軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

①⑥ チャンスを掴め

「ーーなっ!!?」

まるで予言者のような言葉に、エンジェルは喉を引き攣らせた。

ほぼ初対面であるからこそ、エンジェルの中にこの言葉は強烈に刻み込まれる事だろう。

婚約破棄されるもの同士という気持ちもあるが、あとはエンジェルを仲間に引き込みたいという打算的な企みも含まれている。

エンジェルは顔が広く、仲良くしておいて損はない。

後ろに連なっている御令嬢達が良い例だろう。

一緒にいる事で得る利益が大きいのだ。

公爵令嬢であるエンジェルは、いざとなった時には盾にでも剣にでもなる。

だが、今のところエンジェルとクリスティンには何の繋がりもない。

しかしそこで諦めるクリスティンではない。

繋がりがなければ無理矢理作ってしまえばいいのだ。

「なっ、何で、貴女にそんなことを…ッ!!」

慌てるエンジェルの姿にギラリと目が光る。

今の言葉に何か引っ掛かるものを感じたのだろう。

でなければこの言葉を無視するか、意味がわからないという反応を返すはず。

(これはチャンスね…!)

恐らくエンジェルは頭の回転が早く、何となく自分の状況に危機感を感じている。

けれど抜け出す方法も分からない。

しかし後ろの悪意たっぷりの令嬢達と一緒に過ごすうちに、その考えも飲み込まれて腐敗していくことだろう。

それにエンジェルは、クリスティンとジョエルの関係を妬む令嬢達の後押しを受けて動いていた。

自分の立場を示すためでもあるだろうが、言動を注意したところを見る限り、まだ手遅れではない。

それにエンジェルがジョエルに好意を持っていない事は確かである。

以前のクリスティンは鈍かった為、全く気付いていなかったが、友達が居なかったのはジョエルとの仲を嫉妬した令嬢達による根回しや圧があった可能性が高い。

やはり貴族の令嬢達にとって結婚こそ全てなのだ。

だから少しでもお洒落をして令息の目を惹く事で、より良い家に嫁ぐ為に日々頑張って努力をしているのだろう。

そうなってくると、ボケっとしていて明らかに何も努力していないクリスティンが優良物件であるジョエルと居るのは単純に面白くないのだろう。

ジョエルが定期的にアインホルン家に通っているのは、常に情報を掻き集めている令嬢達に簡単にバレてしまう。

(暫く離れておいて正解だったわ)

やはりジョエルは、今のクリスティンにとっては危険物である。

体型が仕上がるまでは遠ざけておくのが無難だろう。

「貴女も何かを変えなければならないと、そう感じているのでしょう?」

「…っ」

「わたくしには分かるのよ……貴女の未来が」

「……!!」

「このままだと……フフッ」

「ッ!!」

「もし若くして死にたくなければ、わたくしの屋敷に来てくださいな」

「……死、ですって?」

以前のエンジェルが服毒して、どうなったのかは分からない。

時には誇張して伝えるのも相手の気を引くテクニックである。

エンジェルの記憶に残る為には、より強い言葉の方がいいと判断したのだ。

余裕たっぷりに微笑んでから、エンジェルの元を立ち去った。

もしエンジェルがクリスティンの手を取った場合、最高のプレゼントを運んできてくれる。

呆然としているエンジェルに、複数人の令嬢達が心配そうに声を掛けている。

エンジェルの未来を変える為の種は蒔いた。

そこに水をあげて花を咲かせるかどうか……選ぶのはエンジェル次第といったところだ。

クリスティンを信じるもよし、信じずに王太子と再び婚約するもよし。

どちらに転んでも損はないのだから。