軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

S10 第2王子

目の前でスーとクレベアが練習用の剣を持って対峙している。

体格の小ささを活かして、足元から急襲するスーの剣を、クレベアは難なく弾いてみせる。

その後もスーは果敢に攻め込むも、クレベアの的確な防御に全て阻まれる。

小柄なスーの剣技は力任せな印象を受けるのに対して、筋骨隆々のクレベアの剣技は流麗な清流を彷彿とさせる。

見た目の印象とその動きの印象が真逆の二人だ。

スーも決して弱くはないはずなんだが、実戦経験豊富なクレベアが相手だと、どうしても稚拙に見えてしまう。

それもそのはずで、クレベアは「剣の才能」の上位スキル、「剣の天才」をレベル7まで取得している。

スーの「剣の才能」のレベルは6。

そこには埋めようもない差が存在した。

それでも一瞬で勝負がつかないのは、単純なステータスによるところが大きい。

スーは魔闘法と気闘法の両方を同時に発動させている。

MPとSPを消費してステータスを底上げするスキルだが、MPの量が膨大なスーが魔闘法を使うと、そのステータスの上がり方が半端じゃない。

この頃は身体能力系のステータスもかなり上がってきているので、ステータスの面ではスーの方に軍配が上がる。

とはいえ、クレベアもハンデのため気闘法を使っていないので、それをされると一気に形勢は傾く。

もっとも、気闘法を使わなくてもクレベアが勝つだろう。

ステータスで上回っているといっても僅かな差だし、自力となる基礎が違いすぎる。

スーに逆転の目はなかった。

俺の予想通り、スーは攻め疲れたところにカウンターを受けて敗北した。

剣の腹で体を打ち据えられ、地面に倒れ伏す。

すぐさまそばに控えていたアナがスーに駆け寄り、回復魔法を使う。

回復したスーは服についた土を払いながら、悔しそうな顔をして立ち上がった。

「負けた」

「そのお年でこれだけ動ければ、私などすぐ追い抜けます。姫様の才能は素晴らしいですよ」

「お世辞はいらない」

むくれるスーのそばに行こうとして、すぐ真横から拍手の音が響いた。

「いや、お世辞じゃなくて本心だと思うよ? それぐらいいい動きだった」

俺を含めて、その場にいた全員が驚愕に目を見開いた。

俺やスーはまだしも、クレベアやアナですら、彼の登場に気付かなかった。

俺も真横に立たれていたにもかかわらず、全く気配を感じなかった。

「ユリウス兄様!」

「やあ、驚いたかい?」

その男、第2王子にして俺と同腹の実の兄、ユリウス兄様は、いたずらが成功したという感じで朗らかに笑う。

「いつ帰国なされていたんですか?」

「つい昨日ね。昨日のうちに顔くらい見せたかったんだけど、父上や兄上に会っていたりしたから時間が取れなかったんだ」

ユリウス兄様は俺とは年も離れていて、もうすでに国外で色々と活動している。

なので、こうして国に帰ってくるのは珍しい。

「スーはまたちょっと見ない間に立派になったね。毎回のことながら、その成長ぶりには驚かされるよ」

優しくスーに語りかけるユリウス兄様。

けど、話しかけられた方のスーはむすっとして答えない。

スーはどうもユリウス兄様のことが苦手なようだ。

俺からすると、ユリウス兄様は他の二人の兄に比べて親しみやすくて好きなんだけどな。

何より俺はユリウス兄様のことを尊敬している。

尊敬する兄様と可愛がっている妹の仲が悪いのは、正直嫌だ。

「スー。兄様に対してその態度はダメだろ?」

「はは。いいさ。スーも難しいお年頃なんだよ」

何かを察しているようなユリウス兄様。

前世も含めれば、俺のほうが年上のはずなのに、ユリウス兄様には精神年齢でも勝てる気がしない。

「さて、シュンの方はどうかな? 久しぶりに、稽古をつけてやろうか?」

「いいんですか!? ぜひお願いします!」

ユリウス兄様に稽古をつけてもらえるとは。

願ってもないことだ。

「では、借りるよ」

「は、はい」

ユリウス兄様は萎縮してしまったクレベアから練習用の剣を受け取る。

クレベアがこんなに緊張する相手というのも珍しい。

まあ、それもユリウス兄様だから仕方ないことではあるけど。

「よし。いつでもいいよ。どこからでもかかってきなさい」

「はい!」

俺は即座に魔闘法と気闘法を発動させる。

ユリウス兄様相手に出し惜しみはしない。

ありったけの力を注ぐ。

鋭く踏み込み、斜め下から切り上げる。

それを兄様は片手で難なく受け止める。

全力で放った一撃が、片手で構えた剣に簡単に止められてしまった。

けど、予想通りだ。

兄様がこの程度の剣撃を止められないわけがない。

俺はすぐさま剣を引いて、次の攻撃を繰り出す。

それもまた止められる。

楽しい。

全力を出しても全く届かない。

どんなに速く剣を振っても、どんなに力を込めても、どんなに技巧を凝らしても、ユリウス兄様には全く届かない。

どうやったらあの剣を超えられるのか、想像すらできない。

そんな遥かな高みにいる人と、こうして剣を合わせられる。

ものすごく楽しい。

けど、いつまでも続けていたい気持ちとは裏腹に、終わりはやってくる。

俺の魔闘法と気闘法が切れた。

肩で息をしながら、膝をつく。

「うん。シュンの剣はとてもまっすぐで気持ちがいいね。どこまでも伸びていくシュンの才能そっくりだよ」

「あ、りが、と、うございま、す」

とぎれとぎれに礼を言う。

俺がこんなにへばっているのに、ユリウス兄様は息一つ乱していない。

さすがだ。

さすがは 勇者(・・) 。

世界最強の人間。

いつか、この人と並べる日は来るだろうか?

この世界での俺の夢の一つ、それは、この人と並ぶこと。

今はまだ全然届かないけど、いつかきっと、ユリウス兄様の背中を守れるくらいになる。

それが、俺の目標だ。