作品タイトル不明
129.
「ティル」
部屋の中に、ついにミシェルが入ってきた。
その目は養豚場の豚を見る目だった。
(てぃるが出荷されてしまうぅう~!)
そのとき、ティルの脳裏にある可能性をというより危険性を閃いた。
(ま、まさか……カイウス様に近寄る虫、てぃるを排除するために、ティルを妖精郷へ派遣することにしたとかぁ!?)
表情の変化を感じ取ったのか、ミシェルは深々とため息をついた。
「私がそんな馬鹿な理由で貴方を派兵するわけないでしょうが」
「あ、え!? ど、読心術……?」
「あなたは顔に出すぎです」
ミシェルはカイウスに近づいて、滅多に人には向けない柔らかい笑みを、可愛いその子だけに向ける。
「カイウス。さぁ、おいで」
「やぁ。ちるがいい~……」
(いやぁあ! 拒まないでぇ! てぃるの寿命が縮むぅ~……)
ティルはミシェルに対して完全に縮こまっていた。
一方で、ミシェルは怒りを内に抑えながら、静かにティルへと告げる。
「妖精郷への派遣は、貴方なら大丈夫という信頼があってこそですよ」
「信頼……てぃるに信頼してるのですぅ?」
「当然でしょう。貴方は大事な家臣ですから」
(てぃ、てぃるは知ってるですぅ。これは飴と鞭作戦ですぅ。よくこの人らが使う手ですぅ~。騙されないんだから~♡)
とかなんとか言いながらも、ティルは嬉しそうに耳をぱたつかせる。
カイウスは、そんなティルとミシェルが仲良くしてる姿に、笑みを浮かべるのだった。