作品タイトル不明
⑦ 噂話
それにクリスティンの正体を暴こうと話す機会をいつも狙っていた。
追跡しながらタイミングを見計らっていたのだが、常に誰かと一緒に居るので、話しかける事が出来なかった。
それに思った以上に情報が集まらない。
(………もう限界)
いつもサンドイッチを持って張り込んでいたが、クリスティンの尾行を諦めて仲良くなった令嬢達とお昼ご飯を食べる事にした。
「オーロラ様とお昼を食べれるなんて嬉しいわ」
「そうですわね!いつもサンドイッチを持って走って行かれるから」
「わ、私も嬉しいですわ……おほほ」
丁寧なお嬢様言葉に慣れない仕草。
周囲から浮かないように話し方を合わせる。
やはり元平民という設定のせいで、貴族の知識には疎い。
「それにしても、今日も皆様素敵でしたわよね」
「本当、麗しすぎて目の保養ですわ!!」
「皆様…?」
「あの四人のことです!」
「???」
「あの四人と言えば、ジョエル様、コーリー様、エンジェル様、クリスティン様のことですよ?同じクラスになれるなんてオーロラ様は本当にラッキーですわよ!」
「なっ…なるほど、そうですわね!」
「コーリー様とエンジェル様のような関係は、いつ見ても本当に憧れますわ!わたくしも婚約者とあんな風に愛し合えたらいいのに……」
「御二方ともお似合いですもの!幸せそうで羨ましいわ」
「ローレンス様は以前の舞踏会で、ついにエンジェル様に見捨てられたんでしょう?」
「えぇ、そうよ!エンジェル様は、あんなに我儘で馬鹿なローレンス様のお相手を一人で引き受けて下さっていたのですよ?わたくしだったら、すぐに逃げ出してしまいますわ」
「そんなエンジェル様が恋されたのがコーリー様…!オクターバ商会のドレスショップにコーリー様が出られる日は、店の商品が全て売り切れになるんですって」
「………」
会話を聞きながら思っていた。
自分で調べなくとも、ゲームの知識がなくとも、情報は彼女達の口から滝のように流れて来るではないか…と。
今までの張り込みと情報収集の苦労が嘘のようだ。
オーロラは話の腰を折らないようにタイミング良く相槌を打っていた。
「それと聞きまして?コーリー様の幼馴染のアリア様のこと」
「プッ、聞きましたわ!ジョエル様に振られて、コーリー様のお兄様と婚約なさると思いきや……」
「お断りされたんですってね!ああ、可笑しい」
「意地悪ばかりしていたからバチが当たったんですわ!」
「その通りです!コーリー様にはエンジェル様がいらっしゃるし、あんな性格悪い方に婚約者が出来るのかしら」
「アハハハ……もう、言い過ぎよ!!」
「だってそう思わない?惨めで笑っちゃう」
「今では婚約者を血眼で探しているそうよ?」
「うふふ、それこそローレンス様がピッタリじゃない?」
(なんて恐ろしいの!貴族の御令嬢…!!)
オーロラはサンドイッチを握ったまま震えていた。
(何処の世界でも女って恐ろしいわ!)
「あら、イワン様はどう?横暴な者同士でお似合いじゃない?今ではすっかり大人しくなって」
「あら知らないの?クリスティン様をずっと好きだったらしいけど、以前の舞踏会でキッパリと振られたのよ?」
「その時のジョエル様……ああ、素敵だったわ」
「っ、そうなのですか!?」
「オーロラ様は舞踏会には出席されたことはありませんものね」
イワンが恋していた令嬢なんてゲームに居ただろうか。
そして今こそ"クリスティン"の事を聞き出すチャンスである。
「そ、そうなのです…!それよりも是非とも私にクリスティン様のことを詳しく教えてくださいませッ!!」
「えぇ……それは構いませんが」
(これで"クリスティン"の正体が分かるわ!)