作品タイトル不明
②⑨ ご主人様
(はぁ……やっぱり可愛い子たちは目の保養だわ)
二人は奴隷船から逃げ出して、アインホルン家の食糧船に紛れ込んでいたのを偶々見つけて保護したのだった。
当たり前の話だが二人は、此方を警戒して全く近付こうとはしなかった。
侍女達を引っ掻くアイラと侍従を蹴り飛ばしてバタバタと暴れ回るシェイラ。
物理的に強すぎるアイラとシェイラを見て、仕方なくクリスティンが出動して二人を静かに黙らせたのだった。
震えながら大人しくなった二人をお風呂に入れて真っ黒な汚れを落としたら、とてつもない美少女であった。
護衛として雇うのもいいが、一番手強いであろうオスカーのダイエットを手伝ってもらうことを思いついたのだ。
二人の心を開く為に美味しいご飯を毎日食べさせて共に過ごしていると徐々に心を開き、懐いてくれたのだった。
美味しいご飯と温かい寝床、生活を保証する代わりに、アインホルン家でオスカー付きの侍女として働かないかと提案したのだ。
勿論、無理に此処に引き止める事はしないと伝え、二人の自由と意志を尊重した上での問いであった。
そして二人は側に居ることを選んでくれた。
アイラとシェイラにキャラ設定の説明をして、練習、訓練、実践を繰り返してきた。
二人も楽しみながら演じてくれるようになり、結果的には最高の仕上がりとなった。
「えっと、ご主人様…アイラです」
「ご主人様、シェイラです」
「「一緒にがんばりましょうね」」
「……」
人選は間違ってないはず……と思いたいのだがオスカーはアイラとシェイラを見つめたまま動かない。
頭の中が複雑で少々捻くれているオスカーには、純朴で真っ直ぐなアイラとシェイラがピッタリ嵌ると思ったが、いまいち反応が薄い。
「オスカー?」
「……」
「おーい?オスカーったら大丈夫?」
「………姉上、この人達は」
「だから、アイラとシェイラよ。わたくしが育てた超自慢の子達よ!めちゃくちゃ可愛いでしょう?」
「それは先程も聞きましたッ!そうじゃなくて…!」
「あ、そうそう!アイラとシェイラは超可愛いけれど、超強いから手は出さない方がいいわよ?」
「なっ…!?俺は別に、そんなつもりは……!」
「ふふっ!猫耳美少女達の前で、今のままの態度がいつまで続くかしら?」
「ーーックソ!もう意味が分からねぇ!俺もう休むからッ!!」
試すように言うとオスカーはやっと良い反応を見せた。
「あっ!待ってください~ご主人様」
「ああ~ん、待ってよ!アイラ、ご主人様ぁ」
「っ、俺はご主人様じゃない!!」
クリスティンの目に狂いなし。
どうやらオスカーは照れているだけだったようだ。
上手くいけばアイラとシェイラと関わる事で、オスカーの人生観は確実に変わっていくことだろう。
それは毎日二人に接していれば自然と理解する事が出来る筈だ。
凝り固まった体を伸ばすように腕を上にあげた。
オスカーがアイラとシェイラに挟まれながら部屋に戻るのを見送った後に再び机に向かった。
(フフッ、最高の結果を期待しているわ!)
また目標まで一歩前進したようだ。
「オーッホッホッホー……ゴホッ!!」
お嬢様らしい笑い方も大分板についてきた。
最終的な目的は、今までアインホルン家を馬鹿にしていた奴等を纏めてひっくり返す事だ。
(首を洗って待ってなさい…!)
鼻歌を歌いながら手を動かし続けた。