軽量なろうリーダー

略奪女の方、略奪女の方はいらっしゃいませんかー? 強く美しい騎士の婚約者はいかがでしょうかー! 今なら最悪な性格もお付けしまーす!

作者: 赤林檎

本文

「ベニート様、今日も素敵でしたわ!」

「上級生を相手に圧勝でしたわね!」

「すごいですわ!」

わたくしの婚約者である伯爵家五男のベニート様が、女生徒たちに囲まれていた。

誰もが見惚れるような、強くて美しい騎士様よ。

輝くゴールデンブロンドに、サファイアブルーの瞳は、貴族らしい色合い。

背も高いし、しっかり筋肉はあるけれど細身な英雄体形。

なにより、とにかく、顔が良い。

「疲れて戻ってきたのに、水も出してくれないのかい?」

ああ、ベニート様が口を開いてしまったわ!

「はーい、お水ですぅー!」

わたくしは水筒を掲げて、ベニート様に駆け寄った。

今はまだ、ベニート様の性格の悪さを知られるわけにはいかないの!

「ロザリアか。君は他の令嬢と違って、少しは気が利くな」

ベニート様はわたくしに笑いかけてから、他の女生徒たちを見まわした。

「ああ、勘違いしないでくれよ。君たちに対して、なにか悪い意味で言っているわけではないからね」

眉をハの字にして、苦笑いしている。

女生徒たちが、わたくしに憎らしそうな視線を向けてきた。

カモーン! もっと見て! あなたのライバル、ロザリアよ!

茶色の髪と瞳をした没落寸前の伯爵家の跡取り娘!

強く美しい騎士ベニート様は、わたくしと婚約しているの!

わたくしからベニート様を奪いたくなってきたでしょう!?

どうかしら!? ねえ、どう!? どうなの!?

ちょっとくらいは、奪いたいなぁ、と思ってくれている!?

「ベニート様は、婚約者である、このわたくしを! 愛してくれているからっ!」

わたくしはベニート様の発言のフォローを試みた。

もう必死よ。

ベニート様は素で『悪い意味で言っているわけではない』とか言ってしまうようなお方なのですもの。そのうち、他にどんな意味があるのかと問われながら、ボコボコにされそうで楽しみ――、いいえ、心配で仕方ないわ!

「ロザリア、本当にただの水なのかい?」

うわぁ、ベニート様がなにか言い出した……!

わたくしは必死で知恵を絞り、腕に下げてきたバスケットからレモンの輪切りのハチミツ漬けを出した。

ベニート様が無言で水筒を出してきた。

わたくしは輪切りのレモンを一枚、水筒に放り込んでやった。

「上出来だよ」

「わーい、うれしいですぅー!」

わたくしはベニート様の上からなお言葉に被せて叫んだ。

ベニート様はわたくしの持っている瓶から、自分でレモンを摘まんで口に入れる。

その調子ですわぁ、ベニート様ー! お口は食べるためにお使いくださいませぇー!

我が国の王立学園の騎士科は、在籍しているだけで騎士認定してもらえるの。

騎士科の黒い制服が騎士服にそっくりで、かつて多くの人々が生徒を騎士だと誤解した。そのために、何代か前の国王陛下が、生徒たちを騎士だと認めることにしたの。

制服を変更したら良いだけの話なのにね。

きっと当時は、なにか特別な事情があったのでしょうね。

王家が王立学園の騎士科の生徒を騎士だと認めたい、特別な事情が……。

戦争に負けそうで、王立学園の騎士科の生徒まで動員するためだったとか、決してそんなことはないのよ。

我が国の名誉にかけて、『戦争に負けそう』なんてことはなかったことになっているのですもの。

――そんな訳で、わたくしの婚約者であるベニート様も、騎士様として認められている。

今もベニート様は、職員室前の廊下で女生徒たちに囲まれているわ。

「まあ、ベニート様!」

「第一希望はやはり近衛騎士ですの?」

どうやら進路希望の書類を出しに来たところらしいわね。

ああ、ここにあんなにも強く美しい騎士の生徒がいるというのに……。

真面目で地味な女教師は、なにをしているのかしら……?

職員室から飛び出してきて、禁断の恋に落ちるなら今よ……!

「ベニート様ぁ! 第二希望はぁ、王宮警備騎士ですかぁー!」

わたくしは『ベニート様ぬいぐるみ』を掲げて、女生徒たちの後ろから問いかけた。

青い瞳のぬいぐるみの熊に、ゴールデンブロンドのカツラを被せて、黒い制服を模した衣装を着せているのよ。

わたくしがベニート様に夢中だとアピールするために用意したの。

我が家はたしかに没落寸前だけれど、わたくしは性格の最悪な夫なんて欲しくないの……。

絶対どこかに、人の男を奪うことが好きな女性がいてくれるはずよ。わたくしは今も、そんな女性との運命の出会いを引き寄せようとしているの。

さあ、見てちょうだい! 婚約者が『ベニート様ぬいぐるみ』を頭上に掲げて、大いにアピールしているわよ!

――現実逃避だということは、自分でもわかっている。

わたくしは我が家門と領民たちのため、この結婚から逃げたりしない。たとえベニート様が、どれだけ嫌味ったらしいお方でもね。

ただ少しだけ、わたくしだって夢を見たいのよ。ベニート様が誰かに略奪されて、ベニート様の有責で婚約が解消される……。そんな未来を夢見るくらい、許されてもいいでしょう……?

「まあ、騒々しい」

わたくしの背後で、冷たい声が聞こえた。

誰だかわからないけれど、高貴な女性のようだわ!

わたくしは急いで向き直った。

「ベニート様こそ、学園で一番の美丈夫ですわぁー!」

わたくしはベニート様ぬいぐるみを左右に動かして踊らせる。

この方も、今はまだ『略奪したい』とまでは思わないかもしれない……。

だけど、ベニート様の『ただの取り巻き』が増えるのだって良いことよ。

そのうちベニート様に本気になって、わたくしから奪いたいと思うようになるかもしれないじゃない!

「たしかに素敵ね」

と返事をしてくれたのは、隣国から留学中のアドリアナ第一王女殿下!

銀髪に金色の瞳をした尊き血筋のお姫様!

大物すぎたわ……!

アドリアナ王女殿下のお隣に立っているのは、我が国の第三王子レアンドロ殿下……! 赤毛に緑の瞳をした端正なお顔立ち。背も高くていらっしゃる。

え……、レアンドロ殿下が来るとか、普通に迷惑だわ……。

ベニート様より身分も高く、背も高く、顔も良いし、性格も良さそうとか……。

やめてっ! ベニート様がかすんでしまうわ!

「ベニート様ぁ、最高に素敵よぉー!」

わたくしはベニート様を応援した。

レアンドロ殿下は存在が輝きすぎている。

わたくしの応援程度では、もはやベニート様がどうにかなるとは思えないけれど……。やらないよりは、きっとましよ!

「良い趣味しているじゃない。わたくしも金髪に青い目の男が好きなの」

アドリアナ王女殿下が気さくに声をかけてきてくださったわ!

他国のお姫様までベニート様を推してくれたら……!

いよいよベニート様が、略奪女の方のお目にとまることができるのではなくて……!?

「そうなのですね! お褒めいただき、感謝いたします!」

わたくしはアドリアナ王女殿下だけでなく、神にも感謝した。

アドリアナ王女殿下は、きっと神が遣わしてくれたお姫様よ!

レアンドロ殿下が赤毛に緑の瞳なことを考えると、ベニート様を推していただける可能性は高いわ!

ああ、でも、どうかしら? 隣国の王女殿下が、他国のただの騎士になる伯爵家五男を推してくれる?

「ベニートというのね」

「はい、ベニート・ラファーガ伯爵令息でございます」

「それで、あなたは?」

「ベニート様の婚約者でアルボラータ伯爵家のロザリアでございます」

わたくしはアドリアナ王女殿下に向かって完璧なカーテシーをした。

アドリアナ王女殿下は、わたくしの希望の星ですもの。

「あら、婚約者がいたの」

と言って、わたくしを上から下まで見つめたアドリアナ王女殿下の目ときたら……! ギラギラとした猛獣のような目だったわ……!

これは期待できる……! わたくしの求めていた女神が、ついに地上に降り立ったのではなくて……!?

「幸運にも、あのように優れた方とのご縁をいただきました」

嘘は言っていないわ!

ベニート様は容姿がとても優れているもの!

「ふぅん」

アドリアナ王女殿下が、面白くなさそうに言った。

やったわぁー! やりましたわぁー!

これはベニート様にご興味があるサインに違いありません!

ああ、あまり期待しすぎてもいけませんわね。

後で落ち込むことになると、ベニート様の推し活が捗りませんもの。

「なんの騒ぎかと思ったが……。令嬢たちが、人気の男子生徒に群がっていたのか」

レアンドロ殿下が軽蔑しきった口調で言った。

たしかに軽薄な令嬢たちが、顔が良いだけで、性格は最悪の男に群がっています!

それを見て軽蔑できるなんて、レアンドロ殿下は真っ当な王子様である可能性が高いわ! この国の未来、明るーい! やったー!

レアンドロ殿下は、隣国に婿入りされるご予定の方。隣国に行っても、この国の恥になるような振る舞いはきっとなさらないはず。

「ベニート様ぁー! ベニート様ぁー!」

わたくしは軽薄な令嬢代表として、ベニート様ぬいぐるみを掲げて頭上で右や左に回した。ベニート様をアピールしつつ、さりげなく筋力のトレーニングもしているの。推し活には体力も必要よ!

「くだらない。行きましょう、アドリアナ王女殿下」

レアンドロ殿下は吐き捨てて、アドリアナ王女殿下をエスコートして立ち去ってしまった。

ベニート様に対抗意識を燃やすでもなく……。

えー……、あんな立派な王子様を隣国に出すの……?

このまま、この国にいてもらえばいいのに……。

わたくしは王立学園の家庭科部に所属しているの。

放課後の今は、家庭科室で活動中よ。

『うちわ』に使う薄布に、『ベニート様』という文字を刺繍しているところなの。

「よくやるわよね」

友人で伯爵令嬢のヴェロニカが、わたくしの手元を見て苦笑している。

ヴェロニカはわたくしの作戦に協力してくれていて、今も『ウインクして!』という文字を刺繍してくれていた。

「なんとかベニート様の有責で婚約を解消していただいて、慰謝料で領地を立て直すのよ!」

「はいはい、その後は修道院に行くのでしょ」

「ベニート様の妻になるより、修道院に行く方がましよ!」

絶対に無理だから! ベニート様は無理!

アルボラータ伯爵家は、跡取り娘が修道院に入ってしまっても、親戚から誰か養子に来てもらえばなんとかなるわ!

だけど、わたくしはベニート様と一生を共にするとか、本当に無理! どうにもならないくらい無理なの!

あの『悪い意味で言っているわけではない』と言いさえすれば、なんでも許されると思っているところが無理!

「貴族の令嬢が、こんな平民が役者の応援に使うグッズまで作って……」

ヴェロニカは、作業机に置かれている『応援用扇作成セット』を見つめた。

『応援用扇作成セット』は、平民の商店で買ってきた推し活グッズの一つよ。推し活をしている平民の間での略称が『うちわ』なの。

「平民の発想は斬新で素晴らしくてよ! ぬいぐるみもインパクトがあって良かったわ!」

「騎士服を作るのは、ものすごく大変だったけれどね!」

「ありがとう、ヴェロニカ! いつも助かるわ!」

「どこかしら部活には入らないといけない決まりだもの。興味ある事なんてないのに。それならロザリアの助けになる方がいいわよ」

ヴェロニカはいろいろ文句を言ったりもするけれど、ベニート様の性格が最悪なことをわかってくれているの。

わたくしがヴェロニカとおしゃべりしつつ刺繍を続けて、しばらくすると……。

家庭科室の扉がノックされてから、静かに開けられた。

「アルボラータ伯爵令嬢が、こちらにいると聞いたのだが」

レアンドロ殿下が家庭科室に入ってきて、部員たちを見まわした。

「はい、おります」

わたくしは驚きながら、席を立った。

「少し話をしたいのだが……」

「わかりました」

相手は王族ですもの。断ることなんてできないわ。

わたくしはレアンドロ殿下の後に続いて家庭科室を出た。

レアンドロ殿下は人の少ない廊下を歩いていき、空き教室の一つに入った。空き教室の扉は開け放たれたまま。護衛騎士が廊下で見張りに立つようだった。

「アルボラータ伯爵令嬢は、ラファーガ伯爵家の令息、ベニート殿の婚約者だったな」

「はい」

「令嬢が婚約者を相手に、『顔が良い』だのと騒ぎ立てるのは見苦しいことだ。やめたまえ」

レアンドロ殿下は、非常に真っ当な注意をしてくれた。

お節介でお人好しな王子様なのね……。

「それはできかねます。わたくしの人生がかかっておりますもの」

わたくしは即座にお断りした。

「どういうことだ?」

「ベニート様の良さを、多くの方に知っていただきたくて……」

そして、誰かに略奪していただきたいのよ。ここであの活動を止めるわけにはいかないわ。

レアンドロ殿下がため息を吐かれた。

呆れられてしまったのかもしれないわ……。

たしかに淑女のやることではないものね……。

「ベニート殿を好きならば、絶対に止めた方が良い」

「理由を伺っても?」

わたくしが訊ねると、レアンドロ殿下は少し迷うように緑の瞳を揺らされた。

「アドリアナ王女殿下がベニート殿に興味を示している。あの方が我が国に留学して来て、私と婚約したのは……」

レアンドロ殿下は、言葉を切った。

「なぜでしょうか?」

「……自国で臣下の婚約者を奪おうとしたためだ」

レアンドロ殿下が絞り出すように言った。

「やりましたわぁー! ようこそ我が国へ、略奪王女殿下ぁー!」

わたくしは両手を広げて、その場で一回転した。

「神様は、わたくしをまだ見捨てておられない……!」

「なん……だと……?」

レアンドロ殿下が戸惑っておられるわ。

わたくしは喜びの舞いを中止することにした。

「アドリアナ王女殿下は、政治的な問題でどうしてもレアンドロ殿下がご結婚されないといけないのですか? ベニート様を差し出すのではいけませんか? ベニート様を隣国に連れて行っていただいては? わたくしは、それが最善の道だと思いますわ!」

「私は第三王子であり、アドリアナ王女殿下に気に入られたため、婿入りすることになった。だが、どうしても私である必要はないはずだ。ベニート殿でも問題ないだろう」

ああ、レアンドロ殿下が不審そうにしているわ……! それもそうよね。わたくしは、あれだけベニート様を応援していたのですもの。

「ベニート様の口癖は『悪い意味で言っているわけではない』なのです。『久しぶりに賢い女性を見た気がするよ。ロザリア、君は単純だな。ああ、悪い意味で言っているのではないよ』と、いつもこのような調子なのです」

わたくしはベニート様の口調を真似て説明した。

「それは……、なんとも……。ひどいな」

レアンドロ殿下が苦笑された。ああ、ベニート様と同等か、それ以上にお顔が良いわ。

「一生あのような方のお傍にいるなど無理です。わたくしは、どなたかにベニート様を略奪していただきたくて……。はしたなくも、ベニート様の魅力を広く知っていただこうとしていたのです」

「なるほど。そのように策を巡らせていたとは……」

「お恥ずかしい話でございます。我がアルボラータ伯爵家は、新興のラファーガ伯爵家から金銭的な援助を受けております。両親にお願いしても、領民のために耐えるよう諭されるのみ。領民はもちろん大事ですが……。わたくしは自分の人生もまた大切にしたく……。ベニート様の有責で婚約を解消していただけたらと……」

わたくしは自分の事情を説明した。慰謝料をがっぽりもらって、その後は修道院に入る予定だとまでは、さすがに言えなかったけれど……。

『修道院に入るよりは、あんな男であっても妻になった方が……』

なんて言い出されたら困るわ。

「なるほどな。私もアドリアナ王女殿下には、別の男性を選んでいただけないかと思っていたのだ。我が国の民のために隣国に婿入りすることは、私の王族としての務めだ。拒否する気はない。だが……、臣下の夫や婚約者を略奪するような女性の夫となるのは……」

「そのお気持ち、痛いほどにわかります!」

「おお、わかってくれるか!」

レアンドロ殿下とわたくしは、数秒見つめあってから、慌てて目を逸らした。

「私もアルボラータ伯爵令嬢の策に協力しよう」

「ありがたき幸せに存じます」

わたくしはお礼の気持ちを込めて、レアンドロ殿下にカーテシーをした。

レアンドロ殿下は、ベニート様と同じくらい素敵なお方よ。レアンドロ殿下を推している方々がいるの。

わたくしは家庭科室に戻ると、部長であるエスペランサ様のところに行った。

エスペランサ様は公爵令嬢。わたくしはエスペランサ様が刺繍をなさっている横に立ち、お声をかけていただけるのを待った。

エスペランサ様は、レアンドロ殿下を推している女生徒の中心人物よ。『うちわ』用の薄布に『必勝!』と刺繍している。もうすぐ行われる学内の剣術大会に備えているご様子ね。

「ロザリア嬢、どうなさったの?」

「レアンドロ殿下を推しているエスペランサ様に、良いニュースと悪いニュースがあるのです」

「聞くわ」

エスペランサ様は刺繍をする手を止めて、席を立った。

わたくしはエスペランサ様と共にまた空き教室に行った。

そこにはもう、レアンドロ殿下のお姿はなかった。

「先ほどレアンドロ殿下と、なにかお話をしていたようね」

「はい」

「ロザリア嬢は、ご自身の婚約者であるベニート様を推していたのではなくて?」

「その通りです」

「良いニュースと悪いニュースとやらは、どういうことなの?」

エスペランサ様は不審そうにわたくしを見た。

人気の面からだけ見ると、レアンドロ殿下とベニート様はライバル関係にあるもの。

「良いニュースは、レアンドロ殿下が隣国に行かなくても良くなる方法が見つかったことです」

「なんですって!? 王命を覆すことができると言うの!?」

エスペランサ様は、淑女にあるまじき大声で訊き返してきた。

「わたくしは覆せると思っています」

自信たっぷりで笑ってみせた。

「信じられないわ……」

「アドリアナ王女殿下は、自国で臣下の婚約者を奪おうとしたために、我が国に留学してきてレアンドロ殿下と婚約したのです。わたくしは、そんなアドリアナ王女殿下にベニート様を捧げたいと思います」

「ロザリア嬢は、あれほどベニート様を推していたではないの!」

「どなたかに略奪していただけるよう、ベニート様の魅力を広めていたのですわ」

わたくしはエスペランサ様にも、ベニート様の物真似をしてみせた。エスペランサ様は顔を引きつらせながら、わたくしがベニート様を略奪してもらいたいと願う気持ちを理解してくださった。

「悪いニュースというのは?」

「レアンドロ殿下には、次の剣術大会でベニート様に負けていただきます。ベニート様に『強く美しい騎士の中の騎士』になっていただくのです」

わたくしは緊張しながら説明した。剣術大会でエスペランサ様に「レアンドロ殿下が負けるわけがない!」などと騒がれるわけにはいかない。

「特に悪いニュースではないわね。レアンドロ殿下が略奪女に婿入りするより、たかが剣術大会で負ける方が良いわよ」

「そう言っていただけて安心しました」

わたくしがほっとして笑うと、エスペランサ様も笑ってくださった。

「わたくしに擦り寄るために、レアンドロ殿下を推している者たちもいるの。わたくしはレアンドロ殿下の幸せのために、その者たちを引き連れて、ベニート様を推して推して、隣国に押し出しますわ!」

エスペランサ様は、わたくしの両手を強く握ってくださった。

「共闘してくださるのですね! ありがたき幸せに存じます!」

わたくしはエスペランサ様の両手を握り返した。

「当然よ! でも、アルボラータ伯爵家は良いの? 新興のラファーガ伯爵家から金銭的な援助を受ける代わりに、ベニート様が婿入りするのではなくて?」

「そこは……、ベニート様の有責で婚約が解消されたら、慰謝料が入るかと……」

「わたくしは祖母が王女だったの。あなたは王家の怖さをわかっていないわ。いいでしょう。我がセニット公爵家が、アルボラータ伯爵家とロザリア嬢を守ってあげます。父に頼んで、アルボラータ伯爵家を寄り子にしていただきますわ。金銭問題も解決しましょう」

エスペランサ様が、やさしく笑いかけてくださった。

「そんな……、いいのですか……?」

「当然よ。麗しのレアンドロ殿下が、この国に留まれる道を見つけてくれたお方ですもの」

エスペランサ様は、わたくしの手を放すとカーテシーを披露してくださった。

わたくしも慌ててカーテシーをする。

「ロザリア嬢に感謝を!」

「ありがたき幸せに存じます!」

わたくしとエスペランサ様は、また笑いあった。

そうして迎えた剣術大会の日。

わたくしは屋外闘技場で、ベニート様の応援団の一人として女生徒たちに混じっていた。少し離れた場所では、レアンドロ殿下の応援団としてエスペランサ様たちがいる。

「ベニート様ぁー! 優勝してくださぁーい!」

わたくしは、はしたない大声で応援する。

「レアンドロ殿下、がんばってくださーい! 格好良いところを見せてー!」

エスペランサ様が、負けじと声を張り上げる。

他の騎士たちを応援する女生徒たちも、応援を始めたわ。

剣術大会は、それぞれの学年の強者たちが、トーナメント方式で戦うの。身分もなにも関係なく、誰が強いかを決める。優勝できれば、男爵家からでも近衛騎士に抜擢されたりするのよ。

ベニート様とレアンドロ殿下は、順調に勝ち上がった。

ああ、ベニート様が剣の腕も素晴らしくて良かった! 本当はこれで性格も良かったら最高だったのだけれど……。それはもう、言っても仕方のないこと……。

レアンドロ殿下は相手と取っ組み合いの末に勝ったり……。地面に這いつくばりながら、相手の顔に砂を投げつけて辛くも勝つなど……。とにかく酷い有様よ。

ベニート様は常に圧勝だったわ。剣と剣とがぶつかり合い、最後には、ベニート様の圧倒的な強さが華麗に披露されるの。

今回の剣術大会だけは、すべてが八百長試合だった。

そうして迎えた決勝戦で、レアンドロ殿下とベニート様が戦うことになった。

アドリアナ王女殿下は、護衛騎士に囲まれてレアンドロ殿下を応援していた。

「ベニート様ぁー! ベニート様ぁー!」

わたくしはアドリアナ王女殿下の耳にも届くように、ベニート様の名前を連呼した。

エスペランサ様たちは黙っている。ここに至るまでの間、レアンドロ殿下が見苦しい戦いをしてきたからよ。

いきなりレアンドロ殿下のファンが減ったら不自然ですもの。

――この剣術大会を境に、ベニート様は誰よりも人気のある騎士となる。

「あのベニート様という方、エルマン様よりずっと強かったわ」

「ガスパール様はあんなに無様に負けて……。それに比べてベニート様の剣技の麗しかったこと……」

「あのコルネリオ様をあっさり下すなんて、ベニート様ってすごいわ!」

レアンドロ殿下を推している方々以外にも、わたくしとエスペランサ様とで声をかけた。彼女たちも、ご自分たちの推しを守るためならばと、ベニート様を推してくださることになったの。

決勝戦でも、ベニート様は華麗に戦ってくださったわ。最後には、レアンドロ殿下が地面を転がって砂だらけの見苦しい姿になり、ベニート様に剣を突きつけられていた。

レアンドロ殿下ったら、ちょっとやりすぎなのでは……? ああ、略奪女の夫になるのが、それほどに嫌なのね……。

「ベニート様、強いですわー!」

エスペランサ様が叫んだ。

「すごいわぁー、ベニート様ぁー!」

わたくしも慌てて叫ぶ。

「素敵よー、ベニート様ー!」

「かっこいいわ、ベニート様!」

「ベニート様こそ、最強の男ですわー!」

女生徒たちが次々とベニート様を褒め称えてくれる。

レアンドロ殿下の名を呼ぶ者なんていない。

アドリアナ王女殿下が、驚いた顔をして女生徒たちを見まわしていた。

「皆様、ご覧になって!? ベニート様は、わたくしの婚約者ですのよ!」

わたくしは人生で初めての高笑いをしながら、得意げに立ち上がった。

「うらやましいわ、ロザリア嬢!」

エスペランサ様が。

「あんな婚約者がいるなんてずるいわ!」

友人のヴェロニカが。

「ロザリア嬢が羨ましーい!」

「わたくしもベニート様みたいな婚約者がほしかったわ!」

他の女生徒たちが、わたくしを羨望の目で見てくれる。

アドリアナ王女殿下は、そんなわたくしの姿を、眉根を寄せて見ていた。

剣術大会の次の日から、わたくしたちはアドリアナ王女殿下のお耳に届くよう、ベニート様の素敵さを噂しあった。

同時に、エスペランサ様が「レアンドロ殿下はちょっと……」などの言葉を、アドリアナ王女殿下に聞かせるようにしてくれた。エスペランサ様は、王女殿下が降嫁されたこともある公爵家のご令嬢。不敬罪に問われないようにしつつ、上手くやってくださったわ。

わたくしはレアンドロ殿下から、ベニート様の色のドレスやアクセサリーなどを贈っていただいた。エスペランサ様からはお化粧の上手な侍女も派遣していただき、男性から見ると地味で面白みがないけれど、女性には『あざとい美人』に見えるお化粧をしてもらった。

ベニート様は調子に乗って人を見下しまくっていたので、純粋にベニート様を推していた女生徒は、他の方に乗り換えていっていた。

「他のみんなも、あれでも、それなりに努力はしているのだよな……? いや、悪い意味で言っているのではない。ただ、純粋に疑問なのだよ」

なんて半笑いで言ってみたり、ベニート様はとにかく得意そうにしているのですもの。あのように性格の悪い方が好みという女性にとっては、たまらない魅力があるのでしょうけれどね……。わたくしは嫌よ……。

それでも、わたくしは、ベニート様の婚約者の役目を立派に果たしたわ。

略奪したい方にとっては、勝ち誇りたい相手でなくてはね。

学園では、公爵家のご令嬢であるエスペランサ様までが、わたくしを羨んでいるという噂が流れた。エスペランサ様のレアンドロ殿下愛が伝わってくるようだったわ。

わたくしたちが常にベニート様のお傍にいては、アドリアナ王女殿下が近づけない。わたくしたちは、ベニート様が一人になる時間も作るようにしていった。

血のにじむような努力の末、ついにアドリアナ王女殿下がベニート様にお声をかけてくださったの!

アドリアナ王女殿下が落としたハンカチを、ベニート様が拾ってさしあげていたのですって! コルネリオ様を推している女生徒が見て、報せに来てくれたわ!

古典的な手段、などと言ってはダメ! お二人が言葉を交わしたこと、それが大事なの!

「まあ、ありがとう。剣術大会で優勝なさった方よね……?」

アドリアナ王女殿下が控え目な笑顔を浮かべていたのですって! 臣下の婚約者を奪おうとしたような方が、控え目な笑顔! これは期待できるわ!

「はい。ラファーガ伯爵家のベニートと申します」

「ベニート様……。お強いのですね……」

銀髪に金色の瞳をした麗しの姫君が、うっとりとした目で見上げてきたのよ。

「いえ、運が良かっただけです」

ベニート様だって、いつもの口癖は封印するわよね。

「まあ!」

アドリアナ王女殿下は、なにが面白かったのか、無邪気に笑ったそうよ。魔性の女なのね! その調子よ、アドリアナ王女殿下!

その後、アドリアナ王女殿下はなぜかよろけて、ベニート様にエスコートされながら教室に向かったのですって。

「……それはすごいな」

わたくしは空き教室で、レアンドロ殿下に状況を報告したの。

「上手くいきましたわ!」

「ロザリア嬢は本物の策士なのだな」

レアンドロ殿下は、エスペランサ様をも虜にした笑顔を浮かべてくださった。顔が良い! しかも、ストレートに褒めてくれる! これは推してしまうわ! わかる!

「ベニート様を見て、人の心を学ぶ大切さを知ったのです。なにに喜び、なにに悲しみ、なぜ怒るのか……。わたくしは、とにかくベニート様とは結婚したくなかったのです。それが貴族に生まれた女の務めだと、わかっておりましたが……。わたくしだって領民のことは大切に思っております。けれど……」

「大丈夫だ。私はわかっている。私とて、この国の民は大切だが……。臣下の婚約者を略奪する女など、妻にしたくは……なかったからな……」

わたくしはレアンドロ殿下が共感してくれて、心から嬉しかった。だからこそ、こんな風に会うのは止めなければいけないと思った。お互いの身を守るために……。

「レアンドロ殿下、わたくしたちは、お互いに婚約者を持つ身。こそこそと空き教室で会うなど、本当はいけないことです」

「ああ、そうだな……」

「次からは、ご自分で情報を収集してくださいませ」

わたくしはカーテシーをして、レアンドロ殿下の前を辞した。

本当はベニート様とアドリアナ王女殿下の出会いだって、わたくしが報告する必要なんてなかったと思うの。相手は王族よ。配下には、情報を集める者もいるはずだわ。

――それでも、レアンドロ殿下は、わたくしを呼び出した……。

わたくしは、その意味を考えないようにした。

あの素敵なレアンドロ殿下に好かれているなんて考えたら、その先の未来まで期待してしまう。

だけど、わたくしは貴族の娘。政略結婚の駒よ。

望む相手と結ばれることなんて、ほぼないのだから……。

ベニート様とアドリアナ王女殿下は、順調に愛を育んでいったわ。お二人の眼中には、途中からは、わたくしのことも、レアンドロ殿下のことも、入らなくなったようだった。

わたくしは服装やアクセサリーやお化粧を普段通りに戻し、エスペランサ様の侍女にも帰ってもらった。

お二人を近づけるためにベニート様を推してくれていた方たちも、少しずつ本物の推しの元に戻っていったわ。

そうして迎えた、王家主催の舞踏会の夜。

ベニート様が、アドリアナ王女殿下を腕にぶら下げて、得意げなお顔をしていた。

アドリアナ王女殿下は、そんなベニート様をうっとりと見上げてから……。

「レアンドロ殿下は、王子という身分におごり、努力を怠っております。王立学園の剣術大会でも、このベニートに情けない姿で敗北しておりました。よって、大国の王女である、このわたくしの夫には相応しくありません」

国王陛下と王妃殿下に向かって、堂々と言い放った。

第三王子とはいえ、国王陛下と王妃殿下の実のお子様なのに……。

国王陛下と王妃殿下がとても渋い顔をして、アドリアナ王女殿下とベニート様を見ているわ……。怖い……。

「そ、そんな……!」

レアンドロ殿下がショックを受けたような声を出した。いいですわぁー! その調子ですわぁー!

「このベニート・ラファーガは、身分こそ騎士ですが、強く美しい……。上位貴族である伯爵家の五男でもあるとか」

アドリアナ王女殿下は、ベニート様の腕に強く抱きついた。

「私はアルボラータ伯爵家のロザリア嬢との婚約を破棄し、アドリアナ王女殿下に我が『真実の愛』を誓いたいと思います」

ベニート様が言うと、人々の視線がわたくしに集まった。

「ベニート様……」

わたくしも進み出て、ショックを受けたような顔をする。

アドリアナ王女殿下が、わたくしを見下すような笑みを浮かべた。

ご満足いただけたようですわ! どんどん勝ち誇ってくださいませ!

わたくし、ついにベニート様と結婚しなくて良くなりましたわぁー! ついに、ついに、やりましたわぁー!

国王陛下と王妃殿下もご覧になっていたのですもの、これはもう間違いなくベニート様から解放されましたわぁー! やったー!

「承知いたしました。お相手がアドリアナ王女殿下では、わたくしに勝ち目などございません……」

わたくしは萎れた花を思い浮かべたり、腹痛の時を思い出したりしつつ、ベニート様とアドリアナ王女殿下にカーテシーをした。きっと深く傷ついているように見えたはずよ!

「ああ、ベニート! わたくしはこの国に伴侶を求めて参りました。そして、わたくしも『真実の愛』を見つけました」

アドリアナ王女殿下は、ベニート様と見つめあう。

その調子ですわぁー! その調子でお二人の幸せを、みんなに見せつけてくださいませぇー! がんばれー!

「アドリアナ王女殿下……」

ベニート様がアドリアナ王女殿下の手を取り、指先に口づけを落とした。

お二人以外はドン引きですけれども、どうかお気付きにならないでぇー! そのままお二人だけの世界で、愛を紡いでいってくださいませぇー!

「わたくしはレアンドロ殿下との婚約を破棄し、このベニートと婚約いたします。ベニートと共に国に戻り……。わたくしは、ベニートを我が王配に迎えますわ!」

アドリアナ王女殿下は、誇らしげな笑みを浮かべた。

すごいですわぁー! 王配ということは、アドリアナ王女殿下は、まだご自分が女王になれると勘違いしていますわぁー! 臣下の男を奪って、他国で婿探しをさせられて、まだ王位継承権第一位だと勘違いしていますわぁー! 驚きの心の強さ!

わたくしはレアンドロ殿下から、アドリアナ王女殿下はレアンドロ殿下と帰国したら、公爵家を興してもらえるご予定だと聞かされていた。

伯爵家五男で騎士のベニート様と共に帰国しても、公爵家を興してもらえるのかしら……? アドリアナ王女殿下は王族なのだし、興してもらえるかもしれませんわね。

まあ、そんな細かいことはどうだっていいですわぁー! 『真実の愛』さえあれば、どんな困難にだって打ち勝てるはずですわぁー! お二人で愛を貫いてくださいませぇー! とにかくお二人とも、がんばれー!

「父上……、母上……、私が不甲斐ないばかりに……。申し訳ございません……」

レアンドロ殿下は、打ちひしがれている演技がお上手ですわぁー! その場に崩れ落ちそうなのを、なんとか耐えている風に見えますわぁー! さすが王族! 演技が上手い!

「アドリアナ王女殿下、どうやら我が国で、無事にお気に召す者を見つけられたご様子。安心いたしました」

国王陛下がアドリアナ王女殿下に笑いかけられた。

アドリアナ王女殿下は、国王陛下にも見下すような目を向けた。

「明日にはこの国を発ちますが、ベニートの祖国を悪いようにはしませんわ」

「ありがとうございます。これからも我が国を、どうぞよろしくお願いいたします」

王妃殿下が、国王陛下の代わりに言った。国王陛下の発言ではまずいとご判断されたのだろう。

「せっかくの舞踏会を騒がせてしまったわね。わたくしたちは、明日の準備もありますから、ここで失礼いたしますわ」

「ああ、行こう」

アドリアナ王女殿下はベニート様にエスコートされて、大広間を出て行った。

終わりましたわぁー! これで自由の身ですわぁー!

さーて、わたくしの人生は、ここからですわぁー!

「父上、母上、アドリアナ王女殿下に捨てられた情けない私から、お二人にお願いがあります」

レアンドロ殿下が、わたくしの隣に立った。わたくしはレアンドロ殿下の横顔を見上げる。

「申してみよ」

「聞きましょう」

「同じくベニート殿に捨てられた、このアルボラータ伯爵家のロザリア嬢との婚約を、お許しいただきたいのです」

レアンドロ殿下が、わたくしを見る。緑の瞳が、きらきらと輝いているように見えた。心のきれいな方は、このように目まで澄んでいるのね……。

「ロザリア嬢の気持ちは……、まあ、見ればわかるのだけれど……。聞かせてちょうだい」

王妃殿下がお声をかけてくださった。

「お許しいただけるならば、レアンドロ殿下と共に生きていきたいと思っております」

わたくしは平凡な茶色の髪と瞳をした、没落寸前の伯爵家の跡取り娘だけれど……。

なんとかレアンドロ殿下の妻になることをお許しいただきたかった。

「良いだろう。第三王子レアンドロは、アルボラータ伯爵家に婿入りさせる。レアンドロとの結婚と同時にロザリア嬢が家を継ぎ、アルボラータ家の爵位を公爵とする。領地は銀食器の産地だが、今は銀の値上がりで苦しかったはずだな。レアンドロには王家の銀山を与えよう」

さすが王家……。すでにわたくしのことも調査済みのようだわ……。

わたくしの両親は、人々の間からこちらを見ていた。国王陛下がこのような宣言をされても、国王陛下の前に進み出てくる様子はない。

国王陛下にお礼を言うために、出てくる必要があると思うのだけれど……。

わたくしの両親には、わたくしが女公爵となったら、領地で隠居してもらうのが良さそうね……。

「ありがたき幸せに存じます」

わたくしは国王陛下と王妃殿下にカーテシーをした。

「父上、母上、お許しいただき感謝いたします」

レアンドロ殿下もお二人に礼をしていた。

「レアンドロ殿下ぁー! がんばってくださいませぇー!」

わたくしは騎士科の放課後の自主訓練を、柵の外側から見ていた。

隣には、レアンドロ殿下推しのエスペランサ様がいる。

レアンドロ殿下は華麗な剣さばきで、次々とかかってくる者たちを打ち負かしていく。

わたくしは『レアンドロ殿下ぬいぐるみ』を掲げて、頭上でゆらゆらと揺らした。

「その調子ですわ!」

「素敵ですわー!」

エスペランサ様たちも『うちわ』を振って、レアンドロ殿下を応援している。

レアンドロ殿下を推していた方々は、わたくしとレアンドロ殿下の婚約を祝福してくれていた。どなたも「レアンドロ殿下が隣国の略奪女の夫にされるより、自国の令嬢の方がずっと良いですわ」と言ってくれている。

「レアンドロ殿下ぁー!」

わたくしは心から推している方の名を呼ぶ。

レアンドロ殿下が戦いを終え、わたくしたちに手をふってくださった。笑顔が眩しいわ!

ベニート様に婚約を破棄していただけて良かった!

アドリアナ王女殿下とベニート様は、隣国では公爵家として自らの手で僻地の開墾をやっているとお聞きしている。

お二人とも、がんばってくださいませぇー!

わたくしとレアンドロ殿下は、遠くから応援しておりまーす!