見つかっておらんが、慎重に事を運ばねばなるまい-

「なんもしねえよ」

-魔人の相手ならバルギウスの兵隊にさせればよい-

「なんでだ?」

-魔人や魔獣の討伐には慣れてるからな-

「わかった。選りすぐりを向かわせよう」

-くれぐれも慎重にな-

「おうよ」

俺はすぐに配下を呼び出して伝令をだしたのだった。

そして・・

「おかしい。」

何日も何日も、どんなに待ってもなんの音沙汰もない。見つけたでも、捕らえたでも、逃したでもない。見つからない!でもなく・・まったくの音沙汰がなくなった。

俺は部下を呼び出して聞く事にした。

「グラドラムにやった兵隊からの連絡は?」

「それがまったくでして・・」

《なんだ?なんだってんだ!なにもないなんておかしいだろ?》

とにかく定期の報告もなく行ったきりになってしまった。異常事態なのは間違いなかった。

《とにかくムカついて仕方がねえが誰かを送って調べさせるしかないな。》

そしてその夜だった。

カラス頭ががっかりした様子で夢に出てきた。

-まただ・・-

「は?どうしたんだ?死んだツラしやがって」

-また屍人の術が使われた-

「またかよ。」

-さらに魅了で使役した魔獣5匹ほどの反応が消えた-

「はあ?前の豚みてえに魔法で死んだんじゃねえのか?」

-違う・・我より強い力で奪い返された-

「嘘だろ?」

-お前の方には何かあるか?-

「それがよ・・なんもねえんだ。1000人も送ったのにだ。」

-ユークリットの女神は見つかったか?-

「全然だ。死んでるんじゃねえのか?」

-いや間違いなく生きている-

「じゃあどこにいるんだよ?」

-わからんがグラドラムでまた同じ術が使われたことや、使役した魔獣がとられたのが気になる-

「そこにいるなら兵隊が捕まえてるはずだが?」

-とにかく調べる必要がある-

「わかったしらべる」

-お前と我の未来のためだくれぐれも見逃すことのないようにな-

俺は次の日に早速、調査隊を送り込んだ。

しばらくして帰ってきた調査隊の返事はわけのわからない内容だった。

「もう一回言ってみろ」

調査隊の隊長は汗をたらしながら俺に報告をしてきた。

「グラドラムの民に聞いたところによりますと、1000人の兵隊など一人も来なかった。我々には魔人様の加護があり、なにかの天罰が下ったのではないかと。」

「天罰だぁ?」

「わ、私もそのようなものがあるとは思えません。」

《どういう事だ?1000の兵隊が消えた?あのバルギウスの魅了が効かねえ化け物みたいな騎士もか?精鋭を送れと言ったのにクズを送ったか?》

「お前らはそれで帰ってきたのか?」

「は?」

「なんの収穫もなく帰ってきたのか?」

「いえ・・それは・・」

「インフェルノ」

俺は報告してきた調査隊の隊長の頭を焼いた。

ドサッと首無し死体が転がる

「仕方ねえ、俺が自ら選りすぐり調査隊を編成して送ってやるとするか」

その日からさっそく調査隊の人選を行いグラドラムに送り込んだ。

しかし返ってくる返事は似たようなものだった。

「まあいいか・・危険な橋はわたらねえ。普通にラシュタル王国とシュラーデン王国を占領して、グラドラムも支配してしまえばいいか。」

それから1年ほどで北は制覇した。消えた1000の兵士は見つからなかったが、問題なく世界を掌握できた。ユークリットの女神も見つからなかったが多分死んでるのだろう。

またカラス頭がでてきた。

-まだ死んではおらん-

「は?もう世界はほぼ手中に収めたんだ。問題ねえだろう」

-馬鹿が!まだ死んではおらんのだ!必ず我に災いがおきる-

「ならどこにいるんだ?」

-おそらくは魔人の国だ-

「魔人の国?」

-そうだ-

「そこにいけば見つけられるのか?」

-人間では行けぬわ-

「じゃあお前の力で」

-我の力も及ばぬ国なのだ-

「ふん!そうかい!ならよ・・そのグラドラムが魔人国との玄関口なんだろ?罠を仕掛ければいいさ。のこのこ出てきたら殺しゃいいだろ。」

-おお!お前もたまにゃ頭を使うのだな?-

「うるせえ。とにかく兵士や魔導士団をどんどん送りこんで潜入させよう。」

-わかった、ならば罠に使う魔石をさがすとしよう-

「決まりだな!」

それから2年かけて、魔人対策の罠を仕掛けた。しかもグラドラムの洞窟に巨大な魔石をみつけて埋め込むことができ、グラドラムの荒野に巨大転移魔法陣をかいた。

極めつけは町ごと罠にしたインフェルノだ。デカい花火を打ち上げることになりそうだ。

「俺もこれだけのデカい転移魔法陣を扱える魔力も身につけたし、あとは魔人が来るのを待つだけだな。」

ただおかしな事に、グラドラムの王のポールとやらには魅了が効かなかった。こんなただの太鼓腹のおっさんがなぜ?と思ったが、カラス頭にきいたら余程の胆力がある人間らしい。

「しかしあのおっさんも哀れだな、嫁と子を人質につれていかれて、部下の宰相と使用人は魅了で俺のいいなりだ。せいぜい民のためとやら頑張ってくれって感じだな。」

そして作戦決行したのが昨日。

「なんなんだよ!あいつはいったいなんだ!あれは間違いなくミサイルだ!部下が使っていた武器は機関銃だったぞ!この世界になんであんなもんがあんだよ!」

そう・・昨日のグラドラムの作戦は完璧なはずだった。グラドラムをインフェルノで魔人ごと焼く、転移魔法陣から兵士を送り込んで足止めをする。グラドラムから出てこれるはずなんてなかった。

しかし兵士達の帰り道も用意したが帰ったのは三分の一だ。

4000の兵を殺したのは大軍団じゃない、20人かそこらの機関銃をもった 魔人(ばけもの) 達だった。

《俺も命からがら逃げるのが精一杯だったぞ!そもそも武器なんてもたなくても、一匹だけで人間が束になっても敵わないはずの化け物魔人が、20人も束になっていた!》

魔人なんて一匹出ただけでも、かなりの人数で討伐するはずだ。かなり高ランクの魔人ならば国さえ滅びかねないと聞く。

「そいつらがなんだ?なんで機関銃なんか持っていやがるんだ!なんかの悪い夢を見ているようだ。」

その日俺は眠ることすら出来なかった。

《あんなもん反則だろ・・》

俺がうとうとし始めるとカラス頭がでてきた。

-なんなのだ!なんなのだあれは!-

「あれか・・あれはミサイルってんだ。兵士を殺したのは機関銃ってやつさ。」

-なんでそんなものがこの世界に?-

「なんだ?カラスも知らねえのかよ」

-あたりまえだ!あんなものがあっていいわけなかろう!-

「まったくだ!いったいなんなんだよ。」

-わからんが、お前が知ってるところをみると前の世界のものか?-

「ああ、そうだ。」

-ならばお前以外にもこの世界に紛れ込んだものがいるのかもしれんな-

「なんだって?」

-そう考えるのが自然だろう、心当たりはあるか?-

「もし俺に恨みを持ってるやつってことなら、心当たりがありすぎてわからねえな。300人はいるはずだからな。」

-我は良かれと思って厄災を引き入れたのかもしれんな-

「勝手なこと抜かすな、テメェが勝手に俺を選んだんだろが。」

-いずれにしろこれから先はもっと綿密に、慎重に事を運ぶ事にしようではないか-

「そうだな。早めにお前さんを召喚する必要がありそうだ。」

-南に大きな国がある、そこには50万の民がおるぞ-

「巨大魔獣の討伐隊の編成も急ぐ必要があるな。デカい魔石をもつ魔獣をさがすか。」

-くっくっくっ、お前も頭が回るようになってきたではないか-

「目標があるってないいもんだな。」

久々に俺のなかにやる気がみなぎってくる。

必ずカラス頭を復活させてやる。

俺は拳を強く握りしめた。