軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第80話 同業マッチング

【速報】ミユメちゃん、たぶんヤバイ

明らかに今までの学園都市の根幹を揺るがすアイテムをひょいと渡されてはや半日。

俺とミズヒ先輩、そしてトアちゃんは、特区で立ち尽くしていた。

その腕の中には、無数の魔石とコアがぎっしり。

これね、不用心だと思うでしょ?

もう拡張領域に入らねえの。いっぱい獲っちゃったの。

「……あれ、本当だったんだな」

「うん。すごいね!」

いや……これ凄いというか……そのレベルを超えているというか……。

え? なろう系とかそういうレベル超えてない?

「出現のタイミングがわかるアイテムなんて、存在していなかった。だからこそ今までは他校との奪い合いが基本となったのだが……これは凄い」

ミズヒ先輩、嬉しそう。

うーん、美少女二人が喜んでいるし良かったのかな?

『私としては少し不気味だねぇ。アレだけの優秀なアイテムを作れるのであれば、気に入らなくとも自分たちの手元に置いておくはずだ。ますます、追放の意味がわからない。道理がないんだ』

それは俺もダンジョンを乱獲しながらずっと考えていた事だった。

幸いにも、ダンジョン攻略は今の俺達には容易い。

俺が短刀で斬って、トアちゃんが収束砲撃を放つ。

もしも危ないようなら、ミズヒ先輩が焼却する。

これで安全に立ちまわってきた。

ミズヒ先輩はダイブギアがガッタガタなので、あくまで最後の保険の立ち位置であった。

なのでミユメちゃんについて考える余裕は十分にあったのである。

その中で俺は思った。

あまりにも存在が怪しすぎる。

なろう系ならば、多少の有能さやチートは理解できる。

が、しかしこの世界はあくまでトウラク君を中心とした物語だった筈だ。

仮にスピンオフ主人公だったとしても、これだけの有能が名前すら出なかったのはおかしい。

桜庭ラッカの例もあるから一概には言えないが、この俺が認知していないとなると原作には関わっていない。

ダンジョンの出現を事前に感知できたり、Sランクのダイブギアを作れる美少女が、あの最終決戦に来なかった?

あの子がいたら、デモンズギア4機での作戦ももっと安定した筈だ。

今、考えられる真実は三つ。

一つ、原作の裏でまったく別の脅威に対抗していて手が離せなかった

これは十分にありうる。

というか、これが一番可能性が高い。

スピンオフの小説やソシャゲもあるくらいだ。

いくつもの脅威はあるだろう。

二つ、俺と同じ存在である

可能性としてはあるけど、一番低いと思う。

つまり、二次創作的オリジナル主人公であるということだ。

俺だからこそメタ的な思考でこのような推理ができたが、実は真っ先に否定した。

どうも見たところ魂が美少女だったからだ。

俺が見間違える筈もない。あの子は、美少女である。

三つ、原作の最終決戦時点で既に死んでいた

考えたくはない。

が、あれほどの天才ならば死ぬ可能性も十分に高い。

だって、リンカちゃんが原作では死ぬんだぜ?

じゃあスピンオフも殺したーい^^ってなるかもしれないだろ。

考えられる限りはこうだろうか。

てっきり俺はただのスピンオフ主人公かと思っていたが、どうにもそれ以上に意味があるように見えた。

「ケイ君、どうしたの?」

「え、ああミユメちゃんの事を考えていて」

「ミユメちゃんがどうかしたの?」

トアちゃんは全く警戒をしてないようだ。

それどころか、嬉しそうに鼻歌すら歌っている。

かわいいねぇ。

「よし、帰るか。Aランクのコアも一つだが手に入った。魔石も随分とあるし、上等な食材でも買っていこう」

「はい」

「うん!」

とりあえず、今はこの恵みを享受しようか。

俺が夜に色々調べればいいんだし。

俺達が学園に戻ると、生徒会室ではミユメちゃんとナナちゃんが対面して座っていた。

「むむ……」

「質問は以上でしょうか。であれば、私はおやつを所望します故」

「もう夕飯時ですから、おやつは食べちゃ駄目ですよー」

「……私は今、悲しみを覚えています故」

なんかゆるふわな空間だなぁ。

見ているだけで視力が上がるわ。

『君が言うと冗談に聞こえないんだよ』

ん? 冗談?

『本当に上がると思っているねぇ』

「帰ったぞ、ミロク」

「おかえりなさい、三人とも。……これは、本当に随分と手に入れましたね。明日、換金用と自治区拡大に使える物とで仕分けしますか」

嬉しそうだが、若干引いた様子でミロク先輩はそう言った。

そりゃそうだね。だって、フェクトム総合学園の問題である自治区の狭さと資産の二つが一気に解決の目途が立ったんだもん。

嬉しいというより、恐怖だよ。

こんな都合の良い事、ある訳ねえもん。

「……んー! やっぱり駄目っすね。ミロクさん、私には無理そうっす」

ミユメちゃんは、ナナちゃんから目を離すとそう言った。

どうやら、何かをしていたらしい。

美少女にらめっこじゃなかったんだ。

「ミロク、何か頼んでいたのか?」

「はい。ナナちゃんと契約できる装置を作れないかなーって」

そう言って、ミロク先輩は笑顔でナナちゃんを見た。

この人、さらっと言ってるけど、デモンズギアと契約しようとしてる……。

「未契約のデモンズギアがいるというのは、やはり危ういと思って。いっそのことフェクトム総合学園で誰か契約出来たらな、と」

「私も面白いと思って考えたんすけど、無理っすね。アイデアが浮かんでこないっす。思いつく時はパッと思いつくんすけど、そうじゃない物はとことん駄目なんすよねー」

ミユメちゃんは、そう言って唸る。

ん? 万能知識チートじゃないのか?

「あ、それよりもAランクのダンジョンコアは手に入れたっすか?」

「ああ。一つだけだがな」

「十分っす。それじゃあ後は私に任せて欲しいっすよ!」

ミユメちゃんは、腕をぐるぐる回してやる気いっぱいのようだ。

が、しかし少し待ってもらおうか。

「その前に、夕飯にしよう」

食料ならあるぞ、わはは!

夜である。

草木と美少女の眠る時間である。

そして、ミステリアス美少女の為の時間でもある!

『スタンバってます』

今回のミステリアス美少女タイムはフェクトム総合学園内で行う!

目的はミユメちゃんについて知る事。

そして、あの『ナカヨシ! ダンジョン君』とかいうヤベー代物をそう簡単に出すなと忠告する事である!

ミユメちゃんは今、生徒会室にお泊りをしている。

どうやら夜の間にダイブギアを作ってしまおうという事らしい。

食事の後も随分と張り切っていた。

『ソルシエラとの接触で果たしてどのような反応をするのか。彼女の事を知る丁度良い機会だ』

カッコよく窓から入ろうかな。

風に揺らめくカーテンとともに現れるミステリアス美少女。

いいね!

お、窓開いてるじゃん!

不用心だが、ラッキーだねぇ。

『さて、入ろうか』

第一声はどうしようか。

やっぱり訳知り顔したいよね。

何も知らねえけどさ。

よーし、今日も星とか運命とか適当こいて遊んじゃうぞー^^

『わぁい^^……ん、いや待て!』

なんだよ、何かミステリアス美少女の演出にいい案でもあるのか?

『いや、そういう訳じゃないんだ。ミユメちゃんの傍に何かいるぞ』

ミロク先輩とかミズヒ先輩じゃないの?

『違う……。もっと歪で強大な反応だ』

……急ぐぞ星詠みの杖君!

なんか俺の知らない所で始まったかもしれない。

乗り遅れるな!

『うおおお、転移転移!』

窓から入るとか、そんなプランを全部放棄して、俺はミユメちゃんのいる生徒会室へと転移する。

そこで目にしたものは怯えるミユメちゃんと、彼女に手を伸ばす黒い外套のナニカだった。

「させない」

俺は二人の間に割り込んで、ミユメちゃんを背に庇う。

ミステリアスガード!

「えっ、またなんか増えたっすー!」

「安心なさい。少なくとも、今は貴女の敵ではないから」

そう言って、俺は鎌を外套のそれに向けた。

「この子は既に私の星に選定された。手出しは止めてもらえるかしら」

「……まったく、本当に勘が良いね」

外套についたフードをどけて、目の前の存在が姿を見せる。

所々に罅の入った白い仮面。

そして、長くて黒い髪。

「相変わらず、予想外の行動ばっかりだね――ソルシエラ」

なんだコイツ馴れ馴れしい。

あとその声はなんだ。

『いくつもの声を合わせて作られた合成音声だねぇ。あの仮面の機能だろう』

ふざけやがって。

……ん? なんか、美少女感じない?

『また始まったよ』

いや感じるって。

よくよく見れば美少女だって、この子も!

夜に潜む中二的な外套に黒い髪。

それに白い仮面まで付けて、これ絶対に美少女だよ!

「貴女、何者かしら」

「言う義理があると思う? 仮に言ったとして私の言葉をどれだけ信じる事が出来るのかな?」

「……そう、なら私と踊りましょうか」

「いいね。せっかくだから、楽しい舞踏会にしよう」

この打てば響くような返答。

それに素性を明かさないスタイル。

間違いないぞ、星詠みの杖君。

『ああ。私も理解した』

この人……本物のミステリアス美少女だ!