軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第52話 美少女と舞台

浄化ちゃん。

それはどういう訳か俺の行動に度々大きな変化をもたらす存在である。

原作キャラでも無ければ、重要な何かをかかえているという訳でもなさそうな一般生徒だ。

強いて言えば、行き過ぎた配信行動のせいで騎双学園の風紀委員会と六波羅さんに追われていることぐらいだろうか。

まあ、それぐらいなら割と何処にでもいる騎双学園の生徒だ。

「ソルシエラの名前、今は相応しくないな」

「あ、那滝ケイでしたか。いやぁ、すみません。見かけたから思わず声を掛けちゃいました」

「まったく……面倒なのに正体を知られたわ」

俺はわざとらしくため息を吐く。

「どうしてここにいるのかしら」

「この辺りで人攫いの頻度が上がっていまして。どうにか、手掛かりでも見つけられたらと。ま、証拠探しはマーちゃんズに任せて私はこうやって人混みに紛れてショッピングの最中ですけどねー」

人攫い?

ああ、原作にもそんなイベントあったね。

確か、新たに作ったデモンズギアもどきに適合する人をプロフェッサーが探してたんだっけか。

所詮はデモンズギアに似て非なる贋作だから成功はしないし、トウラク君に見つかってボコボコにされるんだけどね。

それ、もう少ししたら解決するから放っておいていいよ。

だから帰ったら?

「執行官に見つかったら大変よ? 言っておくけど、私は手を貸さないから」

「大丈夫ですよー。このビルの全フロアとビル周辺をマーちゃんズが見張ってますから。何かあれば、爆破するようになっています」

え、つまりこのビルって爆弾だらけって事?

やばくね?

……いや、ソルシエラなら大丈夫か。わはは。

「そう。ならいいのだけれど」

浄化ちゃんは一番俺のミステリアス美少女に付き合ってくれる良い知り合いだ。

原作キャラでもないし、フェクトム総合学園の生徒でもない。

何処にでもいる普通の美少女。

とっても都合の良い存在なのである。

『せっかくだから、衣装でも選んで貰ったらどうだい? ソルシエラに対する第三者の意見は参考になるだろう』

成程なぁ。

よっしゃ、一度聞いてみるか。

「ねえ、私の服を選んでくれないかしら」

「……え?」

「たまには、他の人に選んでもらった服も良いかと思って」

浄化ちゃんが驚いたような顔をする。

そうだろうそうだろう。

ミステリアス美少女が急に、少女としての一面を見せるとクるだろう。

「わ、私が?」

「そう。駄目かしら」

「いいですけど。むしろ、私なんかでいいんですか? というか……プライベート?」

浄化ちゃんは俺の言葉から、俺が単に服を買いに来ただけだと思っているようだ。

うーん。

少女らしさは必要だけど、ミステリアス美少女はただ服を買いに来ないからなぁ。

そこまで少女っぽさは出したくないなぁ。

『提案した私が言うのもなんだが、面倒くさ……。実際、ただ服を買いに来ただけだよね?』

そうだけど、服を買うにも意味を持たせたいじゃない?

『服は選んで貰いたいんだよね?』

うん。

でも服を選ぶ行為にも意味を持つようにしたい。

ただ服を買いに行く回はフェクトム総合学園の皆とやりたいから。

シーズン2の五話くらいで。

『君は自分の生きざまもコンテンツとして消化するんだねぇ。しかも、君の脳内ではシーズン2まであるんだねぇ』

感心したように星詠みの杖はそう言う。

ははは。

シーズン5まであるし、OVAもあるぞ。

じゃなくて、服を買うミステリアス美少女な口実だよ。

うーん……そうだ!

「近々、大きな舞台があるのよ。ここ、騎双学園でね」

「舞台?」

「そう。星の巡り合わせで生まれた数奇な舞台。面白そうだから私もステージに上がることにしたわ。せっかくの大きな舞台なのだから、相応しい恰好でないと」

俺は、とにかく含みを持たせて話す。

仕草や目線も意味ありげに窓の外のビルへと向けていた。

あの先端の尖ったビルって、なんで尖ってるんだろうね。そういうデザイン?

「……近々、何かが起こるんですね」

浄化ちゃんはそう言って、俺の言葉にまんまと乗ってくれた。

でも後々、嘘だとバレると気まずいねぇ。

近いうちに起こるイベントの主要原作キャラの名前でも言っておくか。

「――プロフェッサー、そう言えば貴女ならわかるかしら」

「っ!?」

あ、いけたっぽい。

一度、信じて貰えればこっちのモンよ。

後はカッコよくミステリアス美少女しましょうねー。

「……それは本当?」

「ええ」

「具体的な日付と時刻を教えて。ソルシエラの他に誰がメンバーなの? そもそもアイツをどうやって殺すつもり!?」

「え」

ヤバイヤバイ。

なんか変なスイッチ押しちゃったかも。

ここまで食いつく想定じゃないんだけど。

俺はてっきり「成程……流石ミステリアス美少女だぁ」くらいの反応かと思ったのに。

エッグい食いつき方してくるねえ。

君、もしかしてプロフェッサーと関係ある人?

「そっか……やっと殺せるんだ」

殺すとか聞こえたんだけど、殺すの?

えっ、殺す=舞台になった?

俺、殺人の為に衣装買う事になるの?

とんだイカレ美少女じゃねえか。

プロフェッサーの畜生を殺すのはやぶさかでないけどね。

でもアイツそもそも魂が特殊だから死なねえしなぁ。

『殺せるよ』

え。

『手順が少し面倒だが、私に殺せない存在などいないからねぇ』

久しぶりに君を怖いと感じたよ。

プロフェッサーとは絶対に関わらないから、その能力はしまっておこうね。

「という事は、遂に貴女の計画が始まるんだね」

「………………そうね」

言っちゃった。

まあ、近いうちにプロフェッサーはトウラク君がなんとかしてくれるでしょう。

俺は衣装を買ってさっさと帰る事にしよう。

ここにいると、余計な事まで言っちゃいそうだ。

「――私は何をすればいい」

浄化ちゃんが俺の手を掴んでそう聞いてきた。

力強っ……。

目もギンギンじゃねえか。

……あー、そう言えば前に計画の時には浄化ちゃんも呼ぶとか言ったような言ってないような。

『間違いなく言っていたねぇ』

どうしてこう、不用意な発言をするんだろうね。

おかげで未来の自分が困るってわかんないかなぁ。

「答えて。私はアイツを殺すためなら何だってする」

いつの間にか敬語も外れてるじゃん。素が出てるって。

「そう焦らないで、可愛い顔が台無しよ」

「勿体ぶらないで教えっ――」

俺は浄化ちゃんの口に指先を当てて、そっと黙らせる。

「少し落ち着きなさい」

裁判長! 俺は今、体も美少女なので無罪を主張します!

『おっけ、無罪』

っしゃオラァ!

「貴女の気持ちも理解できる。だからこそ、より貴女に相応しい舞台を用意するわ。今はまだ序章。貴女の出番ではない」

「私の為の舞台……?」

「そうよ。本当の貴女の願い。それを叶えるための、ね」

俺はそう言って、渾身の笑顔を浮かべてやる。

花の咲くような笑顔ではない。

人を惑わす星のような、妖しい笑みだ。

「信じてくれるかしら」

「……信じるしかないでしょう。ソルシエラ相手に、私が動いたところで出来る事は少ないですから。それに、騎双学園を潰してくれるんでしょう?」

「ええ」

トウラク君がな!

「なら、信じますよ」

そう言って、浄化ちゃんは笑う。目がキマッている気がするが、見なかった事にしよう。

なんとかミステリアス美少女として誤魔化せたな、ヨシ!

『そういう言動が自分を苦しめるとわからないんだねぇ』

いやいや、実際騎双学園はトウラク君に潰されるし、プロフェッサーも捕まるし、言っていることは合ってるし大丈夫大丈夫。

最悪、プロフェッサーを攫って浄化ちゃんの前に転がせばいいしね。

『美少女じゃないと君は本当に躊躇が無いねぇ』

プロフェッサーは美少女を愚弄するからな。

最悪な野郎だよ。

さて、気を取り直して浄化ちゃんに衣装を選んで貰おうねぇ。

「それじゃ、改めて――ん」

俺のダイブギアに通知が入った。

なんだよタイミングが悪いなぁ。

誰だよ、こんな時に。

……わぁ、ミズヒ先輩だぁ。

『嫌な予感しかしない』

俺は浄化ちゃんに断りを入れて、離れた場所で通話に出る。

向こうから、切羽詰まった声が聞こえてきた。

『ケイ、今どこにいる』

「……えーっと」

え、バレた?

騎双学園でお買い物してるのバレた?

それなら心象最悪になるんだけど。

自分たちから金を搾り取る巨悪の学園でお買い物とか、裏切りもいいとこだからね。

『自覚はあったんだね。言い訳はどうしようか』

ま、まさかぁ。

ミロク先輩が無事だったよ、とかそういう連絡に決まってらぁ。

『そうか。もう騎双学園にいるんだな』

「…………ハイ」

場所がばれてる……!?

はい、終わりです俺。