軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第106話 恐怖の罠 ー大神官アヴドゥルー

俺がカラス頭に命を送り始めてから1年がたつ。

毎日のように人を殺しているような気がするが、200かそこらだ。1000人には程遠かった。

「くそ!こんなに毎日のように頑張って殺してるのに全く届かねえ。」

あれからカラス頭は夢に出なくなった。

このまま続けても何年もかかる。いつ終わるか分からないし、ただの殺しにも飽き飽きしてきた。同じ毎日を過ごすだけで特に何も変化はない。

「まとめて殺る方法はねえもんかな?」

そんなことを考えている時だった。

最近ファストラルで頻繁に起きる失踪事件や身投げに関して、大聖堂のやつらにもうわさ話が聞こえてきた。

礼拝の時に隣にいたやつが声をかけてくる。

「アヴドゥル神父よ若きそなたには恐ろしく不安になるかもしれんが、このファストラル周辺では人がどんどん消えているのだ、身投げも増えていると聞く。悪魔の仕業や魔人の仕業とも言われておるのだが、全く分からないそうだ・・そなたが托鉢に出る時は十分気を付けるのだぞ」

「はい・・わかりました。そのような恐ろしい事に巻き込まれたくはございません。気を付けるようにいたします。」

「げに恐ろしきことよ。」

「はい。」

年配のおっさんだがとても不安そうに話している。

《やべえ、そろそろ潮時かもな。誰かが俺に気がつくのも時間の問題かも知れねえな》

「100日後に控えた神生祭では人も集まるというのに・・」

ん?なんだ・・その神生祭ってえのは?

「神生祭とは何ですか?」

「我らがファラス神に感謝をささげる祭典だが、そうだなお前は神生祭は初めてか?」

「はい」

「このファストラル大聖堂の広場が人で埋まるのだ。」

「そうなんですね。教えていただいてありがとうございます。」

《この400メートル四方の広場が人で埋まる?1000人はいくんじゃねえのか?》

「その祭りでは素晴らしき宝物が開帳されるのだ。」

「素晴らしき 宝物(ほうぶつ) ?」

「数千年前に神龍から賜ったとされる巨大な白き魔石よ。」

「えっ?そんなものがあるのですか?」

「数年に1度の祭典でお目見えする素晴らしきファートリアの宝じゃ。」

《そうかあ・・そんなもんより、そこで一網打尽に出来たら最高なんだがなあ・・》

「どこで見れるんですか?」

「広場の中心に置かれその周りにほとんどの神父があつまる。教皇が塔の上から御言葉をくださるのだ。」

《そうか。お偉いさんの言葉をみんなで聞くってわけか。》

「とにかく気をつけないといけないですね。」

「ああ、アヴドゥルもせっかく神父になれたのだ。気をつけよ。」

「はい。」

その日の夜は殺しに行くのをやめた。昼間に聞いた神生祭というのがとても気になったらだ。そこに集まるであろう群衆を思い浮かべているうちに眠ってしまった。

-アブドゥルよ、頑張って命を送り続けているようだな-

夢にカラス頭が出てきた。

「お、カラス頭じゃねえか。久しぶりだなあ。」

-順調に魂が送られてきておるが精進しているようだな-

「はぁ?足らねえよ。こんなんじゃあっというまにジジイになっちまうぜ」

-お前は良くやっているようだが不服か?-

「当り前だろ。毎日のように殺してんのに全然足りねえし、そろそろ飽きてきた。」

-飽きた?おもしろいな-

「一人一人殺すなんて普通飽きるだろ。」

-お前の力が足りんのだ-

「力?魔力ってやつがか?」

-そうだ-

「足りねえんじゃ仕方ねえじゃねえか。」

-そうだ、だが補う方法もある-

「どうすんだよ」

-魔石だ-

「魔石?それならさっき聞いたぞ!100日後に巨大な白き魔石とやらが御開帳されるらしいぜ」

-ふふ、だから我がこうしてお前のもとに来た-

「魔石があるとどうなるんだ?」

-魔石があれば魔法陣を発動させることができる-

「俺の魔力をそそがなくても動くのか?」

-いや最初はそそぐ必要がある、マッチをするようにな-

「マッチをするように?あとは勝手に動くってのか?」

-ああそうだ-

「魔法陣を書いてそこに魔法をそそぐだけ?」

-そうだ-

「巨大な白き魔石とか言ってたけどでっかい魔法もつかえるのか?」

-ああ、あれは古代にいた巨大な龍からとれた魔石だぞ、かなりのものだな-

「神から賜ったっていってたぜ」

-いや昔の人間が龍を倒し獲ったものを、いつの間にか人間が神として祭ってるだけだ-

「人間は都合がいいな」

-我々にとっても好都合だ-

「ん?どうすればいいんだ?」

-その魔石が設置される場所を調べろ、そしてそこを中心に魔法陣を書くのだ-

「そんなにデカいのを?」

-インフェルノを記せば一気にかたがつくだろ-

「つまらねえ。」

-なんだと?-

「つまらねえって言ったんだよ。」

-なにがだ?お前は人を殺すのが望みだろう-

「面白くなきゃやらねえ」

-つべこべ言うな黙ってやれ!-

「やらねえ。」

-面白い能力はいらんのか?-

「いらねえとは言ってねえ。ただ・・つまんねえことはしたくねえ。」

-では何が不服なのだ?もう殺しはせぬのか?-

カラス頭は苛立ってんのか?いったいなんでこいつは俺にこんなことさせてんだ?

「殺さねえともいってねえ。死ぬ人間が追い込まれる感じがしねえとやる気が起きねえ・・」

-追い込まれる感じ?-

「ああ魔法はインフェルノでもいいが、追い込まれる感じがねえ。人間が恐怖しねえじゃねえか。」

-お前は本当に面白いな-

「そうかい?」

-なら生き埋めはどうだ?-

「生き埋め?」

-巨大な穴を10メードも掘った底に、転移魔法陣の出口を記して上から土をかぶせかためておくのだ、そこに広場から一気に人間を転移させる-

「くくくっ、気に入ったぜ。だけどどうやって穴を掘るんだ?」

-お前も少しは頭を使え!-

「わーったよ・・・・いや思いつかねえ。」

-転移魔法陣を地面に逆に書け、さすれば陣の大きさと魔力の量だけ土が転移される-

「ほう!そんな使い方ができんのか?」

-そうだ、応用をきかせないからつまらんのだ-

「とにかく明日からしばらくは殺しはやらねえ」

-わかったやってみよ-

次の日からファストラルの街で、不可解な失踪や身投げはなくなった。

俺は勤勉に皆の模範となるよう教会の仕事に勤めた。夜は転移魔法で荒野に行き土を転移させて穴掘り作業を進めていく。毎日単調にそれの繰り返しだったが苦にならなかった。とにかく決行する日が楽しみだったからだ。

広場の掃除の時、神龍の魔石がどこに置かれるか確認して、その周囲に人知れず魔力をそそぎながら魔法陣を書き足していく。何日も何日もかかったが楽しいとしか感じなかった。

《目標を持つってことは良いことだな。こんなにやる気が出るもんなんだ》

とにかく毎日コツコツやった。本当に真面目に繰り返し繰り返し作業をすすめていく。

30日で荒野に広さ400メートル深さ15メートルの穴が掘れた。転移魔法陣でやると重機なんかで掘るのと違って平面的に地面が削れて、鍋みたいな形になった。

「案外かかっちまったな。まあ魔法陣は広場に書くのと違って人目を気にしないで書けるから、こっからは早いだろうがな。」

その日から夜に荒野に来ては、転移魔法陣の出口をコツコツ書いていった。

ある朝。

「おはようアヴドゥル今朝もせいが出るね!」

若い神父に声をかけられる。

「やっぱり掃除が基本ですからね。きちんとやらないといけません。」

「私も見習わないといけないな。君ほど勤勉な神父をみたことがないよ」

「いえそんな・・皆さま本当に素晴らしい方々で、追いつくにはこれでも足りないくらいですよ。」

「何か困った事があったらなんでも僕に言ってくれよ」

「はいケイシー様。何かの時はお願いいたします。」

ケイシー神父は優しく微笑んで去っていった。

《確か教皇の血縁だっけか?朝早くからご苦労なこったな。》

俺はどの神父にも気づかれる事なく広場の転移魔法陣の構築を進めているが、バレないように少しずつ行っているためなかなか捗らない。しかし気分は良かったし毎日スッキリした気持ちでいられた。

礼拝の時間もきっちり祈りを捧げるふうな仕草をしていたが、誰に何を祈るのかわからないので頭んなかでは違う事を考えた。

《どうやったらもっと人をおもしろく殺せるか?例えば崖に設置した魔法陣から落ちたあと、また魔法陣に吸い込まれて何回か繰り返したら死ぬとか?》

そんな事を考えているうち礼拝は終わる。

それから30日で転移魔法陣の出口を書き終える。広さ400メートル深さ15メートルの全てを土で埋めた。そこにはただの荒野が広がっているだけだった。

「雨でも降ればがっちり地面は固まるだろ。しかし転移魔法は使い方によってすげえ事ができるんだな・・禁術になっている理由ってこういう事なのか?しかし火魔法や氷の魔法だって同じこったろ・・」

《とりあえず転移魔法陣の出口は後ほったらかしてよしだな。》

転移魔法陣で自分の部屋へ帰ってきた。

「さて寝るかな」

ベッドに入って横になる。するとその時ドアがノックされた。

コンコン!

《はあ?誰だよこんな遅くに。あと何時間かで朝だぞ。》

「はい」

俺は新米神父が住んでいる寮のような建物の一室にいる。俺は部屋のドアのところに行って鍵を開ける。

「すまない・・こんな夜に・・」

「ケイシー神父どうしました?」

「いや・・実はいろいろと悩みがあってね。君が一番年下だし話しやすかったから、話を聞いて欲しいと思ったんだ。」

「いいですよ。」

《なんだ・・めんどくせぇな、こいつはお偉いさんの親戚なんだろ。なんだってんだ?》

「アヴドゥル神父、僕はアピスの名を持っている」

「はい知っています。ケイシー・アピス神父。ロニー・アピス教皇のご親戚?でしたか?」

「まあ甥にあたる。それでほかの神父からは将来の教皇候補として名前があがっているんだ」

「それは・・おめでとうございます。」

「おめでとうなもんか!僕にはふさわしくないんだ!」

「はあ・・なぜです?」

「教皇のように立派な人間ではないし、司祭長、大主教、枢機卿にもなっていない僕をどうやら派閥争いで祀り上げようとしているらしいんだ。」

「それは仕方のない事なのではないでしょうか?」

「僕も君のように勤勉ならそれも良しとしよう!しかし僕はそんな人間じゃないんだ。」

「それをなぜこのような時間に私に言うんです?」

「すまない。明日の朝に僕を推す派閥が進言するらしいんだ。それで朝が来る前にどうすべきか相談にきたのさ。」

《おいおい!んなこと俺に言われたってわかりっこねえ。第一年下の俺に何を聞いてんだこいつは?》

「私にはどうする事も出来ません。申し訳ないのですが今日はお休みになってはいかがでしょう?」

「朝には動くかもしれないんだ。ダンクルマン司祭長が僕の部屋に来る手はずになっている。その前に僕が体調が悪くて身動きが取れないと伝えてくれないか?」

「はあ・・それではそのようにいたします。」

「ごめん!こんな夜更けにごめんね!助かるよ!明日の朝だよ!頼むよ!」

そしてケイシー神父は部屋を出て行った。

「めんどくせえが、今はあまりいろいろ騒がれたくないなとりあえず頼みくらいは聞いてやるか。」

とりあえず俺は朝までの数時間眠ることにした。