作品タイトル不明
ディートは見た
少し遅くなったが食堂に来た。課題が多すぎる……今までは仲間達とわいわいと仕上げていたのだが、今はそう言う気分になれない為一人で仕上げていた(強がりではない)
席を探していると、珍しくルビナが友人達と食堂で過ごしていた。
あのルビナが? 引っ込み思案で意見も言えないようなあのルビナが? 楽しそうにしていた。
たまたまルビナ達の会話が聞こえる位置に座った。ルビナは全くこちらに気がついていない。
『ルビナさんはハドソン卿と舞台にいかれたのですよね?』
はぁ? ハドソンと言えば侯爵家? ……ルビナが男と舞台を見に行った? あのルビナが? 嘘だろ。
『……はい。そうです』
『もしかして……』
『『お付き合いを?』』
『してませんっ!』
『なぁーんだ残念』
何顔を赤く染めているんだ! 侯爵家の子息となんて付き合えるわけないだろうが! この身の程知らずが!
ムカムカするな……ルビナと婚約がなくなり暴言男と噂される事になった。
そしてその原因をつくったパトリシアは学園を去った。くそっ。
今後の事と慰謝料の話をする為、父がローゼン子爵家に行ったようだが支払いを拒否されたようだ。
なんでもお互いの為とか? その代わり今後共同の工事をする際にはうちが多く支払うということになったらしい。
『原因はそちらにあるけれど、ルビナが解消してほしいと願ったのだから慰謝料は要らない』と言ったそうだ。
大きな共同工事……となると次は数年後。ルビナの兄ルークが当主になっているかもしれない。その時は私が当主になっているかもしれない。父は若くして当主になり僕がルビナと結婚したら早く継いでほしいと言っていたな。
……やり辛い。非常にやり辛い。まだあるか、ないかも分からないのに考えるだけで、ため息が出てくる。父にそれまでに金を用意しておけ。と言われた。
半分出していた工事費だが7:3もしかしたら8:2になるかもしれない……はぁっ。
ルビナが我儘を言ったせいで僕の評判は大きく下がった。ルビナが少しでも心の広さを見せればこんな些細なことで騒ぎにならなかった。
パトリシアとは単なるクラスメイトで今に至ってはクラスメイトでもなんでもない。パトリシアは良いよな。女は結婚すりゃ学園をやめても問題ないんだから。
僕からは友人も離れて行った。あんなに楽しく学園生活を過ごしていたのに。パトリシアは疫病神だ。何がマドンナ的存在だ……!
僕がこんな状況なのに、ルビナは男と舞台を見に行ったとかほざいているのか? 侯爵家の人間がルビナなんて本気で相手にするわけないだろうが!
身の程を弁えろと言ってやりたい。
イライラしているとランチを終えたクラスメイトに声をかけられた。久しぶりだ……
「ディート珍しいなどうした?」
「会話が聞こえた……ルビナが舞台に行ったそうだ」
「もしかしてハドソン卿か? 先日パーティーでダンスをしていたところを見たよ」
パーティーでダンス? あのルビナが?! 男と? 信じられない……
「ルビナが……」
あのルビナだぞ?
「最近人気だよね。ハドソン卿の店。ディート行ったことがある?」
「いや。ないと思う」
人気店として名前が挙がるがどんな店だろうか。それにしてもハドソン卿とはどんな顔をしているんだろうか。どうせルビナを遊び相手くらいにしか思ってないんだろう。相手は侯爵家で歳上だ。子爵家の娘なんて軽く見られているに違いない。
「プレゼントでハドソン卿の店のネクタイを貰ったんだけど、柄も素材も気に入ってるんだ。輸入品の一点物らしいんだ」
「へぇ」
「ルビナ嬢はどこで知り合ったんだろうね。ダンスをしたり舞台を見に行くような親しい感じなんだ。ディート知っていたのか?」
「……いや。知らない」
私とは違いルビナの元には釣書が送られて来ていると聞いた。父の知り合いの伯爵家の息子は断られた。と言って落胆していたと聞いた。伯爵家の申し出を断るなんて何様だ! と言いたいがきっと私のことが忘れられないのだろう。そうに違いない。
「付き合っちゃえば良いのに。今度会う約束とかないの?」
……ん? まだ続いていたのか。
「お誘いいただいてはいますけど、お父様に相談してからじゃないとお返事は出来ないです」
……ローゼン子爵か。厳しい方だからそうなるだろう。出かける時に許可とかいるような面倒な家だ。
「うまく行けば良いですね! 応援してますよ」
「お、応援? そ、そんな関係ではありませんよ!」
「「「へーー」」」
ニヤニヤする令嬢達……
今更だけどこの三人がルビナが仲良くなったという令嬢達か。下世話な感じだな。
「……おい、ディート、食事が冷めるぞ。食べないのか?」
「……あぁ」
ルビナ達は今度はお茶会の話をし始めたようだ。持ち寄りのスイーツがなんとか……女ってのは本当にくだらないものが好きだ……
それにしてもルビナはこんなに楽しそうに話をするタイプだったか? 知らなかった。
窓際から日差しが入ってきてルビナのシルバーの髪がキラキラと光っていた。白い肌にピンク色に染めた頬、細い指、楽しそうに笑う顔。そんな顔も出来るんだな……
そこには僕の知らないルビナがいた。
******
「デボラさん、デボラさん」
こそっとソフィアがデボラに声を掛けそっとメモを渡す。
「 暴言男(ディート) が近くにいますよ」
「いやらしく聞き耳を立てていますね」
「ルビナさんに気づかれないようにしましょう。食事を終えたら席を空けなくてはいけないルールですもの」
食事組とお茶組を分けるために暗黙のルールがある。
「今更ルビナさんになんの用事でしょうね」
「惜しくなったのよ。バカね」
机の下で走り書きのメモで会話するソフィアとデボラだった。