軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59 地上100メートルの防衛戦⑤

猿たちが押し寄せてくる。

そこに私は糸を撒き続ける。

それは、一回目の再現のようだった。

ただし、変わったところもある。

猿たちは私の糸の性質をもう理解している。

捕まったら逃げられないと。

そこで、先頭を進む猿は、あえて大きく体を広げて糸のあるエリアに侵入する。

より広い範囲の糸を自分自身で付けるために。

後続の猿が少しでも楽ができるように。

そのため、壁には大の字になった猿たちが何匹も張り付いている。

しかも、糸の大崩落に備えて、壁をがっちり掴んで張り付くという徹底ぶり。

そうしてできた猿の道を、後続の猿たちが進む。

後続の猿も、私の糸を食らった瞬間、身投げする。

自分の身を顧みない、狂気に犯された捨て身の戦法。

それでいて、ここまで的確に攻略法を編み出してくるんだから恐れ入る。

ホント、やりにくい。

けど、どれだけ対策を施してこようと、犠牲の上に成り立っている以上、進めば進むだけ猿の数は減っていく。

巨猿が現れて以降、新たな増援は来てない。

このままいけば、私にたどり着く前に猿は全滅する。

巨猿が動かなければ。

巨猿への警戒はずっとしてる。

猿の相手をしつつ、そっちもずっと警戒しなきゃならない。

かなり神経のすり減る作業だ。

おかげでまた集中のスキルレベルが上がった。

そして、ついに巨猿に動きがあった。

動いたのは一番レベルが低いやつだ。

くるりと背を向けると、後ろの方に下がっていく。

そのまま去ってくれればよかったんだけど、世の中そんなに甘くない。

巨猿はこっちに振り向くと、一直線に走り出した。

まさか!?

そのまさかがありえると、私の勘が警鐘を鳴らす。

すぐさま迎撃の準備をする。

私の予想したまさかは、的中した。

巨猿は糸塊を助走をつけて飛び越えた。

そして、その恐るべき跳躍力でもって、私のところまで一気に跳んできたのだ。

私はギリギリ用意が間に合った投網を跳んでくる巨猿に投げつける。

空中では避けようもなく、巨猿は呆気なく投網に捕まる。

投網に捕まったことによって、巨猿の軌道はわずかに下にズレた。

そのまま私の真下の壁に激突する。

鈍い音とともに糸に絡まり、壁に張り付いた状態で止まる。

巨猿はその状態でもすぐに復活し、糸から脱出しようと暴れだす。

そうはさせじと私はさらに糸を追加しつつ、毒合成で蜘蛛毒を作り出し、その大きな口目掛けて落としていった。

糸と毒の二重苦に悶える巨猿。

蜘蛛毒一発じゃ死なないことに軽く焦りつつ、ならばともう一発毒合成する。

毒の水玉がその大口の中に綺麗に吸い込まれていく。

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLV7からLV8になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『視覚領域拡張LV1』が『視覚領域拡張LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV3』が『酸耐性LV4』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

レベルが上がったことで、巨猿が力尽きたことがわかった。

急いで脱皮した皮を脱ぎ捨てる。

安心してる余裕はなかった。

侵攻してきてる猿の方を振り向いて、もう1匹の巨猿がそこにいた。

跳んできたさっきの巨猿を目眩ましに、猿と同じルートでここまで這い上がってきていたのだ。

速い!?

さっきまで地上にいたはずなのに、もうすぐそこまで来ている。

巨猿の通り道となった猿が、容赦なく潰れていく。

それほどの脚力と握力でもって、ここまでの道のりをあっという間に走破してみせたのだ。

私は慌てて糸を巨猿に向けて放つ。

巨猿はそれを垂直の壁の上であるにもかかわらず、機敏に避ける。

けど、避けた先に猿の道はない。

そこには私の糸がベッタリと壁一面を覆っている。

巨猿が壁に張り付く。

すぐさま引き剥がそうともがくけど、巨猿の力をもってしても、私の糸は容易に取れないようだ。

けど、糸より先に、壁の方がビシビシと不穏な音を出し始める。

もちろん、私がそんなことをいつまでも許すはずがない。

すぐさま追加の糸を全身にくまなく放っておく。

これでしばらくはもつはず。

すぐに視線を戻す。

2匹目が動いていたということは、3匹目も動いているに違いない。

その予想は当たっていた。

私はすぐに3匹目を発見した。

私に向かって、その巨大な口を今まさに閉じようと迫ってくるその姿を。

!!?

もはや落ちるだとかそんなことを言ってる場合じゃなかった。

というか、反射的に何も考えずに動いていた。

私は足場から虚空に身を躍らせる。

避けきれなかった、私の右側の足が全部と、胴体の一部が噛み砕かれる。

HPが一気に減る。

とんでもない痛みとともに、意識が明滅していく。

けど、ここで気を失ったらもう2度と目覚めることはない。

空中で急いで糸を飛ばす。

壁についた糸が、私の落下を防ぐ。

けど、反動で壁に叩きつけられ、一瞬意識が遠のきかけた。

牙を食いしばって飛びそうになる意識を繋ぎ止める。

《熟練度が一定に達しました。スキル『気絶耐性LV1』を獲得しました》

新しいスキルの影響か、なんとか意識を保つことに成功する。

視線を元いた足場のあった上に向ける。

3匹目の巨猿は、足場を破壊し、その足場の残骸たる糸に体を捕われていた。

当然だ。

私がただの足場を作るわけがない。

いざとなれば、足場をそのままトラップにできるようにしておいた。

まさか、一発で破壊されるとは思ってなかったけど。

私は上に移動する。

足が半分なくなっているので、操糸で釣り上げるようにして移動した。

暴れる巨猿のさらに上に移動する。

操糸を駆使して巨猿の体を拘束し、大口を開けるように固定する。

そこに毒合成で蜘蛛毒を合成し、飲み込ませていく。

《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLV8からLV9になりました》

《各種基礎能力値が上昇しました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『HP自動回復LV2』が『HP自動回復LV3』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『生命LV1』が『生命LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『瞬発LV1』が『瞬発LV2』になりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『持久LV1』が『持久LV2』になりました》

《スキルポイントを入手しました》

レベルアップにより脱皮する。

ふう。

死ぬかと思った。

今のは本当に危なかった。

これでレベルアップできなかったら、本気で死んでたかもしれない。

けど、ここまでだ。

2匹目はそろそろ糸の拘束を抜け出しそうなので、さらに糸を追加する。

残りの猿の方も、巨猿がせっかくの道を踏みつぶしてきてしまったため、思ったほど進んできていない。

巨猿の相手をしていて遅れたぶんも、これならまだ挽回がきく。

まだ何かしらの隠し玉があれば話は別だけど、このままいけば猿に逆転の目はない。

だからといって油断はしない。

それで何度も痛い目を見てきたんだから当然だ。

最後まで、気を抜くつもりはなかった。