軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

前哨戦 鬼VS風雷②

空納から出した魔剣を、直接射出のスキルを使って撃ち出す。

射出のスキルはMPを消費するものの、その量は微々たるもの。

空納も入れたものを出すだけならばMPの消費はほぼない。

魔剣は作成時に大量のMPを消費せねばならないけれど、使う時には消費0で済む。

つまり、この一連の攻撃で消費するMPは自動回復で瞬時に賄える程度。

それでいて、魔剣が炸裂した際の破壊力は作成時に消費したMPの量に比例する。

あらかじめ魔剣を作成しておかなければならないデメリットはあるものの、実際に戦う時にはMPの消費はほぼないというのは、それを覆して余りあるメリットだ。

だが、それも相手に通用しなければ意味がない。

高速で射出された魔剣が、豹龍に着弾する前に紫電に弾かれ、誘爆する。

間断なく魔剣を撃ち続けているが、そのどれもがこのようにして撃ち落されるか、あるいは避けられてしまっている。

豹龍は常に体の周りに電撃を纏っているようだ。

そして、攻撃が来ると自動で迎撃。

おかげで僕も迂闊に近寄ることができない。

近づいたその瞬間、電撃が襲い掛かってくるからだ。

攻防一体の嫌な能力だ。

『グルァ!』

加えて、豹龍本人もこうして牙を向けて飛び掛かってくる。

炎刀から炎を射出し、目くらましと足止めにする。

その隙に大きく距離を取る。

それでも間に合わず、紫電が襲い掛かってくる。

それを、炎刀とは逆の手に持った雷刀で弾く。

同属性の雷刀であれば、紫電の攻撃と相殺することもできる。

が、そこまでだ。

こちらから押し返すことはできない。

防ぐのが精いっぱいで、反撃に転じることはできない。

魔剣の射出も、炎刀による炎も、すべて紫電によって阻まれてしまっている。

むしろ、そうすることで豹龍の攻撃の手を緩めさせ、なんとかこの均衡を保っているといったありさまだ。

お互いに未だ無傷であるものの、明らかに劣勢なのは僕のほうだった。

加えて、もう一体の龍の動向も気になる。

もう一体のプテラノドンのような龍は、上空に飛び上がっていってしまった。

目視では視認も難しいほどの高空に。

そこで何かをしているようだが、豹龍をさばくので手いっぱいでそちらにまで気が回らない。

このまま放置すればよくないというのはわかりきっているのに、打つ手がない。

僕の手札は、多いようで少ない。

魔剣の様々な能力でごまかしているが、同格以上との戦いで役に立つ魔剣の能力は、炸裂する自壊、炎、雷、この三種程度だ。

炎と雷の魔剣を携えての接近戦。

そして、大量の炸裂剣を射出する制圧能力。

この二つが僕の基本戦術となる。

多彩な攻撃手段を持つ白さんやアリエルさん、ソフィアさんと比べると、僕の戦い方は力押し一辺倒だ。

だからこそ、同じような戦法の格上相手はきつい。

まあ、まったくやりようがないわけではない。

三歩、二歩、ここ!

相手の攻撃をいっぱいいっぱいで受け流しているように振る舞い、ある地点におびき寄せる。

実際に演技をせずともかなりいっぱいいっぱいなので、騙せているだろう。

そして、豹龍がそこに踏み込んだ瞬間、発動。

豹龍の足元が爆発する。

『ぎゃぁ!?』

豹龍の叫び声が響き渡る。

地雷剣。

炸裂剣の亜種であり、その名の通り、地中に埋めて敵が踏んだ瞬間に爆発を起こす魔剣。

豹龍の纏う紫電も、足元までは覆っていない。

地面の下にある地雷剣を誘爆することはできず、そもそも感知もできていなかっただろう。

完全に意識の外からの攻撃では、さすがの紫電による自動迎撃も発動しなかったに違いない。

そもそも、足元で起きた爆発では自動迎撃が発動したところでどうしようもなかっただろうけれど。

紫電による自動迎撃は非常に強力だ。

こちらの炎、実態を持たないものまで撃ち落としていたのだから、おそらく突破するには紫電以上の出力の攻撃を叩きこむしかない。

が、それはあくまで紫電が迎撃すればの話だ。

足元、紫電を操る豹龍本人に直接攻撃を叩き込めればいいのだ。

魔剣の射出で豹龍の気をそらせた一瞬の隙に、僕はこの地雷剣を地面にセットしていたのだ。

豹龍が片足を引きずりながら後ずさる。

地雷剣を踏んだ右前足を負傷していた。

この機を逃さずに一気に攻め落とす!

空納から炸裂剣を大量に取り出し、射出!

さらに僕自身も豹龍に向けて駆け出す。

『ぬ、があぁ!!』

が、豹龍がそれまでにない大音量で吠えると、その全身から目を焼くほどの光があふれる。

咄嗟に急停止し、足が痛むのも無視して後ろに飛び退る。

雷刀を前に掲げていたのが功を奏した。

腕がしびれるような衝撃が雷刀越しに伝わってきたけど、それだけの被害で済んだのだから。

それはまさしく、雷の権化だった。

あのまま踏み込んでいたら、黒焦げにされていたかもしれない。

『いてえ! あーちくしょう! いてえじゃねえかよ!』

怒り心頭と言った様子の豹龍。

豹龍は翼をはためかせると、宙に浮かび上がる。

参ったな。

これじゃ、地雷剣はもう通用しない。

とは言え、足は負傷したままだ。

治療系の魔法も、HP自動回復系のスキルも持っていないか、持っていたとしてもスキルレベルが低いようだ。

これで機動力のいくらかは落ちたと思いたいところだけど、宙を移動するとなるとどうかな?

一歩こちらがリードしたと思うけど、まだまだ予断は許されない。

油断なく豹龍を睨みつける。

その時、ふと周囲がさっきよりも暗くなっていることに気づく。

豹龍から視線を外すわけにはいかないから確かめることはできないけれど、太陽が雲に隠れたのか?

でも、今日はさっきまで雲一つない快晴だったはずだ。

この変化は無視していいものじゃない気がする。

その僕の予感を肯定するように、ポツリと顔に当たる雨粒。

すぐに雨脚は強くなっていき、瞬く間に土砂降りとなる。

さらには雷鳴まで聞こえてきた。

『ったく! 時間かかりすぎなんだよ!』

豹龍が上を見つめながら愚痴をこぼす。

『おう!? それが頑張った俺に対する言いぐさかよ!?』

その豹龍に答える声。

プテラノドン型の龍が舞い降りてきていた。

この雨、あの龍が引き起こしたのか!

『舎弟は兄貴分のためにキリキリ働くもんだろうがよぅ!?』

『誰が舎弟だ!?』

『おめーに決まってんだろ!?』

『いや、そこは体格的に俺のほうが兄貴分なんじゃねえの!?』

『はっ!』

『鼻で笑いやがったこいつ!?』

『つべこべ文句言うんじゃねえよ! 女々しい!』

『あ、はい』

豹龍が傷ついているというのに余裕を取り戻している。

この雨、ただ演出で降らせているというわけじゃないだろう。

状況は悪い。

最悪、憤怒を使うしかないかもしれないな……。