軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

②② 筋肉事情

そして人目に触れ続ける事は精神的にも辛いが、立ちっぱなしであるこの状況は、体が重たいアインホルン家にとって拷問のような時間なのである。

「お母様……わたくしも今、死ぬほど頑張っています!」

「え…!?」

困惑するエラに向かって、チラリとドレスを持ち上げる。

「見てください…!わたくしの足をッ」

足は今……浮腫と痛みでパンパンである。

慣れないヒールを履いているせいか生まれたての小鹿のように小刻みに震えている。

(足が痛い…!全身の筋肉が悲鳴を上げているわ!気を抜いたら膝がカクンと折れてしまいそう)

エラに向かって今にも倒れそうな足を見せれば、エラは涙を滲ませながら口元を押さえた。

「なんてすごいの…!いつもなら真っ先に帰ろうと言うクリスティンが……クリスティンがこんなに頑張っているなんて!!」

「お母様も、わたくしと一緒に頑張りましょう!」

アインホルン家では心も体も伸び伸びと育ってきた為に耐久性は限りなく弱い。

足は生まれてからずっと甘やかされていた為に、筋肉は生きるのに必要なだけしか付いていなかった。

これは大変だと、クリスティンになる前の要領で筋トレをしようとしたのだが大きな問題が起きた。

階段を登ろうとするだけで、フルマラソンをした並に息が上がる。

スクワットは重さに耐え切れずに一度も出来ない。

腹筋のトレーニングですら一回持ち上げただけで筋肉が崩壊してしまうのではないかと思うくらいに痛む。

このままでは体を引き締めるどころか、本格的な筋肉トレーニングまで進めない。

焦る気持ちを押さえて、まずはウォーキングで脂肪燃焼を促す事にしたのだが、ウォーキングですら辛い。

そんな頑張ってる姿を見せて、エラの気持ちを引き上げようと必死に訴える。

「オスカーもお父様も、きっと同じ気持ちですわ!!」

「そ…そうね!貴女がそんなに頑張っているのなら、私も頑張るわ!」

エラは固く握手をしてから頷いた。

もっともっと色んな人と話して、気持ちを溜め込んで貰わねば困るのだ。

「……任せて、クリスティンッ!私、頑張るから!!」

エラは何とか踏みとどまってくれたようだ。

ドスドスと歩いていくエラを笑顔で見送った。

クリスティンは大きな任務を終えてホッと息を吐き出した。

いつもならば色んな令息に目移りして、熱い視線を送りながら妄想を膨らませていたクリスティン。

自分だけを見てくれる素敵な王子様を探していたが、今のクリスティンに王子様は必要ない。

なるべく自分の存在を薄くしながら壁の花になり、周囲に耳を傾けていた‥‥のだが、やはり影を薄く保つには物理的に無理なので目立ってしまうようだ。

「見ろよ、料理を食べるのを一生懸命我慢してるぞ?」

「あんなに震えて可哀想に‥」

「‥‥健気だわ」

クリスティンが足の痛みに耐えながら震えているのを見て、優しい令息や令嬢から飲み物や食べ物を勧められる。

どうやら料理を食べるのを我慢していると思われたらしい。

それをチャンスと取り、クリスティンは笑顔で受け取った。

無垢な笑顔はクリスティンの唯一の武器である。

恋愛的な意味の好きではないが、人間的には好意は持たれやすい。

何人かの心優しき令嬢と令息と知り合いになったクリスティンは自尊心を刺激しながら、上手く情報を引き出していく。

けれど目的の人物はいくら経っても現れない。

(‥‥まだ来ないの?やっぱり1人になった方が声をかけやすいわよね)

それにクリスティンには、もう1つ大きな仕事が残っていた。

(記憶によれば、もうそろそろ出会える筈なのに‥)