軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

001_召喚されたのに転生してしまった

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001_召喚されたのに転生してしまった

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それは夢のようだった。

白い空間で作りもののような美女と遭遇した俺は、彼女の提案を拒否した。

「あいつらと一緒なら行かない」

はっきりとした拒絶に、無表情だった彼女は顔を引きつらせた。

「貴方だけ別の場所にするわ。それで我慢して」

「……分かった」

どうせ拒否しても彼女の意志には逆らえないと思っていたが、言ってみるものだな。

すぐに俺の意識は途切れた。

あれが夢なのか、それとも現実なのか。

今の俺の置かれた状況を見れば、なんとなく判断できるだろう。

周囲は木々が生い茂り、誰も居ない。

「森……だな」

まさに 繁茂(はんも) だ。

あの神―――多分神は、約束を守った。

だけど、森の中はないだろ。

足元にリュック―――背嚢があった。

中には硬いパン、葉に包まれた干し肉、水筒、短剣、毛布、木のコップ、木の皿、小さいタオル、他にも数点が入っていた。

茶色い革袋の中にはこの世界の通貨と思われる金貨のようなものが入っていたが、これがどれだけの価値があるのかさっぱり分からない。

「こんなことなら、もう少しこの世界のことを聞いておくんだった」

後の祭りというやつだな。

とりあえずお金と思われるものはあるから、これでしばらく凌げということだろうか。

まずは人里を探さないといけないだろう。

文明の「ぶ」の字も感じられない森の中で生きていけるほど俺はサバイバーではない。

「ここはどこで、どっちへ行けばいいんだ?」

さっぱり分からない。しょうがないから、南へ行こうと思う。

「と言っても、南はどっちだ?」

わずかに木漏れ日が差し込んでいるから、太陽と同じ恒星はあると思う。

だけど地球と同じように太陽が東から昇り、西へ沈むのだろうか?

「さっぱり分からない」

方角のことを考えるのは止めて、近くに落ちていた枝で進む方向を決める。

草の上に静かに倒れた枝が示す方向へ俺は歩いた。

「おおおっ」

幸いなことにすぐに森から抜けることができた。

森の前には街道があり、草が少なく轍が残っていることからこの道を誰かが使っていることを示している。

「問題は右へ行くべきか、それとも左か」

人生の分かれ道だ。気合を入れて考えたが結論は出ない。

「枝君に聞いてみるか」

杖代わりに持ってきた枝に、再び運を任せて……。

「よし、右に進もう」

右に進むと喉が渇いているのを感じた。背嚢から水筒を出して飲もうと思ったが、水は入ってなかった。

「おいおい、意味ないだろ……」

やけに軽いと思っていたら、中身が入ってないとか神は不親切だな。

しょうがないから先に進んでいると、小さな橋があった。木造のかなり簡素で手すりも柵もない軟そうな見た目の橋だ。

幅3メートルほどの小川にかかった橋に足を踏み入れ、真ん中で止まって小川を見下ろす。透明度の高そうな水の中に、小魚が見えた。

小魚が居るということは飲めそうだ。橋を渡ってちょっとした段差を下りて、手を水の中に入れた。冷たい。

軽く手をゆすいで、手をお椀のようにして水を掬って飲んだ。なかなか美味い水だ。これで腹を壊さなければ万々歳。水筒に水を入れて、立ち上がった時にふと見えた水面に映る自分の姿に違和感を覚えた。

「はい?」

そこに映るのは俺? 慌ててしゃがみこみ、水面に自分の顔を映す。

西洋人ぽく以前の面影はまったく見られない。セミロングの髪の色は白髪……ではなく銀髪。目の色も金色になっている。

「そう言えば、服だって制服じゃなかったっけ……」

今さらながら、自分の容姿がまったく別人のものになっていることに気づいた。

あの神は勇者召喚の儀式が行われたから、俺のクラス全員が召喚されたと言っていた。

召喚だから転移だと思っていたが、どうやら俺は別の体に憑依または転生してしまったようだ。

「えらく可愛くしてくれたんだな……」

以前はそこまで目立つ容姿ではなかったが、今の顔はかなり可愛い。まるで女の子だ。

「ちょっと待て!」

俺は股間にあるものを確認した。

「あった~」

まさか女の子になってしまったのかと思ったが、ちゃんとあった。

ただし、175センチあった俺の背丈は、160センチもないだろう。元々華奢な体つきだったが、華奢さはさらに増した感じだ。容姿だけなら胸のない女の子である。

「容姿まで変わるとはな……しかもここまで」

これはこの世界でやり直せという天啓か。

元の世界では失敗して、悲惨な高校生活を送っていた。これからは心機一転、楽しい人生を送れということだと受け取ろう。

「どうせ元の世界に帰ることができない。この世界でやり直すしかないんだ」

そうと決まれば、名前を考えよう。

前の名前は嫌いではなかったけど、この容姿に合わない。

「考えるまでもないか。俺の名前はトーイ。トーイだ」

好きなMMORPGで俺が作ったキャラの名前がトーイだった。

もうあのゲームをプレイできないのは残念だが、人生をやり直す代償と考えれば諦めもつく。

「よし、行くか」

再び街道を進むと、後ろから馬車がやって来た。5台が一団になったものだ。

「あぁ……そんなことが……」

俺は今、猛烈に感動している!

その馬車と馬に乗った人の一団の中に、ケモ耳少女が居るのである!

街道の端に寄って、そのケモ耳少女を食い入るように見た。ネコの獣人だと思うが、柔らかそうな三角の耳が俺を誘っている。

思わず手がわきわきしていた。

「なっ!? ……え、エルフだと」

耳が長く尖っている女性は、まるで芸術のような美しさだ。

ガン見していたら、睨まれてしまった。

俺はこの世界が気に入った。

ケモ耳にエルフ、もしかしたらもっと違う種族も居るかもしれない。こんな夢のある世界があったのか。あの神様も先に教えておいてくれてもいいだろうに!

感動の余韻が消えることはないが、感傷に浸っていたら馬車の一団はかなり遠くへ行ってしまっていた。

街道を進もうとしたところで喧騒が聞こえてきた。

なんと先ほどの一団が、誰かに襲われているじゃないか。

「えぇ……俺、戦えないよ?」

だからと言って、放置すればケモ耳少女やエルフ美人さんが殺されてしまうかもしれない。

「どうしたらいい? どうしたらケモ耳少女とエルフ美人さんを助けられるんだ!?」

―――ピコンッ。

「うおっ!? ……おう?」

目の前にまるでゲームのような画面が現れた。

その裏側を見ようとしたが、画面も動いた。

「ふんっ!」

高速で移動したが、画面もついてきた。どうやら常に俺から一定の場所にあるようだ。

【ジョブ】旅人Lv1

【スキル】健脚(微)

【ユニークスキル】詳細鑑定(微) アイテムボックス(微)

思うに、この画面はゲームでいうところの、ステータス画面なんだろう。

ゲーム脳を舐めてもらってはいけないよ。こういったものを使いこなすのが、ゲーマーというものなんだからね。

「詳細鑑定!」

俺は【ジョブ】を鑑定した。

▼詳細鑑定結果▼

ジョブ : ジョブは一定の条件を満たすと、新しいジョブに転職可能。転職はステータス画面を開いて念じるだけで行える。現在の転職可能ジョブは、村人、料理人、商人、運搬人、復讐者、転生勇者。

やっぱり詳細鑑定は色々教えてくれるスキルだった。

一部、不穏なジョブが含まれているが、それは俺が背負った業なのかもしれない。

それは置いておき、次はアイテムボックスを使いたいと念じると、画面が切り替わった。

ルービックキューブの面のように小さな四角が集まった画面が現れた。

小さな四角にアイテムを収納できるらしい。4段×5行だから、20個のアイテムが収納できるようだ。

上の2段10枠が埋まっている。そこにアイテムが入っているということだろう。

アイテムを1つ1つ詳細鑑定してみたが、見ていくにつれ頬が緩んでいく。

「えーっと、これらのアイテムを装備するには……」

アイテムボックス画面の上に、クイック装備欄が8枠出てきた。

頭、両耳、首、胴、両腕、両足、右手、左手の8カ所分がセットできる。

ここにアイテムをセットしておけば、念じるだけでそのアイテムが装備できる。

アイテムは剣が3種類、盾が2種類、胸当が2種類、ポーションが3種類あった。

3種類の剣は簡単に言うと、とても強い剣、強い剣、普通の剣だ。俺は迷わずとても強い剣をクイック装備欄にセットしたいと念じた。

アイテムボックスの1枠が空になり、クイック装備欄にその剣が表示された。

同じように胸当と盾もクイック装備欄にセットしようとしたが、胸当はすんなりセットできたが、盾はセットできなかった。

「どういうことだ?」

不思議に思った俺は、詳細鑑定でその原因を探った。

「なるほど……装備した剣が両手剣だから、盾は持てないわけか」

考えてみれば当然の理由だが、最初だからこういうこともある。

「おっと、いけない。俺は助けに行くところだったんだ」

目的を忘れてついステータス画面の使い方を検証してしまった。

俺は反省しつつ、喧騒へ向かって走り出す。