軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十九話 遭遇戦

ここで捕まっては全てが台無しになる。

かといって、王家の騎士と刃を交えるのは論外だ。魔玉云々の話を超えてただの反乱にしかならない。リオの後ろ盾であるロシズ子爵家の立場まで悪くなる。

穏便に逃げ出すしかない。しかし、シラハの邪剣ナイトストーカーは日が没してからでなければ発動できない。

リオはちらりとカリルを見る。

カリルがラスモアから貸し出された神剣ヌラならば雑踏を再現して隙を作ることもできる。ただし、特徴的な効果だけあってリオ達とロシズ子爵家の繋がりは明らかとなる。

リィニン・ディアとオルス伯爵の繋がりを示す証拠品を持って先行したラーカンル達が無事にロシズ子爵家へと到着していれば、オルス伯爵の手から逃げるための緊急避難と言い訳もできる。

到着していなければ、ロシズ子爵家に疑惑の目が向く。

賭けるべきとも思うが、平民でしかない自分たちが貴族の家名に傷をつけかねないリスクは流石に負えない。

坂を駆け下りてくる騎士たちの先頭から、トリグが声を張り上げる。

「そこの全員、止まれ!」

任務上、この場で見逃すわけにもいかないらしい。オルス伯爵の騎士団と行動を共にしているのだから当然だ。

リオは思考を巡らせ、状況を打開する一手を思いつく。

「カリル、神剣ヌラで証拠の資料を再現して誤解を解――」

トリグに見せて、とリオが言い切る前にトリグの驚いた声が聞こえてくる。

「おい、待て! まだ投降を呼びかけてるとこだろうが!」

声に引かれてトリグの方を見れば、オルス伯爵の騎士たちが身体強化しながら全力で走ってきていた。

「小娘以外は生死問わず」

騎士たちの指揮官らしき髭の大男が出した指示にトリグが顔色を変える。

「いくら何でも勝手し過ぎだろうが!」

「領内のこと、我らに任せてもらおう」

騎士たちは聞く耳を持つ気もない。当然だ。リオたちがトリグに余計なことを話す前に口封じをしたいのだから。

だが、殺す気で来てくれるのなら抵抗するのも不自然ではない。

遠慮なく武器を抜いたフーラウ達だったが、リオとカリルは騎士たちの構えを見て状況が悪化の一途を辿っていることを悟った。

「エンロー流だ! まともに当たるな!」

カリルが注意を飛ばし、フーラウ達が即座に後方に飛び退いた。ソレインが詠唱を開始し、カリルが邪剣無銘を抜き放つ。

リオはシラハを背中に庇いつつ後方に下がり、神剣オボフスを鞘ごと構える。こんな時ばかりは戦闘の意思をぼかせる神剣オボフスの発動条件がありがたい。

「シラハ、時間を稼ぐから援護を頼む」

正規騎士複数を相手に勝てるとはリオも思っていない。だが、時間さえ稼げれば逃げる算段はある。

「分かった」

シラハが剣の柄に魔力を流し込み、騎士たちの足先の地面を陥没させる。

騎士たちは一切速度を落とさず、陥没した地面を身体強化任せに跳び越え、八相に構えた長剣をリオに振り下ろす。

リオに防御されても筋力差で確実に押し切れる。逃げ道は後続が潰してくれる。そんな必殺の振り下ろしに対し、リオは怯まず一歩前に出た。

頭上に掲げた神剣オボフスの透過能力で騎士の剣を透過し、身を捻るようにして肩を騎士の鳩尾にねじ込み、オボフスの柄で騎士の喉を狙う。

小柄なリオの予想外に素早い身のこなしに騎士は舌打ちし、顎を引いてオボフスの柄を防いだ。

身体強化の効率差が如実に表れ、オボフスの柄が弾かれる。

「――鳴窟」

シラハの声が聞こえた直後、リオと騎士が三人、土のドームに閉じ込められた。

構わずにリオを仕留めようと剣をかざす騎士たちを無視して、リオは最速で後退し、土のドームに神剣オボフスの鞘を押し当てて外に抜け出す。

「付き合ってらんないよ」

捨て台詞だけを置いて土のドームを抜け出したリオは横を吹き飛ばされていく人影を横目に捉えて驚く。

「フーラウさん!?」

緩い斜面を転がっていくフーラウの先にパナルが倒れている。

二人とも冒険者の中ではそれなりの実力者のはずだ。リオが土のドームから抜け出す短い間に一蹴される腕ではない。

誰がやったのかとフーラウが飛んできた方向を見ると、カリルが邪剣無銘でトリグの剣を捌いていた。

「片腕でよく凌ぐなぁ。我流かね、それ? おじさん嫉妬しちゃう」

「――くそっ」

トリグは明らかに手を抜いている。怪我をさせないようにカリルの剣に合わせつつ、弾き飛ばす隙を伺っているようだ。

トリグの後方から王家の騎士たちが走ってくる。カリルはトリグに任せ、捕縛対象のリオとシラハを直接狙うつもりらしい。

トリグが顔をしかめた。

「怪我はさせないようにねー」

「自信ないです」

トリグに王家の騎士たちが答える。オルス伯爵家の騎士をあっさり閉じ込める手際から、リオとシラハの実力を上方修正したらしい。

リオの隣にシラハが立つ。迫ってくる王家の騎士は四人。リオ一人でさばける戦力差ではない。

「足元」

「判断は任せた」

シラハが口にした単語から何をするのか正確に読み取って、リオは任せる。

シラハと視線を交わして頷きあい、鏡のように腰だめにそれぞれの剣を構えた。