軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

妖精の友達

「サラさんと、そちらのお嬢さんたちには、少しお話させていただきたいのだけど構わないかしら?」

「はい。私は大丈夫ですが、皆さんは大丈夫ですか?」

「「「承知しました」」」

次にレベッカが空中に向かって小さな声でつぶやくと、植物たちがざわざわと動き始め、東屋に続く細い道ができた。

「そちらの方々は、ここでお待ちいただけるかしら?」

レベッカは保護者たちにも声を掛ける。当然だが、先程のやり取りをしたばかりで彼女に逆らう勇者はいない。メイドたちもレベッカの指示を正確に読み取ってすすっと後ろに下がっていった。

サラたちが東屋に到着すると、先程の道が再び植物で閉ざされた。サラは内心『モーゼかっっ!』と思ったが、口には出さないでおいた。

到着した東屋は蔦に蔽われており、小さな椅子とテーブルの周りにも雑草が生い茂っていた。サラは水属性の魔法で植物から水分を抜いて乾燥させ、火属性の魔法で焼き払った。さらに燃えカスを風属性で吹き飛ばし、再度水属性で椅子とテーブルを水洗いする。

『うん、魔法便利だわ』

レベッカの出エジプト記もどきより、よっぽどいろいろやっているのだが、サラ自身にはあまり自覚がない。

「短期間に驚くほど上達したわね。でも、あんまり他の人には知られない方が良いわ。お嬢さんたちも、秘密にしておいてもらえるかしら?」

3人は顔を見合わせて頷いた。

「では本題に入るわね。私に妖精の友達がいることはさっき話した通りよ。ちょっとお見せするわね」

レベッカはにっこりと微笑んで両手を前に差し出した。すると、レベッカの掌の辺りに、キラキラとした光が集まり始める。

「サラさん、よく見てごらんなさい。あなたにも見えるはずよ」

サラはレベッカに促されるまま集まる光に目を凝らそうとしたが、眩しくて目を開けていられない。堪えきれずに目を閉じると、何故か両方の耳に大勢が一度に話しかける声が聞こえてくる。

「ぼくたちの声がきこえるかい?」

「わたしたちに気づいて!」

「ここにいるよ」

「サラ、目をあけて」

おそるおそる目を開けると、そこにはたくさんの小さな動物が空中に浮かんでいた。動物の種類は一定ではなく、猫、犬、鳥などさまざまな動物がいる。彼らはサラの周りをふわふわと漂い、中にはサラの肩にとまったり、髪の毛の先で遊んでいる子もいた。

「え、ええええ?? どうしようレベッカ先生、なんか小さな動物たちが私の周りを飛んでます!」

「やっと見えるようになったのね。この子たちが妖精よ」

「妖精って小さな人の形をしてるんだと思ってました。背中には羽が生えてて」

「そういう子もいるわよ。妖精は気まぐれにいろいろな姿をとるの。だからいつも同じとは限らないわ。でも、大抵は気に入った姿でいるわね」

「そうなんですね」

すると、サラの毛先で遊んでいた三毛猫のような妖精が声をあげた。

「わたしはずーっとサラの近くにいたんだよ。サラが父さんと母さんと一緒にいるときからずっと」

「全然気づかなかったわ。ごめんなさいね。ねぇ、あなたのお名前は?」

「名前はまだないよ。サラがつけて!」

「私が名付けていいの?」

「うん! 名前はお友達になったらもらえるものだもの」

「そうなのね。それじゃ『ミケ』はどう?」

「ありがとうサラ。わたしはミケよ!」

喜んだミケはサラの頭上をくるくると周りだした。ミケからは光の粒がいくつも流れだし、サラに降り注いだ。

「もしかしてこれは…」

「ええ、それが妖精の恵みよ」

『すごい綺麗……。んんんん? ちょっとまって、妖精の恵みってことは、年をとるのが遅くなるんだよね? まって、私幼女をずっとやるってこと??』

「れ、レベッカ先生! もしかして私って成長が物凄くおそくなったりします!?」

「ふふっ。心配しなくても大丈夫。身体が成熟するまでは普通に成長するわ」

『よ、良かった…。レベッカ先生を見た感じだと、だいたい18歳前後かな?』

「はい、おしまーい。これでサラはずっーとミケと一緒!」

するすると降りてきたミケは、サラの肩にとまって髪をいじり始めた…と、思ったがサラの耳元で小さな声で囁いた。

「サラの外見は好きなところで止められるし、若返らせたり、年をとったりも自由にできるよ」

「えっ、それって今すぐ大人になったり、大人になってから子供になったりもできるってこと?」

「うん。サラの魔力を使うことになるけどね。これ、できる妖精って少ないんだから!」

ミケは自慢そうである。

『猫でもドヤ顔ってできるんだぁ…。じゃなくって、なにその魔法少女っぽい技!!』

と、サラが驚く間もなく、レベッカが話を再開した。

「さて、サラさんも無事に妖精の恵みを受けたようだから話の続きをするわね。まずお嬢さんたちは、サラさんに妖精の友達ができたことを秘密にして欲しいの」

ポカーンと口をあけてサラとレベッカの様子を見ていた3人は、こくこくと頷いた。

「その上で確認なんだけど、妖精と話をしたい人はいるかしら?」

「「「はい!」」」

3人はそろって声を上げた。

「いいお返事ね。妖精の姿を見てお話をするには、サラさんや私のように妖精のお友達にならないといけないの」

「どうやったらお友達になれるんでしょうか?」期待に満ちた目でアメリアが尋ねる。

「魔力を持っていて、魔法が発現していることは最低条件よ。その上で、あなたたちとお友達になりたいって思ってくれる妖精がいないとダメなの」

「そんなぁ。私じゃ無理です」アリシアが肩を落とした。

「教会では魔力があると言われたのですが、私は魔法を発現できていません」テレサもがっくりしている。その横で俯いているアメリアも、おそらく魔法は発現していないのだろう。

「私は魔力を感じることができるのだけど、お嬢さんたちは全員魔力持ちよ。サラさんほど強くはないけど、おそらく魔法を発現することはできると思うわ。アリシアさんとアメリアさんは水属性、テレサさんは火属性に適性があるような気がするわ」

『え、レベッカ先生、そこまでぶっちゃけていいの??』

「サラさん、あなたには彼女たちの近くにいる妖精が見えるかしら?」

改めて3人の周りを見回すと薄っすらとした光が見えた。目を凝らすとミケよりもずっと小さな妖精たちが見える。

「3人それぞれに1体ずつ妖精が見えますね」

「どんな姿をしているかわかるかしら? 私の魔力ではお友達以外の妖精の姿ははっきりと見えないのよ」

サラはじーっと目を凝らして彼女たちの周りの妖精を見つめた。

「アリシアさんの妖精は魚の姿をしています。テレサさんの妖精は赤い小鳥ですね。アメリアさんの妖精は……馬みたいに見えるんですが下半身が魚っぽくなってるので、馬とはちょっと違うような」

「サラさんありがとう。というわけで、あなたたちにはお友達になりたい妖精さんがすでに待っているわ」

妖精の友達仲間が増えそうなことに、サラのテンションも跳ね上がった。